裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
次回シュ・ラ・バと言ったな、あれは嘘だ。
真面目に言いますと、タカタカ打ってたら気付くと過去のお話を書いてました(汗)。
M16と416との間に何があったのか、それを本作オリジナルの展開でレイが振り返ります。
と言う事で・・・M16も416も戦術人形としては珍しく凄え長生きしております(滝汗)。
またそんなこんなでオリ設定オリ要素も含まれていきますので、お読みになる際は予めその旨ご承知おきください。
俺がM16A1と出会ったのは約7年前。
当時国家保安局に所属していた彼女は、
国家保安局とは言うが、実際には諜報機関染みた仕事もそれなりに手掛けるらしい。国を保安するための”仕事”をする組織なので、他国や国家運営に影響の大きい組織・法人に対する知謀を企てたりも業務内容に入るんだそう。
しかしコーラップス前ならまだしも、国力が大幅に削られた現代では自国のエージェントだけで全ての謀略を賄うには人手が足りていないのが現実。
そこで、大戦後に爆発的に普及した戦術人形の力も使いつつ、時に俺たちの様な裏家業に秘密裏に
そんな世間の流れのもと、身に凍みる寒さの冬に出された依頼で出会ったのが二人組の女性エージェント、その一人がカーラだった。
初めて会った時の印象は・・・空元気で無理やり笑顔を作っている女性。普段は姉御肌な振る舞いでチームの空気を明るく保とうとしてくれるが、ふと誰の視線からも逃れた一瞬だけ顔に陰が差すといった具合だ。
バディを組んでいたもう一人は、組んでから日が浅かったせいか彼女の陰に気付いた様子は無く、また二人の間に特段コミュニケーションのぎこちなさがある訳でも無い。カーラ個人が何か悩んでいると俺は推測し、そしてそれは話を聞いたところ実際に当たっていたのである。
といっても、その時の俺はカーラの悩みを聞いて助けになってやろうとは一切考えていない。こんな仕事をしてる手前、目の前の状況に集中出来ない存在がどんな惨事を招くか身を以て知っている俺は、余計なアクシデントを引き起こす
しかしさあどうやってそれを摘むかと考えた時、何気ない雑談の中でカーラが大の酒好きであるという話題が上がったのだ。
幸い、完遂にはある程度の期間を要する依頼だったため、初日の顔合わせがてら二人を酒に誘い、信頼構築も兼ねて交流を図ってみた。
その結果、聞いた通りの
「カーラ」
「んー、どーしたんらよ?」
「・・・何か、悩みがあるんじゃないか?」
「っ、・・・悩みぃ? んなもんナイナイ。カーラてゃんに、悩みなんてありまっせん♪」
赤ら顔になり、所々呂律が回ってない所はあるにせよ、彼女の意識までもが酒に呑まれてる訳ではないらしい。
悩みという単語にカーラはほんの一瞬ビクリと体を震わせた。直ぐになんでもない様に酔っ払いのノリに戻ったが・・・図星を突かれた事への反応を見れば証拠は十分である。
「同僚でもなんでもない今回限りの仲間だからこそ、気兼ねなく話せることもあるんじゃないか?」
「・・・」
「心配するな。守秘義務はちゃんと守る。誓って誰にも言わない」
「・・・」
そこまで言って、ようやく何かに悩んでる事を俺にバレてることを受け入れるつもりになってくれた。
大袈裟なまでの溜息を一息吐くと、ビールを一気に飲み干してジョッキを叩きつける様に置く。
そしてキッと強い眼力で俺を見据えた彼女は、さっきまでの姿が嘘の様にハッキリとした口調で話し出した。
どうやら本当は酔うにはまだまだ全然足りてないようだ。或いは、酔うに酔えなかったか。
「・・・分かったよ、私の負けだ。にしてもアンタ、随分と目敏いんだな。少なくとも私の相方にはバレてないってのに」
「仕事柄目敏さと耳聡さが無いと簡単に詰むんでね」
「ハハッ、そりゃそうか。・・・場所を移そう。近くにベンチがある。休みがてら話そうぜ」
「分かった。外は冷えてる、トイレは済ませとけよ」
「オイオイ、セクハラか?」
「ただでさえそんだけ飲んでんだから言ってるのさ」
「だとしても言い方ってあるだろうに・・・分かった、分かったからその無駄にギロッとした目は止めてくれ。ちょっと怖い」
「フン」
アルコールには利尿作用がある。ましてや体が寒いと尚更人はトイレが近くなる。
まぁ確かにあんな言い方はよろしくないと今は思うが、あの時の俺は少しでも早くトラブルの元を取っ払いたい気持ちでいたから、女子へのデリカシーなんてまるで気にも留めてなかった。
そういうわけで彼女が用を足してる間に会計を済ませて店の前で待つ事暫し。丈の長い黒のダッフルコートに身を包んだカーラが出てきた。
ポケットに両手を突っ込み、あーさむさむと言いながら体を小刻みに震わせて。
「悪い待たせた。それと会計済ませてもらってありがとな。私は幾ら出せばいい?」
「気にしなくて良い。それより早く行こう。お互いこの寒い中でずっと立ってるのもなんだろう」
「ハハッ、そうだな。こっちだ」
彼女の先導のもと歩く事5分少々。昼間は住民の憩いの場として賑わう並木通りのある公園も、夜となった今は誰もいない。道端に等間隔で置かれたベンチの群れ。その一つに彼女は徐に腰掛け、白い息を吐き出した。
俺も一人分の間隔を空けて隣に座る。周りに誰かがいないか、俺たちの正体を知る何者かがいないか、常に気を張りながら。いざとなれば即座に
互いにベンチに座って10分程経った頃。
ポツリ、カーラは内に抱える悩みを溢す様に話し始めた。
「・・・私は、長い事組んでた大事な後輩を、切り棄てた」
「切り棄てた?」
顔を俯かせるカーラ。
目元は前髪の陰に隠れ、彼女の表情を窺い知ることは出来ない。
「元々スペックが高い奴でな。大概のことをソツなくこなせる。ただ如何せんプライドが高いところがあって、その上可笑しいと思ったことは誰であろうとズバッと言っちまう」
「よく言えば天才肌の正義感が強い人、悪く言えば生真面目すぎて融通の効かないってところか」
「あぁそんな感じだ。まあ当時のアイツの性格は慢心と紙一重みたいなとこもあって、私は気を引き締めさせるつもりであんま優しく接した事は無かったんだが・・・。それでも仕事っぷりもオツムも中々優秀だからな、経験を積んでく内にプライドから来る角も段々取れてくだろうって思ってたんだ」
口元がわずかに緩む。
多分、カーラにとってその後輩との日々は悪くないものだったのだろう。
仕事柄あんまり空気が緩すぎるのも良くないし、慢心と紙一重なんて言い回しをするあたり、その後輩の高いプライドというのはそれこそ鼻の伸びた天狗に近いものがあったのかもしれない。
あくまでもカーラは先輩として、締めるところはきっちり引き締めて接していたというのが伝わってきた。
「ーーそのはず、だったんだ」
だが、そう言った彼女の口元は何かを堪える様にキュッと結ばれる。
同時に革の繊維が強い力で擦れる様な音が鳴り出す。音の鳴る方へ見やれば、革手袋を着けた両手が強く強く握りしめられている。素手だったら血が出るかもしれない程に。
「3年くらい経ったある日の事だ。プライドの高さは相変わらずでも、あまり尊大にし過ぎると周りと上手くいかなくなるってのを分かってきてたアイツは、自分なりに努力してなんとか周りと馴染んでいってたんだ。
そんな時、親父が偉い政治家の先生だっていうボンクラ野郎がウチの部署に入ってきた。ーー分かるだろ? コネって奴さ。明日なんて考えられない様な人もいるこのご時世でとてもよく肥えた肉体。碌に使えもしない、いるだけ仕事が増える典型的なダメ息子。
それでも、部署にいる限りは仕事をしてもらわなきゃいけない。給料だけもらってまるで働く気のないあの野郎をなんとか仕事に向かわせようと、アイツは頭を働かせて色々努力してたんだ」
話を聞くだけでもありありとその様子が思い浮かぶ。
自分の恵まれた生まれを当然のことの様に思い、思い通りにならないこと全てをバックの権力で解決しようとする実の無い無能。そんな奴が居れば組織は簡単に歯車が噛み合わなくなる。
そのボンボンが入ってくると聞いた時のカーラや後輩の落胆はさぞや大きかっただろうが、そこで気持ちを落ち込ませたままでは何も解決しない。
せめて状況を少しでも良くしようと、後輩なりに考えて行動したという事が分かった。
それがまともな感性を持った相手なら、きっと聞き入れてくれる様な策だったろうが・・・。
「・・・無能の分際で権力だけ持っている奴にとって、後輩のそうした働き掛けは鬱陶しく見えるだけだった」
「・・・あぁ、そうだよレイ。奴にとって国家保安局に所属しているというステータスだけあれば良い。仕事なんて他の人間に任せろ、この俺は土下座されてもやらん、そんな奴に何度働きかけても無意味に終わったんだ。終わってしまったんだよ」
「やってみなくちゃ分からない、何か変わるかもと思ってやっても結局何も変わらなかった、か・・・後輩は何か言ってたのか?」
カーラは苦笑を浮かべ、二度三度首を横に降った。
「自分の何が悪いんだって凄く悩んでた。奴が言葉を聞き入れてくれないのはきっと私の努力が足りてないからだ、なんて追い詰める様にもなっちまってさ。
負の流れに陥りかけてたそんな時、ボンクラ息子がアイツを引きずり込もうととんでもない事をしやがった」
「? 目に入らない所へ追い払うなら分かるが、引きずり込むってどう言う・・・まさか」
いや、口に出してみて俺はカーラの言わんとする事を理解した。
引きずり込むと言うのはつまり、自分の権力下に置いて好き放題弄ぼうと企んだのだろう。
周りの誰も口出し出来ない権力の影響下まで引っ張り込めば、もう後輩をどうする事もできなくなる可能性が高い。
ボンボンにそう思わせるもっともな理由となれば・・・。
「アイツ、可愛い見た目してんだよ。青みがかった透き通る様な銀髪のロングでサラサラな髪。その上出るとこは出て引っ込むとこは引っ込んでるし、中身だってプライドこそ高くてもなんだかんだ色んなとこに気付いて気を回せる奴だから、
・・・でも、最初の頃のアイツを知ってる同僚には未だ受け入れられないって人もいてな。奴はそこに目を付けた」
・・・なるほど、ターゲットの人物を快く思わない第三者を誘導して、罠に嵌めようって寸法か。
確かに、自分の手元まで引きずり込むのには手っ取り早い手段だ。その上、自分は直接手を汚さない。みみっちい事をする小物だ。
「ある時たまたま私はその同僚が奴と密会してる所に通りがかってな、奴がアイツを貶めようとしてるのを知った。そして・・・アイツを守るためにはもうほとんど時間が残されてないってことも」
気付いた時には既に秒読み段階。
後の祭りになるよりかは100倍マシだが、それでも危機的状況に変わりはない。
「手段を選んでられる状況ではなかったと」
「そう。・・・奴がアイツを嵌めようと裏で画策していた任務があったんだが、その直前に”奴の権力が及ばない別派閥”のコネで任務を無理やり押し込んでな。
私は事前にサーバーにアクセスして任務情報を意図的に改竄、その後の実戦で実際には敵戦闘員を撃ったにもかかわらず、アイツが味方を誤射してしまったという存在しない事実をでっち上げた」
「それは・・・」
とんでもない事を仕出かしたものだ。
ボンボンの権力が及ばない任務の中でドデカい不祥事をでっち上げ、手を出させる間も無く
手段を選んでられない程切羽詰まってたとしても、そこまでやり切ったのか?
もしこの事実がバレれば、カーラは無事でいられなくなるのは分かりきっているだろうに。
「アイツには味方殺しのレッテルが貼られ、すぐさま審議委員会が立ち上がった。奴に手出しさせる間も無く迅速にね。
そして私は審議の場で、アイツが
歯を食いしばるカーラ。
握りしめられた拳はワナワナと震え、己自身に向かって滾る怒りを何処にぶつけたら良いか分からなくなっている様に見えた。
「・・・私が裏切りの証言をした瞬間、アイツは信じられないといった顔でただただ涙を流してた。私は見てられなくて直ぐに顔を逸らしてしまった。
数日の審議の末、アイツの処分が決まった。国家保安局をクビにし、表社会からアイツの存在していた全ての証拠を完全に抹消することになったんだ。
それを聞いた瞬間、アイツは腹の底から私の名前を呼んで、頑丈なはずの手錠も無理やりぶっ壊して、本気で暴れ回りながらこう叫んだよ」
地獄の果てまで追い詰めて、必ずこの手で貴様を殺してやるッッ!!
カーラァッッ!!!
「あの時のアイツの顔は今まで見たことの無い恐ろしい形相だった。裏切った私を心の底から憎んでた。
・・・私はな。アイツが好きでもない男に無理やり手籠めにされるなら、例えクソみたいな手を使ってでもそれを阻止するべきだ、しなければならないと思ってた。アイツをを弄ぶためにクズ野郎の手が伸ばされてるのを見て見ぬフリなんて、私には出来なかったんだ。
・・・ハハハ。3年経った今でも、ふとした瞬間あの時の顔がフラッシュバックするんだ。その度に思うんだよ。アイツを裏切って、裏切った私は変わらず国家保安局に勤めてて、こんな生き方をしてて良いのかって・・・」
そう力無く言ったカーラは儚い笑みを浮かべ、乾ききった笑い声を漏らす。だがそれも長く続かない。彼女は笑うのを止めて深く俯く。
やがて彼女の肩が震えだし、堪えきれない嗚咽が漏れ出した。
「なんでこうなるんだ! アイツは何も! 何も間違ったことはしてないのに! なんでっ、なんでこうなったんだよぉ・・・」
滲み出る悔しさ、後輩をまともな形で守ってやれなかった自身の無力感、不甲斐なさ、怒り狂った後輩から当てられた殺意、それらが
自分の中で消化しきれない感情が涙となって、彼女の瞳から溢れ出す。
そしてカーラは握りしめた拳を掲げたと思うと、なんと自分の胸に向かって振り下ろし始めた。何度も、何度も。自分の胸を痛めつけることで、後輩の心に負わせた傷を自分にもと言うが如く。
「クソッ! このッ! このッ!! このッッ!!!」
振り下ろされる拳には一切の加減がない。女性とは言え、訓練を受けたエージェントなのを鑑みれば女性の平均とはパワーが桁違いだと誰にでも分かる。そんな威力で何度も胸を叩けば本当に怪我してしまう。
これ以上自分を痛めつけても誰の特にもならない。後輩がこの光景を見ている訳でも無く、今ここで自傷行為を続けても誰も救われないのだから。
そう判断した俺は立ち上がり、振り下ろされようとする彼女の右手首を思いっきり掴んだ。
「なっ!? は、離せ!!」
「もういい、止めろ」
「何が良いんだ!? 後輩一人もまともに守れもしないこの私のことをお前に何が分かるというんだ!!」
「今ここで自分を痛めつけて何が変わるんだ?」
「それはっ」
「私はお前のことを想ってこんなに胸を甚ぶっていますとでも言うつもりか? ハっ、だとしたら胸糞悪いエゴだな」
「なにっ!?」
「自分を傷付けてアイツの苦しみを私も味わおうなんて、その思考がまさにエゴそのものじゃないか。罪の意識に耐えられなくて、なんとかして罪悪感から逃れようと誰が望んでるわけでもない自傷行為を始めて。
お前は罪悪感から逃げたいがあまり、自分勝手に自分が楽になれる様に自分のカラダを慰めてるだけだ。何も変わらない、変えられない」
「き、貴様ァァッッ!!!!」
次の瞬間、俺は思いっきり吹っ飛ばされてた。
数瞬遅れて右頬に強い痛みが出始め、口の中では鉄の味が感じられる。目にも留まらぬ速さで俺は殴られたんだと分かった。
カーラは俺の体に馬乗りになり、胸ぐらを掴んで持ち上げた。
その表情はさっきまでの落ち込んでいたものとは全く違う、憤怒に染まった鬼の様な顔。
「さらに殴るか? 俺を」
「っ!」
「俺は言ったことを訂正する気はない。お前のやった自傷行為は誰の心も動かせない。俺にも、今のお前の相方にも、後輩にも。
自分勝手に自分を傷付けてるのを仮に後輩が見てたとして、本当に後輩自身が納得出来ると思ってんのか? 地獄の果てまで追いかけてでも殺すと言い切った存在が、
「そ、それは・・・」
「分かるか? お前がやった事は誰にとっても意味無えんだよ。お前以外の誰もお前の行為に価値を見出す事はない。強いて言えば、後輩の怒りに油注ぐ位の価値はあるかもしれねえが。
それをやってる事で現在は、過去は、未来は、何か変わるか? 変わらないだろう。何も変えられないのになぜそうする必要がある? 時間の無駄だ。
意味のある事をしろよ。今は無理でも、いつか後輩と出会った時に何を伝えるか考えるとか、直接再会するために何をどうする必要があるのかとか・・・お前がこの先の人生を後悔しないために考えなきゃいけない課題、今のお前に見えてねえだけで実は山積みになってるんじゃねえの?」
「あっ・・・」
ポツリと呟いたカーラは、まるで思い付かなかったとばかりの鳩が豆鉄砲食らった様な顔をしている。
裏を返せば、俺に言われるまで全く気付けない程に心がドン底にあったと言えるのだろうが。
「後輩の事を想う気持ちはずっと持ち続けてれば良い。でもそこで立ち止まるのは向上心の無いバホのやる事だ。
カーラ、お前はどうなんだ? お前はずっとここで止まったままで良いのか?」
「・・・良いわけないだろう。変えられるんなら幾らでも変えてやる、やってやるさ」
目の色が変わった。
涙に濡れてこそいるが、さっきまで見せていた憂いを帯びたそれではなく、過去と向き合い立ち直る事を決意した目だ。
・・・多分、完全に切り替えるには少し時間が掛かるだろうが、一緒に仕事する上での不安要素を大きく解消する事は出来たと思う。
もうお節介を焼く必要はないな。早いとこ話を切り上げてこの寒空の下から拠点に戻るとしよう。
「そうか。・・・それじゃあ、まずはどいてくれ」
「んあ? ああ悪い・・・」
彼女に退いてもらい、立ち上がった俺は衣服に付いた土を払う。
目に付く範囲の汚れを叩き落としたところで、俺はカーラに背を向けた。
決意したつったって、ケジメを付ける時間は必要だ。今夜くらいは思いっきり泣いたって良いだろ?
彼女が気持ちを整理しようとしている場に、今日初めて会った男がいつまでも側にいるのも可笑しな話。そしてそれは野暮な真似という奴だ。
「・・・先に部屋に戻ってる。気分が落ち着いたら戻って来れば良い。くれぐれも周りには気を付けて、な」
「・・・すまない、レイ。すぐに追いつくから、先に帰っててくれ・・・」
頷き踵を返した俺は、静かに公園の出口へと歩き始めた。
シトシトと雪が降り始め、薄らとレンガで出来た通りに積もっていく。少しずつ、少しずつ。
出口まで来たところで、公園の中に微かに彼女の泣き叫ぶ声が響いているのに気付く。
それでも俺は振り返らず、雪が積り始める道路沿いをまっすぐ帰って行った。
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「・・・おはよう、二人とも」
翌朝、拠点にて。
自身の個室から神妙な顔つきでリビングへと出てきたカーラに、俺と彼女の”今の”相方は思わず掛ける言葉を失った。
昨夜、公園から帰ってきた後も感情が収まらずに枕を濡らしていたのだろう。
昨日までの姉御肌な姿とは似ても似つかぬカーラ。その両目は赤く充血し泣き腫らしていたのだ。
「か、カーラっ、その顔どうしたの!?」
「あ、ああ、昨夜ちょっとな・・・。んまぁ、んなことはもう良いんだ。私の中で整理が付いた事だしな!」
そう言うと、彼女は空元気からではない本来の、彼女らしいニカっとした笑顔を浮かべた。
涙で腫れた目元のせいで、どこか切なさを感じてしまうが。しかし彼女がこうしてケジメを付けたとハッキリ言い切ったのだから、きっと一歩前に進む事が出来たんだと思う。
「そ、そう・・・なら、良いんだけどさ」
「あぁ。絶好調とまではいかないが、今日の私はまあまあ調子が良い。この調子でパパッと今日の分の仕事を終わらせて、今夜も三人で飲むぞ!」
「いやよ! 私カーラのペースに付いていけないぃっ!?」
溜まったもんじゃない、ごめん被るわ!!
そういって相方は朝食も取らずにリビングを出て行ってしまった。
それをポカンとした顔で見送った俺たち。しばしの妙な沈黙ののち、はじめに口を開いたのはカーラの方だった。
「・・・レイ」
「ん?」
「・・・ありがとな」
「気にすんな」
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その後は一部ヒヤリとする場面はあったものの無事に依頼を遂行し、特に後腐れを感じる事もなくスッパリお別れ・・・と言う割にはカーラが若干もじもじしてた様に見えたのが気になったところ。
まぁそうなってる理由はなんとなく想像つくが・・・彼女の性格上周りからモテないとは到底思えないし、カーラの器ならその内オモテで良いパートナーが見つかるだろうことは自明の理である。なので努めて彼女の変化は気にする事無く、俺は元の裏稼業の仕事へ戻った。
それがまさか、7年経って戦場で再会することになるとは思っても見なかったけれども。
久々に会ったらどんな顔するんだろうか? いや、このフルフェイスで俺のツラが見えないから、誰だお前とか言ってくるかね?
にしても・・・自分のでっち上げた不祥事で裏に追放した
仲悪いどころじゃ済まない二人の関係を承知の上で、敢えて45に一緒について来させた俺も人のこと言えた義理じゃねえが・・・っ!!?
「今、なにか悪寒が走ったぞ・・・・・・」
「・・・・・・レイさん、スケアクロウ姉さんから私個人にメッセージが届きましたよ」
「・・・・・・内容を伺っても?」
「『スケコマシなんて知りませんわ、つーん』だそうです」
「はいぃ???」
次回こそストーリーを進めていけ・・・るように頑張ります。
ところで・・・3月にまたイベントやるみたいですね。
随分とテンポが早い様に思えますが・・・本国版との遅れの差を少しでも縮めようとしてるのかな?
個人的には頼むから早くキューブ作戦を常設化するかキューブ+を取り入れて欲しいんですけれど・・・。