裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 結局時間が掛かってしまってダメだなぁ・・・。
 っていうか、暑いし寒いしで体が疲れっぱなしじゃあ。

 大変お待たせしました。
 今回はギルドの中での小話です。


-55.5-幕間

 

 

 

 ヨーロッパのとある地域に拠点を置く闇ギルド『Blutbemalter Mond(血塗られた月)』。

 構成員は少数ではあるが、その代わりに皆が高いクオリティの仕事をすることで裏社会では有名な組織。

 

 メンバーの一人である俺こと『ウラカン』は、今日も今日とて”オンボロ”のメンテに精を出していた。

 約30年前に作られた、バイクの枠を超越した超大型モンスターバイクのオンボロ。作った当人が言うのもなんだが、当時は我ながら結構イカしたバイクを作ったと思ってた。だが、コイツを売り出した直後の大事件で世界がとんでもないことになっちまった。

 おかげで現代じゃあマトモな路面は数えられる位しか残っちゃいねえ。コイツは舗装された路面に適したタイヤを履かせないと本気の実力が出せねえってのに。

 そんな訳で今のオーナーであるレイと相談して、オフロード仕様に改造して乗り続けようとなったんだが、デカくてデコボコの大きいタイヤを履かせてるとちょっとばかしボディには負担が大きいらしい。

 幸いオーナーはその手の機微を敏感に察せる奴なもんで、毎回大事になる前に手入れすることが出来ている。

 

 てなことで、今日もエンジンの調子やPartner(サイドカー)との動きをチェックしては、今すぐ手を入れるべきところをリストに書き出す。

 まあレイ(アイツ)の事だからどうせ全部やってくれと言うのは分かってるんだが、とは言っても一応の説明とそれからの進行可否の確認はしなきゃならん。

 部品作るのだってタダじゃねえしな。万が一スポンサーの懐事情が悪いところに勝手にやっちゃっちゃあ問答無用でバトル開始だ。最近は滅多にそんな事にゃならんが。

 

 ・・・ふぅ。とりあえず一息吐く・・・ん????

 

 

「うぉっ!!!??」

 

 

 作業に集中してて気付かなかったが、ふと視線を感じて振り向いたら工房の窓に人が張り付いてた。

 目はキラキラ光り、ヨダレはダラダラ。極め付けにものすごく緩みきった「ゲヘ、ゲヘヘヘヘ」と言わんばかりの嬉しそうな笑顔。

 これじゃあせっかくの可愛こちゃんが台無しじゃねえかってあーあー・・・サイドに結んだ髪の先っちょまでヨダレまみれになってやがる。

 

 コレをこのままほっ放っておいたら誰かに見られた時に誤解されるな・・・。

 

 俺は大きくため息を零すと、垂れたモノを拭くタオルを持って覗き込んでる奴に話しかけた。

 

 

「・・・・・・アーキテクトっつったっけか? 邪魔しないんなら見てくか?」

 

「良いのっ!!?」

 

 

 それはそれは嬉しそうに言ったとさ。

 

 

 

 -----

 

 

 

「ゲーガーってさ」

 

「なんですか?」

 

 

 ところ変わってこちらはギルドの一階。

 レイ達が工場に潜入した際に一緒に行動して以来、ギルド受付嬢のアインスはゲーガーの事を何かと気に掛ける様になった。

 感覚としては新たな仲間であると同時に妹分といったところか。ゲーガーとアーキテクトの関係性を聞いて、よく連む仕事仲間が時折ハッチャけた真似をするという点で親近感を覚えたらしい。

 どの道ギルドにいる以上は何かしらの仕事をしてもらわないといけないので、ゲーガーにギルド内での仕事を教えつつアインスは積極的にコミュニケーションを図っていた。その甲斐もあって、生真面目な性格からやってきた当初は緊張しいだったのが、今ではある程度砕けた彼女本来の表情も見せてくれる様になっている。丁寧語は変わらず取れないが。

 

 ちなみに今は休憩時間中である。

 

 

「もし、自分が他の人の元へ行ってたら(誰かに買われてたら)って考えたことはあるの?」

 

「誰かに購入されてたら、ですか・・・考えたこと自体は何度かありますけど、でも私もアーキテクトも生み出されてまだそんなに時間が経っていませんから。明確にイメージが湧くというより、こんな人だったらこうなってるのかなとか、そんな漠然とした夢程度のものですよ」

 

「あー。確かに生まれて間もなくそんなこと考えろって言われたって、人生経験が全く積み重なってねえのに分かれってのも無理な話だわね」

 

 

 言われてみればそうだと思ったアインス。手に取ったマグカップを持ち上げ、中の水を一口含む。

 ・・・本音はコーヒーを飲みたい所だけど、なんて考えながら。

 

 

「あ、でも」

 

「ん?」

 

「サーリャ姉さんとレイさんのことを羨ましく思った事はあります。姉さんと初めて会ったのは定期メンテの時でしたけど、レイさんと話してる時の姉さんが本当に充実してる様に見えたので」

 

「なるほどねぇ」

 

 

 言わんとする事はアインスにも理解できた。

 一見無表情に見えて、その実感情豊かで割とよく喋るあの子(スケアクロウ)

 

 アインスがレイに割り振ったとある仕事以来、購入契約を交わしてない状態でレイに付き纏ってはサポートをし、最終的に販売元に契約を成立させたあの子(スケアクロウ)

 ・・・何この既成事実を作って無理くり男をゲットしたみたいなという思考が一瞬頭をよぎったアインスだが、”淑女”の嗜みとして表には出さない。

 ともかく経緯はどうあれ、現場でハチャメチャな動きをやりがちなレイを諌める相棒が出来たのはいい事だとも思う。・・・昔その場所に立っていたはずの自分はいつも喧嘩ばかりで、理性的に話して咎めるって事が出来なかったから。

 その瞬間胸に走った痛みを無視して、アインスは再びカップに口をつけた。

 

 

「ま、今はうちのギルドに籍を置いてるんだし。引き続きウチの組合員のサポートをよろしく頼むわ。数は少ないけどレイ以外にもやり手はいるからね」

 

「もちろんです」

 

 

 頷き微笑むゲーガー。

 なんだ、笑うとカワイイじゃんと心に留めつつアインスは立ち上がる。掛けられた時計の針は、もうすぐ次の業務の始まりを示そうとしていた。

 

 

「さ、後半も頑張りましょう」

 

「よろしくお願いします」

 

 

 ゲーガーは綺麗なお辞儀をしてみせた。

 

 

 

 -----

 

 

 

「むぅ・・・主様はまたも私を連れて行ってはくれなかった」

 

「適材適所というものがあるのだから仕方ないでしょう」

 

「しかもウロボロスの兵装だと加減が効かないしね〜」

 

「むむむむっ」

 

 

 さらにところ変わってギルドの6階。より正確には屋上兼喫煙スペース兼憩いの場。

 そこには、バケツとデッキブラシを持ったハイエンドの三名がいた。メンバーはエージェント、ウロボロス、デストロイヤー。

 

 一応多少の雨をしのげる程度のトタン屋根は後付けで設けられているが、階段のある建屋以外は吹き曝しの状態なのでまあ何かと雨風ですぐに汚れる。憩いの場として機能させるには多少なりとも美化に努めなければならず、そしてその状態を悪化しない様維持する努力も必要である。

 であれば、その作業を最も効率的にこなせるのは誰か、その問いに自ら手を挙げ名乗り出た存在こそがエージェントである。両隣に座っていたウロボロスたちの手を掴みながら。

 

 自分で掃除なんかしたくないJK(ウロボロス)JC(デストロイヤー)だったが、掃除の他に貴女たちが役立てることを30秒以内に5つ言えたら免除しましょうというエージェントの問いに敢えなく撃沈。エージェントの指揮の下、渋々掃除に勤しむこととなったのだ。

 

 掃除とは一見地味に思える仕事に思えるが、実際には施設を使う人間が心地よく過ごせるために決して欠かすことの出来ない、屋台骨までは行かずともそれくらい重要な仕事である。

 周りが汚ければ人の心も自然と淀むものだし、逆に綺麗に整えられていればスッキリとした気持ちでいられるだろう。それに掃除とは誰にでも出来るように思えてその実とても奥の深い仕事でもある。その人のクセはもちろんながら、適当にやればすぐにボロが出てくるのだから。

 性格上掃除には不向きなこの二人。案の定最初は適当にハイハイと済ませようと思っていたのだが、彼女らの”仕事”の結果を見たエージェントに『四角い部屋を丸く掃くほど簡単なことはないですわ』と笑顔で叱責(ブッチン)されて以降は、心を改め精を出している所である。

 

 

「・・・しっかし、私はもう一度主様と共に戦場に赴きたい気持ちで一杯だというのに、何故今日も今日とてブラシ片手に床を擦っているのだ」

 

「口を動かさなくて結構。手を動かし貢献なさい」

 

「ぶふ、怒られてるし♪」

 

「貴女もですよデストロイヤー。まったく・・・」

 

 

 右手のブラシで床を擦りながらもう片方でこめかみを抑えるエージェント。さながらワガママ姉妹を持つ母親か年の離れた長女といったところか。

 一方のウロボロスたちは見るからに口を尖らせ不満げだ。デストロイヤーに至ってはわざわざ「ぶぅ〜」と声に出す程に。

 

 とはいえエージェント自身、二人の不満・・・戦場で戦いたいと言う気持ちはとてもよく理解している。

 鉄血のハイエンドモデルとは戦術人形であり、その中でもトップクラスのスペックを持つ人形である。だのにギルドに来てやってることは掃除ばかりで、レイの取引に全員で付いて行った時も戦闘そのものはほとんど一方的なモノに終わっている。

 ウロボロスに至ってはより高度な戦術指揮が可能な最新型というのもあり、より内から滾る闘争欲求が強いのだろう。

 

 しかし、今の自分たちは頻繁に戦場へ出張って目立ってはいけない立場。さらに先ほどデストロイヤーが言ったように、ウロボロスの主兵装は実体弾を使う関係で特に威力の加減がし辛い。当たりどころを調節してとやれば、今度はミサイルという性質上必要のない余計な所まで破壊しかねない。

 これが軍の一斉殲滅作戦であれば間違いなく花形になれるのだが、基本的にステルス&デストロイが大前提の仕事ではむしろ没個性になる事の方が多い。

 幸いなのは頭の髪飾りに武装を格納できるところか。いざとなれば他のモデルの武器を格納して連れて行ってもらおうかしら・・・。

 

 ウロボロスの不満がピークに達する前に何かしら策を講じないと、そう思案したエージェントはハッと我に返ると、ブラシの柄に顎を乗せてニマニマしながらこちらを見据える二人に気付く。

 

 

「「手が止まってますぞ〜? リーリャ姉さん(お姉ちゃん)??」」

 

「調子に乗るなバカ(イモ)!!!」

 

 

 エージェント は なぎ払った!!

 

 

 

 -----

 

 

 

 カリカリカリカリ・・・

 

 

 カリカリカリカリ・・・・・・

 

 

 カリカリカリカリ・・・・・・・・・

 

 

 カリカリk

 

 

ご主人(ごしゅじ〜ん)サーちゃ〜ん暇ですたい」

 

 

 グデーんとベッドに横たわるP90が、やる事が無くて遂に音を上げだした。

 前の一件以来、寝ぐらだけでなくギルドの方の部屋も使うようになった俺たち。今日やるべきトレーニングや機材の点検は既に終え、俺の部屋で三人思い思いに過ごしている所だ。

 

 俺は机でノートに書き物を、P90は俺のベッドに勝手に寝転びゴロゴロ、スケアクロウは”浮いてる方が省エネ”という本人の言葉通り空中にフヨフヨしてる。

 

 

「休める時に休んでおきなさい」

 

 

 仰る通り。

 この前もそうだったが、一度仕事に入ると数日帰れないことだってある。やることを終えたのなら後はゆったりリラックスして過ごすのが良い。

 P90の性格上、ジッとしてるのはあまり得意じゃないようだが。

 

 

「そんな事言われても暇なものは暇なんだーい。っていうか、ご主人はさっきからナニ書いてるの?」

 

「家計簿」

 

「「えぇ?」」

 

 

 さっきからカリカリ書いてたのは金の無駄を省くためのリストだ。

 危険な代わりにそれなりに報酬ももらえるハイリスクハイリターンな裏稼業だが、それでも家計簿をわざわざ付けてるのにはワケがある。

 

 

「スケアクロウのローンが消滅したといっても、キミらの修理に回す予算とオンボロのランニングコストは前もって用意しとかないといけないだろ。

 羽振りよくなれる程余裕が回復したわけじゃないから、切り詰められる所は切り詰めて貯蓄も少しずつ貯めてかないと」

 

「はぇー」

 

「・・・貴方の稼ぎならそこまで神経質にならなくても良いのでは?」

 

「生憎、乗り回してるバイクが金食い虫なんでな」

 

 

 今時ハイオクガソリンなんて殆ど精製されてない。だから輸送費もそうだし、少量生産になるためリッターあたりの単価も跳ね上がる。おまけにオンボロは5000cc越えの大排気量エンジンを積んでるのもデカイ。

 あの人の忘れ形見でもなきゃ、オンボロをこの時代この社会情勢の中でなお乗り続けるということはしない。言い方は悪いが、このバイクは金持ちの道楽のために作られた様なモノで、金よりも物の方が価値が高い時勢にはそもそもが適応出来ない車とも言える。

 

 

「ねぇねぇご主人。いっつもご主人あのバイクのことオンボロって呼んでるけど、オンボロって名前の由来はなんなの?」

 

「作られてから30年以上経ってるから。バイクや車からすれば随分長い時間だ」

 

「それは確かに。ところでご主人、全然話変わるけど」

 

「ん」

 

「ご主人って人形に名前付けるタイプの人じゃん? 私には付けてくれないの?」

 

 

 俺が人形に名前を付けた? 待て待て、そんな覚えは無い。

 スケアクロウ(サーリャ)エージェント(リーリャ)も、俺が付ける前から既にその名をもらってたらしいし。

 

 

「・・・言っとくけど、サーリャって名前もリーリャって名前も俺が付けたんじゃないぞ」

 

「うぇ、そーなの? でもまあいいや。ご主人(ごしゅじ〜ん)名前ちょーだい♪」

 

「名前ねぇ・・・」

 

 

 プロジェクトナインティだろ?

 ナインティ・・・ナインとティ・・・ひっくり返してティナにするか。

 安直だけど、朗らかで明るい彼女には合うと思う。気に入らなかったらそん時また考えよう。

 

 

「ティナってのはどうだ? つっても、由来は90(ナインティ)をナインとティに分けてひっくり返しただけだけど・・・正直に言ってどう思う? P90」

 

「ティナ・・・ティナ! 良いよご主人! それではこのP90、これからはティナと名乗らせていただきます」

 

 

 我ながらひねりも何もないネーミングだと思うが、当人が気に入ってくれたのなら何よりだ。

 

 

「ねぇねぇサーちゃん!」

 

「なんですのティナ?」

 

「うぇへへへ♪ ”名前”ってイイね!!」

 

 

 ・・・名前、か。

 他の人形とは違う、自分だけを示す自分だけの名前。

 人形にとっては人が思うよりもずっと重みのあることなのかもしれない。

 

 

「ところで二人とも。俺の名前が”レイン”というのは知ってるか?」

 

「「・・・・・・・・・・え?」」

 

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 ・・・・・・。

 

 

「・・・・・・」

 

「「ご、ごめんなさい・・・」」

 

 

 イイよ別に。

 コードネームだけ覚えてりゃぶっちゃけ本名知らなくたって何も困んねえしな。

 だけども、P90改めティナはウチに來たばっかだからともかく、スケアクロウまで俺の名前を知らなかったというのは・・・。

 さすがに凹むぜ相棒。




 次回こそは本格的にストーリーを進めていきたい(涙)。
 そして考えなしに話を書き始めたが故に、今更仕込みたい伏線が仕込めない・・・自分の技量の無さに泣きたい。
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