裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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-52-タネマキ

 

 

 

「あ、ぐっ・・・」

 

「グリフィンのクズが。見捨てられた”野良”の人形を使って悪足掻きしようなど、全く余計な手間を掛けさせてくれますね」

 

 

 燃え盛る建物のとある一室で、宙に浮かされた少女と、少女の首を片手で持ち上げるメイド服の女がいた。

 少女が苦しそうに呻く一方、メイド服の女は親の仇を見るような眼で少女を睨み続ける。

 

 

「しかしそれも終わり。私どもの勝利は揺るがない。さあ、貴方の得たものをこちらに渡しなさい。そうすれば痛みを感じないよう楽に死なせて差し上げます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーM4A1ー

 

 

「だ、誰が・・・」

 

 

 危機的状況にあるはずの少女・・・M4A1は、それでもなお抗う意思を失ってはいない。

 自らの首を絞め上げるメイド服の女・・・エージェントを睨みつけ、徹底抗戦の意を示して見せた。

 

 

「・・・流石ですね。絶体絶命の状況にあってなお、私をそのように睨むとは」

 

 

 エージェントは冷ややかな笑みを浮かべ、握るM4A1の首へ更に力を込めた。

 その瞳には燃え滾る怒りが宿る。

 

 

「しかし、それは見方を変えれば往生際が悪いとも言える。クズ鉄の一つでしかない癖に随分と生意気な顔。分を弁え、恥を知りなさい」

 

「っ! ぐぅぅ・・・」

 

「・・・悪いが、そいつをここで死なせるわけにはいかん」

 

「!?」

 

 

 直後、物陰に隠れていた女性が姿を表す。

 彼女は自身の得物・・・M16A1の銃口をエージェントに向け、引き金を引き絞った。

 

 

「ごちゃごちゃ言ってないで今すぐ地獄に堕ちろ!! 鉄血のクズが!!!」

 

 

 放たれたマガジン一杯の弾はエージェントの頭部に吸い込まれていき、美しい美女の顔はあっという間に鉄のフレームと壊れた基盤へと変貌していく。

 エージェントが物言わぬ屍となったのを確認し、M16A1は呼吸を整えるM4A1に寄り添う。苦しげに噎せる”妹”の背中を擦りつつ、彼女はM4A1へと声をかけた。

 

 

「感謝しろよM4。また危ないところだったぞ」

 

「はい・・・M16姉さん、外はどうなっているのですか? AR15たちはーー」

 

 

 この場にいないメンバーの名を出した矢先、二人の人物がM4たちに駆け寄ってきた。

 燃える建物を潜り抜けてきたのか、髪や服に煤が付いていた。

 

 

「戻ったわ。鉄血の増援が来てる、急いで撤退しないと」

 

「支援部隊が食い止めてくれてるから、急ごう!」

 

「M4、指揮は取れるか? 怪我は軽くないようだが」

 

 

 差し出されたM16の手を取り立ち上がるM4。若干咳き込みながらも、しっかりとした足取りで周囲を見渡す。

 

 

「大丈夫です・・・M16姉さん、修復を手伝ってください。私は先に指揮システムをチェックしてきます」

 

「分かった」

 

 

 燃え盛るセーフハウス。たった一人のハイエンドの攻撃でここまでやられてしまったが、M4たちが必要としている設備は奇跡的にまだ使えるようであった。

 彼女はすぐさまシステムを立ち上げ、セーフハウス周囲一帯の戦術マップを表示させる。

 

 

「よかった、戦術マップが無事で。通信システムは・・・」

 

『システム正常! はっきり聞こえてるよ!』

 

 

 応答してきたスコーピオンの溌剌とした声に一瞬悲しみを湛えた彼女だが、すぐに表情を切り替える。今彼女のすべきは見捨てられた人形たちに同情することでは無い。

 

 

「・・・すみません、あとはお願いします」

 

『ご遠慮なく。それが私たちの務めですから』

 

 

 PPSh-41からの返答に再び悲痛な気持ちを覚えるも、自分たちが無事に撤退するにはこの人形たち・・・この地区に取り残され、見捨てられた彼女たちを”利用”しなくてはいけない。情に流されてはならない。それは部隊員としてもそうだし、”指揮官”の役目を与えられた彼女(M4A1)にはより強く求められること。

 今度こそ決意を決めたM4は、努めて冷静に人形たちへ返した。

 

 

「・・・了解。なるべく早く撤退します」

 

 

 

 -----

 

 

 

 P90が(強引に)俺の元へお届けされてから数週間ほど経った。

 今日まで何をしていたのかというと、どこかの”わーちゃん”よろしくこの子も徹底的にボッコボコに教育してきたのだ。

 初対面で弾を避けるのには自信があるとか自分から言ってたからな。ペイント弾を使うと洗濯する水が勿体無いので、手始めにBB弾で撃ちまくってやったが・・・。

 

 

『ほれほれほれほれほれほれほれほれ』

 

『うぎゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!!??』

 

 ・

 ・

 ・

 

『う、うぅ・・・おかしいよこんなの。なんで最初から戦闘仕様で作られた筈の私が手も足も出ずにボコられてるの・・・』

 

 

 こうなった。

 

 射速も弾の威力も実銃と比較にならないエアーガン同士でバトルをし続けてるわけだが、まあ彼女の動きは新兵(ひよっこ)ってところである。

 弾が当たらない場所、攻撃されない場所、気付かれない場所、先手必勝で敵を仕留める位置取りやクリアリング、そのどれもが予めインプットされたマニュアル通りの動きでしかなく、俺からすると非常にボコしやすい教育しがいのあるつまらん動きだったというわけ。

 この子は足自体はどちゃくそ早く、どこぞの新体操みたいな曲芸じみた空中大回転も出来る位身体能力も高いのだが、経験不足によりそのポテンシャルを発揮できずに死亡判定を貰ってるのが現状だ。それは実にもったいないので、なんとか俺に一発当てられるくらいには早く育って欲しいところ。というわけで発破を掛けまくる。

 

 

『まだまだだな』

 

『ご主人の動きが奇天烈なんだよ!?』

 

『失敬な』

 

 

 やってることといえば、天井に張り付いて真下に来たところを足で首根っこ締めて終わらせるとか、完全に気配を消して後ろをトコトコ着いて行って振り向いた瞬間にデコピン食らわせるとか、向こうが撃ってくる弾を全部避けてからお返しに撃ち返したりとか、本当その程度のものである。こんなこと誰にでも出来るだろ?

 

 

『出来るわけ無いでしょう』カカシチョップ

 

『いて』

 

 

 いつの間にか背後にいたスケアクロウにチョップを貰ってしまう。なんでだ、出来る事を活用して色々としごいてるだけなのに。というか、またスケアクロウに思ってる事を見抜かれた。

 

 

『・・・全く。一見ポンコツそうなあのWA2000がエースライフルまでのし上がるというのも納得出来ますわ。こんな曲芸染みた動きを何度も相手取っていたら、それは大抵の敵の動きはお見通しというものです』

 

『・・・褒めてんの? 貶してんの?』

 

『両方ですわ』

 

 相方からの辛辣な言葉に俺の心は少し傷付いた。なんだよ曲芸って、パターン化した戦術なんて見破られたら終わりだろうに。こちとら裏で生き残るには色々と工夫に工夫を重ねてやってかないと簡単に死ねるんだぞ。

 気持ち口を尖らせてみると、スケアクロウはやれやれと言わんばかりに露骨に首をお振りになられた。えぇ・・・。

 

 

『とにかくだな、せめて俺に一発掠らせる位には育ってもらわないと困る。絶対死なないつもりで足掻いてもらおうか』

 

『・・・ご主人が鬼畜だぁ』

 

『ナマ言うお口はこれかにゃあ?』

 

『いひゃいでひゅごひゅひん』

 

 

 人形とは思えないミョンミョン伸びるほっぺを抓ってお仕置きしたりもしたが、そこからなんやかんやと訓練でボコしては反省会を繰り返した結果。

 

 

「いててててて」

 

「食らえ食らえ食らえ食らえにゃはははははははーーー!!!」

 

 

 遂に彼女に黒星を喫する事となった。つか痛え。実弾だったらもう死んでんだからさっさとトリガーから指離しなさいよ・・・ってあ!? コイツいつの間に50連マガジン(BB弾)から300連マガジンに換装してやがる! 今までの腹いせに有り弾全部撃ち尽くそうってか? 

 絶え間なく大量のBB弾がフルオートでぶつかり続けて痛い。イテテテ、痛いっちゅうの。・・・にゃろう。

 

 

「にゃはははははーーーー、あり? もう弾がきれちゃ、った・・・うぇぇぇ、ご主人調子に乗ってごめギャッ!!?」

 

「ゴルァ」

 

 

 弾が切れた瞬間を見計らってドロップキックをかましてやった。初めて俺に死亡判定を与えられたのが余程嬉しかったのか調子に乗って無駄弾撃ち始めたので、律する意味も込めてお仕置きである。あと、単純にいらん弾使って徹底的に撃ち続けられてる事に物凄くムカついたのもある。

 瞬間的ドロップキックに目を回したP90だが、仲間に加わってから数週間で俺に死亡判定食らわせられれば上々だろう。わーちゃんとはまた違ったベクトルで良い戦力になってくれると思う。

 

 

「・・・なにはともあれ、おめでとうございますP90」

 

「えっへへへ、やっと勝てたよサーちゃん」

 

「・・・いつの間にスケアクロウにあだ名が付いたんだ」

 

 

 P90が言うサーちゃんというのが、スケアクロウの名前(サーリャ)から取ったモノだというのはすぐに分かった。

 彼女には俺がボコした教育したあとのフォローを頼んでいたのもあり、元々があの取っ付き易い性格なのもあってP90はすぐに仲良くなれたらしい。

 二人とも人形とはいえ必要に応じて汗はかくので、訓練後に体を拭いたりしてる時にでも色々話してたんだろう。スケアクロウも満更でも無い感じのしたり顔でフヨフヨ浮いてるので、まあ仲良き事は良い事だと思いつつ視線をP90へと移す。

 

 

「さっきの無駄撃ちに関して言いたい事はあるが、とりあえず俺に死亡判定出せるレベルまで上達したことは素晴らしい結果だな。だけど、それが実際の”仕事”となった時にどこまで発揮できるかはまた別問題だ。気を引き締めて臨むように。決して俺に勝った事がゴールじゃないというのを肝に銘じとけ」

 

「は、はい!」

 

 

 肝に銘じろと言った途端ビクリと体を震わせたP90に、俺は苦笑しつつ手を差し出した。

 

 

「・・・おめでとうP90。これからもよろしく頼む」

 

「え・・・ふぇぇぇ、ごぢらごぞ、ヨロジグお願いじまずぅぅ」

 

 

 握手を求められた事に気づいた途端、なんとP90が大号泣し始めた。

 俺から白星取れて嬉しいのか、大げさなくらいに喜んでら。それともあれか? 俺にようやくボコられずに済むからって? ・・・もしそうだとしたら少し凹む。

 

 

 

 -----

 

 

 

「ところでご主人。サーちゃんの事は名前で呼んであげないの?」

 

「・・・呼んで欲しいんならそっちで呼ぶか?」

 

「・・・」プイッ

 

 

 気持ち顔を赤らめたスケアクロウさんがそっぽ向かれた。いや、つまりどっちが良いのよ。

 

 

「あの、スケアクロウさんや」

 

「つーん」

 

「どないせいっちゅうねん」

 

「今のは女心を分かってないご主人が悪いよね」

 

「理不尽な・・・」




・・・最近体がだるいっす。
モチベも上がらない。でも逃げたくはないので頑張りたい。

アンケートを作ったので、良かったら普段コメントされない方も是非ご協力くださると嬉しいです。
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