裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
最新話の投稿です。
ちなみに今話、当方で勝手に考えたオリ設定が出てきますのでご注意を・・・。
「アハハァ♪ どこまで逃げられるかしらぁ〜?」
「クッソ!!!」
イカれた性根そのままの声色で嗤いながら執拗に追いかけてくるタコ女。俺たちは脇目も振らず工場内を駆け抜ける。
ヤツが執務室の扉を粉砕したせいで内部の警戒レベルが跳ね上がり、次から次へと鉄血人形が武器を持ってやって来る。
武器構えながら走ってる余裕なんて無いが、状況が俺たちを逃げることだけに集中させてはくれなかった。
後ろからは正体不明のタコ女、正面や横からは侵入者を迎撃しようと来る人形達。三つ巴の戦況に舌打ちせずにはいられない。
「邪魔だっ!」
正面の通路に見えた新手の人形たちの頭を、P90のセミオート射撃で一体ずつ正確に撃ち抜いていく。走りながら頭を撃ち抜くのはかなり神経を使う、余計なエネルギーを使わないためにもなるべくやりたくないが、やらなきゃ前から撃たれてこっちがゲームオーバーになっちまう。それだけは絶対にゴメンだ。
「失せなさいっ!」
P90の射程外から狙撃ができるイェーガー等はスケアクロウに対応してもらう。
とはいえ、ただでさえショッキングな真実を知ったのに加えて遠くにも気を向けなければならない彼女の顔には、メンタルと身体の双方からくる隠しきれない疲労が滲み出ている。
ずっと気を張り詰めたままで緊張しっぱなしの、命がけの鬼ごっこだ。多数の人形たちと、人形を簡単にスクラップに出来るタコ女。多勢に無勢なこの状況をとにかく早く脱したい所だが、どうやって蹴りを付けるか・・・っ!?
「ふぁっ!!?」
「グッ!!」
通路の”外”から突如感じた濃密な殺気に、咄嗟に浮いているスケアクロウを上から押さえつけると同時にスライディング体制に入る。直後ーー
バリーーン!!!
目にも留まらぬ速さで触手が窓を突き破った。ガラス片が飛び散る中、襲い掛かってきた触手の真下を間一髪潜り抜け、再び走り出す。
ちっくしょう・・・追いかけっこしてると思えば外から触手を伸ばすとか、何でもアリかよあの女。脚の吸盤で貼り付いていろんな所に自由に動けるのか。クソ・・・単純なパワー以上に厄介な生態を持ってやがる。
「・・・あらあら〜? 逃げられちゃった。アハッ♪」
見なくても分かる。ヤツは今、狂気に満ちた醜い笑みを浮かべてる。
さながら逃げ回る獲物と面白おかしく追い立てていくハンターか。冗談じゃねえっての。
「イイわイイわ! その調子で私を楽しませて♪」
「クソッタレ!!」
後ろでムカつくことをほざき続けるタコ女に一矢報いてやりたいが、あの触手のリーチと持ってるパワーを考えたら、どう考えても無理に戦うより逃げる方が良い。せめて何か不意を突ける様なモノさえあれば少しはマシになるとも思うが、逃げるのに精一杯で策を巡らす余裕なんてありはしなかった。
一方のヤツは、次から次へと邪魔な障害物を文字通り粉砕しながら滑り進む。前に人形が立ち塞がろうと、会議机とかで即席のバリケードを設けてようがお構いなし。おまけに人形から一斉掃射を受けても、あの触手は受けたそばから見る見る内に傷を修復していってしまう。
人形の抵抗はヤツにとって、まるで攻撃の意味を成していないチッポケなモノでしかない。自身の圧倒的な力でそれら全てを踏み潰すか粉砕して、逃げる俺たち目指してひたすら強引に突き進んでいく。ヤツの通った後には人形だったモノと残骸が残るのみ。
軍用人形が扱う武器でさえロクに傷付けられないなら、今俺たちが持ってる武器では尚のことどうしようもない。咄嗟の判断で逃げの一手を選んだとはいえ、どの道ハナから逃げる以外に選択肢は無かったのだ。
だが・・・いい加減そろそろ鬼ごっこをどうにかしねえと俺の体力が持たねえ。最悪・・・スケアクロウだけ先に浮かして脱出させるか?
「・・・スケアクロウ。君一人なら空飛んですぐに脱出できるよな?」
返事は浮いてる彼女から振り下ろされたゲンコツだった。痛ってえ、地味に痛え・・・。
「・・・バカっ!! んなふざけた話、たとえ神が許しても私が許しませんわ!!」
「だーよねぇ・・・」
とりあえずこの案は本当に本当の最後の方法にしよう。二人で生きて帰るにはどうしたものか・・・っとぉ!!?
「ぎゃっ!!?」
「うぉっとぉ!!」
ゾクリと殺気が放たれたのに合わせ、スケアクロウの首根っこを掴んで今度は飛び込み前転を繰り出す。距離よりも高さを稼ぐ事を意識し、思いっきり踏み込んで急角度の放物線を描くように飛び込む。
次の瞬間、今度は真下を潜られるのを警戒したのか、触手が床に沿って壁をぶち抜いてきた。ただし、そのスピードが殺人級の速さなのは言うまでもない。
咄嗟の行動だったがスケアクロウが瞬時に意図を理解し、浮力を調整して微妙に高さを稼いでくれたおかげで、ギリギリ触れないラインで回避に成功する。ふぅ・・・。
でもいつまでも紙一重で躱すなんて出来はしない。先ほどはああ言ったものの、ジリ貧に追い込まれつつある今を打破する方法を考えないと・・・。
「チッ・・・」
先がほぼ詰みかかっている状況に、心からの舌打ちが漏れ出た。
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「・・・レイの奴、上手いこと潜り込めたかしら?」
時は少しだけ遡る。
レイとスケアクロウの二人と別れたアインスは、第三兵器産業廠と、そこから少し離れた所を流れる川の取水塔を見通せる場所で、潜入調査を終えたレイ達が帰ってくるのを待っていた。
ギルドマスターのヌルに二人を運べという命令を与えられた彼女は、自身も戦えるようキチッと武装した上で、ギルドが一台だけ持っている”特別製の装甲車”を駆り出して二人をデリバリーしたのである。
この取水塔は工場で生産した鋼板の冷却などに使う水を取るために建てられたもので、そこから続く大きな地下水道はまっすぐ一本道で工場へ繋がっている。
エージェントからもたらされたそんな情報を基に、二人は取水塔からダイバーのような潜水服を装着して地下水道へ侵入。冷却水を溜めるプールに行く直前で地下施設の通路に上がり、その後はダクト内を通って慎重に工場長執務室へ向かうというプランだった。
彼女がレイ達と別れてから数時間ほど経過しているが、エージェントが書き出した図面の通りに進んでいるならそろそろダクトに潜り込めているだろうと思う。
彼女は潜入が終わるまでは基本的に待機、状況に応じて適宜対応しろとのお達しを受けている。そのため、アインスは状況に応じた行動を取るべく『装甲車の上で堂々と横になって』いた。人々の心とは真逆のぽかぽかとした暖かな陽気に手で
もちろん、時々首に掛けた双眼鏡で工場の様子を観察することはあれど、よほど大きなトラブルでもなければ彼女の位置からでは動きを察することは出来ない。すなわち工場に動きがないという事は、二人の行動が上手くいってるかとっくにくたばってるかのどちらかである、が・・・。
「アイツがくたばるなんて、9割方あり得ないわね」
「・・・だからといって、こんなにのんびりしていていいのですか?」
装甲車の横から如何にも落ち着かないといった顔で話しかけてきたのは、今回のタクシードライブに付いて来たハイエンドモデルの一人。銀のロングヘアにクールな顔立ちの美少女ーー
「んー? 貴女はゲーガーって言ったっけ? 平気平気。アレは撃たれたアサルトライフルの弾見て避けられる変態だから。よっぽどの事が無きゃくたばったりしないよ」
「ですが・・・」
そうは言っても不安を抑えられないのだろう。ソワソワしたり視線がチラチラ四方八方に向いたり、とにかく気が気でない風のゲーガー。
そんな彼女の姿に再び「んー?」と考える素振りを見せたのち、アインスは上まで来いと手招きする。怪訝な顔になるゲーガーではあるが、自分たちを受け入れてくれた手前悪い事はされないだろうと思い直し、自身の持つハイエンドの脚力で一息に車体の上までジャンプした。
ハイエンドモデルの持つパワーに驚いて目をぱちくりさせるアインスだが、上ってきたはいいものの変わらず装甲車の上で立ったままの彼女に、自分と同じように横になるよう促す。
自分がここまで焦燥感を覚えてる中でこんなに緩い雰囲気を崩そうともしない
「・・・大丈夫。アレはウチのギルドんなかでもダントツの稼ぎ頭でやっていってる奴だから。それに、アイツとパートナー張ってる貴女のお姉ちゃんも一緒なんだよ? 失敗すると思う?」
「・・・でも」
「でもじゃなくて、貴女が二人を信じてあげなくちゃ。それにいざとなれば、貴女がコレに格納してる巨大武器で薙ぎはらっちゃえばいいじゃない」
アインスは微笑み、ゲーガーの頭部に装着されたヘッドセットのような機器にそっと触れた。
通信用の媒体としての役割も持っているこのユニットだが、実はそれ以上に戦術人形であるゲーガーにとってとても大切な機能を持った装備でもある。
ウロボロス、アーキテクト、ゲーガー。彼女たち比較的最近に作られたハイエンド三体は、いずれも自らの頭部に髪を纏めるためのアクセサリー等の形状をした装備を常に装着している。
一見すると鉄血の技術者たちがデザインのアクセントに取り入れたとも見えるそれらには、実は彼女たちの専用武装を量子変換しデータ化した上で格納出来るストレージ機能が備わっている。
この三体に共通している事は『専用武装が巨大である』こと。
投入される戦場の状況によってはそのサイズがネックとなる場合もあるが、武装をコンパクトに収納して携行可能にすることで、万一手段を選んでいられない状況に陥った場合でも切れるカードを残しておくという、鉄血が生み出した数ある技術の中でも画期的な発明の一つである。
アインスが触れたヘッドセット型ストレージにも、彼女の専用武装・・・巨大な機関砲にボウガンを合体させたようなものが収められている。
これを使って本気で戦いに臨めば、量産型の鉄血人形を撃破するのは彼女にとっては容易いだろう。だが・・・。
「そう簡単に言われましても・・・」
とはいえ、なおも不安の拭えぬゲーガーの頭にポンと手のひらが乗せられる。子供をあやす様に優しく、アインスは何度もポンポンとゲーガーの頭を触る。
「こうなっちゃった事はもう変えられない。だからこそ、まだいくらでも変えられる未来を良いものにするために動かなきゃ。
科学の結晶の貴女にこう言うのも非科学的でナンセンスかもしれないけど、今は二人を信じて待ちましょ? 信じて待つのも大事なことよ」
「信じて待つのも大事な役目・・・」
「そう。裏社会にどっぷり浸かってる私たちではあるけど、こんな世界で人っ子一人では絶対に生きていけないのは誰だって同じ。だからこそ、助け合える仲間や信頼出来る人が必要なの。大丈夫、レイがしくじった事は過去に10も無い。アイツと、貴女のお姉ちゃんを信じてあげて」
「・・・はい」
浮かない顔のままではあるが、先ほどよりは多少緊張は解れた様である。
一安心といった様子のアインスは、工場側に動きが無いかを見るべく双眼鏡を覗き込む。そして、彼女の纏う空気が一気に鋭利なモノへと変わった。
「・・・なにあれ」
「えっ?」
ゲーガーもアインスと同じ方向を目を凝らして見つめる。
そんな彼女が、隣のアインスとともに捉えたモノは、おおよそ現実に起こっているとは信じがたい光景。
下半分が巨大なタコの足の美女が、工場建屋の至るところに張り付いては時折ものすごいスピードで壁をぶち抜いている。眼で捉えきれないほどの速さで触手を突き出し、かと思えば高笑いをしながら張り付きつつ移動する。
タコ女が何を標的に壁をぶち抜いていってるのか、考えられるレイ達の状況を瞬時に察したアインスは飛び起き、開けたままのハッチから運転席に飛び込んだ。
「ゲーガー! 工場に行くよ! 進路上の掃除を任せたわ!」
「りょ、了解!」
アインスは装甲車のエンジンを点け、間髪入れずアクセルベタ踏みで工場めがけて急発進。
「うわっ!!」
「振り落とされないでね!」
「んな無茶なっ!!?」
真上に立っていたゲーガーは唐突な急加速に後ろに転けてしまう。だがすぐに体勢を立て直し、しっかりと足元を踏みしめる。
そして彼女に与えられた専用武器・・・巨大な機関砲にボウガンを合体させたような異形の武器をその手に具現化させた。
彼女はキッと鋭く前を見据え、己が今為すべき事をやり遂げる決意を強くする。
「・・・待っていてくれ。必ず私たちが助ける!」
長くなりそうだったので分割しました。
ちなみに装甲車のシーンはこれもまたMGS4のある1シーンをイメージして作っております。
だってゲーガーの装備・・・カッチョよくない?
P90に名前を付けるとしたら?
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そのまま『P90』でいんじゃね?
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『ナインティ』でいんじゃない?
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ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
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いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
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良いアイデアがあるから感想に書くぜ