裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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モチベが足りない。
色々気が散りまくって中々書けません。絶不調極まりない今日この頃、悲しい・・・。


-53-始まり(Prologue)

 

 

 

「・・・わざわざ俺の端末に直接掛けてくるってのは、どういった御用件で?」

 

 

 以前のような日常に戻りつつあった矢先、とある人物からダイレクトコールが掛かってきた。もちろんそれは意味もなくただ談笑するためではない。裏稼業の俺に”仕事”の依頼をするためのモノ。普通なら仲介人として通しているはずのギルドを介さず”依頼人”から直接掛かってきた連絡に、耳に端末を当てながらも内心相手の目的を訝しんでいた。

 

 

『実は君に人形の捜索を依頼したいのだ』

 

「人形? そりゃまた、一見するとご身内だけでも十分解決出来そうなモノに聞こえますね。一体何があったというんです?」

 

 

 電話の相手は『G&K』のCEOであるクルーガー。以前わーちゃんの捜索の時もそうだったが、わざわざこうして掛けてくる辺り結構急ぎの内容のよう。

 ただ、人形を探すだけなら自身の部下の指揮官たちにでも任せれば良い。もちろん既にそうやっているのかもしれないが、俺にも依頼が来るということはとにかく人手が欲しいのか、それとも人形の存在自体をあまり大っぴらにしたくないのか。

 

 にしたって裏で生きてる人間に仕事を依頼するってのは、それ自体がクルーガー引いてはG&Kにとってハイリスクな行為のはず。ヤクザやマフィアとは違うにせよ、世間からすれば俺たちも反社会勢力の一部。そんな奴に極秘に仕事を依頼するってのは良い加減本当に問題ないのか問いかけたい所でもある。

 

 

『・・・詳しい話は君のギルドの受付嬢に伝えてある。まずは彼女に話を聞いて欲しい』

 

「分かりました。直ぐに対応に入ります」

 

『よろしく頼む』

 

 

 そう言って通話は途切れた。

 強面の筋肉ゴリラ社長が放つ重苦しい空気が途切れ、周囲に何もない寝ぐらの静かな空気が戻ってくる。

 

 俺は即座に立ち上がり、何事かとこちらを見つめるスケアクロウたちに言った。

 

 

「仕事だ。ギルドに行くぞ」

 

 

 

 -----

 

 

 

「来たわねレイ。第二会議室に来て。仕事の話を進めるわ」

 

「ああ」

 

 

 オンボロを走らせギルドへとやってきた俺たちを出迎えたアインスは、時間も惜しいと言わんばかりにとっとと階段を駆け上がっていってしまった。

 ・・・相変わらず足の早え女だな。実戦から離れて暫く経ってるとはいえ、身体能力はまだまだ現役レベルってか。

 

 

「おぉ〜、あんなスピード見せられたらアタシも負けられないね!」

 

「張り合わないでよろしい」

 

「ぶぅー」

 

 

 口尖らせて抗議するP90を横目に、俺たちも会議室へと向かう。

 工場に潜入する時、ギルドと逃げてきた鉄血の面々でミーティングをした部屋だ。それなりのスペースがあってプロジェクターも備え付けられているので、特に遠方のクライアントとテレビ通話をする時に何かと都合が良い。

 ちなみに、こんな旧式のものではなくホログラムを使った最新式のプロジェクターも世の中それなりに出回っているんだが、その手のツールってのはメンテナンスのコストが結構掛かる。

 ウチのギルドには部品が壊れたら自分で作って直すってのが出来るエンジニアが何人かいるので、そう言った意味でも型落ちとはいえこちらの方が使い勝手が良いのである。閑話休題。

 

 中に入ると案の定テレビ通話の用意が整えられており、投影された映像には『SOUND ONLY』と書かれたウィンドウが画面いっぱいに表示されている。

 とはいえ、顔こそ隠していても先のやり取りから誰が相手なのかは分かりきっているが。

 

 

「クルーガー社長、お待たせしました」

 

『分かった。それではレイ、改めて依頼の話をしよう』

 

 

 映像が切り替わり、ある地域の戦略マップと制圧状況を示すグラフが表れる。

 この辺りはG&Kが最近制圧に手を出したエリアで、現状未だ多くの鉄血人形がそこを守っていることをグラフの数値が示していた。

 

 

『このエリア・・・我が社では便宜上S-09地区と呼称しているが、この地区に存在するある人物の残したセーフハウスにて極秘のミッションを遂行していた』

 

 

 それがこの小隊だ、そう言って新たに映像に映し出されたのは、I.O.P.製と思しき銃を持った三名の女性達。映っている銃の形式から察するに、それぞれM16から連なるコルト社の銃に適合した人形のよう・・・いや待て、違うメーカーの銃(AR-15)も混じってる?

 

 

『任務の詳細は教えられないが、今映し出している三名にもう一人を加えた計四名の戦術人形で『AR小隊』という部隊を構成していた。

 だが、任務中に予想外の事態が発生してな』

 

 

 予想外の事態・・・鉄血に大規模な奇襲でも掛けられたか? そう思ったところに表示された写真に俺たちは思わず吹き出した。

 

 

『SP47 Agentと呼ばれる、鉄血が誇る最強の戦術人形(フラッグシップタクティカルドール)だ。彼女の奇襲により、AR小隊はバラバラとなってしまった。

 幸いこの地区の脱出自体はできた様だが、残念ながらそれ以降どの人形もまともに行方がつかめていない。彼女達が撤退時に指揮を執った廃棄人形たちも鉄血に人質に取られたという有様だ』

 

 

 ・・・いつかはこうなると思っていたが、まさかここまで早く”敵としてのエージェント”が生み出されたとはな。

 製造コストの高さに見合う文字通り鉄血最強のエージェント。暴走が始まってからここまでの短い期間で生まれたという事は、俺たちの元にいる”まともなハイエンド”と瓜二つの”敵”も既に生み出されたと考えるべきだろう。

 特にハイエンドの中では比較的コストの抑えられたSP65型・・・スケアクロウやSP88型のエクスキューショナーは、下手したら複数もの機体が製造されて鉄血の侵略活動に加担している可能性が高い。

 ・・・これが終わったらスケアクロウたちと合言葉や目印代わりの何かを早急に取り決めるべきだな。騙されて殺されたり、俺が敵と間違えて手に掛けたりなんてしたら本気で洒落にならねえ。

 

 

「・・・なるほど」

 

『我々が求めているのはS-09地区にて彼女たちが入手したとあるデータだ。現在、そのデータを保有しているのはAR小隊の隊長を務めている戦術人形と思われる。他の人形はおそらく囮となって散り散りになったと考えられているが・・・現時点でもっとも回収の優先度が高いのは隊長機のこの人形『M4A1』だ』

 

「M4A1・・・っ!」

 

 

 映された写真は、タンカラーの衣装に身を包み、艶やかな黒に緑のメッシュが入った長い髪の美少女。あどけなさというか頼りなさがにじみ出る不安げな表情に、俺は昔の記憶を思い出した。

 

 

「・・・・・・社長。この人形、まさか?」

 

『彼女を発見し保護してくれ』

 

 

 記憶の通りならこの少女は・・・しかし俺が問いかけるも遮るようにしてクルーガーは言葉をかぶせた。俺が気になった事について今は触れてくれるなと、そう言わんばかりに。

 

 

『無論、出来る事なら他のメンバーの回収もして欲しいところだが・・・とにかく直ちに救い出さなければならないのはM4A1だ。

 捜索に辺り必要となる情報は機密を除いた範囲で既にリストアップしてある。後ほどアインス(彼女)からデータを受け取ってくれ』

 

「・・・了解」

 

 

 よろしく頼むと残し、クルーガーとの通話が終わる。

 同時に頭の中に消化しきれないモヤモヤが広がる。

 

 M4A1と呼ばれる戦術人形。あの顔立ち、体格、それらを反芻するだけ過去の記憶に存在する”ある少女”の姿に重なる。

 ・・・おかしい。あの時確かにあの(むすめ)は死んだ。その場に居合わせていたクルーガーが知らない筈もない。

 それとも、I.O.P.の設計した人形の外見が”たまたま”あの少女に似通っただけ? それこそあり得ない。ピンポイントにここまで酷似するなんてどれだけの確率だ。

 

 ・・・そういや、クルーガーは俺にも明かせない極秘の任務に当たらせていたと言っていた。

 任務の内容はなんだ? あの娘の姿を象った人形をわざわざ作って派兵することの意味は?

 

 またキナ臭い何かに巻き込まれてる気がする。ギルドが仕事を受けちまった以上、やらないという選択肢は無いが・・・。

 

 

「スケアクロウ、P90、話は聞いた通りだ。特にスケアクロウに関しては、キミと全く瓜二つの”敵”が現れることが十二分に考えられる。もし鉢合わせた時に確実に区別が付く様に、今ここでキーワードを決めておこう」

 

「・・・同感ですわ。バホ姉の二号機が作られた以上、私の二号機三号機が生み出されていてもなんらおかしくありませんもの」

 

「いっそのことサーちゃんと同じ人形何体も鹵獲してサーちゃんトライアングルにしちゃえば?」

 

「シバきますわよ?」

 

「ごめんなさい」

 

 

 二人のやり取りはさておき。

 

 アインスから予め纏めておいてくれたファイルを受け取り、ペラペラと捲っては消息を絶った現場付近、およびその近隣の状況を頭に入れていく。

 誰かさんが残したというセーフハウス周囲はもちろんの事ながら、どこも見るだけでうんざりする様な勢力構成になってるのが分かる。慈悲も容赦も無い殺人マシーンの巣窟と化したエリアで、果たして救出目標の人形たちは脱出できたのか? そこから疑問に思えてしまうほどに。

 

 さて。リストアップされたこの地図や上空からの写真から鑑みるに、I.O.P.製の人形なら大体この辺りに忍び込むだろうという場所は幾つか絞れた。

 恐らくこの人形はエネルギーの消耗を可能な限り抑えること、自らの存在を周囲に露見させないために『サイレントモード』に切り替えているはず。足がつく通信の一切を使用せず、自分の五感だけを頼りに生き抜いているんじゃないかと思う。

 

 問題は・・・複数ある候補のどこが本命なのか。探しに行くにも見つかるとかなりヤバイ危険区域のため、確実にいるであろうスポットを狙って探し出さなきゃいけない。

 ・・・鉄血の警戒ライン手前に接近してから考えるか。現場の情報が少なすぎてここでは判断しきれない。

 

 

「・・・もし私と瓜二つの敵が現れた時のキーワードなんですが」

 

「うん?」

 

 

 スケアクロウに肩をトントンされた。

 彼女のそっくりさんと出くわした時に俺がすぐに判別する良い案があるらしい。

 

 

「私の名前を聞いてくださいな」

 

「それで、サーリャって答えたら本物ってか?」

 

「そしてその後に私が姉のことをどう呼んでるかと聞いて」

 

「・・・バホ姉と答えれば本物だと」

 

「ええ」

 

「・・・このお話リーちゃんが聞いてたら泣いちゃうよ?」

 

 

 P90がエージェントのこともあだ名で呼んでるのはさておき、本人が聞いたら崩れ落ちるくらいの中々酷い姉いびりである。バホ姉と答えれば本物だとという問いにはっきり「ええ」と即答されたよこの子。そう呼びたくなるくらい苦労を掛けられたと言うことなんだろうけど。普段のエージェントもイイ性格してるからなぁ・・・。

 

 

「とにもかくにも。似ているからといって同士討ちをする事態はお互いにとって最悪の不幸ですわ。恐らくは遠くない内に私たちとそっくりの”敵”に出会うでしょうけど、そうなっても狼狽えて隙を見せないように参りましょう」

 

「ああ。それじゃ、各自必要な装備を整えよう。5時間後に出発だ」

 

「「了解」」

 

 

 P90にとっての初の実戦、どうか悲惨なトラブルが起きないでくれよ。




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