裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
久々に一週間オーバー程度で済んだな・・・。
バレンタインデーを過ぎましたが、皆さんの戦果はどうでした?
俺っすか? 貰うどころか、もはやチョコすら食っても無え()
「なーに? もしかしてM16A1を助けろとでも指示が出てるワケ? レイの仕事はこのエリアに出た
「・・・・・・あ?」
新型の鉄血ボスだと??
一体何処からそんな情報が出てきたんだ?
確かに、戦闘が始まってから現在までの敵の出方は鉄血ボスが指揮を執ってるとすりゃ辻褄は合うが、しかしボスがいるかどうかなんてのはまだ共有も何もされてねえぞ。
・・・いや、さっきスケアクロウが言ってたな。調査結果次第では敵に向かって大立ち回りしなきゃいけないかもって。こういう事かよ、ったく。
と、噂をすれば、通信のスキャンが完了したスケアクロウから連絡が来た。
動作が軽くなった端末を立ち上げ、彼女との回線を開く。
『お待たせしましたの。当該区域のスキャニングが完了しましたわ』
同時に端末に表示される通信状況のヒートマップ。どうやら接敵報告や増援要請等の様々な場所から発される”現場からの通信”とは別に、複数の定まった箇所から”現場に向けた
恐らくこの通信割合の大きいポイントに鉄血の中継ステーションがあるんだろう。まあそれ自体はおかしな話じゃない。指揮を執るハイエンドがここから遠く離れた場所にいたとしても、中継点があればスムーズに指揮が可能となる。これはハイエンドがその場にいなくても鉄血が支配を続ける為のものだ。
しかしここに、先ほどUMP45からもたらされた情報を組み合わせると話が変わってくる。
「ありがとうスケアクロウ。ところで今404のUMP45と接触してるんだが、嬉しくない新たな情報が入った」
『新たな情報?』
「このエリアを指揮する鉄血ボスがいるらしい。それも、例の事件以降新たに作られた指揮型のモデルだ。名前は
『・・・それはまた、厄介そうな敵が出てきましたわね』
今言った情報でおおよそを察したのだろう。無線越しに彼女の小さな溜め息が聞こえてきた。
何せ今のところ、部隊が鉄血ボスの居場所を掴んだといった情報は全く入ってきていない。小競り合いレベルの交戦が続く割には敵の勢いが全然収まらない、そこに疑問を感じた指揮官がこれから衛星写真を撮ろうとしているところなのだ。
恐らくUMP45の掴んだ情報はこれからクルーガーを通して指揮官に下りてくるんだろうが、果たしてそこからイントゥルーダーを見つけ出すのにどれだけ時間が掛かるのやら。
少なくとも一から手掛かりを探してとなれば、間違いなく夜まで掛かるだろう。
「指揮型がいて、それが複数の中継ステーションを介して指揮してるとなるとだ。今動いてる部隊だけだと探し出すのに結構時間が掛かるんじゃないかと思う」
『それに指揮型となれば、探し出す時間をさらに引き伸ばす様な指揮をする可能性もありますわね』
「あぁ。スケアクロウ、スキャンした中継ステーションから信号を辿ってボスのところまで行けるか?」
『ふむ・・・それですと貴方の位置が逆探知される可能性もって、ちょっと!?』
「うん??」
突如横槍を入れられた様な相棒の声に、何かあったのかととりあえず応答を待つ事数秒。
今までは直接音声信号として飛ばしてきていたおかげでクリアだった無線が、今度はヘッドセットの拾う喧しいローター音と共に同僚の声が流れてきた。
・・・嫌な予感。
『レイ、聞こえる?』
「聞こえてるが、どうした」
『今グリフィンの特殊部隊と会ってるんですって? 今さっき依頼主から連絡が届いてね。オーダー変更よ』
「・・・・・・」
ほら見たことか。
最初はM16A1の救出が仕事で、G&Kの部隊は俺たちとは別の目的でここに出張ってくるという話じゃなかったのか。
嫌だぞ、こんなところに必要以上に留まるなんて。
一気に気分が下がった俺の内心を他所に、アインスは何故か少しばかりの楽しみを抱えた様な声色で変更された新たなオーダーを伝達してきた。
『M16A1の救出と共に可能な限りの中継ステーションの破壊、欲を言うなら鉄血ボスの居場所を捜索した上で、可能ならば目標の破壊、或いは鹵獲してって』
それは救出対象をエスコートしながら好きにドンパチしまくれという、最初に出された指示と全く異なる変わり身甚だしいオーダーである。
さらに鉄血ボスの捜索に加え、出来るならエクスキューショナー同様に鹵獲或いは破壊もしてほしい?
俺たちは
「あんのヒゲゴリラはバホなのか???」
『ええ。アンタがそう思うのも無理無い無茶苦茶なオーダーよ。もちろん必要な支援は適宜送り込むわ。滞在可能時間ギリギリになったら、コレと一緒にアタシが直接乗り込んでアンタ達を回収したげる』
「・・・一応聞くが、やらないって選択肢は無いんだな?」
そう問うと、彼女はまるで何を言うのかと言わんばかりに鼻で笑い、クソ生意気に煽ってきやがった。
『
口元がグニャリと曲がる。
そこまで言うならやってやろうじゃねえかというプライドへの刺激と、挑発に対するこの野郎ふざけやがってという怒りの感情。
急速に頭に血が上り、思考が冴え渡ってきた。
「・・・フン。良いぜ、やってやるさ。その代わり請求する報酬は割り増しだ」
『ヤル気になった様で何より。思いっきりブチかましてやんなさい』
「上等だ」
通信が切れる。
視線を戻すと、俺の
「れ、レイさん?」
無意識に口から漏れ出てしまったのだろう。言ってからハッと気付いた様に手で押さえるゲーガー。
「気にしなくて良い。それよか聞いてたな? 目的が変わった。・・・ん、この音は」
その時、外からポツポツという音が聞こえ出した。やがてサーサーからザーザーへと音は変わっていき、本格的に雨が降り出してしまった。
空は黒い雲に覆われ薄暗くなり、時々雷の唸る音が腹の底に響く様な有様。これではM16はおろか人一人を探し出すにも一苦労だろう。
「ちっくしょう・・・・・・踏んだり蹴ったりだぜ」
「あーらら、結構本降りね。じゃあ止むまでお茶でもしてく?」
「・・・はぁーあ」
降りかかる障害の多さに、前途多難だと溜め息を吐くほかなかった。
-----
G&K S-09地区
794基地 指揮所にてーー
「・・・・・・このタイミングで急に雨雲が発生するって何なの? バカなの? 死ぬの?? 巫山戯てんの???」
「し、指揮官様! お気持ちは分かりますから、どうか抑えてくださいぃ!!」
一方、遠隔で部隊の指揮を執っていた794基地指揮官『ジャンシアーヌ』は、自らの企図した情報収集の手段が使えなくなった事に現在大層ご立腹であった。
怒りのあまり強烈な殺気を辺りに振りまいている為、彼女の横で何とか宥めようとしているカリーナも内心冷や汗が止まらない。
とはいえ、ここまでジャンシアーヌが頭に血を昇らせているのも、事情を聞けば多くの人から理解若しくは共感を受けられるだろうが。
現在彼女の部隊が遂行中の作戦は、既に交戦から7時間以上経過している。にも拘らず、一向に敵の勢いが衰えない事に違和感を覚えたジャンシアーヌ。
より広範囲かつ俯瞰的に現場を確認する必要があると判断し、旧文明が打ち上げた数ある偵察衛星の一つを利用して現場上空から観察しようと試みていた。
ところが、現場区域は元々山に囲まれた高地に位置しているため天候が安定し辛く、加えてコーラップス汚染の影響でより不安定になっている。
そんな現場上空を衛星が通過する5分ほど前の事。人形たちの間で雲が出てきたやら雨降りそうやらと無線が賑やかになったかと思えば、見る見るうちに発達していってしまい、結果通過した衛星が捉えたのは白く大きな雨雲という形に終わったのである。
自然相手にはどうしようもないと頭でこそ分かっているが、このチャンスを潰されたのは彼女にとって非常に大きい。
指揮する時間が延びる=残業時間が延びるためだ。
交戦から7時間弱、部隊の出立を見送った未明も含めれば8時間などとうに過ぎている。しかもこの間、彼女はまともな休憩を取れる訳もない。トイレや最低限軽食を摘むといった場合を除いて、ほぼぶっ通しでコンソールと向かい合っているのだ。
根っからの軍人気質の者ならまだしも、彼女は立場も心もあくまで”新人の指揮官”である。入社してからまだ時期もそこまで経ていないと言うのに残業ばかりとなれば、内なる不満を一つ二つ叫びたくなるというものだろう。
「チッ・・・カリーナ。次の衛星通過時刻は?」
「は、はい。えーっと・・・・・・あっ」
慌ててタブレットをスイスイと動かしていくカリーナ。
何か言い辛い情報でも目に入ったのか、普段溌剌とした彼女にしては歯切れの悪い反応が返ってくる。
「なにさ?」
しかし、言ってもらわなきゃ分からないので、若干刺のある声色で再度カリーナに問いかけた。
「そ、そのぉ・・・3時間後、です」
「ウッソでしょ・・・・・・」
その瞬間、ジャンシアーヌは天井を仰ぎ目頭を押さえた。
残業が確定した瞬間だ。
「・・・あり得ないわ。カリーナも私も、毎日こんなに頑張って仕事してるってのにぃっっ!!! チキショーーーー!!」
「指揮官様!?」
ついに爆発した叫び。
ありったけの声で解放すると、今度は鈍い音と共にコンソールに崩れ落ちた。
仕事がまるで終わる気配を見せない現実への絶望感が、黒いオーラとなって彼女の周囲に漂っている様にすら見える。
「・・・指揮官様?」
「あぁーもう、グダグダ言ってても仕方ないわね。カリーナ、このままだと補給が要るわ。ドローンとヘリ、それから補給ポイント設定の手配をお願い」
「りょ、了解しました!」
「794司令部より各隊へ、聞こえてる?」
『第一部隊感度良好』
『第二部隊も問題ないです』
『だ、第三部隊も聞こえています』
「OK。皆も予想できてると思うけど、上空に雨雲が被ったせいで偵察衛星の撮影が失敗したわ。敵の正確な数は一切不明。あんまり良い状況じゃないのは確かね。
多分長くなるわ。今カリーナに補給の手配を任せたから、補給ポイントの用意が整い次第機を見て各隊注意して物資を受け取りに行って。
それと、くれぐれも無茶や無駄弾撃つ様な行動は控えること。一人でも欠けたら作戦を失敗するリスクが高まる事を肝に銘じておいて。良いわね?」
『『『了解!』』』
既にモチベーションが死に体となってる自分と違い、未だ気力十分といった様子の人形達。自身と部下の気力のギャップに顔を引き攣らせた彼女は、一息吐くと気怠げに足を組み換えコンソールを弄り始める。
カリーナはその様子に一瞬怪訝な顔を浮かべるものの、決して長くない付き合いの中でも、彼女が作戦中に無駄な行動をする人物でない事は十分理解していた。
思考を切り替え、自分でも何か手伝える事は無いかと声を掛ける。
「指揮官様、何をしてらっしゃるんです?」
「んー? こうなったらコネを使って1秒でも早く作戦を終わらせてやろうと思ってね」
「コネですか?」
ほれ、と指差す画面には二人のグリフィン指揮官の名前が表示されていた。
『
『
この二人は、以前AR-15を捕らえた鉄血ハイエンド『ハンター』との交戦時に、ジャンシアーヌと共同で攻略に当たった指揮官たちである。
彼らがここに集えば、少なくとも自分たちだけでやるよりは遥かに効率的に任務を進められる。
「せっかくハンターん時に頼れる知り合いが出来たんだし、今日の仕事だって手抜けるモンじゃないんだから、応援くらい頼んだって良いでしょ?」
もっともらしい理屈でこう言っているが、その実瞳の奥に1分でも早く仕事を終わらせて寝たいという欲望の炎がメラメラ燃え盛っているのにカリーナは気付いた。
・・・指揮官様。お気持ちは分かりますけど、全力を出す理由がちょっぴりセコいと思います。
「あ、あははは・・・」
ただ、それを正面から告げてもせっかく立ち上がったモチベーションを潰すだけなので、カリーナは内に思った事を誤魔化す様に乾いた笑いを零すほかなかった。
次回、