裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
前話でわーちゃんが突然出てきてびっくりしたと思いますが、出てきた理由はちゃんとあります。作者がお世話になってるからです(殴
文にまとまりがなくなってきてるけど許して汗
「ね、ねぇ。もし私が全てのWA2000の中で最強になったら、私に何してくれる?」
徹底的に基礎的なところから兵士のあり方を叩き込んでいるこの頃。初めてボコした時から実に3ヶ月弱の期間を散々痛めつけて(言い方)やっただけあり、彼女は俺も数発ペンキをもらう位には成長してきている。もうそろそろ実戦に出しても良いかもしれない。そうなれば俺は依頼完了でお別れになるけどな。
彼女の育成計画の進捗を鑑み、どう社長に提言するか考えつつ二人で食事をしているところ、唐突に彼女に問われた。
「何してって、何して欲しいのさ」
「なっ、そ、それを私の口から言わせる気!?」
「この場で自分の口で言えないようなことを望んでらっしゃるわけ?」
「なぁっ!!?」
開始数秒で自爆した。俺に話術で上回ろうなんて十年はやい、せめて10歳は生きてから口喧嘩を申し込むべきだ。
だが、彼女が全WA2000の中で最強になってる時に会えるかどうかはともかく、訓練課程を終わらせた暁には別れ際に何かプレゼントするのも良いかもな。
しっかし戦術人形にあげて喜ばれるものって一体なんだ。あまり任務遂行の邪魔になるようなものはよろしくないだろうし、かといってチープなものをあげても良い気はしないだろう。・・・目印代わりにもなるし、アレを見繕ってあげれば良いか。
「そうだな・・・。キミももうすぐ実戦に出ても良い頃合いだろうし、そうなりゃ俺はお役御免だからな。去り際にプレゼントの一つでもあげるよ」
「え・・・? お役御免って、どういうこと・・・?」
愕然とした顔。そんな話聞いてないと言わん様子、・・・え、聞いてないの?
「俺が社長から依頼されたのは、『キミを実戦でも使えるように叩き直す』こと。つまり、戦場に出ても問題ないと判断されたのならその時点で俺の仕事は終わり。君とはまた別の道を歩むってだけさ」
「そんな話聞いてないわ! なんで、私が戦場に出ても一緒にいてくれるんじゃないの・・・?」
「そう言われてもな・・・」
こればっかりは契約で決まってる事だし、俺自身もグリフィンの専属じゃないからどうしようもない。決められた依頼を果たしたらその時点で契約満了、次の仕事を受けに裏に戻るだけだ。むしろ3ヶ月という、それなりに長い期間をオモテの企業で過ごした事の方が俺の立場的には異質である。
あるべきものはあるべきところへ、裏の人間は用が済んだら裏へと戻る、それだけの話さね。
「ともかく、近々キミを実戦に出しても問題ないかどうかのテストを社長立会いのもと行う。頑張れよ」
そうとなればテストの実施に必要な手続きをしなければならない。
俺は漂う気不味さにあえて気付かぬフリをしながら食堂を離れた。
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指定した条件を突破し、見事試験をパスしたわーちゃん。それに伴って俺もお役御免となり、そして今日ついに別れのタイミングが来た。
この子、よっぽど俺と離れたくなかったらしく、一時は下手くそな結果を見せればそれだけ俺と居られる期間が伸ばせるとか言ってたが、やっぱり根は真面目だから本番でそういう事を出来ないんだよな。今までにないキレッキレの動きで、敵役の先輩人形たちを次々とボコっていった。・・・アレ、新兵のレベル通り越して強すぎじゃね?
そんな最強までの道をまた一歩踏み出した彼女は、目に涙を浮かべながら俺と相対していた。
「・・・本当に、これでさよならなの?」
「ああ。ひとまずはな」
側から見ると恋人の別れ際のようなシーンになんだか背中がむず痒くなるが、最後だし仕方ないと腹を括る。食堂で飯食った時に話したプレゼントもあるからな。
「ほれ、訓練課程卒業おめでとう。ささやかながらお祝いだ」
「なに、これ?」
「開けてみ」
このご時世手間賃と材料費が高くついたが、綺麗にラッピングした小さな白い箱を手渡す。ドキドキした様子で箱を開けてゆくわーちゃん。中身は・・・
「これ、白いリボン?」
それも今時滅多に手に入らない絹を使ったリボンである。オンボロを動かせるようにするための整備費も含めて家計は火の車だが、それでも別れ際くらいにはこういうプレゼントでもいいだろ? 下手すりゃこの後すぐにどっちかがくたばって、もう二度と会えないなんてこともあるかもしれないしな。
「そう、シルクのリボンさ。他のWA2000たちってみんな赤いリボンで髪を止めてるだろ? でもそのリボンをつけていれば、俺はもしキミと再会した時にすぐに見分けがつく。ある種また会う日までっていうご祈願みたいなもんさ。結んでみ?」
「う、うん・・・」
一旦結んでいた赤いリボンを解き、今度は渡した白いリボンでいつもの髪型へと結び直す。黒を基調とした服装と赤み掛かった茶髪だが、ワンポイントで白が入るのも悪くないな・・・悪くない、のか?
まあ元が良いから、きっとこのリボンも可愛く見えるように彼女を映えさせてくれるだろう。
「似合ってるじゃないか。んじゃ、また会った時はよろしく」
「ちょ、ちょっと待って! 最後に一つだけ言わせて」
「ん?」
どこかモジモジしながら、ほっぺをちょっぴり赤らめるわーちゃん。
しかし、今までならそのまま数分ほどはモジモジしっぱなしだったのが、すぐに覚悟を決めたらしく俺の目をまっすぐ見据えてきた。最初の頃と比べてメンタルも成長してるってことだな。さて何をおっしゃるつもりなのか?
「私が将来、すべてのワルサーWA2000の中で最強のWA2000になったら!!」
「・・・なったら?」
「私の、わたしの、わた、しの・・・」
「・・・私の?」
頑張って伝えよう、その想いのもとまっすぐ見据えてきてたはずのわーちゃんの視線がどんどん下に下がっていき、同時に顔もリンゴみたいにどんどん赤くなっていく。そりゃもうふしゅーふしゅーと湯気でも出そうなレベル。おーい?
「うぅぅぅぅぅやっぱりムリぃぃぃぃぃぃッッ!!!!!」
・・・何を俺に伝えたかったのかさっぱりだが、なんだか当人の中ではもの凄く恥ずかしい事を言おうとしてたらしい。結局言えずじまいでピューっとダッシュして行っちまったんだが、わーちゃん本当に何がしたかったんだろう・・・。
ともかく、依頼を完了して俺はお払い箱。さっさと退散しよう。
——
「・・・また目が覚めた。そしてまた夢を見た」
本日二度目の夢見の良い寝覚めである。横になってる分には背中はそれほど痛みはない。至って楽な姿勢である。のだが、気持ち息苦しい。呼吸器官の上に何かが乗っかっている感覚がある。
さっきも言ったが、俺が起きるのは敵が近づいてるか何らかの原因で寝苦しさを感じてる時くらい。敵意を持った存在は近くにいない、となれば。
「・・・なーんでこんな寝方してんのよ、スケアクロウ」
タオルケットをめくるまでもなく盛り上がった俺の腹の辺り。こんなお山ができる原因は一つしかないが、ペラっとめくって一応確認。
俺の胸のあたりに頭を乗せて眠るスケアクロウ。美人に抱きつかれて眠るって結構な贅沢だと思うが、正直寝苦しい。でも起こすのもなぁ・・・。カアイイ寝顔を晒しちゃって、クールな彼女のあどけなさを感じる姿にほっこりするのも癒しだからなぁ・・・。
なんて考え込んでる間に、被っていたものがどかされて少し冷えたのか。スケアクロウがうっすらと寝ぼけ眼を開ける。
「・・・んぅ? ・・・ッッ!!???」
次の瞬間、自分がどういう姿勢にいるのかを認識した彼女はバッと起き上がり、今まで見た事ないスピードで浮きながら自分の部屋へと帰ってしまった。バタンっバタンっガッチャンっ、部屋のドアを勢い良く開閉してなんと鍵までかけたらしい。・・・あの子寝るときには抱き枕がないと寝られないのか?
——
裏家業に生きる俺は、本来では大変残念なことにオモテの公的医療機関で診察を受けることが出来ない。のだが、そんな俺が頼れるコネの一つに、結構長い間お得意様とさせて頂いてるPMCが一社ある。ご存知、グリフィン&クルーガー社だ。
主に汚れ仕事ばかりを依頼したされたの関係だが、数年単位でお仕事をいただけてるんでそれなりの信頼は勝ち得てるんだと思う。
無茶を承知の上、翌朝にギルドを通して社長のクルーガー氏に背中やっちまったんでちょっと医療を提供してくれません?とお願いしたところ、むしろそのくらいならばお安い御用だとばかりの反応が帰ってきた。あれ、自分で言うのもなんだけど裏の人間にそんなあっさりサービス提供しちゃって良いのだろうか。
そう聞いてみれば、なんなら”本社のある地域に住民として最初から住んでいた事”にするのだってできるぞ?というお返事。そういうお話はギルドの担当も合わせてお話させていただければと思いますのでと返せば、うぅむという難しげなお顔。ヒゲと眉間のシワが深すぎてただでさえコワモテなのが恐怖倍増でっせ社長。
G&Kがだめとなりゃツテのある闇医者の元を訪ねるつもりだったのだが、まともな所で診てもらえるのならその方が絶対都合が良い。
そういうことで、オンボロに跨り紹介された病院のある場所まで行こうとしたんだが・・・
「・・・」
「?? 先ほどから跨ったままでどうされましたの?」
「運転するために前傾姿勢を取ると背中が痛くて地味に辛い」
「えっ」
思わぬ体の不調である。いやこれから病院行くのに体が不調じゃなかったらそれはそれで可笑しいんだが。
オンボロは走行するとき、前傾姿勢になって空気抵抗が少なくなるようにハンドルを握るタイプのバイクだ。四輪は椅子に腰掛けてるからある程度楽に運転できるが、コイツはそうはいかない。前傾姿勢以外の姿勢でドライバーはこいつを運転できないのである。
「・・・スケアクロウ」
「・・・何をおっしゃるつもりですの?」
「俺の代わりに運転してくれねえか? やり方は横から教えっから」
「無茶振りにも程がありますわっ!?」
仕方ないじゃないか。この状態だと痛みが地味に強くて運転に集中なんて出来ねえんだもん。
それにあんだけバランスよくMT二輪を乗りこなせるようになってるじゃない。大丈夫大丈夫、サイドカー含めて今のコイツは五輪車だから。
「・・・以前貴方の言葉を受けてからというもの、もう少し修練を重ねてから乗る覚悟を決めておりましたのに。まさかこんなに早くこの巨体を運転することになるとは・・・。しかもワタクシノ オワセタ ケガノ セイデスシ...」
言ってるうちにどんどん沈み込んで遂にはショボーンとなってしまったスケアクロウ。あれは不幸な事故だから仕方ない。寝てる所をいきなり持ち上げられたら俺だって何かしら反撃するかもしれないし。いやごめん、かもしれないじゃなくて絶対反撃するわ。
まあ、オンボロの運転はまだ早いとか言っておきながら結局この体たらくになったのは申し訳ない所。彼女も二輪の運転を通してオンボロが規格外なのはすでに理解しているわけで、いざ本当に俺を横に乗せてコイツの運転をとなると気が重いみたいだ。
無理強いするのもそれはそれで嫌なので、多少無理してでもいけないかと何度か運転時の姿勢を試してみる。イテテテテ。
「・・・ごめん。正直キツイ」
「・・・わかりました。覚悟を決めますわ」
ポジションチェーンジ。
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おっかなびっくりなスケアクロウの運転ではあったが、なんとかグリフィンが運営している病院へとたどり着いた・・・が、ここで一つ大きな問題が起きた。
比較的まともに機能している建物なので駐車場もまともな状態だったんだが、オンボロがデカすぎて周りに止まってるジープとかにブツけそう。
え、私ここにこのバイクを駐車するんですの?という彼女に半分涙目で救いを求められたので、普通に立つぶんにはまだ痛みの少ない我が身を駆使してなんとか誘導してみせた。
オンボロは二輪車のくせにデカいボディのキャパを利用して多段変速式のギアを積んでいる、つまり四輪のAT車との同じ方式のギアを積んでるのだ。
さらにその巨体と重量ゆえにある種当然なのだが、二輪には普通付いてないリバースギアも搭載している。足だけでよっこよっこと後ろに動かすのも出来なくは無いが、1t越えの車重を持つ巨体を後退させるのに人力だけってのは相当厳しいものがある・・・ほんとこいつバイクの皮被った何かだな。
んで、跨りながら後ろに体をひねるという今の俺なら悲鳴を上げる姿勢をとりつつ、右手のアクセルを少しだけ捻っては右手のレバー(リバースギアに入ってる時は右手のレバーだけで全輪のブレーキが掛かる)をキュッとやってっていうのを繰り返し、どうにかオンボロを駐車スペースに収めたスケアクロウ。
その顔はようやくやりきりましたわと言わんばかりのお疲れ顔。ゴメンよ、そんなに大変な思いをさせて。
「いえ・・・元はと言えば私が反射的に殴ったことが原因ですから。それよりも歩けますか?」
「ああ、いまんところは支えなしで歩ける。とりあえず、医者のところに行こうイテテ」
テクテク歩いて病院の中へ。
スケアクロウもいる中でどういう状況で怪我したのかを伝えるのは罪悪感はあるが、そういった経緯も伝えないと正確な診察結果を出せないからな。責める意図はまったくないけどそこは許してくれ。
んで診察を終えて聞いた現状では、重篤と言えるほどでも無い打撲が背中全体に広がってるねとのこと。話聞いた限り金属の板で背中を強打したようなものに思えるけど、よく悶えるだけで済んだね?とも言われた。
言外にお前は人外だと言われてるからそれに対して、俺は普通の人間ですよといえば残る二名から強力なジト目を浴びる。なんでやねん。
診察室から待合スペースに出て数十分ほど、お会計の順番が回ってきたので支払いを済ませる。なっかなか驚く額だったけどな。
旧日本国が平和な時代に行っていた社会保障制度ってのがいかに素晴らしい制度なのかよく分かる。こういうちょっとした怪我でも医療費全額実費負担って実は相当な額になる。国民が全国民の医療を支えるために収められた税金を財源にして医療の補助をする、よく出来た仕組みだよ。今も残ってくれてたらありがたかったんだが・・・俺には身分を証明するもんがねえからどのみちダメか。
帰りもまたスケアクロウに運転を教えつつ、彼女が運転するオンボロに乗ってねぐらに帰る。道中早速処方された痛み止めを服用したところ、確かに痛みが完全に感じられなくなる程ではないにせよ、飲むことでだいぶ楽にはなった感じ。
やはり人間痛みを常に感じ続けていたら心まで病んでしまう。少しの間とはいえ動きに支障の出る程度の痛みから解放された俺は少しばかしご機嫌になってねぐらに入る。
とそこへ、仕事先とやりとりするための通信端末が一通のメールを受信した。
取ろうとする手をスケアクロウがフヨフヨと浮きながら掴んで妨げる。
「いけませんわ。完全に体調が回復するまでは休んでくださいまし」
「内容の確認だけはさせてほしいな。依頼じゃない可能性もある」
手を押さえつけるように出された彼女の腕に、上から添えるように手を乗せてどかす。
受信したメールの差出人は、今日病院受診のコネで世話になったG&K社長。
・・・ギルドを介さず俺の端末に直接メールを寄越した理由はなんだ?
内容を見てみる。
『君が数年前に教導したWA2000が、つい先ほどテロ組織を撃滅する作戦中にMIAとなった。現在の君の体調が芳しくないのは重々承知の上だが、表立って動かせる部隊は戦線維持のため出払っている状況であり、捜索を行えるのは君たちのコンビしかいない。無論報酬は特別手当と見舞金も含めた額をギルドに提示させてもらう。時間がない、良い回答を期待している』
俺が数年前に教導したWA2000、別れ際に白のリボンを渡したあのわーちゃんがMIA(作戦行動中行方不明)だって? 一体何が起こってそうなったんだ?
詳しく話を聞かせてもらおうじゃないか。場合によっては、そのテロ組織とやらを・・・
はい、こういうことです。
わーちゃんと再会なるのでしょうか? 次回、フラグ回収(超大嘘)
そろそろ本格的なドンパチブッコンで行かねえと・・・。
P90に名前を付けるとしたら?
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そのまま『P90』でいんじゃね?
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『ナインティ』でいんじゃない?
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ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
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いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
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良いアイデアがあるから感想に書くぜ