裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 会社で頼りにしてた先輩社員が、とんでもない事を仕出かして消えていったお陰で、裏切られた悲しみとショックでモチベ死んでました(汗)。

 長々とお待たせしてすみません。
 前回からの伏線と、ギルドにやってきたアーキテクトについてのお話でござんす。
 こんだけ待たせた割には8千字程度とちょい短めですが、どうぞお楽しみ下さい。


 人形之歌3巻、三月に発売ですって。(唐突なマーケティング)


-63-建築家(アーキテクト) 始動

 

 

 

「ねぇねぇウラカン」

 

「あん? どーしたアーキテクト」

 

「皆のお仕事道具になりそうなアイデアがあるんだけど、見てみてほしいなっ」

 

「おう。とりあえず図面寄越してみな」

 

「やった!」

 

 

 


 

 

 

 宙に浮かぶ一機の機械。黒基調のボディに、センターに配置された赤く映えるブレインユニット。上部には二門のメーザーブラスターを搭載したそれは、鉄血工造が開発した汎用無人偵察機『スカウト』である。

 空中浮遊が可能といった機動力の高さに加え、搭載された高性能なレーダーシステム、さらには対象を捉えるカメラ機器も優れた光学系を採用したこのモデルは、量産型にしては使い勝手の良い製品として鉄血の中でも人気商品であった。流石にベストセラー製品だったイェーガー型には及ばなかったが。

 

 さて、そんなスカウトはご主人様(マザー)からの命令により、鉄血の更なる勢力圏拡大のために上空から偵察を行っている最中である。

 具体的にはとっくに人の居なくなったとある廃村の辺り。

 

 着々と勢力圏拡大を進めている鉄血陣営。その中の一派が次に拠点として抑えようと思った地点が四方を林に囲われたこの廃村というわけだ。

 元々木々を切り拓いて成り立ったこの村は、鉄血が企業であった頃に蓄積された地図データから既に人が住んでいない事は判明していた。が、逆に言えば鉄血以外の勢力もその情報を把握しているということ。

 特に日夜鉄血との防衛戦を繰り広げているグリフィンからすれば、鉄血が更なる侵攻の足掛かりを得るような展開は可能な限り防ごうとするはず。

 故にいきなり部隊を送り込むのは悪手。まずは少数の偵察ユニットを派兵し、付近に敵対的な存在がいないかを確認してから制圧する。

 

 とある経緯により人類に反旗を翻した鉄血だが、人形だけの部隊を運用するのに掛かるリソースは決して無限ではない。

 可能な限り消耗を抑えつつ人類抹殺を遂行する。そのための第一段階として、合計八機のスカウトがこのエリアに派遣されたのである。

 

 彼らはカメラユニットとレーダーをフル活用し、それぞれ割り振られたセクションにて飛行している。

 そうしたスカウト達を、廃屋の影に身を潜めつつ見つめる者がいた。

 

 

(仕事道具のアイデアを試作するのに素材が要るから、急所だけ打ち抜いて持って帰ってこいってな・・・)

 

 

 頭の中で愚痴っては静かに溜め息を吐くのは、Blutbemalter Mond(血塗られた月)のエース組合員たるレイ。

 アイバイザーにマスクに戦闘服を身に纏ったレイは、消音器(サプレッサー)を装着したP90を持ちながら自分がここにいる経緯を思い返した。

 

 

 

 -----

 

 

 

 昨日のこと。

 ギルドに用意された自室で思い思いに過ごしていたところ、ノックもなしにいきなり扉が開け放たれた。

 

 

「やっほーーーー!!!!!」

 

「「「やかましいッッ!!!!!」」」

 

 

 開口一番大音量で叫ばれとてつもなく驚く三人。思わずこう返すのも無理はない。

 無礼極まりない振る舞いで部屋に入ってきたのは、かつて鉄血の兵器開発陣と共にとんでもない事をしてきた前科のあるアーキテクト。その後ろからハゲ頭に筋肉隆々で高身長な体型をした、オンボロ専属エンジニアのウラカンも足を踏み入れる。突然のアーキテクトの奇行に顔は思いっきり引き攣っていたが。

 

 

「ねぇねぇねぇねぇ!!!!」

 

「落ち着け。まずは落ち着け」

 

「落ち着きなさいアーキテクト。然もなくばあのバホ姉を召喚しますわよ」

 

「ごめんなさいそれだけは勘弁してくださいまだ鉄屑になりたくないです」

 

「・・・・・・何をしたんですの??」

 

 

 興奮醒めやらぬといった彼女だが、エージェントを呼ぶぞという脅しを聞いた途端綺麗に土下座へトランスフォームしてみせ、それを見たスケアクロウはまさか本当に何かやったのかとジト目になる。

 問い詰めようとしたところへ、今度はウラカンから助け舟が入った。

 

 

「まぁまぁ、今の時点では何もしてねえ・・・はずだ」

 

「がーん!?」

 

「・・・日頃の行いですわね」

 

「のようだな」

 

「周りから信頼されないってけっこーなダメージだね♪ ご愁傷様としか言えないけど」

 

「ティナちゃんもヒドい!」

 

 

 口を開けっぴろげにしてオーバーなリアクションをしたかと思えば、続くティナの口撃にム○クの叫びの様なポーズになるアーキテクト。

 改めて思うが、鉄血のハイエンド達は本当に感情豊かである。

 とはいえ肝心の話は始まってすらもいないので、本題に移るべくウラカンが大きく咳払い一つをして場を収めた。

 

 

「で、だな。先ずはコイツを見て欲しい」

 

「うん?」

 

 

 そう言ってウラカンが手渡したタブレットには、何かの電子機器らしきツールの図面が表示されていた。

 図面は画像データのようで、左右にスワイプすると他の図面が数枚流れてきて、また最初の一枚にループしていく。

 パッと見たところ、ロープを射出したり何かを打ち込んだりといった目的に使用するためのツールであると見当を付けたレイ。

 タブレットを返すと、少しばかし目を細めて二人に話の続きを促した。

 

 

「こいつはロープをある程度離れた所に射出したり、フックのついたワイヤーを壁に打ち込んだりってことが出来るツールの設計図面だ」

 

「それで?」

 

「ちなみに考えたのは俺じゃなくこの子だ」

 

「はん? アーキテクトが?」

 

 

 疑わしげに流し見るレイに対し、エッヘンと言わんばかりの眩しいしたり顔で胸を張るアーキテクト。

 余談だが、彼女が胸を張った瞬間ユサリと揺れたモノに向かって、ウラカンの目は一瞬だがバッチリ吸い寄せられていた。閑話休題。

 

 

「ただ、こいつを作るにあたって一つ大きな問題がある」

 

「問題ですの?」

 

「この図面に書かれてるツールは、主にメーザー兵器に使われる技術を基にしてるって事だ」

 

 

 それを聞いた途端、レイの顔が胡散臭いものを見る人のそれに変わった。

 

 

「・・・つまり、ロープやワイヤーに使う部分が実物の紐じゃなくてメーザー技術で作られた非実体の紐ってことか?」

 

「そうそう! 鉄血の技術なら実現は不可能じゃないし、実現できれば皆のお仕事もやりやすくなると思うんだ!」

 

「メーザー技術を扱える設備がうちのギルドには無いけどな」

 

「そこなんだよね〜」

 

 

 苦笑いを浮かべるアーキテクトに対し、ウラカンはどこか気迫の篭った目でレイ達を見据えている。

 そのことに彼がこれから言い出す事を何となく予感したレイは、大きく溜め息を吐いて口を開いた。

 

 

「・・・要するに、メーザー技術を使った鉄血の兵器をなるだけ損傷少なめに持ち帰れと、そう言いたいんだな?」

 

「そういう事だ。鹵獲してパーツと技術を盗む、それ以外にこのツールの完成させる術は無い。幸い鉄血から来たエンジニア達も居るんだ、多分何とかなんだろ」

 

「そう簡単に何とかなるもんなのか? 壊れるごとに部品取りでまた新しく鹵獲し直してなんて面倒な事、俺は御免だぞ」

 

「まぁまぁ、そこはギルドの方にも工房あたりに予算を分配してもらってですね・・・」

 

 

 アーキテクトはどうやら、メーザー技術を独自に扱えるほどの設備をギルドに整えたい様である。

 それを実現するにはバカにならない額を投資する必要があるのだが、普通に考えてギルドマスターがそれを許すだろうか。

 それならまだ鉄血の工場跡地を占領し、施設をこちらが自由に使える様整える方が建設的ともいえる。

 

 しかしそれを今考えても仕方ないので、ウラカンは手を叩いて場の空気を仕切り直した。

 

 

「んまぁともかくだ。使えるパーツをなるだけ稼いでほしい。上手いこと実用化できれば、お前の仕事もかなり楽になると思うぞ」

 

「そりゃそうだが・・・はぁ、やってみないことには分からないか」

 

「おっ?」

 

 

 ピコン、

 彼女のサイドテールが一直線に上に向いた。どうしてそうなるのかはもう誰も突っ込まない。

 

 

「狩る目標は? 何機分をどこを狙ってやれば良い?」

 

「目標は『スカウト』8機だよ。中央にある赤いブレインユニットを撃ち抜けば、ほぼ確実に行動が止まるはず。あとは落下時の衝撃でお釈迦にならない様に、撃ったら即全力ダッシュで抱きとめてくれれば尚OK♪」

 

「浮いてる鉄の塊を地上で抱きとめろとは随分と無茶だな。高さ次第じゃ俺だと危なくて出来ん。スケアクロウに任せるぞ」

 

「了解」

 

「よっろしく〜」

 

 

 

 -----

 

 

 

「・・・はぁ〜あ」

 

『溜め息をすると幸運が逃げますのよ』

 

「そうは言ったってねぇ。そっちは回収の用意は出来てんの?」

 

『問題ありません。以前の依頼でグリフィンに用意させたマントもしっかり羽織ってますの』

 

「そりゃ結構。顔出しは最低限に抑えてくれ」

 

『心得ております』

 

 

 通信を終えたレイは、P90に取り付けたホロサイトを覗き込む。

 フヨフヨと浮かぶスカウトは忍び込んでる彼らを察知した様子は無く、ゆっくりと偵察しながら僚機との合流のため廃村の広場へ移動していく。

 ちなみに現在の位置関係は、スカウトの後方直ぐ近くの建物に隠れたレイが狙い澄ましている構図となる。

 

 

『もうすぐ八機が合流します。用意を』

 

「いつでも撃てるぞ」

 

 

 スカウトに探知されるギリギリの範囲まで接近したレイは、スゥッと息を吸い込みトリガーに人差し指を添える。

 間も無く村の偵察を行なっていたスカウト八機が円周状に集まったところへ物陰から体を出し、一番右端にいる機体のブレインユニットに向けて発射。続けて射線を左へズラし、二発目。更に動かして三発目。

 直後スカウトのすぐそばまで勢いよく駆け出し、さらに接近して四発目。ブラスターから放たれた迎撃をローリングで躱し五発目。間髪入れず射線を動かしながら六発、七発。そして己の背後に回った最後の機体を、まるで天秤のように体全体を振った強烈な踵で蹴り上げ、無理やり自身の真上に持ち上げたところへ〆の八発目を見舞う。

 ブレインユニットを撃ち抜かれたスカウト達は、すぐさま浮力を失って地上へ落下してゆく。

 

 次の瞬間、カモフラージュマントを被ったスケアクロウが飛び回り、反重力装備を駆使してスカウト達が地面に叩きつけられる前に回収する。

 無事に目標の回収完了を確認したレイは即座に回れ右をし、スカウト達の反応が途絶えた事で送り込まれるであろう鉄血の増援が来る前に、直ちに猛ダッシュで駆け抜ける。

 

 林に入って暫く経った辺りで、遅れて脱出していたスケアクロウがレイの横に飛んでくる。胸には物言わぬ鉄の塊となったスカウトを抱え込み、持ちきれない分は周囲に浮かせて。

 

 

「お見事」

 

「おう。速攻性の問題でL96を使えなかったのは少しばかし不安だったけどな」

 

 

 偵察に適応したモデルということは、異常が起こった時に友軍や僚機への素早い情報伝達も考慮されているということである。

 普段レイが狙撃に使用するL96ライフルはボルトアクション式のため、撃つ度にボルトを引いて廃莢と装填を行わなくてはならない。機動力の高いスカウトにこの銃で挑むと、装填に掛かる時間がそのまま逃げられるリスクを高める事に繋がってしまう。

 故にレイは、本来狙撃を想定していないモデルなのを承知の上で敢えてP90を得物に選び、出来る限り接近した上でPDW(連射力に優れた銃)の特性を用いてピンポイントでの攻撃を実行したという訳だ。

 

 

「とにかく目標クリアだ」

 

「ええ。急いで帰りましょう。長居は無用ですの」

 

 

 間も無く彼らの目の前に現れたのは、周囲に溶け込む様巧妙にカモフラージュされたオンボロ。

 スケアクロウが持ってきたスカウトをサイドカーにゴロゴロ押し込むと同時に、オンボロの重く響く大排気量エンジンが唸り出す。

 発進準備の整ったレイの肩をスケアクロウは二度叩く。押し込められたスカウトに幅を取られ、座るには手狭となったサイドカー。彼女は横乗りせず、浮遊したまま追随するつもりの様である。

 

 合図を受け取ったレイはアクセルを半周以上回し、この時代に現役の自動車としてはかなりのスピードで一気に林を抜けてゆく。

 

 

 

 -----

 

 

 

「・・・昨日の今日でもう狩ってきたのかよ。いくら何でも早すぎやしねえか?」

 

 

 戦利品を携えてギルドに戻った俺たちを、ウラカンはとても引き攣った笑みを浮かべながら、アーキテクトは対照的にニッコニコの笑顔で出迎えた。

 

 

「早い方がいいんだろ?」

 

「そりゃそうだがよ・・・んまぁいいや。こんだけありゃ足りんだろ。完成を乞うご期待ってやつだ」

 

「期待してるよ」

 

「任せとけ」

 

「まっかせといて!!!!!」

 

「「やかましいッッ!!!!!」」

 

 

 ハイテンションになったアーキテクトのなんとデカイ声。あまりのボリュームに一瞬意識を持っていかれたぞ。

 それだけ彼女が物づくりが大好きという事の証でもあるわけだが・・・どうりで冷静な人格のゲーガーをペアに組ませる訳だ。二人合わせて丁度良いバランスになると。

 戦術人形としても、生産系に携わるユニットとしても、な。

 

 ところで今更ながら気になったんだが、なんでアーキテクトとウラカンがくっ付いてるんだ?

 そう聞くと、意地の悪い笑顔になったウラカンが理由を話してくれた。

 

 

「そりゃあ、工房でお前のオンボロメンテしてる時にふと気付いたらよ? この子がヨダレ塗れに目玉ギンギンに光らせて窓に張り付いたもんでな」

 

「ひぁっ!?」

 

「邪魔しねえんなら作業見てくか?って聞けや尻尾振る勢いで頷きまくるワケさ。この仕事してると何時消えるかも分かんねえしよ、この際だし弟子にでもしてやろうかと」

 

「弟子云々はともかく、んな不吉なこと言うんじゃねえよ・・・」

 

 

 確かに彼の言う通り、裏社会に生きている以上は何時どんな敵に狙われて命を落としてもおかしくは無い。実際に仕事を遂行する俺も、こうした形でサポートをしているウラカンも。

 そんな事態は起こって欲しくないのが本音だが、そう思ったところで起きる時には起きてしまうのだ。故にギルドで仕事をするからには、大なり小なりメンバーは全員”失うことへの覚悟”は持っている。覚悟があったってショックが無くなるワケじゃ決して無いがな・・・。

 

 そんなことを考えてた一方でアーキテクトは、”弟子”という単語に期待と不安の入り混じった目でウラカンを見上げている。

 

 

「弟子・・・私、ウラカンの弟子になっていいの?」

 

「んあ? なりたくねえのか? 自分で言うのもなんだが、俺はこの世に生きてるエンジニアの中じゃトップクラスの腕を持ってるんだぜ?」

 

「なるなるなる!! 一生懸命頑張るから、私を弟子にしてください!!!」

 

「うぉっ!? うし、決まりだな。徹底的に叩き込んでやるから覚悟しとけよ?」

 

「もちろんだよ!!」

 

 

 これから続く未来が期待で満ち溢れている、そんなキラキラした目をお互いが光らせながら固く手を握る二人。

 なぜか熱血マンガの様な1シーンを見せつけられてる俺たち。

 だがしばらく見つめ合っていると、やがて生来のウブっ娘気質が段々戻ってきたのか、アーキテクトの顔が徐々に赤みを帯びて目が泳ぎ始めた。

 

 

「あ、あのぉ・・・そろそろ、手を離してくれると、嬉しいかなぁって」

 

 

 両手がフリーなら人差し指でツンツンしながら言ったであろう言葉。ちょっとした下ネタにも赤くなってしまう彼女にとって、ジジイと言っても差し支えない程の男とはいえ異性と見つめ合うのはハードルが高かったらしい。

 ところで彼女の前に立つ男ウラカン、本名レナート・ルカレッリは、名前から分かる通り生まれも育ちもイタリアである。つまりたとえ齢65を数える年寄りであろうが、こうやって恥じらいを見せている女性を前に引き下がる様なタマではないのである。

 

 

「んー? そんなに顔を赤くして、どうしたんだお嬢さん」

 

「はうっ!? か、顔が近いよ・・・

 

 

 なぜアーキテクトが赤くなってるのか分からないと言わんばかりの困惑した表情を浮かべ、あろうことか覗き込む様に顔を接近させるウラカン・・・というのは覗き込まれてる当人から見た場合であり、横から見てるといかにも大仰な身振りでナンパしてる様にしか見えない。

 しかもそれをやってるのがクルーガーから毛という毛を取り切った感じの筋肉ゴリゴリハゲ頭な大男、しかも65歳の前期高齢者であることを踏まえると物凄い犯罪臭が漂う絵面といえる。

 だが揶揄われているアーキテクトからしたらそんな所まで頭を回す余裕は到底無いらしく、どんどん真っ赤になるのに比例して目がグルグル廻り出してしまう。これ以上パニックにさせると”本来”のパワーでウラカンを突き飛ばす位は起こり得ると判断し、スケアクロウと二人で介入してやる。

 

 

「そこまでだウラカン。60超えたオッサンが見た目10代の人形にナンパするって常識的に考えて絵面最悪だぞ」

 

「アーキテクトも、彼の揶揄いに本気にならないで下さいな」

 

「へっへへ、悪い悪い」

 

「あぅぅ・・・ドキドキして死んじゃうかと思った・・・

 

「「「そこまでなの(なんですの)!!?」」」

 

 

 胸に手を当てながらチラチラとウラカンばかりを見るアーキテクト。しかしその顔は今まで見たこと無い程上気し、目は潤んで汗もかき、荒い呼吸を繰り返している。

 まるで恋した相手に抱きしめられて堪らなくなった様な、初めて第三産業廠で会ったときとは比較にならない緊張状態である。・・・おい。

 

 

「・・・・・・ウラカン」

 

「ウラカンさん」

 

「い、いやぁ、こんなに箱入り娘な子を揶揄ったのは俺も初めてだ。まぁ、その・・・すまん、やりすぎた」

 

「・・・・・・きゅー」バタン

 

「「「アーキテクト!?」」」

 

 

 ついに限界を超え、お決まりのセリフと同時にバタンと倒れてしまうアーキテクト。

 こうなっては仕方ないので、三人でせっせとロビーのソファーまで運んで寝かしつけてやる。もちろん看病役はウラカン。やった事の始末は付けてもらわないと・・・意識が戻った直後にまた落っこちそうな気もするが、そん時はそん時だ。ウン。

 

 

 


 

 

 

「戦術人形が夢を見るかどうか、ですか?」

 

 

 アーキテクトをウラカンとスケアクロウに任せ、俺は先とは別の用件で元鉄血の技術者『リーサ・スタインフェルド』の元を訪ねた。

 スケアクロウが魘された悪夢。多量の冷や汗に激しい動悸や息遣い、夢とはいえそれは彼女にとって尋常でない恐怖を感じさせるものであったのは聞いた内容から直ぐに分かった。

 

 しかしそもそもの話、スケアクロウが夢を見る事そのものは果たして起こり得るものなのか?

 俺は昨日のやり取りの中でそんな疑問を抱く事となったのだ。

 

 

「あぁ。昨日夜中に目が覚めた時に思ったんだ。戦術人形も夢を見るのか?って。専門家ならすぐに分かるだろうって思ってさ」

 

 

 昨夜の出来事は敢えてボカし、純粋な疑問として彼女に問うた。

 唐突な俺の質問に最初キョトンとした顔を浮かべていたリーサだが、訳を聞くと得心した顔で数度頷き、口を開いた。

 

 

「そういう事ですか。でしたら結論から言うと、夢を見る機能は基本的にありません。もしかしたらその機能を搭載したモデルもあるかもしれませんけど、少なくとも鉄血の戦術人形は『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ふむ・・・それは戦術人形に夢を見る機能を付ける理由が無いからか?」

 

「ええ。そんなプログラムを搭載したところで得られるメリットは大きくありませんし、そこに割くリソースでもっと別のプログラムをインストール出来るかもしれないですから」

 

 

 確かに仰る通りだ。

 人間は生まれながらにして脳が夢を見るように出来ているが、人形はそうではない。

 電脳の容量には限りがあるわけで、戦闘というある種極限の状況に身を置く人形に無駄な機能をわざわざ詰め込む理由が無い。

 

 ・・・。

 

 

「なるほど。分かった、ありがとう」

 

「いえいえ」

 

「あぁ、それともう一つ聞きたいんだが」

 

「はい?」

 

「鉄血の関係者に『サーリャ』と『リーリャ』という名前を持つ人物は過去存在していたのだろうか?」

 

「はて・・・スケアクロウとエージェントには確かにその個体名が付けられてはいますけど、過去にそんな名前を持つ人物が会社にいたかどうかは分かりません。このご時世にしては社員の多い企業だったので、流石にそこまでは私も・・・」

 

 

 考え込む素振りを見せるリーサ。だが彼女の記憶している範囲にどうやら該当する人物はいなかったようだ。

 一応彼女の視線の動きや仕草も注意深く観察してみるが、本当に知らないと判断して良さそうである。

 

 

「それもそうか。すまない、変なことを聞いた」

 

「いえ」

 

「忙しい中時間を割いてくれてありがとう」

 

「とんでもないです。また何かあれば遠慮なくいらして下さい」

 

 

 にこやかに笑うリーサに見送られ、部屋を後にする。

 ギルドの廊下を歩く中で、俺は改めて昨日の出来事がなんだったのかを考えてみる。

 

 

(スケアクロウがあれだけ取り乱す程の悪夢を見たと訴えるのに対し、鉄血の技術者だったリーサはそもそも鉄血製の戦術人形は夢を見ないと断言した。

 この矛盾はなんだ? なぜ食い違う? スケアクロウが夢を見る理由は何だ?)

 

 

 リーサの言う通りであれば、昨夜の出来事は起こるはずの無いものという事。だが現実に彼女は魘され、体もはっきり恐怖による反応を示していた。

 少なくとも、スケアクロウ(サーリャ)という個体がただの戦術人形じゃない事は間違いない。それは即ち、同時期に作られた最初期のハイエンドの片割れであるエージェント(リーリャ)も同じということ?

 名前が似ていて、姉妹らしい振る舞いも見せる二人。そして”人形としての作り”が特別製であるという二人。

 

 

「リーサは二人の名前を持つ人物の存在は知らなかったと言ってたが、どうにも気になる。・・・・・・もう少し深く調べてみるか」

 

 

 




 最近の時勢について思う所があるのでちょっと書かせてください。
 ※本文と関係のない内容です。興味の無い人はスルーで構いません。


 早く緊急事態宣言を止められるくらいには収束に向かわないかなと思う今日この頃。
 しかし出勤のために電車に乗っていると、ちゃんとマスクを活用しない、感染予防をしようという心がけをしない大人の多い事多い事。老若男女問わず、です。

 自分は掛かってないからマスクしなくてもいいと思ってるのか、自分は掛からないと思ってるのか、掛かったら掛かったでそん時はそん時とか、若いから掛かってもイイとか思ってんのか知りませんが、コロナに掛かると周囲の人間に迷惑を掛けるという事をまるで理解していない様に思えて仕方ありません。
 濃厚接触者に認定されてしまうと、陽性反応が出た患者本人よりも更に長い期間の自宅療養を指示されますから、その間その人は買い物はおろか碌に家族と触れ合うことすら出来ずに隔離されなきゃいけません。それが最長の潜伏期間とされる二週間の間ずっとです。
 当然その間は働けない訳で、アルバイトの様に時給制でお金を稼いでる人だと尚更ダメージは大きいですよね。

 ちゃんとしてらっしゃる方が大半なのはもちろん承知していますが、上記の様に感染予防に協力する気の無い自分本位な行動をしている人がいると、その分だけコロナ収束が遠のいてしまうのです。考えれば分かる事なのですが・・・。
 どうか皆さん、お体の調子には十分気を付けた上で、改めてコロナの感染予防に取り組んでいきましょう。
 皆さん一人一人の行動が結集すれば、それだけ収束は早められるはずです。

 以上、この時勢への長い愚痴でした。
 愚痴を読まされて気分を害された方がいらしたら申し訳ありません。
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