裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
今回も8,000字オーバーですのでちょい長めです。
前回でシリアスからシリアルに強引に持って行ったのですが、今回はシリアルから『なぁにこれぇ』に強引に持って行きました。ところどころわけわからんちんな事もあるかもですが、まあ話は”続いていく”からという事で・・・
ではどうぞ!
ー履歴ー
19/09/22 本文中に辻褄の合わない記述があった為修正。
21/05/20 レイのクルーガーに対する言葉遣いを修正。
「即入院。異論は認めないよ」
診察を終えた医者(前回診てくれた人とは別の人、にゃははんと笑う顔が特徴的な女医)から言われたそんな一言により、俺は急遽グリフィンの病室にぶち込まれる事になった。ちなみにこれは口の悪い表現でもなんでもなく、なんの予備動作もなくマジでいきなりぶち込まれた。
即入院の一言が発された瞬間、ガララとスライド式のドアが開いたかと思えばゾロゾロと人形たちが入ってくる。え? 人形? なんで?
「グリフィンが運営してる病院なんだから、警護役に戦術人形がいるのは当たり前だろう?」
「いやいやいやそうじゃなくて、なんで即入院の一声で人形がゾロゾロ入ってくるんですか」
「君の立場を考えたら妥当じゃない?」
「何で!?」
「暴れられたら看護師だと危ないけど、人形だったら抑え込めるし?」
「そもそも暴れる体力もねえよ・・・」
と言ったのだが聞き入れてくれなかった。瞬く間に診察室へ運び込まれた担架に荒っぽい勢い(の割にはそこまで衝撃は無かった)で乗せられたと思えば、直ちに急患を運ぶくらいの猛ダッシュで病院を駆け抜ける。
自分の制御下にない高速移動体に乗ってるとこんなに怖いんだなと、半ば呆然としながら横たわった担架の上で考えてる間にぶち込まれた。・・・いろいろおっかねえな、この病院。
ぶち込まれた個室タイプの病室にいることしばし、ノックの後に入院を指示した医者とスケアクロウ。おい医者、仮にも自分の患者の扱いこれでいいのか。
「いやぁ? だって荒っぽく見えて意外とマイルドに運んでくれたでしょ?」
「それとこれとは話は別でしょう。なぜあの猛スピードで病院中を駆け回ったのか、エレベーターを使えば良いでしょうに」
「あぁ、ちょうど昨日故障しちゃったんだよね。だから修理なう」
「・・・」
意外としょうもない理由だった。
と、医者が佇まいを直し、それまでのゆるーんモードから本職の顔になる。
「さて、君の背中の状態を改めて伝えさせていただこうかな。単刀直入に聞くけど、前回の診察で診てくれた先生に安静にしてろって言われたにも関わらず全力疾走したな?」
ハハハ、そらバレるか。前よりも状況が悪くなってなきゃ即入院なんてこと言われねえ。
「そして無理にひねる様な動きもしたと見える。・・・まさか飛んでくる銃弾を避けでもしたのかい?」
「ええ。アサルトライフルで複数人がいろいろな方向から撃ってきたので、避けられるものは全て避けましたが」
「お前はバホか」
即座にドン引きすらも生ぬるい冷たい視線を浴びる。そんな目で見られても必要だったから仕方ない・・・ってあれ、なんでスケアクロウも同じ目で見てんの。
「・・・はぁ、君は自分の怪我を治す気は無いのかい?」
「自分の怪我が長引いてでもやらなきゃいけない事でしたので」
「なるほど、やはり君はバホなんだな。頭のネジが外れてるとみた」
ネジが外れてるとは失礼な。やらなきゃいけない事に命を懸けただけでそう呼ばれるなんて心外である。無茶した事は事実だけども。
「とにかく、医者としては君の体の状態が良くないと分かってて外に出すわけにはいかないんだよ。大体一ヶ月も経てば退院できるでしょ。それまでの間はトイレに行く時以外は基本的に横になってなさい」
「いや、そんなに待ってたら体の筋肉が鈍るんだが」
「いいか、あたしの前から患者が消える時は、完治して退院するかくたばって送り出されるかのどっちかだ。おとなしく寝てろ」
「・・・はいはい」
「バホを治すには電気ショック食らわせるのが一番だと思うんだけど、早速試してみよっか?」
「ごめんなさい勘弁してください」
あからさまに青筋立ってるお医者様。これ以上刺激したら多分マジで何かしら殺られそうだから引き下がる。さっきまでのにゃははんな笑顔は何処に行ったのよ。
にしても、一ヶ月も入院とはついてねえなぁ・・・。背中にあまり負荷が掛からない筋トレ位は続けておきたいもんだ。ってか、こんな痛み二週間も経てば治るだろうに、一ヶ月も間を置く必要ある?
なんて考えてると、俺の思ってる事を敏感に読み取ったスケアクロウ。
フヨフヨモードで青筋立てながら顔をズズいっと近づけてくる。マスクしてるせいで顔が近い。圧迫感が凄い。よくよく聞くとごく僅かにシューシューという音が聞こえる位の至近距離、マスクにチューしてしまうぞ。
「私も貴方の事をバホと呼びますわよ?」
「分かったから離れなさい。顔が近くて圧迫感が凄い」
両肩に手を当てて距離を取ろうとする。俺はもうベッドの上に乗ってるから後ろに下がれないし。
ちらりと見えた彼女の後ろにいた医者、なにか悪巧みしてそうな笑みを浮かべスケアクロウの後ろに立つ。そして、
「どーん」
「わぷっ、〜〜〜〜〜!!!??」
「がっ!?」
あの野郎、スケアクロウを後ろから押し込みやがった! ゴンっという音を尻目にアッハッハッハお大事にーなんて笑いながら病室を立ち去る医者。いってぇ! マスクが意外と硬かった。口元がすげえ痛い・・・。
「そ、その、大丈夫でして?」
「だいじょばない」
内心あの医者に必ず報いを受けさせる事を固く誓った俺は、とりあえず痛みが引くまでヒーヒー言いつつ心を落ちつける。
数分たってようやく痛みが引いた俺はスケアクロウと今後の事でお話をしようとした矢先、再び病室がノックされた。どうぞと声を出せば、入ってきたのはグリフィンのクルーガー社長殿だった。ああそういや、面と向かって話したい事があるつってたな。
改めて通信をぶつ切りしたことへの謝罪をした後で、相対して話したいという彼の用件を訪ねる事にする。
「それで、面と向かって話したい事って一体?」
「いきなりだな・・・。単刀直入に言うと、君が助けてくれたWA2000のメンタルケアを君が退院するまでの間だけで良い、それに協力してほしいのだ」
「WA2000の?」
「ああ」
話を聞くに、ライフル達は昨夜の件でそれぞれ深い傷を負ってしまったらしい。あの瞬間では空元気でなんとか明るく振る舞えていたようだが、一人になった時や暗い空間に入った瞬間、ギャング達にされた”事”が鮮明にフラッシュバックしてしまうのだとか。
ライフル達は高い練度を持つエースであり、熟練した経験を持つメンタルを”初期化”することは、本当の本当に最後の手段としたいのがPMCとしての立場。だが、このままメンタルに不安定さが残るままではどのみち戦場には送り出せない。
ということで、その一人のわーちゃんのメンタルケアを俺にも手伝ってほしいとのお話だ。他のライフル達は初対面だったが、わーちゃんに関しては昔から縁があるからな。
「彼女の治療を手伝うのはやぶさかでもないですが、当のWA2000は今どこに?」
「あの後すぐ、この病院周辺の警備を管轄する基地に他の人形とともに来ている。ここから歩いて数分の距離だ」
随分と近いところに基地がある。もっとも、薬を狙う不届き者たちを迎撃するのなら拠点が近くにあるのは当たり前か。
「ふむ・・・。まあどのみち、入院中はろくに体も動かせねえ身分ですので。話し相手位いくらでもなれますよ」
「では、引き受けてくれるのだな?」
チラリとスケアクロウを流し見するクルーガー。ここに来る前にあんな啖呵切られて回線ぶつ切りされた位だし、何か言われるんじゃないかと警戒したようだ。
スケアクロウ本人は案の定何か言いたげな目をしていたものの、俺が首を一度だけ横に振ると半歩ほど下がった位置に浮く。しょうがないですわね・・・と言いたげなお顔だ。
「引き受けると言いますか、弟子の面倒見るのも
「・・・そういう事だWA2000。入ってきなさい」
「もう外に待ってるんかい」
俺のツッコミを他所にガララと扉が開き、オロオロした風のわーちゃんが入ってきた。ところでなんでそんなおっかなびっくりなのよ。
「さ、さっきぶりね! レイ」
「おう、さっきぶりだな」
意外と早い再会だったな。
「と、とりあえずっ、これから暫く世話になるから! 覚悟しておきなさいよね!」
「何に対して覚悟するんだってばよ」
「そそそそんなこと私に言わせる気!? このバカレイ!!」
「だから何がよ」
オロオロしたかとおもえばビシィと指を差して、かと思えば急に顔赤くして罵倒である。わーちゃんの乙女な心はよく分かりましぇ〜ん・・・。
それはさておき、今のところこうして俺と会話する中ではメンタルに異常は見られないが、俺や他の見知った存在から離れた時、それに暗いところに来るとどうなるかってところか・・・。
特にこの子、科学の力で作られた人形の癖して幽霊とかお化けとかが筋金入りで苦手である。もしその手の恐怖を感じる体験なんてしたら、いつものツンツンからは想像できない程にギャン泣きしてしまうのだ。
元々持ってるそうしたトラウマに加え、過激派によって更に厄介なトラウマまで植えつけられてしまった事は辛い現実だ。なんとか頑張って克服してもらう・・・ってのも上から目線で嫌な言い方だが、とにかく彼女の治療の中で俺も寄り添える事があるのならそうしてやるまでだ。
ただ、そのアフターケアを遂行するためには『わたくしめのパートナー』の協力も必要不可欠なんですが・・・。
「WA2000と言いましたね」
「な、何よ・・・」
「私の主人は渡しませんわ」
「むっ!」
スケアクロウさんよ、お願いだから協力してくださいな。
側から見たら俺は二股かけて三角関係作り出したクズ野郎か? そういう事言ったら一気に険悪なムードになっちゃうでしょうが。ほらもう、早速わーちゃんが思いっきり頰膨らましてるし。どっかの生物アーカイブで見たけど、フトアゴヒゲトカゲ級に怒ってるぞ(※怒ると本当に頰を膨らますトカゲです)。
やれやれ、俺の入院生活も退屈しなさそうだ。”いろんな意味”で、だが・・・。
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それからの二週間は実に波乱まみれの入院生活だったと言える。
なにしろ事あるごとにスケアクロウとわーちゃんが睨み合いを繰り広げるのだ。片や俺との誓約を望む人形、片や俺と協力して仕事してきたパートナー。互いに譲れないものがあるかの様に、二人の仲が深まる兆しは一向に見えなかった。
スケアクロウは俺とわーちゃんが誓約を結ぶんじゃないかという事を危惧してるのか、やたらと彼女に対する当たりが強い。わーちゃんもわーちゃんでスケアクロウの事が気に入らないらしく、スケアクロウが発したちょっとした挑発にすぐ乗っかってしまう。その先の展開はもちろん、両者のバトルスタートである。いやなんでだよ・・・。
しかし、そのバトルの内容が面白い事にご飯の早食い競争だったり、200mを全力疾走しての競争だったり、どっちの方がハードル走で早く走れるかとか、牛乳もどきを飲みながらゴールを目指すレースとか、俺が思ってた相手を殴る蹴るのバイオレンスバトルと比べりゃ実に平和的な方法で競い合ってるのだ。
どっちもどっち、こっちが勝てばあっちが勝つ。両者一歩も引かない勢いでとにかくいろんな事をいろんなルールを交えて勝負し続ける事二週間、こなしたバトルの総数は200を超える。
短い期間とはいえそれだけの数の勝負を競い合い、しかも互いに一歩も譲らなかったとなれば、だ。勘の良い諸氏はどうなるかの結果はもう分かると思うが敢えて言おう。
二人の『心にあった互いの固く高い壁が取り払われ、二人は互いに認め合う親友になった』のである。You何言っちゃってんの?と思うだろうが安心してほしい、ありのままを言ってるはずなのに俺も何言ってるのかよく分からない。
互いの壁が崩壊する一番のきっかけになったのは、チェックポイントで大量の牛乳もどきを飲みながらゴールを目指すという勝負。
このご時世、乳搾りができる乳牛の数自体が少ないため、本物の牛乳は1リットル集めるだけでも中々値が張る高級食材である。高すぎて早々手が出せる代物ではないため、それを(本物と比べれば)比較的低価格で再現した牛乳もどきと呼ばれる飲み物が世間には出回っているのだ。これもまあまあ高いんだけどな。
そんでもって色々競い合ってる二人を見た俺の担当医、にゃははんと笑いながらなんと”自らのポケットマネーで”牛乳もどきを取り寄せたのである。それも、この一昔前のバラエティテレビ番組で使ってた様な大量のそれを。
曰くグリフィンから高給を貰ってもあんま使い道がないとの事。二人が面白いことをしてて続きを見てみたいと言ってたが、だからって自分の楽しい事のためだけに取り寄せるか?? こんにゃろうは入院初日に”この俺の頭のネジが外れてる”とか言ってくれたが、頭のネジが外れてるのはむしろコイツなんじゃないかと思う。
まあそんなわけで開催された牛乳飲みレース。両者ともにやる気十分覇気MAXな状態でスタートしたのだが、まず最初のチェックポイントで500mlの牛乳を早飲みして次へとダッシュする。そんで次のポイントで同じ量の牛乳を早飲みしてまた次へ・・・となるはずの流れが、二個目の牛乳に口を付けて暫くした頃に変わった。
具体的に言うと、二人ともすっごく気持ち悪くなったらしい。見るからに胃へ流し込む(人形が有機食品をこんな大量に飲み込んで良いのかという疑問はあるが)スピードが低下し、お互い気分の悪い状態でも隣には負けねえとなんとか気力で飲み干す。
先に飲み終えたのはスケアクロウで、なんとか走り出し次のポイントへと向かう。が、数歩駆けた所で突如止まって前かがみになると、聞くに堪えない呻きと一緒に口から”キラキラ”を吐き出してしまう。
その隙に追い抜こうとわーちゃんが駆け抜けていくのだが、彼女も追い抜いて少し駆けたかと思えば口を手で抑え込み、ヤバイっという顔をした直後にそして”キラキラ”を発射した。
美少女の姿をとった人形が口元首元を牛乳まみれにしながらひたすら駆け抜け、チェックポイントで含んだ牛乳を駆ける最中に”キラキラ”させてしまう残念すぎる姿。おまけに、出資者となったこの医者が面白おかしく「I.O.P. 対 鉄血のバトルをやるよー」なんて触れ回ったせいで、レースの会場となった多目的ホールには入院してる患者や非番の職員に警邏担当の人形たちまで勢揃い。
終いには、二人のレースで初っ端から最後の最後まで”キラキラ”の大量放出が行われたせいで観客一同大爆笑。腹千切れるんじゃねえかと思うくらいの笑いの渦である。俺はあまりにも見てられなさすぎて・・・ごめんなさい嘘付きました、クッソ面白かったですハイ。
ちなみにレースの結果は二人とも息絶え絶えになって、最後必死に這って這って這いつくばってなんとか手を伸ばし、ゴールの線を越えて終わった。しかも二人同じタイミングで手を伸ばしての同時のゴールインである。ビデオ判定でも判別できない程の揃った動きでゴールしており、実はキミらもう仲良いんじゃないのと思った。
そんな、乙女のプライドもクソもねえ大爆笑の牛乳レースを終えて以降、彼女らの心のうちにお互いを認め合う気持ちが出来たようだ。
二週間の俺の入院生活の間繰り広げられた数々のバトル、スケアクロウがあれこれ彼女に悩む時間すらも与えなかったせいで、結局わーちゃんのメンタルケアについてはほとんど俺の出る幕無くして退院することとなってしまった。
やったことといえば、精々がスケアクロウの勝負に負けた時に肩や背中をさすったり、頭を撫でたりリボンを結び直してやったりした程度である。スケアクロウ7割の俺3割くらい? もっと俺の割合低いかも? 仕事しないオーナーでごめんなさい。
・・・え? 俺は一ヶ月は入院してるんじゃねえのかって? 俺の体を舐めるなよ。ずっと寝てりゃこんなもん二週もありゃ治るのさ。俺の体は特別製だからな、なんてね。
そんなわけで退院の日。あれだけムッスーとお互いを威嚇し合ってた二人が熱く抱擁を交わしてる所である。あっれー???
「最初はアンタの印象は最悪だったけど、今はなんだか親友って感じがする。それに、アンタと色々やってる内に勝負するのがすごく楽しくって上向きになれてる私がいて。あの時のことは怖かったけど、でもここでアンタと再会した時よりは気持ちが楽になったわ」
「私のやつ当たりにそう言ってしまうあたり、貴方はマゾなんですの?」
「違うわよ!?」
速攻でツッコむわーちゃんの様子を見て、完全克服にはまだ時間が必要かもしれないが、だいぶ気持ちが楽になったという様子が感じられた。
なんだかんだ良いライバル?が出来たようで何よりだ。
「レイ!」
「ん?」
スケアクロウとの抱擁を終えたわーちゃん、俺の名を呼んだかと思うと、なーんと俺の体をホールドしてくれたったい。今生の別れって訳ではないが、一応お別れの言葉は伝えないとな。
「・・・またね」
「・・・ああ。元気でな」
「フフ、スケアクロウになんとしてでも一勝をもぎ取ってやるまで死ねないわ!」
「何度でもコテンパンに叩きのめして差し上げますわ」
「同じ回数だけ私に負けてるアンタが言うな!」
「なっ、むぅぅぅ!!!」
先ほど抱きしめ合ってた仲なのに早速睨み合いが始まる。オイオイ、いつまで喧嘩するつもりだよ・・・。
両手をパンパンと叩き、ここにいるもう二人の人物たちにも挨拶をする。
「初日に頭のネジが外れてるとか言われたことには頭に来ましたが、何はともあれ、治療してくださってありがとうございました」
「良いよ別に。こっちもそこのお二人さんの”キラキラ”が見れて楽しめたから」
「「うっ・・・」」
乙女らしくない姿を晒した牛乳レースに思う所があるらしい二人、一斉に言葉を詰まらせ顔を赤らめる。
「君が居なければ、我々はもっと大きな被害を被っていただろう。それに以前から何かと世話になっている、そんな君に恩を返すのは当然だ」
「恩も何も、アンタと俺の関係はビジネスパートナーでしょうが。受けた依頼に対する正当な対価を貰ってる以上、貸し借りの関係はむしろ俺が借りを受けた間だと思うが?」
「それだけ私が君を高く買ってるということだ。この度は無茶をさせて申し訳なかったが、できれば是非これからも良好な関係を続けていきたいものだな」
「同感だ。グリフィンを敵に回すなんてこと、考えたくもねえ」
握手をかわしつつ、互いに高笑いをする。・・・この強面でこの笑い方してるのを子供が見たら絶対泣くな。
さて、医療費の支払いは依頼を受ける時に提示されていた”特別手当”を割り振ることで解決しているし、あとはオンボロに乗ってねぐらに帰るだけだな。
スケアクロウがサイドカーに乗り込んだのを確認し、エンジンキーを入れてセルを回した。
ああ、久方ぶりに聴くこの重低音・・・。Nero Lichtstrahlのこの5.2Lエンジンのアイドリング音・・・あぁ〜。
「レイ?」
「おっとすまん。それじゃあ三人とも、また会う日まで」
「今度は無茶な動きをするなよー」
「またよろしく頼む」
「じゃあね!」
それぞれの見送りに手を挙げて答えると、アクセルを回し加速する。
病院から寝ぐらまではそれほどの距離はないが、久方ぶりの運転の感覚を取り戻すために少しだけ本気出して動かすか。
と、その前に言うことがあった」
「スケアクロウ」
「なんですの?」
「ありがとな。わーちゃんのために親身になってくれて」
「・・・別に、貴方と誓約するなんてこと言い出したのが気に食わなかっただけでしてよ。しかも、当人は伝えた気になってたけど実際は欠片も伝えられてないなんて、どんな笑いのネタでしょう」
なんて口で言いながらもプイッと横を向くスケアクロウ。ミラー越しにチラ見すると耳が若干赤い。照れてるな。
「それと、俺の無茶にも付き合わせてごめんな。色々とキミには助けられてばっかりだな。・・・こんなパートナーだけど、これからもよろしく頼むぜ?」
久しぶりと言えばこのルーチンもそうだな。
左腕を伸ばし、握り拳を作る。スケアクロウはフヨフヨと浮かんで右腕を伸ばし、正面から拳をコツンと当てた。
長くなったが、わーちゃん達ライフル救出任務は一応締まりの良い段階となった。ここから先は、彼女達が前を向けるかどうかだが・・・。
「わーちゃんはもう大丈夫でしょう。何かあれば、貴方の端末にメールを送るよう伝えてありますし」
「ちょっと待て、俺の端末のシグナルコードをわーちゃんに教えちゃったの?」
「別に、困る事でもないでしょう? それに、ライバルとフェアになるためですもの。このくらいは許して”ちょうだい”な」
「・・・さりげなーくスケアクロウが俺との心の距離を縮めようとしてる事には、何かリアクションしたほうが良い?」
「そういう事を口にする時点で−273.15点ですわ。つーん」
「・・・その点数ってもはや絶対零度じゃねえか」
拗ねちゃったスケアクロウは再びサイドカーに座り、いつぞやのタバコ事件の時のように拗ねる。いやキミだから、その座り方するならスカートの下の布も抱えなさいって。白い中身が見えるんだって。
「・・・スケアクロウ、前にも言ったけどその座り方して俺にパンツ見せたいわけ?」
「つーーーん!!!!!!!」
サイドカーとしては珍しく、この巨体ゆえに人が寝れるスペースもある我がオンボロのサイドカー。大きな声でつーんと言い直したスケアクロウさん、中で寝っ転がってしまわれた。・・・え、不貞寝?
この事象から現時点でわかる事、彼女の機嫌が直るのは当分先である。
入院して退院!
さすがに入院生活の事まで細かに書いてたら終わらない・・・
一応今回で胸糞悪いお話の続きの展開は〆となりまして、一話完結的な感じの流れに戻って行きます。
ちなみに今更なんですけど、この話を完結させるの100話じゃ全然足りない予想なんですよね(震え)
P90に名前を付けるとしたら?
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そのまま『P90』でいんじゃね?
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『ナインティ』でいんじゃない?
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ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
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いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
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良いアイデアがあるから感想に書くぜ