裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 最近一週間に一回の投稿すらも出来てなくて、本当に申し訳ございません。
 自分のペースでやればいいとは分かってるんですが、週一って実際問題一月に4本前後しかお話書いてないって事になるんですよね。それって投稿ペースとしては遅くね?って思ってしまって・・・
 結局そう考えて焦りだすから話頭の中で纏まんなくなってっていう悪循環に陥る訳ですが(涙)

 という事で最新話となります。
 例によってレイさんのやり口がかなりムッチャクチャですが、描写の方については勉強させていただきます(大汗)。

 ちなみに今回は久々の9000字オーバーとなりますので、スマホ閲覧の方は特にそうですがお時間のあるときにお読み下さい。


-35-汚ねえ花火を打ち上げローン

 

 

 

 ドシンドシンと、地面を踏みつける音が段々近づいてくる。

 体長は5m位、体重はもしかしたら1t近い? 最初にC級E.L.I.Dを見つけた兵からは、そのような情報が引き続きもたらされていた。

 

 地雷原の踏み残しがボンボン爆発する音が聞こえるが、それに反して足音のリズムが変わってないのを聞くに、やはりA級相手を前提に敷設された地雷ではC級への有効打にはなり得ないという事なのだろう。

 

 やがて電気柵を無理くりぶち抜いてきてるのか、電線が引きちぎられてバチバチショートする音が聞こえ、かと思うと今度は足元の邪魔臭いバリケードをどこかに投げ飛ばしている。見覚えのある障害物がひゅーんとあちらこちらに飛んで行ってら。しかも着地点はバッチリ兵が控えてる所を狙ってやがる。

 案の定そこにいる兵士たちは即座に退散するわけだが、落下したバリケードが設営していた擲弾砲や弾頭に衝突したらしく、そこかしこで地雷よりも大きな爆発が起こる。

 

 ・・・オイオイオイ。

 

 

 どういう理由かは不明だが、このC級E.L.I.Dは遠隔地から攻撃を行う拠点の位置を把握できているようだ。おかげで次から次へと擲弾砲を設置している場所が吹き飛んで行ってるのが分かる。

 ちくしょう。援護射撃の一つでも要請しようかと思ってたんだが、少しばかし計算が狂ったな・・・。

 

 

『聞こえるかレイ!』

 

「司令官殿、どうされました?」

 

 

 俺がC級と対峙するという報告を受けたのだろう。クライアントでもある司令官が直接俺に無線を飛ばしてきた。

 

 

『どうされたも何もない! 早くそのE.L.I.Dから逃げろ!』

 

「まだ出来ることを全てやってないのでお断りします」

 

『はぁっ!? 君は何を言っているんだ!』

 

 

 言ってる意味がまるで理解できないと声を張り上げる司令官。当然の反応だな。俺自身が部下の軍人じゃないから、尚の事そう感じるはず。

 俺だって司令官の立場だったなら多分同じように思うだろうし。

 

 だがね・・・。

 

 

「ここを抜かれたら後ろの民間人に被害が及ぶと言ったのは司令官殿でしょう? それに、C級相手ならまだ何とか出来ます。もっとも、あれを倒すには正規軍の皆さんの協力が必要不可欠ですが」

 

 

 今日を必死こいて生きている連中を、何もかもを破壊し尽くすE.L.I.Dの攻撃に巻き込む気はさらさら無い。

 出来る手は全て打ち尽くしてそれでもどうしようも無かった時は諦めるが、まだその手を一つも打ってないのに引き下がるってのはちょっと違うだろ?

 まあ、裏稼業のまともな考え方する人間ならこの時点でとっくにバックれてるだろうけど。

 

 

『・・・本気か?』

 

「ええ」

 

『・・・分かった。総力を挙げて君に協力しよう』

 

「感謝します。まず、他の基地からの増援の要請をお願いします。出来ればC級を倒せるくらいの機甲部隊だとありがたいです」

 

『要請してみよう。ところでそれは、C級を倒したあとのことを想定してか?』

 

「ええ。既に報告が上がってるかと思いますが、C級は擲弾砲陣地へ次々とバリケードを放り投げて潰しています。A級の行動を制限する障害物をC級が掃除していっている以上、C級を倒した後も、A級が防衛ラインを突破する前に一刻も早く撃退せねばなりません。

 強い力はあっても困ることは少ないですが、無いと物凄く困る。それだけの強力な戦力を投入する理由には十分かと」

 

『分かった。とにかく、まずはC級を倒すのに必要な支援があればいつでも連絡を。状況に応じて直ちに遂行させてもらう』

 

「ありがとうございます」

 

 

 さーてと、ひとまず支援の約束は取り付けたとして・・・。

 

 

 

 

「ゴォォォォォォォアアァァァ!!!」

 

 

 やかましい咆哮を上げながら数々の障害物を強引に突き抜け、遂にC級E.L.I.Dが姿を現しやがった。

 ガッチリとした体格に膨れ上がった四肢の筋肉。巨人と言っていいサイズであること以外は、体の作りは人だった頃とあまり変わらないらしい。

 

 ただし、禿げた頭部のみは人の面影を残していなかった。

 頭頂部から真っ直ぐ円錐状に伸びる黒い角、大きく開く口から覗くは二本の牙。

 極め付けに、まるで数珠繋ぎのごとく左右の耳を線で結ぶように隙間なく眼が形成されている。今俺の見えている範囲から分かるだけで7つも眼を持ってやがる。

 

 もしかしたら、それぞれの眼が人の目では捉えられない情報をキャッチすることが出来るのかもしれない。

 擲弾砲の砲身の熱量や紫外線や、果てには電波も見えてたり? それならピンポイントでバリケードをぶん投げられるのも説明できる。

 

 いずれにせよ、何の前触れもなくいきなり出くわしたら間違いなくトラウマになる外見だ。

 あんなムキムキの手足からどれだけのパワーの一撃が飛んでくるやら・・・。

 

 

 ブレードの刃を現出させ、刃先をE.L.I.Dへと突き付ける。

 

 

「ようバケモン。しばらく俺が相手になってやる」

 

 

 返事は左耳の隣にある眼が繰り出した、あまりに格好良く決まり過ぎてて腹立つくらいキレイなウィンクだった。それはもう、とてもとてもムカつく程に。

 

 

「あ? ・・・ッ!!?」

 

 

 なんだこいつと間抜けな声を上げた刹那、ゾクリとしたものを感じて咄嗟に飛び退く。

 次の瞬間、俺の立っていた場所が爆ぜた。

 

 うっそだろオイ・・・ウィンクで爆発ってどういう事だよ。

 

 と思ってたら腕のフルスイングが飛んできた。

 前転して回避し、その勢いのままダッシュしかけたところへ今度はさっきと対の位置にある眼からウィンク。眼を瞑る直前に見ていた先は俺が二歩目に足を着ける辺り。

 無理くり右足を軸に体を横へ蹴飛ばすのと同時にまた爆ぜる。回避行動をとった直後に爆発したため距離が近く、爆風を完全には躱しきれず少々吹き飛ばされた。

 

 

「ぐっ」

 

 

 地面に叩きつけられ、肺から空気がいくらか押し出される。だが衝撃自体はそれほど強いものではなく、すぐに息を整えられた。

 即座に立ち上がり、その体のどこかに弱点となりそうな部位が無いか、ヤツをなんとかするためのヒントを見つけるためにE.L.I.Dの周囲を駆け抜ける。

 

 

 だが、自分の周囲を走り回る俺の存在を鬱陶しく思ったE.L.I.Dは、一秒にも満たぬ時間で両腕を真上に上げ、一気に振り下ろした。

 

 速さと質量ともに強大なエネルギーで振り下ろされた腕は、地面に大きな打痕を形成するのと同時に立ってられないほどの衝撃を周囲にもたらす。

 

 

「うわっ!!」

 

 

 繰り出された地震に耐え切れずコケてしまう。その拍子にブレードも手放してしまった次の瞬間、ヤツはこれを狙ってたようにウィンク、またウィンク、さらにウィンクを重ねる。

 とにかくあの爆発をもろに食らうわけにはいかない。少しでも爆発から離れるため、倒れたままの体勢で横に転がり続ける。目が回るとか考えてる余裕は無い。

 

 数瞬遅れて爆発。ボンという重たい破裂音が三度に渡り響く。・・・なんとか避けきれたらしい。

 土埃を払いつつ、苛立った様子のE.L.I.Dを睨む。

 

 E.L.I.Dが俺へ向けて眼を瞑った直後、頭上から三本のレーザーがE.L.I.Dを囲う様に降り注ぐ。目の前にいきなり落とされた光の柱にE.L.I.Dは怯み、周囲をキョロキョロと見渡す。

 ・・・よし、スケアクロウが戻ってきたか。

 

 

「お待たせしましたの! 希望の品はここに!」

 

「ナイスタイミングだ、スケアクロウ!」

 

 

 彼女はありったけという俺のオーダーに備え、バラではなくなんと弾薬箱ごと浮かしてここに持ってきてくれた。さすが、1t超えのオンボロを浮かせられるだけはある。このくらいの重さならへっちゃららしい。

 弾薬箱の型番、サイズ、そしてその中に入る量から考えて、これだけあればなんとか出来そうな気がする。

 

 残る問題はE.L.I.Dとの間に落ちているブレード。

 あれを回収しないと、俺がアイツにまともにダメージを与えられない。

 

 だが、たった今戦える人員が一人増えた。一人でやるのと二人でやるのとじゃ戦いの進み方は全然違う。

 単純に手数が増えるだけだが、その差は極めて大きい。

 

 

「スケアクロウ、援護を頼む」

 

「お任せくださいな」

 

「フフ、頼もしいね」

 

「ヴオォォォォォォォォ!!!」

 

 

 突如、E.L.I.Dは雄叫びと共に俺たちに向けて猛スピードで駆け出した。

 スケアクロウは宙に、俺はローリングして回避、そのままブレードの元へと全力でダッシュする。

 

 俺の目的に気付いたE.L.I.Dはすぐさま方向転換して俺の元へ走ろうとするが、

 

 

「行かせませんわ」

 

 

 スケアクロウが再びレーザーを発射。

 E.L.I.Dが踏み出そうとしている足元をピンポイントで狙い撃ち、動きを封じてくれる。

 更に・・・

 

 

「ついでにこちらもどうぞ?」

 

 

 そう言って、腰の携行用ポーチに入っているスタングレネードを取り出し、E.L.I.Dの目の前で爆発させた。

 怯んでいる瞬間で防御不能という、完璧なタイミングでのスタンの扱いに笑みが溢れる。やるじゃねえか、スケアクロウ。

 

 奴が目を眩ませている間にブレードを回収。ひとまず丸腰状態は打開できた。

 

 とはいえ厄介なのはここから。ブレードは俺の手元の装備で唯一E.L.I.Dに有効打を与えられるとはいえ、そもそも接近できなければ意味がない。

 あの面倒くさいウィンクをどうやって無力化するか・・・。

 

 その時、強烈な目眩ましをされたことに更に怒ったE.L.I.Dが無茶苦茶に何度もウィンクをし始めた。

 

 

「な、なんですの?」

 

「ちぃっ!!! 身を守れスケアクロウ!!」

 

「はっ? え、ちょっと待っtきゃあっ!!?」

 

 

 突如E.L.I.Dが始めたウィンク。俺がそれを見て猛スピードで走り出したのに加えて言い放った『身を守れ』という指示に、彼女は戸惑いつつも浮きながら頭を抱えて丸くなる。

 しかし直後に起こる何回もの爆発を見て、E.L.I.Dのウィンクがどんな力を持っているのかを理解したスケアクロウ。

 自身の近くでも小規模な爆発が起こって小さな悲鳴を上げたものの、防御から回避へと即座に行動を切り替え、持ち前の俊敏な浮遊移動を駆使してなんとか避け切った。

 

 E.L.I.Dの5mほどの巨体という大きなリーチに加えて、遠距離からでも迎撃可能な強力な爆発。俺たちが有効打を与えるために、自身が為すべき役割は何か。

 彼女はこの一瞬でそれを察してくれた。

 

 

『レイ、両端の眼を潰しましょう。あれを残したままでは危険性がずば抜けて高くなりますわ』

 

「同感だ。りょーかい、片方は任せとけ」

 

 

 小さく頷いたスケアクロウはビットを不規則な軌道で素早く動かし、視力を回復しつつあるE.L.I.Dの視線を誘導する。同時にビット全機が射出口にエネルギーをチャージしていき、ビットの向きと射線が真っ直ぐE.L.I.Dの眼を向く一瞬を狙って、一機がレーザーを発射する。

 

 しかし、E.L.I.Dは優れた反射神経に従い、自身の眼に向けて放たれたレーザーを首を傾げて避けてみせる。その直後。

 

 

「どうぞこちらもお受け取りになって?」

 

 

 頭が動いた先、ちょうど眼が来るであろうその場所目掛けて二機目のビットがレーザーを放つ。が、到達する直前に反射的に閉じられた厚い瞼が眼を守る。

 ジュっと肉が僅かに焼ける音がしたものの、まだまだダメージと呼ぶには至らない程度のもの。

 

 外した? いや、これこそ彼女の狙い通り。

 E.L.I.Dが眼を瞑っているこの瞬間、彼女は残る最後のビットを文字通り”眼の前”に浮かばせ、同時に俺はE.L.I.Dの巨体を駆け上って右肩に立つ。

 

 突然現れた自分の体の表面を這い上がる感覚に、E.L.I.Dが不快そうにうっすらと眼を開ける。その瞬間、俺は右端の眼へとブレードを突き刺し、ビットは溜めていた強力な一発を放った。

 反射的に閉じられる瞼の動きすら間に合わない、ほぼゼロ距離からの攻撃。ウィンクによる爆発を起こすE.L.I.Dの両眼を潰した。

 

 

「ガァァァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!!!?!?!??」

 

 

 ゼロ距離狙撃、そして視界の外から突如現れた剣に一瞬で眼を貫かれたE.L.I.Dは、そのあまりの激痛に今までの比では無い叫び声を上げた。

 ・・・着けてたフルフェイスカバーが外と完全に隔絶する構造をしていたのは本当に助かった。生身なら今の声で確実に鼓膜が逝ってたな。

 

 ブレードを抜いて飛び降り、すぐにE.L.I.Dから離れる。

 案の定奴は痛みに悶絶し、とにかく体を動かしまくって暴れまわった。

 

 

「スケアクロウ! 弾薬箱をこっちに!」

 

「了解ですわ!」

 

 

 スケアクロウは先ほど持ってきた弾薬箱を俺の元へと移動させる。

 この弾薬箱は、使わない時には折り畳んでコンパクトに出来る仕様となっている。両側面にある短辺の部分の面を中に押し込む事で折り畳めるのだ。

 

 中にありったけ詰め込まれてる中から片面を押し込むスペース分グレネードとC4爆弾を取り出してはポーチに、それから箱ごと傾けて爆発物の位置を反対側に密集させ、残りの爆発物に直接面が接触しない状態にしてから押し込んで上面の蓋を閉じる。

 これで弾薬箱は片面に出口ができ、開いた口が上を向いた状態になった。最後に取り出したC4を弾薬箱の上蓋裏面にペタリと付けて仕込み完了だ。

 

 

「スケアクロウ。弾薬箱をこの傾きを維持したままいつでも動かせる様にしておいてくれ」

 

「構いませんが、一体それで何をするつもりですの?」

 

「あいつの中で花火を起こしてやるのさ」

 

「は、花火・・・?」

 

 

 いきなりトンチンカンな事を言い出した俺に疑心、そして冷たい眼差しを向けるスケアクロウ。

 

 とそこへ、痛みに慣れてきたのか暴れるのを止めたE.L.I.Dが俺たちを見つめる。

 残った眼は荒ぶる激情を映し、痛みを与えた張本人である俺たちを憎しみのこもった殺意を浴びせる。

 

 激おこモードになったE.L.I.Dを目の前に、俺は”花火の準備”のためにFive seveNを抜き、銃のバレル部分をガッチリと口で咥え込む。同時に両手をポーチの中へ突っ込み、目的のアイテムを手に取った。

 

 

「・・・いよいよ、本気で頭に来ているみたいですわね?」

 

 

 ・・・明らかに可笑しい俺の行動にはもうツッコまないらしい。

 

 

「ああ。はくぁらほそ、ほぉ〜にくぁへきふってな」

 

「・・・『だからこそ、どうにか出来るってな』って言いたいんですのね?」

 

「・・・とほかく、うぇとひひふはいへろ(目と耳ふさいでろ)

 

「・・・了解ですわ」

 

 

 これからやろうとしてる事を理解してくれた様である。

 

 俺はポーチの中で手に取った、2つずつのスタングレネードとスモークグレネードを宙高くに放り投げる。

 直後、咥えていたFive seveNを右手に持ち替え、グレネード四つを狙い撃つ。

 

 

「ヴアァァァァ!!」

 

 

 再び強烈な閃光を浴びたE.L.I.D。今度はウィンクでの爆撃は使えない。

 加えてスモークが起こったことにより、直接的なやつの視界を奪う。

 

 

「司令官! 現時点で稼働可能な擲弾砲陣地に支援攻撃を要請! 座標点はD41.V77! すぐに砲撃を!」

 

『了解した! G5、G8、G14陣地へ! 座標点D41.V77に向け、擲弾発射!』

 

 

 その隙に正規軍に支援砲撃を指示し、E.L.I.Dへの爆撃を行う。

 ひゅーんという音が数回響き、だんだんと音が大きくなった次の瞬間、E.L.I.Dの頭部に放たれた擲弾が直撃する。

 

 

「アァァァアァアァァァァァァァッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

 

 鼓膜が破れかねないほどの声量で、E.L.I.Dは腹の奥底から叫ぶ。

 爆風で煙が晴れたのを見計らってヤツの頭部を見てみるが、少しばかし肉が焼けている程度のダメージしか与えられていないようだ。

 

 ちっくしょう、硬えな。A級相手が前提の擲弾の威力ではダメージを与えるには至らないらしい。

 腐ってもC級に分類されるだけの耐久力を持ってるってことを、改めて見せつけられた。

 

 こうなったら、とにかく強い威力で〆るしかねえか・・・。

 

 

 覚悟を決め、ブレードの刃の出力を一気に最大まで上げる。

 最大出力となったメーザーブレードは、ほぼ全てのものを斬り伏せる高い攻撃力の代わりに刃の持続時間を極限まで短くするという、C級相手の接近戦ではまさに諸刃の剣。

 

 しかし、これ以上チンタラしてるとA級の群れの撃退に大きな支障が出かねない。なぜなら、人間は超人的な身体能力を持つA級の動きを障害物を使って最大限制限することで、初めて一対一でまともにやりあえるのだから。

 自分たちが事を優位に進めるために必要な設備を片っぱしからコイツに破壊されてしまってる以上、C級だけを相手にしてられる時間は実はもうほとんど残されていない。

 

 

「スケアクロウ! ヤツをぶっ殺すぞ!」

 

「っ! 分かりましたわ!!」

 

 

 E.L.I.Dに向けて駆け出す俺たち。

 ヤツは今度こそ同じ手は食らわないと、その巨体からは想像できない機敏な動きで以って立ち向かってきた。

 

 俺を握り潰そうとE.L.I.Dの手が伸びる。

 ギリギリのタイミングでスライディングして躱し、股下を潜って背中へと回り込む。俺が出せる全力のバネで思いっきり踏み込み、届いた背中の一番高い位置にブレードを突き刺した。

 

 

「そらァッッ!!!」

 

「ギャアァァァァァァァァァァッッッッッ!!!!?!?」

 

 

 出力をMAXまで上げたブレードの刃の切れ味は凄まじかった。スケアクロウのビットのレーザーですら軽いやけどしか与えられない表皮を、なんとバターを切るように裂いていったのだ。

 俺の体重に従ってスルスルと下へ切り裂かれるE.L.I.Dの肉体。背中から腰、そして右足までを容易く切り開いていく。滝のようにドバドバと溢れでるE.L.I.Dの体液を避けつつ、切り開かれた右足の傷口から僅かに見えたE.L.I.Dの筋繊維を・・・斬る。

 

 

「ガァァァァッッ!!? ギャァァァァァッッ!!? ヴァアアアアァアァァッッ!!!!?!?!?」

 

 

 自身の体重を右足で支える事が出来なくなり、そのまま右方向へと巨体を倒れ込ませるE.L.I.D。直後、あっという間にエネルギーを使い果たしたブレードの刃が儚く消えていく。

 その隙にポーチからある”スイッチ”を取り出し、右腕を高く挙げて仕上げの合図を放った。

 

 

「今だスケアクロウ!! 弾薬箱ごと口の中にぶち込め!!」

 

「行きますわ!!」

 

 

 痛みのあまり叫びっぱなしの口の上に浮かびながら近付いていく弾薬箱。俺が腕を下ろした瞬間、上下を瞬時にひっくり返した箱がE.L.I.Dの大きな口に勢い良く押し込まれた。

 

 

「オゴゴゴゴゴゴゴゴ!!?」

 

 

 無理やり流し込まれる大量の爆発物に苦しむE.L.I.D。

 さぁ、花火の時間だ。E.L.I.Dに弾薬箱を噛み砕かれないうちに手早く決めてやる。

 

 手元のスイッチを力強く押し込む。

 その瞬間、弾薬箱に張り付けておいたC4が爆発した。

 C4爆弾の強力な爆発はE.L.I.Dの体内に流し込まれた大量の爆発物に引火し、E.L.I.Dの体内からズドンと重たい音が響いた。

 爆発の瞬間、貫かれて穴の開いた右端の眼からは噴水の様に血が吹き出し、喉や気管といった爆心部では表皮にある毛細血管が破裂し、血液が毛穴からピュッと飛沫のように吹き上がる。

 

 

「ウゥゥゥァァァァァ・・・・・・・」

 

 

 おぞましい様なうめき声を断末魔に、それっきりE.L.I.Dは一切体を動かすことはなかった。

 ・・・ふぅ。ひとまず第一の壁はクリアしたってとこだな。

 

 だが、今はまだ安心できる状況ではない。戦闘はまだ終わっていないのだ。

 

 

「司令官殿」

 

『どうしたレイ!』

 

「なんとかC級E.L.I.Dの討伐に成功。引き続き、残ったA級の群れの掃討に加わります。先ほど頼んでおいた増援の方はどのようになりましたか?」

 

 

 これがもし増援を出せないというのであれば、いよいよ俺たちは数でも身体能力でも劣るA級たちにほぼサシで戦わなきゃならなくなるという事。

 もちろんそうなった場合は仕方がないので殺れるだけ殺るしかないが、強力な戦力の増援が来るというのであればそれに越した事は無い。

 

 しかし、やはり現実の社会っていうのはそう簡単に上手く事を運ばせてはくれないらしい。

 

 

『それがだな・・・』

 

「うん?」

 

『戦車などを配備している基地の方にもE.L.I.Dの群れが襲撃してきているとの報告が先ほど上がってきた。その中には、D級に分類される個体も何体かいるようだ。

 こう言ってはなんだが、脅威度としてはどう考えてもそちらの方が高い以上、我々の方に戦力を割く余裕は無いとの事だ』

 

「・・・こんな状況ですからもしやとは思ってましたが、やはり他の基地にも大勢で押し掛けてきてましたか」

 

『そのようだ。全く・・・実に士気を削がれる布陣を組んでくれたものだよ。むしろ、まともに頭の使える”指揮官役”が何処かにいると言われた方がまだ納得できるだろう』

 

「仰る通りで・・・。分かりました、必要に応じて引き続き残った陣地からの支援砲撃をお願いします。一人でも多くの兵が生き残れる様に、我々も微力ながらお力添えさせて頂きます」

 

『ありがたい。疲れているところに済まないが、よろしく頼む』

 

「こちらこそ」

 

 

 俺はエネルギーの切れたブレードのバッテリーを取り外し、満タン充填された新たなバッテリーをグリップに装填する。

 だが、これからブレードを使うシーンはもう恐らく無いだろう。A級は近づかれる前に殺す、それが鉄則だ。

 

 ブレードを腰に差し、代わりにクリップに留めてたP90を再び構える。ふぅ、ほんの数刻前まで握ってたっていうのに、なんだか久しぶりに構えた様な感覚だ。

 

 よし、第二幕に移る前に、相棒に労いの言葉を掛けておきましょうかね。

 

 

「スケアクロウ、まずはC級討伐に大きく貢献してくれてありがとう。その上で悪いんだが、まだ俺たちの仕事は終わってないんだ。

 未だこの基地に押し寄せ続けるA級たちをぶっ殺さないと、俺たちはこの仕事からは解放されねえって訳だ。ここまではOK?」

 

「ええ。言われずともそれは理解しておりますわ。それに、C級の出現がイレギュラーであり、本来の私達の仕事はまだそもそも果たされてすらもおりませんから」

 

「結構。ほんじゃま、まだ少しばかしこの戦闘服を脱ぐには時間が掛かるが・・・もう一度気を引き締めて仕事に掛かろう。

 よろしく頼む、スケアクロウ」

 

「うふふ、こちらこそ」

 

 

 俺の左手とスケアクロウの右手、二つの拳がぶつかり合う。

 俺が彼女の購入手続きをする前は仕事終わりの度にやっていたルーチン。でも今この瞬間だけは、お互い絶対に生きて帰る事の決意表明のようなものになっていた。

 

 さあっ! 残ったA級たちを始末するぞ!




 


「・・・システム導入の準備はいよいよ最終段階に入ったとみて良いのだね?」

「ええ。ほぼ全ての機体へのファームウェア更新は完了しております」

「結構。さて、その残った未更新の機体というのは?」

「第三兵器産業廠にいるハイエンドモデルの人形たちです」

「・・・ルード工場長のお膝元か」

「はい。そもそもハイエンドモデル自体、基本的な設計のもと作られたベースユニットに加えて、購入契約時に顧客の要望に沿ったカスタマイズを改めて実施し、それから納品という方式を採っておりますから」

「つまり、我々本社の方から第三にいるハイエンドのファームウェアを遠隔更新する事は出来ない、という訳だな」

「そうなります。第三にいるハイエンドたちのシステムを更新するためには、それこそ第三に直接乗り込んで一体一体をケーブルで繋いでなんてやる必要がありますから」

「・・・第三にいる”量産型”の人形たちは更新できているのかね?」

「ノーマルモデルの方は全機実施済みです。そちらの方は遠隔操作モジュールが備え付けられておりますから」

「ふむ・・・分かった。全員で”足並み揃えて”革命の時を迎えたいところだったが、ほぼ全ての機体が準備できているというのならば仕方あるまい。
 ルード君には革命が始まった後で、我々の求める『正き未来』を受け入れてもらうとしよう」

「・・・『正き未来』ですか?」

「そうさ。我々鉄血はこれからの未来を動かす、キーファクターとなる。それこそが『正き未来』なのだ。人類が真に歩むべき道とも言える」

「はあ・・・」

「なに、いずれ君にも分かるようになるさ。いずれ、な・・・」



 

P90に名前を付けるとしたら?

  • そのまま『P90』でいんじゃね?
  • 『ナインティ』でいんじゃない?
  • ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
  • いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
  • 良いアイデアがあるから感想に書くぜ
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