裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
理由としてはですね、小2の頃から親友だと思ってた人が社会人になってから人間的に腐っていて、その人の言動や行動にショックを引きずって・・・という感じで、メンタルブレイクしかけの状態でとても頭が回らなかったのです。(おかげでこのお話、実に4度も1から書き直してます)
仕事も全然はかどらなくてもう話にならないという状態で・・・期待を寄せてくださってる方には本当申し訳ありません。
しかも現在、他作者様からのキャラもお借りしているシーンの途中ということで、ここでエタる訳にはいかんとなんとか頭を絞り、投稿出来るかなと思える所まで漕ぎ着けられたので投稿します。
今話も二話分の一万字超えですので、お手すきの際にお読みください。
アインスたちとの打ち合わせを済ませた俺たちは、元々押さえておいたモーテルの一室にてリラックスして過ごしていた。
最初は俺がサイドカーの中で寝て、スケアクロウたちでモーテルに泊まるよう勧めたのだがーー
「ご主人が一番動き回るのになんでこっちで寝ないの?」
「ティナの言う通りですわ。今更気にする事でもないでしょう」
という二人のありがたいお言葉により、手狭なサイドカーではなくまともな寝床で寝泊まり出来る事となった。ちなみに俺は例え相手が異性であっても、この様に気遣ってくれた場合は遠慮なく受け取るタイプだ。
せっかくの厚意を下手に断ると、相手によっちゃ押し問答になって話がこじれるからな。厚意は素直に受け取る、迷惑でないのなら断らない。円滑に話を進めるにはこれが一番だ。
ところでこのモーテル。
浄水設備を自前で持っているそうで、体を綺麗さっぱりにして眠れるというのはとても有り難い。もっとも人体に無害な水が貴重品なこのご時世、さすがに水の利用料も宿泊代込みでとはいかないが。
「・・・ご主人、覗いちゃやだよ?」
「覗かねえよ」
「あれま、覗かないんだって。残念だったねサーちゃん」
「・・・つーんですの」
「俺にどうしろと」
「どっちだったとしてもサーちゃんは拗ねるのでした」
「ハナから詰む選択肢しか出さないって一番タチ悪いなオイ」
そんなしょうもないやり取りはあったが、二人がシャワーから出たのと入れ替わりに俺も汗を流す。
・・・あぁ、あくまで蛇口ひねって出てくんのは水だけでお湯は出ないのね。冷てえ水が体に染みる・・・あんま浴び続けてると風邪引くな。さっさと切り上げよう。
パパッと身綺麗にし、タオルを肩に掛けたまま下だけ履いて部屋に戻る。すると、部屋でフヨフヨしながらダベってた二人が急に固まった。
具体的に言うとスケアクロウはバッと目を逸らし、一方でティナは耳が真っ赤になりつつもペタペタ傷跡を触りながら話しかけてきた。
「・・・わーお、ご主人の体キズだらけだね。ワイルドだろぉってやつ?」
「・・・そういや昔、そのネタでブレイクした芸人に”あの人”がバカウケしてたな。つか、何十年前のネタだよそれ」
「んーとねぇ、約50年位?」
「は、半世紀・・・」
ティナは一体どこからそんな古いデータを持ってきたんだ。その辺りだとまだ4Kモニターすらまともに普及してねえだろ。
それとスケアクロウさんや。さっきからチラッチラッ俺の体盗み見てるのには気付いてるぞ。彼女のメンタルが特殊なのか、”製品としてのスケアクロウ”が全般的にそうなのかは知らんが、ここまで男慣れしてないとなんだか逆にこそばゆい感じになる。
ちなみにスケアクロウの注目ポイントは体の傷跡よりも、腹筋とか胸とか今までの人生でそれなりに鍛えてるところばっか見てる。
「ねぇねぇサーちゃん。恥ずかしくて最初に目を逸らしておきながらも、興味には抗えずチラッチラッていろんなとこ盗み見てるの、ご主人にはバレてるよ?」
「なあっ!?」
「ああ。見たいなら見たいとはっきり言えばオフん時にいつでも見せてやるのに」
「ねー」
「けけけ結構ですわっ!」
図星突かれて湯気吹き出すくらい顔を真っ赤にしたスケアクロウ。彼女を見つめる俺たちのジト目。ついに耐えきれなくなり浮き上がった彼女は方向転換、ベッドの布団に篭ってしまう。
もうっお休みなさい!と言わんばかりのそんな彼女を見て、俺たちは一言こう呟いた。
「・・・サーリャのむっつりスケベ」
「サーちゃんのムッツリさんめ♪」
「もう止めてぇ!!」
恥ずかしさに悶えた彼女の震えがそのまま布団にも表れていた。
が、しばらくして気持ちが落ち着いたのか、布団にくるまったまま顔だけ出したミノムシフォルムでフヨフヨ近付いてきおった。
フヨフヨパワーって本当便利だねぇなんて思いつつ、何を言うつもりなのかと目を細める。
「・・・やはり、一番動き回る貴方がベッドで寝ると良いんですの」
「一度はダイブしたのに?」
「そ、それはっ・・・はぅぅ」
すぽっ。
頭が布団の中に戻った。キミはカメか? カメなのか?
クールな見た目にそぐわぬ仕草を見せるスケアクロウ。キミそんな子だったっけと首を傾げていると次の瞬間、俺の視界を横からニュッと出てきたティナの笑顔が埋めた。顔が近い。
「むっつりサーちゃんはともかく、私もベッドの方が絶対良いと思うな〜」
「あうっ!? ・・・んん!!とにかく遠慮は要りませんわ。最良のパフォーマンスをするためにも体のコンディションを整えるべきですの」
なるほど、優しい優しい心遣いをしてくれる二人には感謝しようではないか。と言いたい所だが、それをすると一つ問題がある。
「三人いるのに俺がベッド使ったら、キミ達のどっちかは床で寝転ぶことになるぞ。それか椅子に座って疲れの取れない姿勢で寝るか?」
ベッドのサイズもそこまで大きくはない。寝れたとしても大人二人、三人が並んで寝るのは結構厳しい。ギリギリまで詰めれば俺たちの体格的に出来なくはないが、そこまでやってベッドで寝たとしても今度は寝苦しくてコンディションを整える以前の問題になってくるだろう。
では他に何が寝床になるか。一つは二人がけのソファー、もう一つは床に布団敷いて寝そべるくらいである。椅子に座ってというのは論外。アレで意識を落とすのは寝る内に入らん。
であれば、細身の二人をベッドに寝かせて俺はソファーで毛布をかぶるのが最適解と見た。全員がゆったり落ち着いて疲れを取るにはコレが一番だろ。あんまほっ放っとくと二人とも私が椅子で寝るとか言い出しかねないし。
「私はそれでも構いませんの」
「私だってモーマンタイだよ♪」
ほらな。
全然モーマンタイじゃねえっての。
「全然良くねえ。横になって寝るのは絶対、そんで全員がゆったり落ち着けるには俺がソファーに行くことが最も手っ取り早いはずだ。
押し問答はめんどくさいから譲らねえぞ。んじゃお休み」
「えっ」
「むっ」
という感じで強引に押し切り、さっさと毛布を被った。
まあ本音を言うと、ベッドで寝てたらスケアクロウ達に夜中に抱き枕にされそうだったから先手を打たせてもらった。特にスケアクロウは夜中に俺の寝床に忍び込んでた前科がある。
最近の人形は本物の人間みたいに色々と柔らかいし体にもぬくもりがあるので、抱き枕にされたら正直寝苦しいことこの上ない。快適な睡眠は自由な体と適度な寝返り、そして適切な枕の硬さと角度とサイズからである。
・・・正直に言えば、寝てる間にボンキュッボン体型のスケアクロウに抱きつかれればムラっと来ることもなくもない。が、残念ながら俺はそれよりも寝苦しさから来る苛立ちの方が勝ってしまう人間である。おかげで手を出す出さない以前の”健全な関係”を維持できてるんだが。
そんなわけでブーブー言う二人を他所に、そのまま静かに夢の世界へと旅立ったのであった・・・。
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明朝6時。
目が覚めた俺は未だベッドの中でぐっすりの二人を横目に、備え付けのデスクでノートパソコンを開いた。
アインスに来てもらうついでに持ってきてもらった仕事用の薄型PC。重量にして2kg弱といった程度の軽さでありながら、中に秘めたスペックはそんじょそこらの
予めインストールしてあるセキュリティプログラムを複数立ち上げ、モーテルのLANポートに有線で接続。ウィルス等のチェックを二重三重とそれぞれのプログラムで実行し、異常が無いのを確認してインターネットへ。
アクセス先はもちろん、工場内にある組織のネットワークだ。昨日仕込んだスパイウェアによって容易にアクセスが通ったのを確認しつつ、セキュリティ面を扱う階層へと潜り込んでいく。
工場内の捕らえた人形たちを保管しておく部屋、その周囲に配置された監視カメラをコントロールし、部屋の作りがどうなっているのかを映像でも見てやる。
(これはまた、随分と”商品”が多く捕まってるな。エクスキューショナーをトリに飾るなら、この位の数が無きゃ盛り上がりに欠けるってか)
檻の中にいる人形の中にはI.O.P.製とはまた違う民生人形の顔も見受けられる事から、文字通り商品になるものはなんでも掻っ攫って来ているのだろう。しかも次の会はとびっきりの目玉を売りだすのだから、尚更数を増やしての大売り出しを考えているらしい。
部屋の作りを見て回ったところで、そこへと通ずるルートの方へと視点を動かしていく。
カメラの視野内に入った別のカメラの位置を元に、スケアクロウが解析してくれた地図データから個体識別番号を割り出し、表示するカメラを順々に切り替えていくという形で進める。
大事な商品を管理する部屋へ通ずるルートというだけあり、一定、それも短い間隔で警備の兵士をツーマンセルで配置している。前でなにか有れば直ぐに視認できる位の距離に密度高く配置されてるとなると、スピードと勢い任せのゴリ押しは危ねえかもな。
ちなみに工場内部から人形たちのいる部屋へ通ずるルートはこの道のみ。あとは屋外搬出用の道が一つだが、稼働履歴を見るに競りが終わって運び出すタイミングにならないと閉じられたシャッターが開かないようだ。またシャッター周囲にはジャマーと警備兵がこれまた分厚い防衛網として配置されている。ここを俺一人で突破するのは無理だから、ワーグナーに化けた上で折を見て会場から通路に紛れ込んでってやるのが一番確実だろう。
セキュリティーに関しては仕込みのおかげでどうとでも出来るし、顔が割れたところで元の顔の持ち主はとっくにあの世に飛んで行っている。それにタイミングを合わせてハイエンドたちに奇襲をさせれば、組織は大わらわになって商品を守るどころじゃなくなるだろうしな。
「・・・あとの問題はDG Platoonなる者たちの動き次第ですわね」
「んぁ? あぁ、おはよう。そうだなぁ・・・昨日全身に走った悪寒といい、必ずなにか仕掛けてくるニオイがプンプンする」
「・・・不吉ですわね」
「そうなった時のフォローは頼むよ」
「お任せを」
どちらからともなく突き出した拳をぶつけ合う。
普段のクールな彼女にしては珍しい勝気な笑み。エクスキューショナーは自分たちの手で取り戻す、そんな思いが感じ取れる。
なんとなく凛々しさを感じるスケアクロウの笑みを
「完璧な仕事を発揮した暁には俺の筋肉を見せてやろう」
「な、ななななっ!? ・・・・・・つーんっ!!」
一気にゆでダコになった次の瞬間、お決まりの言葉が彼女の尖った口から出てきた。
あらら、拗ねちった。
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『ポロシェンコがオークションに来るときに使う車が分かった。駐車位置と暗証番号、車種の設計データにそれから車のナンバーを端末に送ったが、どうやら奴は自分の車でそのまま会場に乗り付ける腹積りらしい。
ドアロックを解除するのに必要な暗号コードも取得済み。そんでもって議員様はただいま支持者との会食の真っ最中で当分は帰ってこない。家も一人暮らしのマンションだし、仕込むのは今が絶好のタイミングだな』
「何から何までありがとう『フォックス』。そんで、この後お前はどう動くんだ?」
『引き続きポロシェンコの追跡を続けるさ。それと万一会場で何かトラブルが起こったとき、ゴタゴタしてる中でポロシェンコに直接止めを刺せる位置にいる人員も欲しいだろ? お前のことだからギアに細工して、
念には念を、予備の手段も備えるべきでは? ずっとポロシェンコを追ってきていたフォックスがそう言った。
確かにそれも正しい。確実な仕事をするためには複数のリカバリー策を講じて損はない。一番損をするのは仕事をしくじることであり、多少容易に金や手間暇が掛かっても成功させられるなら
ただ、エクスキューショナーの奪還プランが高確率でハチャメチャにされそうな予感がしている現状、ポロシェンコが会場入りするのを待ってから抹殺する意義は薄い。
「いや、ポロシェンコはこのマンションで始末を付けさせてもらう。明日のオークション、色々あって余計なドンパチが起こるのは想像に難くないもんでな」
「・・・アインスが言ってた”例の部隊”か?」
「ああ。明日俺が化ける奴も場合によっちゃ連中の標的になってるかも分からん。下手すると逃げ回るばかりでロクに指示も出せなくなるだろうし、現地入りされる前に始末できるのなら殺っておいた方が俺としては大変助かる」
『あいよ。あぁそれと、マンションに詰めてる警備員たちの巡回時間のルーチンも一応送っとく。巡回中は主に上層フロアから下に向かっていくから、駐車場に忍び込むのはそのタイミングがベストかもな』
「すまん、助かる」
『イイってことよ。んじゃあ気を付けてな』
「そっちこそ」
インカムから通話が切れた音がするのと同時に、横に座るスケアクロウが端末のソフトウェアを閉じてくれた。
さて、昨日ワーグナーを抹殺した俺たちだが、今度は本来の本命であったポロシェンコ抹殺の下準備にオンボロを走らせているところである。
服装は三人とも黒づくめの服装にツバ付きの帽子やフードを被ってという格好で、出来る限り顔や肌が露見しないように注意を払う。
ポロシェンコが暮らす地域は、G&Kよりも少し規模の大きい別のPMCが管轄している。さらに言うとその中の高級住宅街、すなわち全ての出入り口にゲートが設けられているような区画に奴の住むマンションはある。
とはいえ、検問をどう乗り越えるかというのはさして問題ではない。こんなどデカイ巨体のサイドカーを乗り回してる時点で、少なくともオンボロを動かせるだけの財力を持つ=富裕層に近い人物(実際には違うが)というのを対外的に示すには十分な根拠となる。そんじょそこらのチンピラやギャングには決して真似できないため、怪しい人物と思われるハードルを一段階下げられるのだ。
あとは前もって適当にパーツを当て込んで作った変装用のマスクを被り、検問所に接近した際に警備員がアクセスする端末からセキュリティをちゃちゃっと書き換えてしまえば、晴れて俺たちは合法的に中に侵入する事が出来ると言うわけだ。
もっとも、オンボロのエンジン音は特に夜中は周囲にとても重たく響くため、マンション近くの駐車場(こちらもハッキングして利用権を勝手に取得した)に停めたのち、手早く必要なツールだけ持ってポロシェンコのマンションへと静かに駆ける。
「・・・ここですわ」
「周囲の状況は?」
「内部の監視カメラは全て掌握済みでしてよ」
「警備員らしき人物の反応も見た感じ特になーし。フォックスさんの言う通り、ちょうど上層フロアの巡回に回ってるみたいだね」
「OK。・・・行くぞ」
「「了解」」
音を立てず、影を縫うように。
俺たちはそれを意識しつつエントランスに入り、そこから駐車場へと向かう。
マンションの構造上、駐車場と道路の境界には侵入防止用のシャッターが設けられているため、一旦エントランスを経由しなくてはならない。
直接乗り越えるにはいかんせん高さがあり、フヨフヨ浮くと目立つ可能性を鑑みてこのように忍び込む事となった。
ポロシェンコの車は・・・っと、あった。
「・・・
コーラップスの影響で今はほとんど壊滅状態になっている日本。かつてそこに本社を置いていた高級車ブランド、それが
事件から30年あまり経った今も存続している自動車メーカーで、主力商品は高級感のあるセダン車だ。主に大手企業の重役を連れ回す社用車とか、尊ぶべきご身分の方々を乗せる公用車とかに使われることが多い。
一応マイカーとして持ってる人もいなくはないが、昔の価格基準で数十万ドルorユーロ級の車を乗り回せる奴は今も昔もそう多くはない。ましてやこのご時世ともなればこの手の高級志向車はなおさら余計に高く付くわけで、つまりポロシェンコが生まれ持って非常に金銭的に恵まれた地位にいることの証左でもあった。
「そういえば、鉄血の社長専用車もこのメーカーだった気がしますわ」
「それだけ資本力を持ってるってのを誇示するには丁度良いブランドだ。鉄血クラスの企業なら持ってて然るべきとすら言えるかもな。しかも左テールの上に『Ultimate』のロゴがあるってことは、コイツ限定モデルかよ・・・」
LCは通常仕様に加えて『Ultimate』という限定グレードも用意している。完全受注生産のこのグレードは足回り、エンジン、モーター、サスペンション、その全てが最高品質で作られ、なおかつシートを始めとしたインテリアに使われる素材にも一切の妥協無し。
究極の仕様ということでアルティメイトと名付けたらしい。ここまでくると車種次第じゃ100万ユーロクラスだ。・・・どんだけ金持ってるんだコイツは。顔が引き攣るのを感じる。
さて、そうなるとフォックスから渡された図面データが尚のこと必要になってくる。
LCの車は性質上多数の盗難防止機器を搭載しており、正しいユーザー以外の人物が車に触れようもんならあっという間にオートクラクション&メーカーのカスタマーセンターに
それは整備するときも同様で、その個体と適合するシグナルキーが近くに無いとちょっとジャッキアップしただけでも警報が働いてしまうのだ。アルティメイトグレードなら尚のこと。
幸い、前もってフォックスがリレーアタックの応用でシグナルコードを入手済みのため、車の警報機は作動せずに済む・・・はず。
社外品のユニットかなんかをポロシェンコが着けてたりしてなきゃ、多分問題なく仕込めるだろう。
巡回の警備員が戻って来るまであまり猶予もない。早速作業に取り掛かるとしよう。
「始めるぞ。すまないがスケアクロウ、車体を持ち上げてくれるか?」
「分かってますの」
「おおっサーちゃん力持ち」
言うや否や、ジャッキも無いのにフヨフヨ浮かび始めるポロシェンコの車。
直ちに空いた隙間に入り込み、後部座席の真下にある燃料タンクに爆弾を取り付ける。
続いて、後輪に動力を伝えるためのシャフト部分。そのすぐ側に小型の赤外線センサーを取り付ける。センサーは爆弾に搭載した電子信管とリンクさせ、車が前進する方向へシャフトが回転し始めた瞬間に信号を送信、爆発する仕組みだ。
このセンサーはこのあと仕込む本命の起爆装置が万一動かなかった時の予備スイッチで、それが正しく作動すればこいつが起爆信号を送ることは無い。が、念には念を。決して安くない料金をクライアントから貰ってるため、失敗のリスクは可能な限り低く出来る様立ち回るのも仕事の内である。
ところでこれから仕込む本命の起爆装置、シフトノブをPからDに入れた途端起爆するようセットするには、車内に忍び込んで一旦内装のパネルを取り外さないといけない。ということでゆっくりと車を下ろしてもらい、ジャックしたキーコードで中に入るとシフトノブ周りのインテリアパネルをぱっぱと取り外しにかかる。
「ほぅほぅ、慣れた手つきだねご主人。そうやって色んな人の車をいじくってきたんだ〜」
「今までこの手の仕込みは何度もやってきたからな。流石に慣れるっと、取れた」
「取り外したインパネ持ってようか?」
「それよりも周りの状況に目を配ってくれ。スケアクロウは装備が無いと暗視が出来ない。監視カメラでモニターしてるとはいえ、カメラの死角から近付いてくる人間を察知するのはキミ頼りなんだ」
「了解しました〜」
デコの上に乗っけたスマートグラスを掛け、自身の得物を構えるティナ。おどけた言い回しとは裏腹にその表情に緩みは無い。
改めて端末にこの車種の配線図を表示させ、シフトレバーからトランスミッションへ信号を伝えるためのコネクターを探し出す。
今時のオートマ車、しかも快適なドライブのために大衆車には無い様々な機能が搭載されてるだけあり、パネルを開いた瞬間色々な配線がゴチャゴチャ並んでいたのには正直げんなりしたものの、図面とにらめっこしながら手繰り寄せつつ探すこと5分。やっと目的の配線を見つけ出すことができた。
「・・・見つけた。スケアクロウ、ティナ、周囲に変化は?」
「ありません」
「特に問題なーし」
「OK」
シフトレバーの操作を伝えるための
俺がこれからしようとしているのはシフトの信号を伝えるコードだけを一旦切断、二つに分かれたコードそれぞれのゴムラバーを先端だけ外して銅線部を露出、その部分を起爆用の電子信管の銅線と繋げて通電する様にする。
ポロシェンコの車の場合、エンジンを入れてからPギアに入っている間はシフトレバーからトランスミッションへ信号は流れない=通電しない。だがそれ以外のモード、
セットしようとしている電子信管は電流を検知した瞬間、先ほどタンクに設置した爆弾に信号を送り、爆発する。オークション会場に出向こうとこの車を動かそうとしたその瞬間、奴は”燃える”というわけだ。
さて、絶縁用の分厚いゴムラバーに包まれたコードが12本分まとめて接着されているわけだが、実際のところ目的のコードを覆うラバーに一筋切れ目を入れてしまえば裂ける様にあっという間に剥けてしまう。中からラバーよりも細い綺麗な銅線がこんにちはだ。
要は接着されているのはラバーだけで銅線自体はくっ付いていないので、他のコードを切らない様にだけ気を付けて剥いていけば細工そのものはそれほど難しくはない。
切り込みを入れ、ラバーを剥く。中から現れた銅線もカットし、持ってきた電子信管から伸びるコードを二つに分かれた銅線それぞれに結びつけていく。
あとはコードの束を元あった箇所に収め、インパネをはめ直して車内の仕込みは終了だ。
「・・・よし。周囲を警戒しつつズラかるぞ。マンションから出たら一旦別れて単独で行動。スケアクロウはルートβ、ティナはΓ、俺はεルートでオンボロの元へ向かう。いいな?」
「「了解」」
「うし・・・人影無し。出るぞ」
巡回がエントランスに戻ってきてないのを確認し、堂々と、そして足早に脱出する。
マンションから出て数歩歩いたところで三方向に分かれ、万一尾行などがいたとしても撒ける様に動く。
尾けてるヤツなんていないとは思うがこれも念のため。マンションや検問所の監視カメラの映像は掌握しているが、人の目で見たものは流石に誤魔化しようがないからな。マンションに忍び込んだ怪しい人物がオンボロに乗るまでの一連の動きを目視で見られたら、わざわざセキュリティに侵入して監視カメラを掌握した意味が薄まってしまう。
とはいえ、ここまでやるのは流石に用心しすぎというべきか。周囲に怪しい人物が接近してくるといったことも特になく、三人ともオンボロの元に集合することが出来た。
「・・・一応聞くが、問題ないな?」
「私が知覚出来る範囲には特にそれらしき存在は」
「”音”を使って周りに気を回してたけど、私も特に異常な〜し」
「・・・そうか。じゃあ二人とも乗ってくれ」
二人の用意が整ったのを見て、すぐさまエンジンを入れてアクセルを回す。
目立たない様にというのは無理だが、出来る限り音を鳴らさない様に。
高級住宅街を出てしばらく経ったところでスケアクロウに端末を操作してもらい、再びフォックスに回線を繋げてもらう。
程なくして、インカムから彼の声が届いた。
「ポロシェンコの車に無事に仕込み終えた。ヤツが車を出そうとした瞬間
『・・・図面とキーシグナルを予め用意しておいたとはいえ、結構早かったな。りょーかい、なんかあった時のフォローも任せとけ。明日は頑張れよ』
「お互いにな。今回は助かった」
『仕事だ。気にすんな』
苦笑気味の声と共に通話が切れる。
同時に通話用に割いていた回線がスケアクロウたちの通信周波数に自動で切り替わるのを待ち、俺は二人に声を掛けた。
「・・・明日は昨日話した通りのプランで進めるつもりだが、まぁ事は順調には進まねえだろうと思う。ティナは装甲車に控えるアインスの護衛役として、スケアクロウは他のハイエンドたちと一緒に”暴走人形”の体で会場に襲撃を掛けてもらう予定・・・が、それがどうすっ転ぶかは明日の『DG』の動き次第になる。
さっきも言った通り、俺が化けるワーグナーも連中の標的に十分なりうるだろうから、もしかしたら現地入りしたワーグナーと判断して俺の命も狙われるかもしれない。そうなると都度指示を出すのが難しくなる可能性があるんで、ツーコールで俺が出ない場合はアインスに指示を仰いでくれ。OK?」
『・・・それは分かりましたが、しかし不吉ですわね』
『ご主人が撃たれて死んじゃいました〜ってのはナシだよ?? せっかく名前まで貰ったのにそんな悲しい事ヤだからねっ?』
「バーカ。誰が死んでやるかっての」
チラリとミラー越しに見ると、どことなく不安げな二人の顔。
・・・こんな仕事してるのにそんな顔されても正直リアクションに困るんだがな。
「だーいじょうぶだって。ヤバそうになっても横から介入するためにわざわざハイエンドたちに来てもらってんだから。
それにアインスは突撃掛けるタイミングを見落とす様なタマじゃない。上手く采配してくれるさ」
『・・・・・・随分アインスの事信頼してるんですのね』
「あん? そりゃ10年仕事してりゃ嫌でも人間性が分かるってもんだ。裏社会で10年生き残れる人間・・・信頼するには十分な根拠だろ?」
『それはそうですけど・・・・・・つーん』
『乙女な心がわからないご主人はご主人なんだね』
んな事言われたって、時間は巻き戻せねえじゃろうに。
少しばかし理不尽な理由で拗ねたスケアクロウを横目に、俺たちはモーテルへと走り続けた。
・・・そろそろいい加減、スケアクロウから向けられる気持ちにもケリ付けねえとな。
進みが遅くてすみません・・・次回こそ、オークション当日やぞ!
一週間以内に仕上げるのは無理でも、今度こそ二週以内に必ず投稿します。
NTK氏、また色々とお聞きするかもしれませんのでその時は宜しくお願いします。