裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 再び一週間以上もお待たせしまして、楽しみに待って頂いている方には申し訳ありません。
 どうにもPC開いて執筆っていうのに気分が乗らない日がここの所続いております。そして急な気候の変動で体が”だる重〜”になってる今日この頃、皆さんも体調管理にはお気をつけください。

 そろそろ、物語の流れが変わります・・・。


(追伸:それはそうと、前話の『-30-』の内容に修正と追記を入れましたので、こちらより先に前話を読んで頂けますと幸いです)


-31-歯車は回り始める ~A gear begins to turn~

 

 

 真っ暗な部屋。

 中央の証言台を囲う様円卓状に並べられたデスクに備え付けられた、資料を読むための小さな照明のみが光源としてこの空間に僅かな光を灯す。

 

 証言台に立つ男、鉄血工造第三兵器産業廠工場長『ルード・ジーバン』は自らを囲うデスクに座する者たちに鋭い眼光を浴びせられ、人生で経験したことのないほどのプレッシャーを感じていた。

 

 

 ここは鉄血工造本社(SANGVIS FERRI HeadQuarter)。その内部にある、社長含め上層部が使うための専用の会議室である。

 本社建屋のどこにこの空間があるのかは極秘。その上、この部屋のあるエリアへ立ち入る際には数度にわたるボディチェックとX線による手荷物検査、さらに武器だけでなく、例えばコンタクトレンズ型の盗撮カメラ等のスパイ機器などを仕込んでないかどうかといった、徹底的な検査を行った上で初めて立ち入りを許可されるという、鉄血にとって文字通り心臓部となるエリアにこの部屋はある。

 

 もちろん、このような強力なセキュリティーをわざわざ展開しているのにも理由はある。

 三次大戦が起こって以降、現代における反人形派体制およびその過激派がいずれ現れることを見越していた鉄血の経営陣は、会社が有する設備の中にこの様なシークレットスペースを複数用意し、彼らにとって最優先のターゲットとなるであろう自分たちの命を守れる様に図っていたのである。

 現に創業から今日に至るまで、シークレットスペースを設けていた設備のうち数箇所が、これら敵対勢力と思しき存在によって破壊もしくは機能停止に追い込まれている。もっとも、敵対勢力の攻撃はこの隠された空間を主目標として狙ったものでは無いため、この損害についてはこのご時世”よくある出来事”として処理されているのだが。

 

 

 さて、普段は第三兵器産業廠に勤めるルード工場長が鉄血の心臓部へと馳せ参じた理由はただ一つ。社長以下上層部から緊急の召集令が発せられたからに他ならない。しかもそれは他の施設長達と共に揃って会議をするというようなものではなく、自分ひとりに対してこの命令が下されたのだ。

 すなわち、普段は安全上の理由もあり表に姿を見せない上層部が自分ひとりに用があるというイレギュラーな事態であり、ルード本人はこれから自分はどのような処遇をされるのかまったく見当もつかなかった。

 

 

「・・・それでは、ここにいる我々は中央に立つ彼も含め、皆多忙な身である。そろそろメインの議題に入ろうと思う。ルード工場長」

 

「はっ」

 

 

 円卓の中央、社長のみが座ることを許された椅子に腰掛ける『イヴァン・リューリカ』という男が、ルードに一睨みを利かせつつ静かに彼の名を呼ぶ。

 

 

「我々が君”だけ”を呼び寄せた理由は他でもない。我が社においてエンジニアとして最も多大な貢献をしてくれている君だからこそ、聞きたい幾つかの事項があるのだよ」

 

「恐れながらリューリカ社長、その幾つかの事項とは一体・・・?」

 

 

 自分の首が掛かる様なことで呼び出された訳ではないことに少しだけホッとするルード。しかしその一方で、自身に訪ねたい事があるのであればテレビ会議という手段を使ってやり取りする事も可能なはず。わざわざ自分をこの場所に直接招いたという事は、万が一にもネットワーク回線から情報が筒抜けになる事を排除するためか。

 それほどまでに他者に聞かれたくない話・・・もしかして自分は今、人生の岐路に立たされているのではないだろうか。額から一筋、冷や汗が流れた。

 

 

「フフフ、そう緊張する事はない。我々は今から話す事に対して、君の”意見”を聞きたいだけなのだよ。決して取り繕う事なく、君が感じ思うありのままのそれを正直に言ってくれたまえ。それさえ守ってくれれば我々が君にいう事は特にない」

 

 

 取り繕う事なく正直に思った事を言え?

 果たしてこれを額面通りに取るべきか、それとも聞かれた事に対して経営陣が好むであろう取り繕った答えを返すべきか、自分も腹芸を必要とされる立場に就いてそれなりに経つ方だが、この時ばかりはどちらが正解なのかは皆目見当も付かなかった。

 解答を間違えれば、下手をすれば己の首が飛ぶやもしれない。鉄血なんて単語を社名に加えている通り、この会社の経営陣らに情というものを求めてはいけない。

 

 だが・・・取り繕うなというのであれば、私も腹をくくって聞かれた事に対して正直に話そう。その方が、嘘をついてるのが見破られるよりは堂々とした態度でいられるだろう。ルードはそう決意し、相対する社長に承諾の意を返す。

 

 

「結構。では単刀直入に言おう。我が社では近々、製造している”全ての人形のAIを総括するマザーシステムを導入”する」

 

「・・・は? い、いま、マザーシステムと、仰いましたか?」

 

 

 マザー、それはすなわち全ての鉄血人形の頭脳とリンクするシステムか。

 

 一体なぜその様な事になったのだ? 指揮官から指示を受け、命令を確実に遂行しなければならない人形のAI構成上、彼女たちの上にマザーが乗って総括するというのは電子的に可能ではあるが、あまりにも唐突にもたらされた話に経緯と理由がイマイチ掴めず、しかもこれほどの重大な事実を仮にも工場長の一人である自分にすら秘匿されていたのもあり、たまらずルードは社長に尋ねる。

 

 

「しゃ、社長! なぜ導入する事になったのか、そしてその意図は何なのかをご説明下さい!」

 

「おや? そんなこと聞かれなくとも君の頭なら理解できると思ったんだがね?」

 

「聞かれなくても理解できるですと? ・・・もしや、I.O.P.に対抗するための切り札ですか?」

 

 

 まるで鉄血の人間なら自明の理だろうと言わんばかりの社長の顔に、ルードは思い当たる節を一つ見つける。

 

 我ら鉄血とシェアを二分するもう一つの人形メーカー、『Important Operation Prototype manufacturing』通称『I.O.P.』。彼らはもともと欧州に存在していた複数の企業が合同出資して誕生した会社であり、元々軍需産業として成立した鉄血とはまた違った方向性で人形製造を展開している。

 しかしこの頃は大手PMCのG&K(グリフィン)と提携を結び、我々のメイン事業として開拓を進める戦術人形の分野にまで足を伸ばしてきていた。経営陣は自ら切り開いてきた市場に、I.O.P.が我が物顔で参入してきたことへ以前から強い反抗心を抱いていたようだが、ここにきてついにI.O.P.を貶めるためのカードを切ろうとしているらしい。

 

 

「左様。あのI.O.P.社、ひいてはその研究チームの主席研究員たる『Dr.ペルシカリア』の存在は、今や我が社にとっては目の上の瘤と言えるだろう」

 

 

 ルードの右側に座する男、経営管理部門のトップに就く役員『アルバート・ロジャース』が口を開く。

 確かに、我が社とシェアを二分するほどまでに勢力拡大を成功させたI.O.P.社は、我々が獲得し得たかもしれない権益の多くを”後出し”で掻っ攫っていった形であるのは事実。

 しかし、本来資本主義のあり方で言えば我々が置かれたこの状況はいたって普通、さらに言うなれば消費者にとっては複数の選択肢から自分が必要とする製品を選択できる環境であり、経営が傾きかねない状況に陥らない限りは別段気にする事でないようにルードは感じた。

 

 だが、ロジャースを始め上層部のほとんどはそのようには捉えていないらしい。

 憎々しげな表情を隠そうともせず、またその声色からもはっきりとした憎悪が感じられた。

 

 

「我ら鉄血の未来を明るいものとするためには奴らの存在は不要。可愛いだけで壊れやすい人形など、今日の荒廃しきった世界で誰が求めている。奴らは消費者の好みに合わせた造形をするばかりで、戦術人形のあり方、今こうしている間にもE.L.I.D.と戦っている軍人(勇士)たちが何を求めているのか、それをまるで理解していない。

 にもかかわらず、ボディや顔の造形美だけで一定のシェアを獲得し、我々が開拓を進めてきた分野にまで踏み入ってこようとするのは実に不愉快極まりない。奴らの存在は我らにとって目障りなのだよ」

 

「・・・」

 

 

 言いたい事は分からなくも無い。が、それだけの事でここまでの激情を宿した経営陣の価値観に、ルードは内心冷え切った思いを感じた。

 彼らの言ってる事は自分や第三兵器産業廠に勤めるエンジニア達・・・いわゆる『Japanimation OTAKU(ニッポンサブカルを愛する同志)』を蔑視している様に感じられたからだ。

 

 確かにロジャースの言う通り、I.O.P.社の作る人形は『高機能だが壊れやすい』という致命的な欠陥を抱えていた事も”あった”。そう、あったということはそれは”過去形”なのである。

 Dr.ペルシカリアが主任研究員としてI.O.P.に先進技術開発チーム『16LAB』を立ち上げて以降、彼らの作る人形は民生用としても戦術人形としても一気に飛躍的な進化を遂げたのだ。

 

 具体的にはエッチング理論といった新規開発の技術を随所に応用することで、ここ最近I.O.P.製の戦術人形は戦場で高い評価を受けている。もともと人間の部隊を中核に運用していたG&Kが戦術人形の採用に踏み切ったことも、彼らにとって大きな転機となったであろう。あのPMCの社長は元軍人なだけあって、戦場に何が求められるか、その移り変わりや流れを読むのに極めて長けた存在として界隈では有名なのだから。

 

 

「なるほど・・・。では、マザーを導入する意図については?」

 

 

 確認のために一応尋ねてみるが、実を言うとルードはこの段階でマザーの導入に踏み切った理由を察していた。

 戦術人形がマザー直轄下の電脳にリンクしていることで、世界中の鉄血人形が獲得した戦闘経験を収集、マザーに蓄積し、膨大なビックデータをもとに最適化処理を施した”高効率な経験値”を、直轄下全ての鉄血人形にフィードバックすることが可能となる。先も言った通り、元々の鉄血人形のAIの構造上その様な運用の仕方も実現できるからだ。

 

 かつて発売当初から高い評価を受けてきたJaegerシリーズを始め、鉄血が送りだしてきた人形の総個体数はかなりの数に上る。

 彼女達一体一体が一回の戦闘で得た経験は少なかったとしても、チリも積もれば何とやら。多くの人形が一斉に経験を積めば、それらは圧倒的な母数のもと見る見る内に積み重なってマザーに蓄積される。それらを処理し、様々な状況・行動や思考のパターン、例えばAの人形はどのように行動した・それに対してBはこうしたという事例も学習し、総合的立場から見て最適化した経験データを現場で戦う全ての人形に還元(フィードバック)する。

 

 この体系(システム)がもし実現しようものならば、鉄血人形の最適化作業は極めて迅速に進み、戦術人形としては他のメーカーの追随を許さない強力な性能を誇る事となるだろう。

 人形である以上、決して無視する事のできない懸念事項さえクリアできれば、だが。

 

 

「その顔を浮かべているということはマザーを導入する意図について、聞かずともおおよその見当はついているのだろう? 私から返せる答えは君の考えている通りそのままだ。

 上位に位置付くAIにビッグデータを蓄積させ、戦場にいる全ての人形たちに最適化したデータをフィードバックさせる。これを繰り返す事により、我が社の人形たちは我々ですらも想像出来ないほどであろう飛躍的なスピードで”成長”する事が出来る。

 もはやI.O.P.を相手に悠長な策で対抗していられる段階ではない。先ほどロジャース役員はああ言っていたがね、奴らが我々の顧客層にも食い込めるだけのマーケティングを展開しているのは紛れもない事実。これ以上穏健的な手法をとり続けていては、今でこそわずかに優位に立っている我が社だが、そう遠くない内に奴らとの立ち位置が逆転しかねないのだよ」

 

 

 厳しい表情でリューリカ社長はつぶやく。中央に立つルードを見据えたまま。

 一方でルードもまた、自身が把握している以上に鉄血の未来が追い詰められかけているという事実に顔を強張らせる。

 

 

「何はともあれ、これはすでに上層部の中で決定事項として扱われていること。すでに賛成だ反対だと決を取る段階には無い。そしてその場に本来いるべきの工場長である君たちを招かず、独自に方針を決定したこと、その非礼を詫びよう。申し訳なかった」

 

「・・・その言い方を聞くに、この度の方針決定はここにいる上層部のメンバーのみで行われたと、そう判断してもよろしいので?」

 

「ああ。少しでも外への情報の流出を防ぎたかったのでね。この一件を進めるにあたり、同時進行で極めてデリケートな関連事項も進めていたものでな。二つの案件のどれか一つでも歯車が噛み合わなければ、その瞬間我々はこの一打を放つことは出来なくなる。それだけはなんとしてでも避けねばならなかった」

 

 

 言葉とは裏腹に、少しも悪いと思っていないような口ぶりで話し続けるリューリカ社長に、ルードは少しだけ眉を顰める。

 

 上層部が決定したこれからの方針は、自分たち現場の作業にも大きな影響が出る重要な事案である。

 それに、たった一つの上位AIに全ての鉄血人形を管理下に置かせるということ。それはすなわち、万が一マザーに異変が起きて暴走しようものなら、その異変が制御下にある全ての人形たちに伝播しかねないという、重大事故を起こすトリガーともなり得るのだ。

 

 上層部がいくらこうするようにと方針を指し示したところで、現場がそれに対応できる準備が出来ていなければ意味がない。先も言った通り、事故が起きれば凄惨な事件に繋がりかねないから。

 そして、実際に示された方向に向かうための作業を行う現場の最高責任者とは他でもない工場長である自分たちであり、情報流出の可能性を極限まで下げたいという思惑はあったにせよ、自分たち工場長という役職者すらも排して秘密裏に舵を切った上層部へ、ルードは不信感を感じずにはいられなかった。

 

 ましてや、これほど大規模な案件を遂行する中で事故を起こさないためには、二重三重、あるいはさらに多くの暴走防止策を講じる必要がある。

 彼女らが強力な兵士となればなるほど、同時に自分たちに敵対した時の脅威度も上がる。もし、鉄血人形の全てが暴走し人類に仇なすような事が起これば・・・想像するだけでも感じた事のない悪寒がルードの身体中を駆け巡る。

 

 

「・・・リューリカ社長」

 

「なんだね?」

 

「方針はあくまで決定しただけであり、実行に移されているわけでは無いのですよね?」

 

 

 会社が舵をその方向に切った以上、ルードは反対するという選択肢を選べない。ならば、せめてプロジェクト実行当初から自身が関わることで、暴走を防ぐためのセーフティープログラムの開発を行わなければ。

 

 

 

 

”自分たちの子供たちが、人類に仇なす存在(災厄)とならないように・・・”

 

 

 

 しかし、現実はルードの想いをせせら笑うかのような形で彼の前に現れた。

 

 

「ふむ・・・。今回君を招聘した全ての”理由”と対面してもらおう。入りたまえ」

 

 

 リューリカが手元の端末を操作するとロジャース役員の後ろにある扉が開き、白衣を羽織った男性と褐色の肌に銀髪の小柄な少女が現れた。

 男性の方は無精髭が目立ち、身なりなどには頓着しなさそうな・・・失礼ながら少々不潔な印象を受けた。一方その後ろをテクテクと歩く少女は額に赤い矢印のようなメイク?タトゥー?を入れ、さらに履いているタイツには鉄血のシンボルマークが白の生地で描かれている。

 ま、まさか、この少女は・・・。少女の正体に思い当たったルードは目を見開く。

 

 

 

 

 

「紹介しよう。長年我が社のために尽力してくれている研究者『Dr.リコリス』と、彼が手がけたマザーシステムのホストとなる人形、コードネーム『エリザ』だ」

 

 

 

 

 

 リューリカは、これまでルードの見た事のないとても良い”笑み”を浮かべた・・・。




 ・・・ここに来て急なブッコミ???(滝汗)

 リコリスの口調が分からねー(それよりもヤバそうなのは、鉄血の上層部の面々を揃って捏造しちまった事かもしれない。やっちまったい)

 余談ですが、鉄血は東欧をルーツとする企業という設定だそうなので・・・。
 東欧って調べてみるとウクライナとかの旧ソ連地域も入ってるんですよね。なので社長はウクライナ人って事にしておいて下さい(やっつけ仕事感半端ないけど許して涙)

P90に名前を付けるとしたら?

  • そのまま『P90』でいんじゃね?
  • 『ナインティ』でいんじゃない?
  • ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
  • いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
  • 良いアイデアがあるから感想に書くぜ
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