裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
最新話、どうぞご覧ください・・・。
19/12/03追記:(多分)原作には登場しないオリジナル武装が出てきます。
19/12/07追記:後書き部分の内容に一部追記しました。
「ようこそ、極限の戦場へ。我々のオーダーを受けてくれて本当に助かるよ」
完全防備の戦闘服に身を包み、顔だけを露出した正規軍人がそう言って俺に握手を求めてきた。
ここは対E.L.I.D戦線の最前線にある簡易基地。指揮所や最低限の宿舎などを纏めたテントがずらりと並んでおり、ここに籍を置く軍人たちは常にピリピリとした物々しい雰囲気を纏っていた。
この拠点のあるエリアはコーラップス汚染度が低いため、人間も外気に自分の顔を晒して活動する事が出来る。だがここより進んだ先のエリアに立ち入れば、全体に蔓延する汚染された空気を吸い込むだけでもE.L.I.Dに感染しかねない危険な場所だ。
完全に地肌が外界から隔離される構造の戦闘服に、気密式の防弾ガラスを黒く塗ったフルフェイスカバー。これらを装着し、自分の得物を持って彼らは”戦場”へと出向く。
そして戦場に辿りつけば、たとえ一筋の擦り傷すら負う事は出来ない。一度でも奴らに傷つけられた者は確実にE.L.I.Dに感染してしまう。その先にある未来は”奴らの仲間入り”のみ。
もはや”生体兵器”といってもいい凶悪な化け物を相手取るにあたり、軍人たちは人との戦いよりも遥かに張り詰めた緊張感を持って臨まねばならず、一切の気を抜く事も許されない。
ゆえに彼らは、自分たちの職場を『極限の戦場』と呼ぶ。
そんなところに俺がいる理由ってのは、もう言わなくても分かるだろうが正規軍からヘルプの要請があったためだ。
過去には何度か(といってもクライアントは”表”のPMCとかマフィアとか、みんな別々だったが)E.L.I.D相手に戦う依頼を受けてきたが、いま目の前に立つ人物・・・この拠点の司令官を務める人物から、直々にギルドへ緊急依頼を回してくるなんてのは、まあ普通に考えてまず有り得ない。
正規軍自体は”表”の存在で、俺やギルドは”裏”の存在。言うなれば捕らえる側と捕らわれる側であり、だからこそ、最前線の軍の重要拠点に”裏”の人間を招き入れる事の意味を考えていた。
テロ組織の車列襲撃にスナイパーとしてヘルプに加わるといった、いわゆる後方支援的役割とは違う。自分たちの大事な拠点に ”裏”の者を招くという事、それが示す答えは一体何か?
つまり、超弩級のE.L.I.Dが現れたか、”表”か”裏”かなんて拘ってられない程に大量のE.L.I.Dが来てる・・・とか、恐らくはそんなところだろう。
となると、だ。
頭の中で手早く情報を纏め、改めて意識を司令官へと向け直す。
差し出された手に自分の手を重ね、にこやかに笑いながら話を進めさせてもらう。
「いえ、こちらこそありがとうございます。さて、現状と依頼の内容を教えて頂けますか?」
さて、この司令官殿は俺に何を望む?
「ああ。それでは現状の方から伝えよう。
実はこの先東に100kmほど行った地点にて、E.L.I.Dの巨大な群れがこちらに向けて進軍してきているのを観測した」
「群れ? 具体的にはどの程度の規模で?」
司令官の顔が僅かに曇った。
・・・まさか、冗談抜きでアホみたいな数で向かって来てるんじゃないだろうな?
「大雑把に数えただけでも恐らく2000はいるだろう。残念な事に、あの辺りはコーラップス以来常に霧が生じているものでね。現時点で得られた情報からはっきりこの程度の規模だと宣言するには、申し訳ないが少々信憑性が薄い。確定的な群れの情報を伝えるにはもう少し奴らが接近してきてからとなるな」
「なるほど・・・しかし、凡そわかっているだけでその規模となると、実戦となればこの基地の戦力を総動員してもかなりのダメージが見込まれるのでは?」
この基地は最前線にあるとはいえ、E.L.I.Dの侵攻を食い止めている基地はここ一つだけではない。正規軍は汚染の酷い地域と軽い地域を区切るラインを設け、それを防衛ラインとして軍事境界線に設定している。
当然だがラインの長さは極めて長大であり、防衛ラインを抜かれないためにはライン上に複数の基地を設け、隣り合ったそれぞれの基地が互いの防衛範囲をカバーし合う必要がある。
この基地も、ライン上に点在する数ある防衛拠点の一つというわけだ。
しかし、このご時世どこの場所だって人手が足りず、正規軍も同じような状況にあるのは言うまでもない。
どの基地も圧倒的に人が足りていない中、彼らは軍用の戦術人形の力も借りつつなんとかして防衛ラインを維持してきたのだが・・・。
一度でも攻撃が掠れば即アウト、しかも一体一体の身体能力が人外級になっているE.L.I.Dがまさか2000体とは、な。
はっきり言って、この基地を防衛し維持するには極めて困難なほどの戦力差がある。しかも大雑把に数えてこの数となれば、実際に戦う頃にはどこまで膨れ上がるやら。
「うむ・・・正直にいって、この基地だけで対抗するのは難しいだろう。しかし、我々の後ろには日々を必死に生き抜いている民間人がいるのでな。一旦下がって、というわけにもいかないのだ。
幸い、群れの構成自体はとても単純でね。今の所という注釈はつくが、そのほとんどがA級の低レベルE.L.I.Dだ。だから基本的には、榴弾や地雷を用いた集団殲滅戦法をメインに、処理しきれなかった個体を射殺していく形となる」
「仰ることは分かりました。それで、俺は何をすれば?」
「君に任せたいのは遊撃手だ。軍からは『メーザーブレード』を支給しよう。それらを使いつつ君のスキルを最大限活用し、出来る限り我々をサポートして欲しい」
「なるほど・・・」
メーザーブレード。
これは現代で主流になりつつあるレーザー兵器の技術を応用して作られたものだ。使用時には非実体エネルギーの刃を展開する武器で、どちらも殺傷能力は正規軍のお墨付き。
長時間展開し続けているとエネルギー切れになるリスクはあるが、その代わり実体ある金属剣とは違い、出力が安定している限りどれだけ斬ってもナマクラになる事がない。使わないときは刀身が消えて柄の部分だけになるため、多くの装備を携行して重量も増える兵士にとってコンパクトにしまえる近接武器はとても役立つ。
デメリットは刀身の具現化を維持するためにエネルギーが別で必要となる事。こいつはレーザー技術を使う関係上、電源からバッテリーを充電して準備完了とはいかない。
詳しい理屈は省くが、とにかくこれ専用に作られた機器を通してレーザーの素となるものを棒状の『パワーバッテリー(役割そのものは充電池と一緒)』と呼ばれる道具に充填し、それを柄の中央に開いた空洞に挿入することで初めて使えるようになるのだ。
レーザー技術自体がそんじょそこらの工場で扱えるようなものではなく、また高い殺傷性を理由に正規軍によって強力な流通制限が掛かっている事もあって、基本的に裏では中々お目に掛かれないアイテムでもある。
ごくたまに
「ブレードの使い方は分かるかね?」
「一応
「結構。我が隊で使用しているのは
よし、借りられるのが比較的使い慣れた武器でよかった。
さて、遊撃手をやってくれという話だが、どこまで突っ込んで敵を始末して良いのかってところだな。
あんまり派手に動き過ぎても反感を買うかもしれない。
ちなみに、今回の俺の立場は表向きには傭兵として急遽雇ったと言う事になっている。なのであんまり活躍しすぎても、軍人から傭兵風情が生意気な!みたいなやっかみを受ける事もあり得なくは無い。実力で黙らせてやるって理屈が通用しない頭でっかちだと尚よろしくない。
報酬を受け取るに値する仕事ぶりを見せつつ、やっかみを受けない程度にセーブしながら戦う、これのバランスを意識して今回のお仕事に臨むとしましょうかね。
「では、我々が展開する作戦の説明に移らせてーー
E.L.I.Dを撃退するための説明が始まった。
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「終わりましたの?」
「ああ、待たせたな」
基地内で俺たちに提供されたテントへ入ると、普段のモノトーンの衣装とは違い、こちらもしっかり完全防備を整えたスケアクロウが浮いていた。
今は首から上の装備は外しているが、戦闘時には当然フルフェイスカバーも被るため、今の彼女は後頭部で何度も編み込んだ省スペース性重視の髪型をしている。
普通は戦術人形であれば汚染地域でも特に防護服などを着用せずとも活動可能なのだが、以前受けたスケアクロウのメンテの際に聞いた話だと、彼女とその姉として生まれたエージェントに限ってはその常識は当てはまらない。
人間と同じように完全防御の防護服を着用していないと、彼女らの人口表皮をはじめボディに致命的なダメージを負うことになるらしい。
最初期に作られたが故、ハイエンドが本気でE.L.I.Dと戦うことはこの当時は想定していなかったんだそう。そういうのは彼女らよりも遥かにメカメカしく頑丈なボディを持った、謂わば軍用人形の仕事だと
なお、スカートの下にパンツ丸見せで展開する武装の都合上、”最初に生み出されたモデル”のエージェントは汚染地域では戦闘不能である。あんな武装の配置をしているせいで防護服を着用できないのだ。
防護服を着るのであれば完全に外界から隔絶する仕様上アームを接続できないし、かといって着なければ何もしなくても彼女にはダメージが積み重なる。つまり、ここに来ちゃダメな子。
「さて、戦況は?」
「普通に考えりゃ今すぐ増援寄越すよう進言するか、犠牲が出ないうちにありったけの地雷を設置して後退するかってとこだな。大雑把に数えて2000はいるなんて言われたが、実際に奴らがやってきたときにその目安の数がどこまで膨れ上がるのか分からんのも気になる。
俺たちには主に遊撃手を任せるとのことだが、まあ全力を出しすぎず、適度に抜きつつ出来る限りの支援を展開するってのが今回の仕事だ」
「全力で向かってはいけないんですの?」
「俺たちは急遽雇われた傭兵って体でここにいるからな。あんまり目立ちすぎてもやっかみを受けるかもしれない。
戦場で味方同士に不和が生じるのは自分の死期を早めるだけだ。余計なタネをわざわざ植える必要もないだろ?」
「それもそうですわね」
そういってスケアクロウは再び仰向けで浮き始める。
・・・せっかく簡易とはいえ横になれるモノもあるんだから、横になって浮くんだったらすこしでもエネルギーを節約したほうがいいんじゃないのか?
もっとも、ゆったり寝っ転がってる時間はないけどな。
「ふむ・・・そう仰るのならば浮くのは止めにしますわ」
「だからなんで俺の考えることがダダ漏れなんだってばよ」
「ぶい」
「いや、ぶいじゃなくてさ・・・」
最近この子の性格が初めて会ったときと比べてだいぶ砕けてきてる気がする。
最初の頃はお互いを知らなくて、知らず知らずの内に壁があったのかもしれない。そう考えるとこの変化は歓迎すべきだろう。
なんて考えてると、テントの前に誰かが立つ気配を感じた。
「失礼します、司令官よりこちらに向かうよう指示を受けましたデュース少尉であります。入室してもよろしいでしょうか?」
「どうぞ」
入ってきたのはまだまだ若いエネルギーの溢れる青年士官だった。パッと見の歳の頃は二十歳に届くかどうかというところか。
まだまだ若いだろうに、その歳で命がけの仕事に身を置いてるのを思うと、世知辛い世の中だと思う。
そんな彼はハードケースを持ってテントにやってきた。中に入っているのは先ほど司令官に言われたメーザーブレードだろう。
強力な殺傷性を持つため、軍内部でもその扱いは厳重に管理されているのだ。
もっとも、裏稼業の人間を秘密裏に基地に招いた挙句重要な装備まで貸してるとあっちゃ、バレたらあの司令官は文字通り首が飛ぶかもしれない程の大スキャンダルだけども。
ちなみに傭兵にブレードを貸与する分には所定の手続きを踏めば問題無いそうだが・・・俺は関知しないぞ。
「我が隊より支給される装備をお届けに参りました。こちらを・・・念のためお聞きしますが、取り扱いについては?」
「問題ありません。この型なら過去に何度か使ったことがあります」
「畏まりました。それでは短い期間となりますが、お互い死なないように”敵”を倒して参りましょう」
「ええ。何かあった時にはいつでも救援要請を。可能な限りお手伝いに向かわせて頂きますよ」
「その時はよろしく頼みます。では失礼します」
爽やかな笑みを浮かべ敬礼すると、キュッと反転しテントから退出していった。
気の良さそうな青年士官である。世が世ならきっとモテたに違いない。
「確かに。周りの女性たちが放っておかなそうですわね」
「人の思考を勝手に読み取るのはいい加減やめなさい」
「ぶいぶい」
「ぶいぶいじゃなくてね?」
「分かり易すぎるのが悪いと思いますの」
「・・・俺そんなに分かり易いの?」
もしそうだとしたらこの先裏でのお仕事に影響が出かねないぞ。
感情と表情が一致しちゃったら、化かし合いなんて絶対できないんだから。
「ご心配なさらず。普通の人間や他の人形にはまず分からないでしょう。私たち鉄血姉妹にとっては分かり易いという事でしてよ」
「・・・それはそれでなんだか複雑な気持ちだよ」
「つーん」
「なんで?」
おかしなところで微妙に拗ねちゃった?スケアクロウだが、すぐにクールな佇まいに戻り、先ほどの士官が残したハードケースへ視線を向けた。
「私たちもそろそろ、実戦に出る用意を整えるべきですわね」
「おう。自分の会社んとこの武器の使い方は分かるか? ビットが万一使えなくなった時に備えて、ブレードは持っておいて損はないと思うぞ」
「ええ。当然使い方はきっちり記憶しておりますが、私の戦闘コンセプトを鑑みれば尚の事『備えあれば憂いなし』ですもの」
「違いない」
ブレードを出す柄の部分を腰に差し、エネルギー切れになった時のための予備のパワーバッテリーを3本。
加えていつものメインウェポンであるP90とFive seveNのセットを装備し、フルフェイスカバーを装着する。
余談だが、俺たちの着ている戦闘服には首の周りに連結器のような機構があり、カバーにも同様に着いている機構と噛み合うように被ってロック。連結機構内の空気が抜ける音と共に、互いの接続を完全に固定して装着完了となる。
「さて、行くか」
「行きましょう。背中はお任せを」
「頼もしいね」
テントを出た俺たちは、汚染地域の方に設けられたゲートへと向かった。
「しかし、これで良かったのでしょうか?」
「なにがだね?」
「普通は順番通りに番号の若い方からやっていくものでは?」
「なに、そうおかしな事でも無いさ」
「・・・?」
「我々の目指す未来へは、皆が足並みを揃えてたどり着かねば意味が無いだろう?」
「足並み揃えて・・・ですか」
「ああ」
「それを聞けば、彼からは大反発を受ける事になるのでは?」
「我々の行く末は我々が決めた。そこに異論を挟まれる筋合いは無いよ」
「まぁ・・・あなたがそう言うなら。私はあなた方の望むようにするだけですから」
「結構。そのように進めてくれたまえ」
「わかりました」
カチリ、歯車が一つ進んだ。
P90に名前を付けるとしたら?
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そのまま『P90』でいんじゃね?
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『ナインティ』でいんじゃない?
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ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
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いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
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良いアイデアがあるから感想に書くぜ