裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 お待たせしました。
 前回で遂に例の事件が勃発しまして、今回はその直後の出来事を書きました。

 先に言っておきますが・・・今回も胸糞悪い描写がありますので、くれぐれもご覚悟の上本文に入ってください。

 よろしくお願いします。


-40-蝶の舞ったあと

 

 

 

『おいどうなってやがる!? 人形達がこっちに撃ってきたぞ!』

 

『レイズ隊の人形達! それは味方だ! 直ちに射撃を止めうわっ!?』

 

『HQ! 至急人形たちの緊急停止コードを打ってくれ!』

 

『もうやってるっ!! まだ止まらないのか!?』

 

『止まってねえから無線飛ばしてんだろうがっ!』

 

 

 ーーとある戦場にて、あるPMCは突然の展開に混乱を極めていた。

 

 

『ちくしょう!! ついさっきまでの俺たちの連帯感は一体どこに行っちまったんだ!?』

 

『俺たちの声がまるで届いてねえぞ! 下手したらぶっ壊すまで止まらねえんじゃっ!?』

 

『なんでこんな事に・・・』

 

 

 会社が導入していた鉄血製の戦術人形が、なんの前触れも無く突然味方を攻撃し始めたからだ。

 あまりにも急すぎる事態に対応が追いつかず、人形とチームを組んでいた兵士達はもれ無く殺害されてしまう。

 

 幸いにも人形達から離れた場所に布陣していた者達が司令所へ緊急連絡を取るものの、事態を把握した司令所側で強制停止させるコードを打ち込んでも効果が無かった。

 それはすなわち、カスタマーに提供された緊急停止コードよりもさらに上位のコマンドが人形を動かしているという事。兵士達の中で鉄血工造がクーデターを起こしたのでは?という疑念が広がり始めた。

 

 

『・・・やむを得ない。人形達を全機破壊しろ。でなきゃ、俺たちが生きて帰れない』

 

『・・・了解』

 

 

 今まで共に戦ってきた人形達をその手で破壊するという行為に、悔しさに歯噛みしながらも兵士達は粛々と”仲間だったモノ”を撃破していく。

 そして全てを破壊し終えた後には、虚しさだけが戦場を支配した・・・。

 

 

 

 -----

 

 

 

「・・・・・・な、に?」

 

 

 誰もいないはずのこの部屋で響いた女の声に、ルードは震える口で言葉を絞り出す。

 

 背後に目を向ければ、”上半身だけ見れば”とても見目麗しく、老若男女問わず誰でも虜にしそうな美女が立っていた。そう、上半身だけならば・・・。

 腰から下に伸びているはずの脚はヌメヌメとした粘液に覆われ、小さな吸盤が並列に綺麗に並ぶ。そして、人を丸々絞め殺すのに十分すぎる太さと長さを持つ赤いそれが八本・・・それは、タコの下半身と美女の上半身を融合させた異形の存在であった。

 

 

「な・・・なんだ、君は・・・」

 

 

 考えすらもしなかった存在の出現に、心拍数が一気に高まるのを感じた。

 訳が分からない、人形達がここに押し入ってくるならまだしも、なぜここに”化け物”の形をした女がやってくるのか。

 

 そして女の言う、スイッチを押されると困るとは何を以って困るというのだ?

 

 目の前の大きな脅威に相対し、無意識的に過呼吸になりながらもスイッチを押そうと再度指に力を込める。

 けれども、スイッチにしては強すぎる反発感が帰ってくるだけ。

 もう一度、さらにもう一度と押し込んでも、一向にスイッチを押す感触は指に伝わらない。

 

 どうして? そう思いギギギと視線を動かせば、なんとタコの脚の先端がルードの親指とスイッチの間に入り込み、起爆されるのを止めていた。

 さらに、指だけでなく自身の腕にも絡みつく一本の脚。どうやら女は、是が非でもルードにスイッチを押させないつもりらしい。

 

 

「そーいうこと。もう一回言うけど、この工場を爆破されるのはお姉さん的にすっごく困るんだよねぇ・・・。だから、大人しくスイッチから手を離して欲しいんだけどなぁ〜?」

 

 

 ニヤニヤと笑みを浮かべ、しかもそれを寄越せとジェスチャーまでしてみせる。

 ふざけるな、どういうつもりなんだこの女は。これは工場の人形達にこれ以上人を殺させないための手段なのだぞ。ルードは自らの腕を拘束する女を鋭く睨みつける。

 

 しかし女の方は殺気混じりの睨みを受けてなおどこ吹く風といった様子。むしろさらに彼を煽り立てた。

 

 

「あなたの作った人形達って、もともと人を殺すために生まれてきた筈よね? 制限なく好きなだけ殺せるんだから、むしろ人間の作った鎖から解き放ってあげた方が良いんじゃないかしら?」

 

「ふ、ふざけるなぁっっっ!!!」

 

「ふざけてるのはあなたよ??」

 

 

 刹那、人の目で追いきれぬ程の速さで右腕が引っ張られ、凄まじい勢いで体ごと部屋の端まで投げ飛ばされるルード。

 

 

「ガフッ・・・」

 

 

 猛スピードで走る車に撥ねられた様な、そしてあまりの勢いに関節の外れた右肩から想像を絶する痛みが襲う。体の至る所から発せられる強烈な痛みの信号を処理しきれず、衝撃で肺の空気も全て押し出されて碌に呼吸も整わない。

 今の彼は敵を前にして、かろうじて這いつくばりながら”まだ”生きている状態。しかし、人間の体では圧倒的なパワーを持つ”化け物”を相手取るにはあまりにも脆弱すぎた。

 

 ヌルリヌルリ、なんとも形容しがたい音を立てながら、女はゆっくりと近付いていく。その手にはルードから奪い去った工場の起爆スイッチが。

 

 

「ンフフ・・・これ押したいんだ?」

 

 

 でもダーメ、そう言って女は自分の脚先にスイッチを落とすと、絡み取る様に受け取った先端部がギュッとスイッチを握りつぶす。

 程なくしてバチバチという音がし始めたかと思うと、基盤から黒い煙を上げてスイッチはお釈迦になった。

 

 女はこれ見よがしにルードの前に残骸をチラつかせ、しかしそれもすぐに何処かへポイッと投げ捨てた。

 

 

「ざーんねん。これを押されちゃうとぉ、お姉さん的にはすっごく困っちゃうの。だから無理やりやっちゃったんだけど、許してね?」

 

 

 ペロッと舌を出す。ドジっちゃったとでも言いたげに。

 ルードは絶望に染まる。こんなふざけた化け物の女に、工場にいる”子供達”をこれ以上人殺しさせない為の最後の手段を潰されたのである。

 そして工場を爆破出来なくなったということは、暴走した人形達の制御下に工場が陥落した場合、彼女達の生産や修理の拠点として機能し始めることも意味している。

 

 それは本来あるべきでは無い形で人を殺し続ける”子供達”がさらに増えるということ。ルードはそれだけはどうしても阻止したかったが、虫の息の自分にはもう、どうしようもなかった。

 

 こひゅーこひゅーと、か細い息で必死に呼吸を紡ぐ。最早まともに息をするのも苦しい中で、せめて最後の抵抗にとルードは睨む。もう、彼にはそれしか出来なかった。

 

 

「生意気なお顔・・・そういう目を見せられちゃうとお姉さんゾクゾクしてきちゃう・・・アハっ!」

 

 

 両頬に手を添えられ、女の腕力で”顔だけ”を持ち上げられる。

 恰幅のいい体型の全体重が首に掛かり、引きちぎられる様な激痛が襲うものの、それでも睨むことを止めない。

 

 これほど痛めつけられて尚も抵抗の意思を見せ続けるルードに、突如女は体を震わせ始めた。

 

 

「あ、あぁっ、・・・イイわっ!!」

 

 

 二度三度全身を大きく震わせると荒く息を吐き、妖艶な色を纏った目でルードを見つめる。

 

 

「お姉さんを睨みだけでイかせちゃうなんて♪ ・・・さてとぉ、それじゃあそろそろメインディッシュの時間にしようかしら?」

 

「メインディッシュ、だと・・・?」

 

 

 期待の籠った目でルードの体を舐め回す様に見る。

 そして舌なめずりをして、一言。

 

 

「・・・ねぇ、タコのお口ってどこにあるか知ってる??」

 

「・・・は?」

 

 

 ルードが何かを言う間も無く、触手が彼の体に巻きつく。

 そして残る脚で突然彼の真上に自身の体を運んだかと思うと・・・

 

 

「いっただっきま〜す♪」

 

「っ!!?」

 

 

 八本足の付け根、胴体の真下にある”タコの口”を大きく開けて、勢い良く腰を落とした。

 

 

「・・・ンフ♪ 美味しい♪♪」

 

 

 体内から身体中に響くルードの断末魔をスパイスに、実に幸福そうな顔を浮かべ味わう女。

 この狂行を止める者も、ルードを助ける者も、もう誰もここにはいない。

 

 肉と骨を咀嚼する音と、時折動く脚と床が擦れる音だけが、主を失った執務室に響き渡る。

 

 

 やがて、余す事無く”食べ終わった”女は腹を撫でながらペロリと舌を回し、上半身に着たジャケットから携帯端末を取り出す。

 にこやかに、友達に電話をする様な気楽さで端末を耳に当てる。自身が起こした惨劇など意にも介さぬまま。

 

 

Grigio(グリージョ)鉄血社長(イヴァン・リューリカ)に楯突いてた工場のトップは抹殺したわ。これで、計画の第一段階は完了かしら?」

 

『ご苦労Rosso(ロッソ)。・・・証拠が残らない様に始末したんだろうな?』

 

「その辺は抜かり無く。”下のお口で”ペロリといったわよ?」

 

『・・・相変わらず悪趣味な殺し方だ。

 まあいい、渡したプログラムを工場長のデスクにインストールして工場の全機能を掌握しろ。それが完了してようやくこのフェイズは終わりだ』

 

「りょーかーい」

 

 

 女は胸ポケットからデータメモリーを取り出し、工場長のデスクに差し込む。

 革の手袋に包まれたしなやかな指を鼻歌交じりに流麗に動かし、プログラムのインストールに必要な入力を手早く打ち込む。

 

 しかし、作業が終了する一歩手前というタイミングで、鉄血人形達が執務室へと向かってくる足音が聞こえてきた。

 

 

「んもぅ、お仕事の邪魔されるのは嫌なんだけどなぁ〜」

 

 

 タコの脚をヌルリヌルリと床に滑らせながら、扉の前で待ち構える女・・・(ロッソ)と呼ばれる異形の存在。

 鉄血人形達が扉を開け放った次の瞬間、長く伸ばした触手を勢いよくなぎ払い、圧倒的なパワーで人形達を破壊する。

 

 しかし、機械であるが故に人形達は恐れずどんどん立ち向かってくる。

 それらをロッソはひたすら正面から叩き潰す。一切の容赦も無く、邪魔する存在をただ振り払うように。

 

 気付けば執務室の扉正面には人形達の残骸が山となって積み重なっていたが、一通り人形達を撃破したのを確認すると、ふわぁと大きな欠伸をしながら執務室へと戻る。

 

 彼女の触手には、表皮すらも貫けなかった人形達の武装による攻撃の跡が残っている。でもそれらもすぐに、最初からそんなものなど無かったかのように全て”消えた”。

 

 

 歴史は変わった・・・。

 

 

 

 -----

 

 

 

 テレポートした先は、見慣れない建物の目の前だった。

 ルードはエージェントに何処に飛ぶ様コマンドを送ったのか、すぐさまリーサが自分の端末を取り出し調べようとする・・・間も無く、横から伸びてきた白く細い手によってその手は遮られた。

 

 

「・・・貴女は?」

 

 

 手をたどってゆけば、そこには白い三角巾を頭に巻いた若い女性が立っている。

 可憐な笑みを浮かべ、不思議とよく通る声で女性は言った。

 

 

「ルード・ジーバン様より事情は伺っております。何はともあれ、まずはこちらの建物にお入りください。ここが何処なのか、我々が何者なのかも含め、全て皆さんにお話しますから」

 

 

 それに、戦術人形相手に私一人で抵抗など出来ませんもの。そう言って、女性は踵を返し建物へと歩いていく。

 女性がルードの名前を出したこと、自分たちが何者なのかも含め全てを話すということ、それが何を示すのかを完全に理解するにはまだ情報が足りない。

 しかし、事情は聞いているという言葉から察するに、第三兵器産業廠で何が起こったのかはおおよそ把握しているのではないか?

 

 ということは、ルードが何らかの経緯で持っていたパイプを使い、自分たちを助けた?

 今の女性はその使い?

 

 

「・・・とりあえず、もしあの女性が何かをし始めたら私たちが守らなければ」

 

「そうだね・・・。でも、リーリャお姉ちゃんも放っておけないよ」

 

 

 アーキテクトが目を向ける先には、もはや立つことすら出来ず泣き崩れるばかりのエージェント。

 両手で顔を覆い、お父様ごめんなさいと譫言(うわごと)を呟き続けるのみ。ハイエンドの中ではリーダー格の彼女であるが、流石に今回の事件は彼女にとって相当ショックの大きい出来事であったのは言うまでもない。

 

 ゲーガー達は作られてからそこまで時間が経過していないため、ルードとの別れをある程度冷静に捉えられている部分がある。

 しかし、エージェントとスケアクロウは、彼女達自身が生み出された最初期から工場で共に生きてきた仲。人形だろうと人間だろうと関係ない、かけがえの無い大切な人物を助けられなかったこの苦しみは如何ばかりか。エージェントに寄り添う他のハイエンド達は、どう声をかけて良いものか分からなかった。

 

 

「・・・ゲーガーとアーキテクト。二人でリーリャのことを支えてあげて?」

 

「リーサさん・・・」

 

 

 リーサもまた、敬愛する上司を目の前で失った立場。だが自分が狼狽えていては人形達(子供達)を不安にさせてしまう。その一心、”母”としての覚悟だけでなんとか己を保つことが出来ていた。もし自分一人で投げ出されていたら、おそらく自分もエージェントの様に泣き崩れていたかもしれないと思いながら・・・。

 

 

「・・・皆。今はとにかく前に進みましょう。キツイ言い方で悪いけど、涙を流すばかりでは前には進めないわ」

 

「か、母様! 幾ら何でもその言い方はっ!」

 

「いえ、良いんです。ウロボロス・・・」

 

「り、リーリャ・・・?」

 

 

 はっとエージェントの方に目を向ければ、凛々しい表情をしたエージェントが立っていた。

 目は赤く腫れて涙袋にも雫が残っていたものの、彼女は自身の袖で目元をゴシゴシ拭うと、キッと鋭くなった目で空を見上げる。

 

 

「・・・きっと、お父様は何故ノーマルモデル達が突然暴走したのか、その理由を知りたいはず。そしてそれは私も知りたいことですし、知らなくてはならないことだとも思います。

 ・・・辛いのは私だけじゃないのに、皆には心配を掛けてごめんなさい。リーサ主任のおっしゃる通り、今は前に進まなくては。あの女性のもとに向かいましょう。私はもう、大丈夫です」

 

 

 皆を安心させようと、エージェントは微笑みを浮かべた。

 それは何かあればすぐに壊れてしまいそうな、いつものエージェントならありえないボロボロの笑顔だったが・・・。

 

 見ていて辛さを感じるその笑顔に思うことはあれど、なんとか懸命に前を向こうとしている彼女にそう声を掛けるのも憚られた。

 リーサが先頭に立ち、第三兵器産業廠から脱出した面々は女性が入っていった建物へと歩き始めた。




 ・・・お気に入りが遂に1000件超えた矢先に激減しそうな展開。
 いろいろ賛否両論あると思いますが・・・。

 (ロッソの声はCV.佐藤聡美氏でイメージすると噛み合いやすいかと思います。女子無駄のリリィだとよりイメージに近いです)

P90に名前を付けるとしたら?

  • そのまま『P90』でいんじゃね?
  • 『ナインティ』でいんじゃない?
  • ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
  • いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
  • 良いアイデアがあるから感想に書くぜ
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