裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 大変お待たせしてほんと申し訳ありません。

 私事ですが、今の非正規雇用から正社員登用の面接が迫っていたりと、口から心臓が出そうなイベントが盛り沢山でモチベが死んでました。
 後編とありますが、前編の前にわざわざ導入篇を設けてる事から分かる通り、まだ終わりません()。

 8000字超えですのでお時間ある時に・・・。


-68-M16A1捜索 〜後編〜

 

 

 

「・・・雨が止んでくれて助かったな。お陰で破壊工作が上手く進められそうだ」

 

 

 16時00分ーー

 雨が止み、都市を囲う山々の向こうに太陽が沈もうとしている中。

 雲の切れ間から差す光で影が長く大きくなるタイミングで、俺達は追加で与えられた仕事に向かおうとしていた。

 

 

 現状、G&Kと鉄血との戦線は膠着状態。足を進める中で鉄血を発見しては撃破の繰り返しで、両陣営とも目立った動きは起こっていない。

 

 それは好都合。

 派手にドンパチされてると、いつ流れ弾を食らうかと冷や汗かきながら動くことになるからな。

 最大の懸念事項だった雨も、今の所は再び降る様子は見られない。仕掛けるなら今。

 

 

「さて、これから俺達は鉄血の中継ステーションを破壊しに出向かにゃならん。つうわけで404の二人、カーラのエスコートを頼む」

 

「ハァッ!!?」

 

「お、おい」

 

 

 そう言えば、案の定416がおっそろしい顔で声を張り上げた。

 カーラと416の関係上、こんな反応が帰ってくるのは分かりきっていた。しかしこれから敵陣に忍び込むってのに、救出対象の彼女を連れ回すのはバホのやる事だ。

 今回が実質初仕事であるゲーガーは当然一人で戦場を動けるレベルじゃなく、かといって俺は俺で任された仕事をやらなきゃならない。しかもアインスの挑発に乗って啖呵切った手前、仕事を回してもらってる立場上失敗するのはマジで笑えん。

 

 一方の404はというと、ここを総括してるイントゥルーダーの情報をクルーガーに共有し終え、このエリアでこなさなければいけない任務は全て完了しているとのこと。

 後は帰るだけの彼女達がついでにエスコートするのが、最も効率的で失敗の可能性も低い。

 

 まあ、人間より優秀な電脳を持ってる二人なので、どうすればG&Kに最も有益な展開を描けるかはとっくに割り出せているだろう。

 が、そうは言っても感情がそれを良しとしないってのも理解はできる。

 過去の出来事を思えば尚更な。

 

 

「分かるだろ? キミらが帰りがてら送り届けるのが一番良い選択肢だって」

 

 

 しかし、今は時間を無駄にしてられない。

 自分の内心でどう思っていようと、仕事は仕事として割り切ってくれなきゃ困る場もあるのだ。

 カーラがした仕打ちを思えば酷な要求なのは分かってるが、彼女にはプロの兵士としてG&Kが求める要求を可能な限り達成する責務がある。

 

 G&Kが最も望む成果はM16A1(カーラ)の帰還。

 

 故に、依頼を受けて仕事してる以上はクライアントの望む成果を達さねばならない。たとえ、護れと言われた対象が殺したい程憎んでいる相手であっても。

 

 

「ッ! だけど、私は!!」

 

「416がカーラにされた仕打ちは聞いてる。キミからも、カーラからも。

 その上で言わせてもらうが、形はどうであれ10年の時間を経て再会したんだ。改めて向き合って話してみりゃ、前とは違った捉え方も出来るかもしれないぜ?」

 

「「・・・・・・」」

 

 

 人にとっても人形にとっても、10年という時間は決して短いものではない。

 ましてや、人間のソレに近しい性質のメンタル(ココロ)を持った第二世代型の人形なら、これだけの時間の流れはココロを成熟させるのに十分な物の筈だ。

 

 前とは違った・・・この言い回しのせいで、多分二人は例の事件での様を思い出したのだろう。

 416の怒りに染まった表情にも、彼女の視線を真っ直ぐ受けるカーラの表情にも、隠しきれない戸惑いの色が混じっていた。

 

 

「・・・悪いが、俺もそろそろ動いていかないとならなくてな。仕事の一環ってことで、どうか受け入れてくれないか? 416。

 カーラも、45も、それで構わないな?」

 

「私は別にいいけど?」

 

「私も構わないが・・・」

 

「・・・あぁもう! 分かったわよ! やってやるわよ!!」

 

 

 二人から横目でどうするんだ?という視線を受けて逡巡する事数秒。

 半ばヤケクソになった416が再び声を張り上げた。

 

 

「頼んだぞ。・・・お互いの仕事に取り掛かろう。三人とも元気でな。行こうゲーガー」

 

「了解です」

 

 

 さあ外に出よう、と玄関の戸に手を掛けた所で。

 

 

「あぁレイ、一つだけ言っておく事があった」

 

 

 カーラが呼び止める。

 なんだと顔だけ向けてみると、ハイライトの消えた眼でこんなことを仰せになられた。

 

 

「次会うときには、お前のとこにいる人形(オンナ)の話を詳しく聞かせてもらうからな?」

 

「うぉっ」

 

 

 鳥肌が立った。

 

 

 

 -----

 

 

 

「・・・さっきはああ言ってたけど、実際んところ貴方はこの後どうしたいわけ?」

 

「・・・何がだ?」

 

 

 レイ達が去った後も、UMP45とHK416、そしてカーラは廃屋に留まっていた。

 去り際にレイが言った言葉が胸に残っている事は確かだ。それは多分416も同じ。望んで訣別した訳じゃない、直すことが出来るのなら直したい。紛れもないカーラの本心である。

 しかし一方で、せっかく再会できたのだからせめてもう少しだけレイの役に立ちたいという気持ちも、内心思っていた。

 

 7年前の出来事をそこまで気にしていない様子のレイだったが、あの時心底参っていたカーラにとっては本当に心から救われ、前を向くキッカケを与えてくれた人。

 一緒に仕事を遂行し、抱いた思慕を隠しながら別れたが、受けた恩はぶっちゃけまだまだ全然返しきれていないと思うカーラ。

 そんな内心を見透かしたかのようなUMP45の問いに、深く思案する事暫し。

 

 

「・・・私は、出来るならもう少しだけレイの役に立ちたい、と思う」

 

「あらそ。まぁ現状じゃとっととここからズラかるのが一番レイの役に立つんだろうけど、この後妹達とも合流しなきゃいけないから結局離れるに離れられない訳でしょ?」

 

「まぁ、そうなるな。全てが終わって私を探そうとしたところで既に脱出してましたとなると、妹だけじゃなくその指揮官にも迷惑を掛けてしまう」

 

「そうよねぇ・・・おっけ。とりあえず社長に聞いてみるわ」

 

「・・・45、まさかアンタ」

 

「シー・・・」

 

 

 ハッとした顔をする416の言葉に被せる形で、悪戯な笑顔で人差し指を立てて静かにとジェスチャーする45。

 

 

「社長? 状況が変わったから改めて指示を仰ぎたいんだけど? そう、レイは中継ステーションを壊しに向かったわ。今は私と416、M16の三人で建物に隠れてる。

 ・・・へぇ? 救助対象を動かしても良いの? もちろん私たちは手数が増えるからありがたいけど・・・そう、分かったわ。それじゃ指示通りに動くから。じゃあ」

 

 

 通信を終えたらしい45は二人に向き直り、いつもの仮面な笑みを浮かべた。

 

 

「社長からのオーダーよ。レイ達が鉄血の中継ステーションを破壊しに回ってる間に、私たちでイントゥルーダーの居場所を探し出してほしいってね。

 カーラに関しては、メンタルと記憶領域さえ無事なら最悪損傷を抱えても構わないってさ。もちろん、ダメージは無いに越した事はないけどね」

 

「・・・それは」

 

「コイツとまだ暫く一緒にいなきゃいけないって事? ウソでしょ・・・」

 

「良いじゃない。またコンビネーションを発揮できるチャンスが巡って来たんだから。416もそうツンツンしてないで、そろそろデレたら?」

 

「アンタマジでぶっ殺すわよ??」

 

 

 能面となった416などまるで気に留めずにケラケラ笑う45。

 しかしそれも直ぐに形を潜め、部隊長の顔になった45を見た二人は気を引き締める。

 

 

「カーラ、貴方の妹の部隊をサポートする仕事よ。鉄血ボスの居場所を探し出す以上、危険度が高い。

 最悪メンタルモデルだけ引っこ抜いて帰る位の事はしてあげるけど、ボス相手と考えると一々フォローしてる余裕は多分無いでしょうね。

 これから貴方のことを一兵士として扱うわ。一切の遅れなく私たちについて来て」

 

「・・・了解」

 

「416も、使える手はなんでも使うつもりで動いて」

 

「・・・・・・了、解」

 

「404小隊、行動開始するわよ」

 

 

 


 

 

 

 スケアクロウが割り出した通信ヒートマップを頼りに、俺とゲーガーは中継ステーションへと急ぐ。

 大本命のカーラを発見した今、立ってるだけで被爆し続けるココ(イエローエリア)に必要以上に留まる理由が無いからだ。

 

 通信密度を見る限り、設置された中継ステーションは恐らく全部で7つ。それらは満遍なく電波を行き渡らせるため、一つ一つ離れた地点に置かれている。

 乗り物無しで移動するにはまあまあ時間が掛かってしまう距離だが、水溜りとかの局所的に汚染値が高い箇所に接触しなければ、被爆限界を超えずに仕込み終えられるはず。

 

 そんなわけで早足で駆ける事30分ほど、一番近い中継ステーションへと到着。といっても目の前にあるのはただの建物。だがアンテナを屋根の下に置いては意味が無いので、多分最上階の天井が崩落したとかで吹き抜けになっているのだろう。

 指揮系統を固める重要インフラのため、厚い防御体制を敷いている・・・かと思いきや、明からさまにそこに何かあると思われたくないのか、少なくとも建物の周囲には兵を配置していないらしい。

 しかしX線照射式の透視スコープで覗いてみると、中に入ったら即蜂の巣にされる布陣を内部にしっかり整えてあった。リッパーやヴェスピドは勿論、ドラグーンまで配備されてやがる。

 

 これでは俺の装備じゃ火力不足甚だしい。物理的にキャパオーバーだ。

 

 じゃあどうするか?

 正面からドンパチしなきゃ良い。

 

 ストレージから工具類と仕込むモノを取り出してバックパックへ。

 そして人形の赤外線探知を欺けるマントを被り、近くに立つ別の建物の壁をよじ登って屋根上へ。

 

 ゲーガーはここで待たせ、俺はそこから屋根伝いにパルクールで飛んでいき、四辺を残して屋根が完全に抜けた建物に静かに足を載せた。

 強い電波の影響で、フルフェイスのHUD表示は波打つ様にブレにブレまくっている。

 が、こういう事もあろうかと対電磁波防護措置を予めやっておいたおかげで、アンテナ直ぐそばまで来ても表示がブレまくる程度で()()()()()

 

 でっかいフラスコみたいな形をした真っ黒い中継ステーション。こいつは天井から若干はみ出す高さまで伸びており、本体周囲を円周状にドラグーン6機が守っている。

 ちなみにテッペンには5羽の鳩が羽休めをしており、コチラを見つめてはそろって首を傾げていた。

 多分鉄血がこのエリアを押さえて暫く経っている事もあり、人型の存在にはある程度慣れてるのかもしれない。

 

 

(これはこれは愛らしい姿だこと。ほんじゃ、アンテナの上にC4を仕掛けるとしますか)

 

 

 確実を期すなら基盤がある根元まで降りて仕込みたいところだが、この敵の布陣で降りたら確実に死ねる。

 というわけで、思いっきり踏み込んでアンテナの頂点に飛び移る。元々そこに乗っかってた野生の鳩達と入れ替わる形でな。

 

 

「!」

 

 

 次の瞬間、上で動いた黒い影に気づいたドラグーン達が一斉に銃口を上へ向けるが、バタバタと飛び立って行った鳩を視認して警戒を緩めた。

 俺は下が元の姿勢に戻ったのを確認し、取り出したC4を置いて機械仕掛けのタイマー信管、それも起動後は下手に動かしても起爆する振動検知型のモノを取り付ける。

 強力な電波を発しているモノの上に置いて、無線で遠隔起爆させるのは無理だからな。

 

 一つ目の仕込みを終えた俺は即座にアンテナを足蹴に、左手に持ったチャフとスタンのピンを抜きながら屋根を支えていたうちの一辺に再び飛び移る。

 今度はドラグーン達も俺の存在に気付き、即座に引き金に指を掛けたメーザーブラスターを向けていた。

 

 だが遅い。飛びながら落とした2つのグレネードは既にピンが抜けている。

 

 

「じゃあな」

 

 

 着地した瞬間、足元であらゆる電波を乱反射させる金属の花びらが閃光と共にばら撒かれる。

 

 すぐさまゲーガーと合流し、地上には降りず次のポイントへそのまま屋根伝いに向かう。

 考えてみれば、ハイエンドとして元々の体の出力は人とは桁違いなのだ。重たい装備も今はストレージの中、俺のスピードに付いてパルクールするのはそう難しくないだろう。

 

 

『うわっ、とっとっと、おっとっ!? ふあっ!?』

 

 

 そんな声がさっきから近距離通信で聞こえてくるが、時間を縮められるトコはどんどん縮めたいので彼女には頑張ってもらう。

 なんだかんだ言いつつも付いて来れない程ではなさそうなので、ここからペースを上げない限りは多分問題ない。

 

 ・・・うーむ、意外とこの子も身体能力高いな。

 斥候役としてアクティブな動きも本格的に仕込むか。昔のエース(アインス)みたいに。

 

 

 

 -----

 

 

 

 

 戦線が膠着状態に陥っていた山上都市にて。

 時折散発的に現れる鉄血兵たちを倒しては身を潜め、という流れを繰り返し初めて数時間。

 

 ーー18時30分

 天候:曇り

 

 既に空の大半は闇に包まれ、あれほど激しく降っていた雨は落ち着いている。

 しかし、この地で今も銃を構えるグリフィンの人形達の顔には、長時間続く作戦に対し隠しきれない疲労の色が滲み出ていた。

 

 そしてそれは、遠く離れた指揮所から指揮するジャンシアーヌ達も例外ではない。

 彼女らの表情もまた、定時を超えて残業に突入した会社員特有の疲れた顔となっていた。

 

 鬱屈した気分でコンソールとにらめっこしている二人の元へ、M4A1からの報告が届く。

 

 

『指揮官、こちらM4A1。第三部隊はマークしていたポイントを破壊しました。周囲に敵影は無し、クリアです』

 

「了解。少しだけ休んでて。追って指示を出すわ」

 

『了解です』

 

「指揮官様、全通信チャンネルをスキャンしました。現在侵攻中のエリア付近に鉄血製のシグナル反応無し、近辺の鉄血は全て無力化出来た様です」

 

「よし。ドローン補給はどうなってる?」

 

「確認しました! 5分以内に空輸完了予定です!」

 

「ふぅー・・・一先ず目下の懸念事項は一つクリアね」

 

 

 大きく息を吐き、ぐったりと椅子にもたれたジャンシアーヌ。

 どんな高性能な戦術人形でも物資が無ければ何も出来ない。長時間に及ぶ作戦行動により、目的を達するために不可欠な弾薬と配給物資が大きく不足していたのだ。

 腹が減っては戦は出来ぬと言う通り、人も人形も動くにはエネルギーが必要である。

 

 その補給が滞れば、現地にいる人形達を最悪の状況に置くこととなってしまう。弾がなければただ敵にやられるのを待つのみ。食料がなければ飢えて活動が止まるのを待つのみ。

 人形も人と同じ様に接しているジャンシアーヌにとって、それは絶対に起こしてはならない事態。

 その可能性をひとまずは排除出来た事に、彼女は少しばかし安心していた。

 

 とそこへ、味方の回線から連絡が入ってくる。

 

 

『こちら601基地司令官の石軍(シー・ジュン)だ。予定降下地点に全部隊投入完了。これより貴隊の援護に回る』

 

『737基地のフョードル・カモロフですぞ。こちらも予定通り子猫ちゃん達が到着したようですな。同じく、ジャンシアーヌ殿に助太刀させて頂きましょう』

 

「794基地のジャンシアーヌだ。お二人とも、急な連絡にも関わらず増援を送っていただいた事感謝する」

 

 

 要請していた友軍が現場に到着したとの報告を受け、疲労に染まったジャンシアーヌの顔に少しばかりの笑みが浮かぶ。

 既に作戦開始から半日以上が経過している。どれだけ優れた頭脳を持つ人物であっても、人間である以上流石にここまでの長時間を一人で指揮を執り続けるには限界がある。

 そのため、増援を兼ねて指揮を任せられる別の指揮官にも急遽作戦に参加してもらったのだ。

 急な要請だった為、部隊の派遣に少々時間が掛かってしまったが。

 

 

 いずれにせよ、現場の手数も指揮する頭脳も増えれば、疲労からくる凡ミスで致命的な事態を招く可能性は減らせる。

 お二人には申し訳ないが、指揮者側のフォローもお願いしたい所だな・・・。

 内心そんなことを思いつつ、大きな溜め息を溢した直後。

 

 コンソールのヒートマップにある通信量の多い”7地点”が()()()()()()()

 

 

「は? なんで突然・・・カリーナ、確認急いで!」

 

「はい!」

 

『こちらM4!! 複数の箇所で同時に爆発が起きました!』

 

「爆発!?」

 

 

 訳が分からない。

 何故唐突に爆発するのだ。今このエリアに兵を派遣してるのは私と、増援を要請した二人の指揮官だけじゃないのか?

 直ぐにキーボードを打ち込み、先ほど戦場に人形が到着したと連絡を寄越した二人へ回線を繋ぐ。

 

 

石軍(シー・ジュン)指揮官! カモロフ指揮官!」

 

『私は何もしていないぞ! 大体、今さっきエリアに人形達が到達したばかりのコチラに何かを吹っ飛ばす様な余裕は無い!』

 

『こちらも同様ですな。漸く進軍用意が整ったところ故、此度の爆発の原因は分かりかねますぞ! ホァッホァッホァ!』

 

『笑ってる場合か!? 我々が関知していない、敵か味方かも分からん奴が紛れてる可能性があるんだぞ!』

 

『ホァッホァッホァッ・・・それは私たちの可愛い子猫ちゃん達が危ないですな。気を引き締めて掛かりましょうぞ』

 

 

 原因不明の事態が起こったというのにどこか大らかに構えた様子のカモロフと、そのために余計に焦りを覚えている石軍(シー・ジュン)

 ともかくまずは情報を集めて状況を分析しないと、どう動くのが正しいのかすらも分からなくては動かしようが無い。

 

 M4の元へ回線を繋ごうとした次の瞬間、オープンチャンネルで何者かが割り込んできた。

 

 

『あら、グリフィンの皆さん。やってくれましたわね?』

 

「は?」

 

「こ、これって、鉄血からのオープンチャンネル!?」

 

 

 聞き覚えの無い新たな声。

 その声色は愉快そうで、そして見下されてる様にも聞き取れる。

 

 一息吐いた途端にコレかよと露骨に顔を顰めながら、ジャンシアーヌは応答した。

 

 

「で? 何の用?」

 

『私共の通信ステーションを一斉に爆破する等といった、聞けば聞くだけ涙ぐましい無駄な努力をなされている様ですので、この際私直々にお声がけしようかと思いまして』

 

「無駄な努力?」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()という身に覚えのないフレーズに一瞬首を傾げそうになるが、その後に出て来た無駄な努力(貶し文句)にピクリと二人の目尻が釣り上がった。

 いや、モニターに映る指揮官達も顔を顰めている。

 

 

『ええ、ええ。貴方がたに鉄血(私たち)を止めるなど不可能ですもの。なのでご提案がありますの』

 

「はぁ?」

 

『M4A1を置いて帰って下さいな。そうすれば、撤退中の貴方がたには何もしません。追撃も行わないことを誓いましょう』

 

 

 ・・・コイツ、今まで散々戦力を小出しにして時間稼ぎに来てた癖に、何をほざいているんだ?

 唐突に出て来た言葉の意味を図りかねたジャンシアーヌ。だが真意がどうであれ、グリフィンにとっても彼女にとっても敵の要求は到底呑めない事は確かである。

 

 

「寝言は寝て言いなさい。グリフィン舐めんじゃないわよ」

 

『あらあら、そうですか。ではもう少し本気を出すと致しましょうか?』

 

「本気ぃ?」

 

『ウフフーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は型式名『SP914 Intruder』、イントゥルーダーとお呼び下さい。

 指揮型ハイエンドモデルとして、ここからは手心を加えず本気で望ませて頂きます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブツリ、回線が切れた。

 次の瞬間、コンソールに表示されていた通信ヒートマップに大きな変化が現れた。

 

 

「!? 指揮官様! 鉄血の通信量が一気に増大しました! コレってまずいんじゃ!?」

 

「チッ!! 全部隊っ、警戒を強めて!! お二人とも、くれぐれもお気をつけて!!」

 

『なんてタイミングで来てしまったんだ俺は!』

 

『なってしまったものは致し方ありませぬ。持てる武器で精一杯戦うだけですな。ホァッホァッホァッ』

 

『「だから笑ってる場合か!?」』

 

 

 笑うロシア人にツッコミをしてる時間も惜しい。

 ジャンシアーヌは先とは一変したヒートマップを睨みつける。

 

 今までとはデータ通信量が文字通り桁違い過ぎる。エリアのそこら中で高密度にデータのやり取りが行われていて、これでは遠隔地からボスは愚か鉄血の一個体を探すだけでも時間が掛かってしまうだろう。

 さらに・・・。

 

 

『っ!? 指揮官! 敵が中隊規模の部隊を率いてこちらへ接近しています!』

 

『こちら第二部隊のM14! 敵から奇襲を受けました! 付近の廃ビルに逃げ込みましたが、完全に周囲を包囲された模様です・・・!』

 

「チっ・・・第一部隊は第二部隊のフォローに回って。ただしビル周辺の状況が分かるまでは絶対に手出ししないこと! 第二部隊はとにかく直ぐにビルの中をその目で見て回りなさい! こっちで貴方達の見た景色をオブジェクト化してプランを練るわ」

 

『りょ、了解!』

 

『分かりました』

 

「クッソ・・・してやられたわ。ウチの一番弱い隊まで狙ってくるなんて・・・どうやらイントゥルーダーとかいう鉄血ボスはバカじゃないみたいね」

 

 

 とはいえ、ここまで出し抜かれて良い気分でいられる訳もなく。

 ジャンシアーヌは手が塞がれつつあるこの状況に思わず左手の爪を噛んでしまう。

 

 

『ジャンシアーヌ指揮官! こちらは現場へ部隊を急がせている! 申し訳ないがもう暫くだけ持ち堪えてほしい!』

 

『こちらも急ぐ様指示を出しております故、どうか今暫くお待ちを!』

 

「頼みっぱなしで申し訳ないが、どうか急いでほしい! この鉄血の数では、流石に私のとこの隊だけでは分が悪い・・・」

 

「指揮官様! 第二部隊の皆さんから視覚データが送られて来ました! 直ぐにオブジェクト化しますね!」

 

「お願い」

 

 

 程なくして、ホログラムに第二部隊の隠れている廃ビルの3D立体オブジェクトデータが表示される。

 建物は三階建て、二階と三階にそれぞれ身を隠して迎撃できるバルコニー付き、中に入る出入口は一つ、非常階段の類も経年劣化著しい・・・。

 

 

「悪くない。第二部隊、そのままビルで篭城戦に入って」

 

『ふぇぇっ!?』

 

「大丈夫。この天候この暗さじゃお互いそんなに遠くは見通せないし、貴女達のいるビルは出入口が一つしかない。籠城するにはうってつけよ。

 それにこちらが高所を取っている、状況は私たちの方が有利に進められるわ。出来る限り早くフォローを回す。それまで弾を節約して持ち堪えて・・・特にイングラム」

 

『・・・ちぇ、わかりましたよ〜だ』

 

「お願いね」

 

 

 そう言って別の回線に切り替えたジャンシアーヌは目の前の刻一刻と変化する戦略マップを見据えながら、大切な人形達が帰ってこれる様に矢継ぎ早に指示を出していく。

 

 

 to be continued...




 次回こそ終わる・・・はずなのだ。

 そして今まで出番の無かったメンバー、そしてレイを送り届けた”アレ”の正体も明らかになる・・・!
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