裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
いろいろ様、ワガママにおつき合い下さり誠にありがとうございます。
今回の設定は前回のコラボ回と同様。そこに加えて『スケアクロウのビット強打を経験済み』という要素がありますが、あくまで本編との直接の繋がりは無いです。
クリスマス回(大幅に遅刻)の内容に合わせて書いた内容ですので、よかったら見ていってくださいね。
喫茶鉄血『https://syosetu.org/novel/178267/』の方も皆様、よろしくお願いします。
19/12/28 タイトルの話数が間違ってたので修正
「・・・前にも似たような経験があるんだが、ここどこだよ」
寝ぐらでいつものように寝ていたはずの俺たち。だが、気付けば夕暮れの草っ原ど真ん中で仕事着の姿で倒れていた。スケアクロウも同じように、しかもオンボロまでいる。
腰にはP90がクリップに装着され、満タンの予備弾倉が複数ある。Five seveNもホルスターに入っていて、一体全体なぜこのフルセットでこんな場所にいるのかがまるで理解できない。
ただ、前回とは違って今はそれほど驚きは無い。同じような状況を一度経験しているので、どうしてこうなったという疑問はあれど極端に動転するような事は無かった。
さて、とっくに自分の寝床じゃなくなってるってのに、相変わらず寝息を立てているスケアクロウを起こしにかかる。
・・・本気でびっくりさせると豪速球でビットが飛んでくるからな。丁寧に、優しく目覚めさせる事を心がけるべし。
「起きろ、スケアクロウ」
「・・・んぅ? あら、レイの顔が二重に見えますわ・・・」
「おーきーろー」
ゆさゆさゆさゆさ。
俺の揺さぶるままにゆらんゆらん揺れる彼女の体。どうやら今日はよほど寝つきが良いみたいで、こんなに体を揺らしてもなかなか意識が覚醒してくれない。
「うあーあーあーあーあーあーあーあー・・・」
「おーきーろーってーばー」
・・・完全にうちの姫は眠り姫と化してやがる。
仕方ねえな・・・。
「すぐに起きないと・・・・・・ずーっとここに置いてくぞ?」
「ふあっ!!?」
少しだけ声にドスと圧を効かせた途端、飛び起きた。
その瞬間彼女に頭突きされそうになったものの、なんとかこれを避けてにっこりモーニングコールに入る。
「おはようスケアクロウ。さっそくで悪いが、俺たちはまた原因不明の事態に見舞われている」
「な、何を言って・・・確かに原因不明の事態ですわ」
寝ぼけ頭から覚醒したスケアクロウさん、ようやっと今の状況を認識してくれたようだ。
というわけでまず必要なのは自分の居場所を速やかに把握する事だが、ぶっちゃけ今回に限っては俺も彼女も焦りは特に無い。
「ふむ・・・前に”異世界”に迷い込んだ時も、このような情景の場所で目覚めた覚えがあります。というより、まさしくその場所なのでは?」
「多分そうかもしれない。けど、一応の警戒はしておいた方が良い。前回迷い込んだところと同じという確証が無い以上はね」
「ですわね。では、位置情報の割り出しを・・・目的地はS-09地区ですの?」
「それが一番手っ取り早く情報を得られるだろう。まあもっとも、ここまで野放しの自然がまともに生きてる環境ってのは、あの世界以外には多分ほぼ無いとも思うけど」
「・・・確かに」
俺たちが生まれた世界とこの世界。どこで歯車が噛み合ってどこで噛み合わないか、たったそれだけの掛け違いで未来がここまで変わってしまった二つの世界線。
こうして豊かな自然ってのが、ごく一部の富裕層向けに作られた植物園以外でどこでも見ることができる・・・”あの人”が生きてこの世界に来てたら、どんな顔するんだろうか。
心底、この世界で平和に暮らしている人類が羨ましく思う。
「座標の割り出しが終わりましたわ。やはり、前回S-09地区に来た時とほぼ同じ座標点ですわね。そして世界規模で生きている
ここは前にも来たことのある世界らしい。それでも警戒を完全に解く訳にはいかないけどな。
というのは、ここがもし『喫茶 鉄血』のある世界線”のパラレルワールド”だったら?という事も考えられるのである。
仮にそれがビンゴだった場合、エージェント達がどう反応してくるかも分からない。下手したらこの世界にいる”俺”と対立関係にある世界線だってあるかもしれない。
石橋を叩きすぎて壊しちゃうくらいに慎重派って訳じゃないが、払える注意は全てに払っておいて損は無い。何かあってからでは遅いのだ。
「オーケイ。それじゃあこんな所でひたすら時間潰すってのもなんだし、S-09地区に行ってみよう」
「途中までは私が運転しても?」
「地区に入るまでは頼もうか」
「ありがとうございますわ」
フンスと胸を張り、意気揚々と跨るスケアクロウ。
最近は慣れ始めた頃の気が緩みがちになる段階も越えてきたようで、自身はまだ初心者ドライバーだという自覚をしっかり意識しつつ、臆せず運転に挑戦する姿勢を見せている。
ドライバーの心持ちという点ではしっかり成長してくれている。あとはひたすら場数を踏んで経験を積むことだな。少なくとも1年は先になるが、本格的にオンボロの癖を理解して乗りこなせるようになった暁には、サイドカーを切り離したバイク単体を運転させても良いかもしれないな。
「では出発しますわ」
「安全運転でな」
指示した通りの危なげない運転で走ることしばし、見覚えのある居住区への入り口が見えてきた。
空はもう既に濃紺から真っ黒に染まり、ゲートからチラ見えした地区内部では綺麗なイルミネーションが光を灯している。
まるで聖夜のような飾り付けに、俺は思わずフフっと笑みを零した。
「・・・?」
「いや、こっちはクリスマスって文化もちゃんと生き続けてるんだなと思ってな」
「あぁ・・・そういえば」
改めて見回してみれば、住人の住んでいる家屋にはクリスマスの飾り付けがされている所も見受けられた。
年に一度の聖なる夜、そして
サンタさんからのプレゼントが欲しかったら良い子にして早く寝るんだよ?ってな具合か。
・・・これもまた、平和だからこそ見れる光景だ。俺たちの世界じゃとっくに失われた、尊い光景。
「・・・どうしましたの?」
「いや、なんでもない。さて、運転代わろう」
「・・・一応聞きますけど、私にあの路地をチャレンジさせてもらえたりは?」
「ダメ」
「・・・ぶぅ」
「マスク着けたまま頬膨らましてもあんま分かんねえぞ」
「貴方ははっきり分かってるじゃありませんの」
なんて問答をちょっとだけしたが、実際のところは彼女もあの路地がどれだけ入り組んで狭い構造なのかは理解しているので、多少ふてくされつつも大人しくハンドルを代わってくれた。
さてさてさて、前と違って今回は夜。いつも以上にぶつけねえように、慎重にアクセルになる右手のグリップ、前後のブレーキとなる右手のレバーと右足のペダルを細かく操作していくこと暫し、ようやっと『喫茶 鉄血』がある通りへと出ることが出来た。
・・・あの路地の裏に家持ってる人には申し訳ねえことしたな。
夜中にこんなうるせえエンジン音鳴らしながらゆったり移動されたんじゃ、せっかくの夜のムードも壊してしまってるかもしれない。なるだけうるさくないマフラー着けてるんで、すんませんけど勘弁してくれとしか言えねえんだけどさ。
で、『喫茶 鉄血』前にたどり着いた俺たちだが、入り口に掛けられた札を見て愕然とした。
「・・・CLOSED、ですわ」
「・・・CLOSEDとは、あ〜あ・・・」
一気にテンションがダダ下がりになり、落ち込む。
確かに、考えてみればこの店は喫茶店で、しかもこんな日に夜に来る客がどれほどいるのか?って事だ。お客が家で家族と過ごす日だってのが分かってるんだったら、わざわざ店を開けとく理由もない。従業員も早めに上がらせて、同じようにクリスマスの夜をそれぞれの大切な人と過ごさせるなりするだろう。
ましてや、俺たちの世界とは似ても似つかぬあのエージェントなら、きっと尚更そうすると思える。
「ふぅ・・・スケアクロウ。どうする?」
「とりあえず、そこの公園で時間を潰しましょう。私、なんだかんだ言っても元の世界で公園というものをこうして間近に見るのは無かったんですの」
「奇遇だな。俺も公園ってもんに縁のねえ少年時代だったよ。ブランコでも乗るか?」
「フフ、昔の日本のドラマでは、よく黄昏てる大人がブランコに乗ってるシーンがありますわね」
「確かにな。ほじゃま、人生初のブランコに乗ってみましょうかね」
遊具の隣にぶら下がる二つのブランコに、二人並んで座る。
キーコ、キーコ・・・。
子供向けの高さに作られたブランコでは俺もスケアクロウもがっつり足が着いてしまう。だから、漕ぐというよりも前後に揺する程度の動き。
それでも上から吊り下げている金具は、金属の擦れる独特な音を静かな夜の公園に響き渡らせる。俺たちの世界じゃ、国の首都のような大規模都市以外ではもう昔のドラマのアーカイブ映像くらいでしか聞けない音。何故かおセンチな気分になれる、不思議な音だ・・・。
真っ暗闇の公園の中央に建てられた一本の灯り。そこから少し離れた所にあるブランコの周囲は、少しだけ暗い。
その中でも彼女の色白な顔はよく映えた。気温も下がってきて、ちょっとだけ頬が赤みを帯びてる横顔・・・。
「・・・綺麗だ」
「ふぇ?」
思わず、俺の感じた想いそのままを口に出してしまった。隣のブランコから、彼女の横顔をしっかり見据えたまま。
うわ、恥っず。何サラッと口説き文句染みたこと唐突に口走っちゃってんの俺。
「ななな、何を言ってるんですのっ!!?」
一瞬ポカンとした直後、俺の言った言葉の意味を正しく理解し、一気に顔を真っ赤っかに染めたスケアクロウ。まるでゆでダコ状態。
よし、このまま揶揄う路線で行こう・・・頼むからこれで誤魔化されてくれよ。
「はっはっは。思った事を言っただけさ?」
「もうっ! いきなり何を言い出すかと・・・あらあら??」
と思えば、急にニヤけ顏になってきた。
なにさ、俺の顔になんか付いてる?
「・・・貴方も恥ずかしがる事ってあるんですのね♪ ほっぺと耳、いつもよりも赤くなってますわよ?」
なんて、心からの笑顔を浮かべて言うもんだから、少しだけ耳と頬に行く血流が更に増してしまった。
あーもう、俺は思春期のガキかっての・・・。年甲斐もなく、彼女の姿に気持ちが動揺してしまう。
とりあえず、今言える事は一つ。誤魔化すのには失敗した。
でも正直に認めるのも照れくさいから、認めもしないが否定もしないというスタンスで返答させてもらう。
「・・・うっせ」
「ふふふ♪」
・・・ちっくしょう、悔しいけどドチャクソ可愛い。
恥ずかしい気持ちで一杯になり、行き場を無くした感情を落ち着けるためにブランコから立ち上がる。
ったく、本当俺のガラじゃねえってのに。30近い歳にもなって未だにこんな感情を知らずにいた事が信じられない。
「レイ」
「うん? ってかスケアクロウ、キミ今俺の名前を・・・?」
ははは、これもこの珍妙な空気が成せる奇跡か?
今まで貴方とか二人称でしか呼んでこなかったスケアクロウが、初めて俺の名前を呼んだ事に驚く。
しかし彼女はそこには触れず、俺に細い手を差し出しながらこう言った。
「ちょっとだけ、公園を歩いてみませんか?」
「・・・ああ、良いよ」
彼女の手を取り、立ち上がらせる。
スケアクロウ、キミほっぺが赤いまんまじゃないか。俺も頬骨が妙に熱持ってるから、多分側から見たら十分赤いんだろうけど。
そのまま彼女の手を握り、公園にある遊具を一つ一つ見て回る。
滑り台、シーソー、登り棒、アスレチックみたいな作りのソレ・・・広い公園の中には子供達がたくさん遊べるように、たくさんある遊具の種類で退屈させないように、大人が子供達の事を一番に考えてこの公園を作ったという事がよく分かった。
遊具の全てにメンテナンスもきちんと行き届いていて、子供達に怪我をさせないようにという気持ちも伝わって来る。
・・・コーラップスが、大戦が起こらなければ、俺も何気ない日常の中でこんな公園で友達と遊んだりしたんだろうか。
たくさん遊んで、学校に行ってたくさん学んで、友達とバカやりながら少しづつ大人になって、好きになったパートナーと結婚したり、子供ができたり・・・。
平和って大事なことなんだな。頭では当たり前だと理解していた筈のソレを、実はほんの一部しか理解できていなかったんだ。
こうして触れて、見て、初めて平和というものがどれだけ尊いものなのかを感じ取れるんだ。
「・・・レイ?」
「・・・なんでもない。そろそろ本格的に冷えてきたろ? オンボロのもとに戻ろう。サイドカーのルーフを閉じれば風除けにはなる」
「・・・ええ」
彼女の手を握ったまま、オンボロのもとへとゆっくり向かう。
普段よりもずっと遅いペースで歩きたい、なんでか分からないけど、そんな気分だったから。
でも広い公園とはいえ、入り口まではそれほど離れている訳じゃない。
すぐにたどり着いてしまった事を少し・・・ほんの少しだけ残念に思いつつ、エンジンを入れるために彼女の手を離そうとする。
「あっ・・・」
名残惜しそうな顔でチラリと俺を伺うスケアクロウに、なんとも形容しがたいムズムズした気持ちが出てくる。
が、その気持ちをどうこうする前に・・・オンボロの死角に隠れていた何者かが突如姿を現した。
「ばぁーーーー!!!」
両手を大きく広げ、いないいないばぁ!の感覚で驚かそうとしてきた人物・・・というより人形。黒と白のモノトーンのコートを纏い、黒い長髪のサイドテールに人間らしからぬピンクに輝く瞳をもつ彼女の名は・・・
「・・・アーキテクト」
「むむむ! 私の事を知ってるとはさすがスケアクロウのボディガードさんだね! こんなとこに路駐してどうすんの? 公園にいても寒いだけなんだし、ほらほら早くお店に入りなよー!」
「「うわうわうわ!!?」」
ってうわっ! 強引だなオイ!!
彼女のこのゴーイングマイウェイさは世界を跨いでも変わらないらしい。
ってか、俺がスケアクロウのボディガード??? 一体なんの話をしてるんだ。
真っ先に聞きたい質問が浮かんだが、それを問いかける間も無く『CLOSED』の札が掛けられた扉を堂々と開け放つアーキテクト。
すげえなこの胆力と度胸、身内だから多少のやんちゃはOKってか。そしてパワーもすげえなオイ。この扉結構重量あるハズなのに、吹っ飛ぶ勢いで開いたぞ。
無論、店じまいしたにもかかわらずそんな力でいきなり扉が開けば、当然中にいるエージェント達は驚く。
ビクんと露骨に肩を震わせ、拭き取ってる最中のグラスも取り落としそうになっていた。この世界のエージェントが・・・これはこれで珍しい絵だな。
「アーキテクト??? 何の連絡もなしにいきなり・・・あら? その頬骨にある傷、もしかして”異世界”のレイさん達ですか?」
「あ、ああ。それよか、グラスは平気か?」
「ええまぁ。・・・どこかの誰かのせいで、危うく割ってしまいそうでしたが」
ギロリとアーキテクトをチラ見するエージェント。
おぉー怖っわ。鉄血最強のハイエンドは伊達じゃねえ。そして静かに目が語っている。『後で覚えておくように』と。サァーっと青ざめたアーキテクトは脱走を図ろうとするが・・・。
「ぎゃっ!?」
「とりあえず、逃がさない様に協力させて頂きますわ」
飛んできたスケアクロウのビットがアーキテクトのつま先に突っかかる。突然現れた障害物にアーキテクトは対応しきれず、転倒したところをあえなくイエーガー達に御用となった。
うん、流石にあの扉の開け方は親しき仲でも駄目だと思う。ウルウルと助けを求める目で見てきたけど、俺には何もできません。
無事妹?の行く末を見届けたエージェントは、こちらを見るなりクールな微笑を浮かべ一言。
「・・・とりあえず、帰るタイミングが来るまでここで何か飲んでいかれますか?」
皿洗いを手伝う事を条件に、お言葉に甘えさせていただく事にした。
もう少し続きます。
しかし・・・本当年末年始関係なく忙しい仕事だぜい。