裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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今回は一週間以内に投稿できたぜ(滝汗)

お待たせしました最新話です。長々と書き続ける私の悪い癖がここんところ発現しまくってるので、いい加減本当進み早めていかないと・・・本編の第一戦役編まであと何十話掛かんのよって事態にマジでなっちゃう()

それとどうでもいい話なんですが、この作品の闇ギルドの方に焦点当てた別のお話を気分転換用に書こうかと思ってますので、続報も乞うご期待(殴


 21/05/20 レイの女医に対する言葉遣いを修正。


-48-その後

 

 

 

 気が付くと、俺は寝ぐらのある荒廃したビル群の真ん中で突っ立っていた。

 

 なんでだ? 確かスケアクロウと一緒に鉄血の工場に潜入していたはずじゃ?

 

 訳も分からずボーっとしていると、背後から少年が俺の体を『すり抜いて』いった。

 金髪の髪型、子供とはいえ男にしちゃ少し華奢な体躯、時折後ろを振り向いては手を振って呼びかける彼はーー

 

 

「・・・昔の記憶を第三者の視点から見るとは、随分洒落た真似をする夢だな」

 

 

 紛れもない、10歳にもなってないガキの頃の(レイ)だった。

 見れば俺の体は半透明になっていて、ガキの俺が気付かずにすり抜けてったのを鑑みると、どうやらこの景色の中のモノには触れる事が出来ないらしい。

 

 まだ声変わりもしていないガキの俺の呼び声に返す様に、もう一人の男の声が後ろから届いた。

 振り向くと、早歩きで急ぎながらもガキの俺を追いかける壮年の男性・・・俺を拾って育ててくれた『あの人』がこちらへやって来ていた。

 

 

「父さん! おっそいよ!」

 

「ま、待ってくれ! 父さんは歳とってあんまり走り回れないんだよ〜!」

 

 

 元気に駆け回るガキの俺と、それを必死になって追いかける様子は、さながら本当の親子の様に思えてしまう。

 あのときはまだ遠慮無く甘えていた。事あるごとに血の繋がりは無いって言われてたけど、それでも本当の父親みたいに優しい”父”だと心から思ってて、あの歳のオッさんにはキツく感じる無茶も色々やらせたりしたもんだ。

 

 もう少し俺が成長して裏での生き方を教わってからは、家族としての情よりもある種”師”としての恐れ多さの方が勝っちまって、気安く父さんなんて呼べなくなっちまったけどな。

 かつて天狗になってたわーちゃんを徹底的に叩き直したあの時よろしく、あの人の叩き込み方はそれはもうスパルタもいい所だった。軍隊の様に、一切の気の緩みや油断を許さない、張り詰めきった緊張の中での練習。まだまだ身も心もガキだった俺はそれが嫌でかなり早めの反抗期になって、あの人のいう事やる事全てにケチつけてた事もある。

 でも大人になっていくつも死線を潜ってきたから分かる。あの人が必死に生き残る術を教えてくれたから、俺は今日まで生きてこられたんだって。

 

 ・・・懐かしいな。『あの人』が夢に出てくるなんて、もう何年ぶりになる?

 本当に突然、ある日ポックリ逝っちまったあの人。あの人が今の俺の生き様を見たら何て言うかな。

 

 

「ボッコボコに貶されそうだ・・・フフっ」

 

 

 懐かしい景色はだんだんと白み始め、やがて真っ白になっていったーー

 

 

 

 -----

 

 

 

「・・・ぅうん?」

 

「レイ!!」

 

 

 ゆっくり目を開けた途端、聞き覚えのある声と共に柔らかいものが抱き付いてきた。イテテテテ

 抱きつかれた衝撃で全身に鈍痛が響いて思わず顔を顰めてしまったが、俺の胸に顔を埋めて震えている彼女を見てもそれをツッコむ気にはならなかった。それだけ彼女に心配させたと言う事の証左なのだから。

 

 

「・・・気持ちは分かるけど、彼は怪我人。ほら離れた離れた」

 

 

 そこへもう一人聞き覚えのある声が、抱き付いてきたスケアクロウを引っぺがしに掛かる。視界の大半を覆っていた彼女の代わりに新たに姿を見せたのは、以前背中を痛めた時に世話になった女医だった。

 腰まで伸びた明るめの長い茶髪。真っ白な白衣に身を包み、タイトなミニスカートと胸元を開けっ広げにした女性。しかし彼女の持つ独特な緩い雰囲気が色気を打ち消しており、意外と気楽に話せる不思議な人物でもある。

 最初に会った時と同じように、にゃははんというなんとも言えない笑みで笑う彼女。しかし間も無く真剣モードに入り、鋭い目つきで俺たちを見据えた。

 

 

「薄々予想してると思うけど、君が結構な怪我をしたと聞いたウチの社長からのオーダーでね、今回特別にここへ馳せ参じたって訳さ。聞けば君、暴走事故を起こした鉄血の工場に潜入したって言うじゃないか。

 鉄血人形なら侵入者は持ってる武器で一撃ちして終わりのはずだ。わざわざ拷問して甚振ってから殺すなんて非効率な事、機械である人形が選ぶ理由は無いからね。

 にもかかわらず、まるで全身をシェイクして痛めつけたみたいな大怪我をして君は帰ってきた。普通ならあの時点でとっくにくたばってる。生きてたとしてもここまで持たないだろう。だからなんでそうなったのかって状況を聞こうにも、君のパートナーは大泣きしてとても話せる状態じゃない。

 そういうわけで、起き抜けで悪いけど何がどうなって瀕死の重傷を負ったのかを詳しく教えてもらうよ」

 

 

 ズズいと顔を寄せ、逃がさねえぞと言わんばかりの眼光で俺を見つめる。なんだろう・・・こう言っちゃなんだが、蛇に睨まれた蛙の気持ちが分かった気がする。

 まあハナから抵抗するつもりも無いので、記憶の整理も兼ねて俺がこの痛みを抱える原因がなんだったのかを思い返してみる。

 

 地下水道を経由して工場内に忍び込んで、データを回収してる途中でタコ女と鉢合わせて、逃げてる途中でイイモノ食らって・・・。

 

 

「・・・タコ脚と人間の女を合体させた化け物に、全身を触手で思いっきり叩きつけられた」

 

「はぁ?? 君は何を言ってるんだい?」

 

 

 直後、お前はバホかと言いたげな顔で睨まれる。

 そりゃ信じられる方が少ないとは思うけども。

 

 

「・・・本当ですの」

 

「へ??」

 

「見目麗しい女性の上半身と、巨大なタコの下半身を融合させたような、そんな異形の存在が工場内にいたのですわ」

 

 

 スケアクロウが低いトーンで援護射撃を繰り出し、女医の顔は少しずつ血の気が引いていった。

 

 

「・・・そいつはE.L.I.Dかなんかだったり?」

 

「少なくとも、俺の知ってる限りのE.L.I.Dにあんなヤツはいません。それにヤツは言葉を話せるし、考えて敵を仕留めようとする知能がありました。

 汚染された人間がE.L.I.Dに突然変異する際、変異の過程が特にレアケースでああなったというよりは、むしろE.L.I.Dの体に人間の上半身をむりやりくっ付けたという方がまだ納得出来るでしょう。あるいは、胎児の段階でE.L.I.DのDNAを埋め込んだとか・・・ね」

 

「・・・マジ?」

 

「「・・・マジです(ですの)」」

 

 

 うへぁ・・・と一声漏らした女医。流石に誰も予想だにしない展開だろうよ。なんで暴走した人形の巣にあんな化け物が一匹入り込んだのやら。しかも体表の修復能力が凄まじく高くて、人間が持ち運べる程度の武器の火力じゃまともにダメージも与えられないときた。

 あれがもし新手のE.L.I.Dであるならば脅威度は間違いなくD級クラス、人並みに考える頭脳がある事も鑑みれば、現時点では存在しない『E級』枠に入る事も有り得る。

 

 ・・・ヤベエのと鉢合わせちまったなぁ。

 

 

「・・・ともかく、君が怪我した状況は分かった。そんでもって怪我を治す上で君にこれからどうしてほしいかを言うよ。一ヶ月ずっと寝てろ」

 

 

 キッと睨まれた。

 アレか、前回安静にしてろって言われたのに全力疾走しまくった前科があるから、この人はそれを警戒してるのか。

 しかし、一ヶ月も寝てろって言われてもな。そんな時間を寝てたら体力戻すの大変になるじゃないか。前回背中をやった時も、身体の勘を取り戻すのに三日掛かっちまったんだぞ。

 

 何て事考えてたら、女医は浮いてたスケアクロウの首根っこを右手で掴み、キスする5秒前まで彼女の顔を接近させた。顔が近い。

 

 

「なぁんか言いたげな顔してるね。君は医者にこうしろって言われると逆らいたくなる性分なのかい?」

 

「そういう天邪鬼な所があるのは否定しません」

 

「否定しなさいよ」

 

「あ、あの・・・?」

 

 

 女医にいきなり俺の顔スグまん前まで体を持ってかれ、あまりの顔の近さにオロオロしだすスケアクロウ。顔も赤いし視線もゆらゆら動く。

 そんな彼女の様子などどこ吹く風で、睨みを利かせながら口を開く女医。さながらクズを見下ろすような冷たい眼・・・この人にとって俺ってなんなん?

 

 

「君の事だから体力が落ちるーとか考えてるんだろうけど、まず体を十全な状態に治す事を第一に考えなよ。この子なんかつきっきりで君の姿勢を変えたりとかしてくれてたってのに、中途半端に治った状態で無理に動かしたら、今度こそ体にガタがくるのはバホでも分かるだろうに」

 

「そりゃ、まぁ・・・」

 

「つうわけで君は一ヶ月絶対安静、食事も固形物は良いって言うまで基本的にNGだからね。本音はさっさと病院に戻りたい所だけど、社長直々のオーダーだから特別に一ヶ月毎日君の容態を診てやる。私の前から患者が消える時は『くたばるか完治するか』のいずれかだ。分かったね?」

 

「固形物ダメって、俺を殺す気「はいお口チャーック」痛ったぁ!?」

 

「ぐっ!?」

 

 

 いろいろ文句を言いたくなるのは許してほしい。固形物ダメとか食ってる感覚ねえじゃん。

 もうちょっとお情けが欲しくて抵抗しようとした瞬間、こんにゃろうスケアクロウを前に押し込みやがった。

 彼女が恥ずかしさに顔を俯かせてたタイミングで突っ込ませたため、互いのデコが勢いのまま強くぶつかり合う。

 

 お互いに悶絶しプルプル震える中でも、女医は気迫の籠った視線を尚も向けながら最後にこう締めくくった。

 

 

「良いか。君の事を想う存在がどれだけいるかって事を一度再確認するべきだ。

 君のとった無茶な行動によって君のパートナーしかり、君の仲間しかり、さぞや肝を縮めてるだろうね?

 心配してくれる仲間やパートナーがいる事がどれほど幸せか、この機にしっかり認識しなおすと良い。

 言っとくけど! 今度こそ絶対安静にしてなきゃ棺桶にぶち込むからねっ!」

 

「なんでだよ!?」

 

 

 無茶苦茶な暴論にツッコムも、フンっと鼻息荒く俺の部屋を出て行ってしまう。

 ・・・今度の療養生活は長くなりそうだなぁオイ。

 

 とりあえず、未だ痛みに震えるスケアクロウの前髪を掻き分け、赤くなったところを摩ってやる。

 すると俺の行動が不思議だったのか、ポカンとしてしまう。

 

 

「・・・どうしたんですの?」

 

「いやぁ、痛いの痛いの飛んでけーってやつ?」

 

「ぷっ・・・あははははっ」

 

 

 思わず吹き出したスケアクロウに、俺は思わずジト目で返す。

 何がおかしいのかそのまま大きく笑い始めてしまった彼女の目尻には、目に収まりきらなかった雫が光る。

 

 やがて収まってきた所で彼女はもう一度俺の身体を、今度は上からホールドする様に優しく抱きすくめる。といっても自分の体重をフヨフヨパワーで相殺してくれているので、彼女に抱きすくめられる事での重さや痛みは感じない。

 彼女はスッと頭を上げる。すぐにでも壊れてしまいそうな、とても儚い小さな笑みを俺に浮かべてみせた。

 

 

「貴方の方がずっと大きな痛みを抱えてる状態ですのに、私のおでこを摩って痛いの痛いの飛んでけなんて・・・昔を思い出して、懐かしくて笑ってしまいましたわ」

 

「・・・ルード工場長か?」

 

「・・・私と姉さんは、あの方に色んな事を教わりましたの。一番最初に作られたハイエンドでトップバッターなんだから、これからの鉄血をアピールするためにも人間の暮らしや文化についても深く学んでおこうなんて言って。

 戦術人形に戦闘に関係無い知識が必要なのかと聞いても、あの方はいつも『オーナーとコミュニケーションを取るためのネタがあってもいいだろう?』と言って、本当に色んな事を教えてくれたんです。

 さっきの『痛いの痛いの飛んでけ』というのもそう。私達も、後々生まれてきた”妹達”も、第三で作られた人形達は例外無く皆が”子供”としてお父様の優しさに触れてきました。オーナーが決まって工場を旅立つ時も、いつでも帰ってきて良いからなんて冗談交じりに言ったりして。私達人形の事を我が子の様に愛してくれた。

 ・・・本当に、本当に大切な人、なのに・・・なのにっ!!」

 

 

 ボロボロ、止め処なく大粒の涙が次々に零れ落ちる。

 

 

「どうしてっ! どうしてあんな死に方をしなければならないのっ! 何故!?」

 

「・・・」

 

「あの人が死んで良い理由が無い! なんでお父様があんな化け物に喰い殺されなきゃいけないの!? なんでっ!? なんで、なんで・・・」

 

 

 俺は出せる限りの力で彼女の体をギュッと抱きしめる。

 密着することで怪我した部分に痛みが出るが、そんなもの構ってやらない。とにかく強く、彼女のすぐそばに俺がいる事を感じさせてやりたいんだ。

 

 

「・・・レイ?」

 

「・・・俺はキミを勝手に置いていったり、勝手に消えたりしない。約束する。

 辛い時や泣きたい時は幾らでも俺の胸を貸す。だから、今だけはルード工場長の”娘”として、スケアクロウの・・・いや、『キミ(サーリャ)』の心を解放してやれ。

 この部屋には、俺たちしかいないから」

 

「あ、あぁ・・・うあぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

 

 

 今まで堅く封じ込めていた、彼女自身の感情が溢れ出す。

 ”父”を死なせてしまった事への悔しさと悲しみ、”父”を殺した存在への己の無力さ、そして俺が大怪我をした事で俺まで消えてしまうんじゃないかという不安、色々なものがごちゃ混ぜになって涙と叫びとなって現れる。

 俺はあの時、彼女の不安を取り除くどころかタコ女に無様に突き飛ばされて倒れてしまった。それがどれだけ彼女の心にプレッシャーを与えてしまっただろうか?

 人形一人の”心”も救えないなんてオーナー失格だ。だから、俺には彼女を強く抱きしめる事しか出来なかった。それしか彼女に詫びる事が出来なかった。

 

 せめて彼女の気持ちの受け皿になってやれなければ、いよいよもって俺は彼女のパートナーなんて名乗れやしない。工場長にどのツラ下げて言えるんだってな。

 

 

 ・・・タコ女め。必ずこのケリは付けさせてもらうからな。




 


「・・・チックショウ、あの銀髪人形め。今度会ったらスクラップにしてやらなくちゃ」


 タコ女改め『ロッソ』はゲーガーに切り刻まれた触手の再生を待って、忌々しげに逃げた方角を睨みつけながらそう呟いた。
 しかし、完全に逃げられてしまったものは今更追う事も難しい。己の失態として、速やかに対処をこなさねばならない。

 ロッソは自身のボロボロに焼けただれたジャケットから携帯端末を取り出し、耳に当てる。


「ハーイ? ごめんね、チョットしくじっちゃったぁ」

『何がだ?』

「ネズミさんが3人、いや4人かな? この工場の敷地内に入ってきてたみたいでぇ」

『逃げられたのか?』

「うん・・・」


 スピーカー越しに相手の男から大きな溜息が聞こえる。
 ロッソはそれに思わずムッとした顔を浮かべるが、相手はそれも気にせずといった様子で口を開いた。


『まあいい。どうせ工場長のデスクから何かしらのデータを抜き取るのが目的だろう。それもお前に仕込ませたウィルスによって、こちらへの転送が完了後順次データを抹消する仕様になっている。だから大して問題は・・・何?』

「へ? どしたの?」

『インストールの完了していたはずのウィルスが”全て駆逐されて”いる??』

「えぇっ?? だ、だって、私確かにウィルスはPCに注入したわよ? そっちでもモニターしてたでしょ?」

『あぁ・・・クッソ。ロッソ、すぐにこちらに戻ってこい。お前が出くわしたネズミの情報を洗い出す』

「りょうかーい。私も必ずケリつけてやりたいって思ってたんだぁ」

『・・・あくまで計画遂行のための行動であることを忘れるな。お前の独断が許される状況ではなくなってきたぞ』

「・・・了解」


 ロッソは端末を懐にしまう。
 そして、グンニャリと大きく弧を描いた醜悪な笑みを浮かべた。 


「必ず、あなたたちも私のお口で喰い殺してあげるわ」

P90に名前を付けるとしたら?

  • そのまま『P90』でいんじゃね?
  • 『ナインティ』でいんじゃない?
  • ナインとティを逆さにして『ティナ』とか?
  • いやいや変化球で『きゅーまる』はどうよ?
  • 良いアイデアがあるから感想に書くぜ
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