裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
私生活と仕事面でいろいろバタバタしてまして、ちょっとそれを纏めるので大変でございました(汗)。
今話でやっと終わりじゃ。
『IDWSを出せ。スケアクロウ、ティナ、デストロイヤー、ウロボロス・・・出番だ』
地上のレイからそんな通信が入ってきた。薄々こうなるだろうと予想はしてたけど。
わざわざオープンチャンネルで皆に聞こえる様に煽り立てた敵のハイエンドモデル、そしてその後の此方を撹乱させる動き。
確かにこの様子じゃ、中々の長距離を走ったレイ達の動きもあんまり意味が無かったみたいね。この図を見る辺り、個別の拠点を狙ってどうこうできる段階は過ぎたっぽいし。
それにしても、今日は高速ハイヤーよろしく”この子”を飛ばしたけど、送迎以外で役立つチャンスが来るとは。私のカンも冴えてたって事かしらね。
ガンナー役、オペレーター役、そして重火器役も揃ってる。これならイントゥルーダーの撹乱行動も真正面からねじ伏せられるでしょう。
問題はグリフィンを私たちの攻撃に巻き込むとマズいんだけど・・・一応社長に連絡しておきますか。
「クルーガー社長、聞こえますか?」
『聞こえている』
間髪入れず帰ってくる返答。
多分社長もオフィスからこの状況を見守ってたのかもね。順調に作戦が進行、その上レイの破壊工作も上手くいったと思った矢先の現状。
敵の方が一枚上手だったとはいえ、このままじゃ最悪壊滅の恐れも出てくる。きっとどうにか出来るなら直ぐに実行したい筈。
「戦況はこちらでもモニターしています。かなりマズいみたいですし、我々の予備戦力を投入しましょうか?」
『予備戦力・・・だと?』
「えぇ。実を言うと私、今ガンシップ役も出来るタイプの輸送機で現場区域付近に控えておりまして。いつでも離陸、上空から攻撃する用意は整っております。
ただしその場合、攻撃に掛かった諸経費も追加で請求させて頂く事となりますが・・・」
『構わん。他に方法を考える時間も惜しい所だ。こちらの部隊に対し必要な指示があれば直ぐに言ってくれ』
「かしこまりました。それでは現場上空に接近次第、スケアクロウから其方にご連絡致しますわ」
『頼んだぞ』
依頼人のご了承も得た事なので、早速離陸準備を始める。
といっても、周りに植物が沢山自生してる中でエンジンを回すと、下向いた噴気孔からのジェットが植物を燃やして危ない。
バッテリー駆動に切り替えてっと、よし。それじゃあカーニバルに出発しましょ。
「離陸するわ。皆シートベルトするか近くの手すりに捕まって」
バッテリー駆動モードのため、青く光るイグニッションスイッチを押し込む。
すると両翼端にある地面と垂直になった4枚の羽根を持った大きなローターが回り始める。
ローター回転数は順調に上昇。ローター用バッテリーの電源消費効率に問題なし、出力は安定して上昇中・・・離陸準備完了。
私は左手を置いた推力制御レバーを前に押し込み、回転数をさらに上げて離陸に十分な揚力を生み出させる。
程なくして車輪が離れ、ローターの生み出す気流によって機体がフラフラし始めるが、そこは私の腕で即座に安定したホバリングにする。
段々と地上から離れてゆく機体。やがて十数メートル程の高さに上がったところでバッテリー駆動からエンジン駆動モードに切り替え、今度は紅く光るイグニッションスイッチを再度押し込む。
その途端、ローターの回転音に加えて喧しいエンジン音が両脇から鳴り始める。けれど、ここまで上がれば後はジェットの勢いもあってさらに上がっていくだけ。地表に届く頃には植物が燃えるほどの熱は無い。
地表追従レーダーからの数値を見る。真下の地表面から約300m。ここまで上がれば大丈夫でしょう。
推力制御レバーに付いたナセル制御スイッチをコロコロ回し、両端に付いたエンジンナセルの角度を90度前へ、11秒程の時間を掛けて倒してやる。
地平面に水平だったローターが垂直になり、羽根の掻き分ける風は
300・・・350・・・400・・・450km/h、大凡の巡航速度まであっという間に到達。ただのヘリコプター には絶対に出せないスピード、やっぱり飛行機はこのくらい出せないとね。
「直ぐに現場上空に着くわ。みんな、準備急いで」
『了解!』
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「・・・何かしら、この音」
鉄血から放たれる激しい銃撃音、着弾した壁面のボロボロと抉れる音、その中に混じって空に響く音に私は気付いた。
バララララという、勢いよく空気を掻き分ける時に鳴る音。
どう考えてもドローンの様な小さいモノじゃない。間違いなくヘリコプターか、或いはローターを持つ航空機。
『音? どんな?』
「プロペラが勢いよく回っている様な音です。・・・この重く響く音、かなり大きい機体じゃないかと」
『なんですって? お二人とも、現場空域周辺にヘリって』
『此方は飛ばしていないぞ』
『吾輩もですな』
『・・・・・・ってことは』
『鉄血の中継ステーションを爆破した某のモノでは?』
「ど、どうしましょうか?」
刹那、背中にゾクゾクとした寒気が走った。
もはや考えることなど全くせず、何故か私は無我夢中で叫んでいた。
「みんな伏せてッ!!!」
次の瞬間、私達の目の前に立っていた建物が一斉に大爆発を起こして吹き飛んだ。
真っ暗な中に突然燃え盛る爆炎の眩さ、そして間髪入れず襲い掛かる爆風。立ったままでは冗談じゃなく吹っ飛ばされてた程の凄まじさ。
そこに今度は鉄血側のより遠くの建物群が一斉に弾け飛ぶ。まるで最初からそこに爆薬が仕掛けられてたみたいに。
『M4何があったの!?』
「分かりません!! 目の前の廃屋何件かがいきなり爆発して!」
『爆発!? M4、ヘリっぽい音はどうなった!? まだ聞こえる!?』
「は、はい! まだ聞こえま・・・あれは!?」
新たに周りを騒がす銃撃音と共に闇夜の空に光る
そこから放たれる幾数もの光の線は真っ直ぐ地上に飛んでいき、鉄血が抑えている辺りの廃屋をさらに破壊していく。
さっきの爆発といい、加えて上空からの機銃掃射・・・いったい誰がこんなことを?
『今度は何事だぁっ!?』
「未確認の航空機です! 上空から機銃で鉄血の制圧エリアを攻撃中!!」
『はぁっ!?』
『むぅぅ、敵か味方か分からない存在が上空から機銃掃射ですとな・・・』
・・・これじゃあ姉さんを探すどころじゃないわ! なんでこんな時に限って!
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「いい感じに大掃除が進んでるな」
「みたいですね」
G&Kが制圧したエリアにある建物の屋根から、俺たちは気配を消しつつアインス達の掃除を遠目に見ていた。
フルフェイスカバーを着けてても使える特殊な双眼鏡を使い、暗視モードで上空から攻撃中の”アレ”を観察する。
状況に応じてヘリコプターとプロペラ付き固定翼機の姿を切り替えられる”アレ”は、所詮歩兵でしかない人形達にとってまさに天敵が如し。
胴体中央部の下っ腹から出たIDWS、毎秒約100発程の勢いで撃ち出された20mm弾が地上をどんどん抉っていく。仮に
さらに事態を混乱させているのにはもう二つの攻撃も行われているから。
「・・・デストロイヤー、大丈夫でしょうか? あんな宙吊りになって」
「心配いらん。むしろ楽しげにポンポン撃ちまくってるぞ」
機体後部に開いたハッチから伸びるホイスト、本来は兵士を降下させるための吊り具に宙吊りになったデストロイヤーは、それはそれは嬉しそうに笑いながら腰のランチャーから榴弾をばら撒いている。
そしてウロボロスの浮遊型ミサイルランチャーは、後輪格納部の真横に随伴する様に浮いており、こちらもターゲティングが終わった的に向かって小型のミサイルを次々撃ち込んでいる。
即ち”アレ”は元が輸送機でありながら事実上のガンシップとして、ヒートマップに出る
怪しい所が余りにも多すぎます→ならば片っ端から片付けてしまえという理屈だ。屁理屈もいいとこだが、実際ここで投入しとかないと人形達がヤバかったかもしれないしな。依頼人の許可も得たという事で、暴れてもらってる。
「しかし・・・宙吊りで榴弾を投下するなんて、アインスさんも無茶を考えますね」
「チミっ子が使うのは誘導性能を持たない、火薬が大量に詰まっただけの弾だからな。あんま高いとこから落っことすと風に流されて意図しない所で吹っ飛ぶ可能性もある。
当てちゃいけない味方も地上に展開してる以上、誤射のリスクを出来る限り減らすにはあれが一番手っ取り早い。無論危険もデカいが・・・万一落とされた時はスケアクロウが文字通り飛び出て拾ってくれるさ」
「な、なるほど」
「それに、昔はともかく今のアインスならチミっ子が危なくなる飛び方はしねえさ。
・・・前にアレに宙吊りになってロケラン撃ったときは、何回死ぬかと思ったか」
「・・・・・・聞かなかったことにしておきますね」
あれはホント、伸ばされたホイストのロープが振り子の様に揺れるというのを完全に無視した飛び方してくれやがったからな。何度建物にぶつかってトマトになるかと、ヒヤヒヤを通り越して震えが止まらなかった。
ちなみに、マジでぶつかりそうになった時はロケラン撃って爆風で体を煽ったり、手首に固定しといたロープのリモコンで上げ下げを繰り返してなんとか切り抜けた。・・・思い出したらあの時の恐怖と怒りが込み上げてきたぜ。
って、おーおーおー。
そうこうしてる内に鉄血側の半分以上を物理的に吹っ飛ばしちゃったな。こりゃ壮観だねぇ。潜んでた建物がウロボロスに木っ端微塵にされ、堪らず面に出てきたところを今度はチミっ子のグレポンとティナのIDWSで叩き潰される。
しかも側から見ててもいずれも狙いが正確なのが分かる。ターゲティングが細かく管制されている証拠だろう。
来てもらったハイエンド全員、立派に仕事をしていて誇り高い。きっと工場長も満足の働きぶりじゃなかろうか。・・・相手も鉄血だというのを考えなければな。
さて、上からの攻撃が劇場だった建物に向かいつつある。このまま進めて薙ぎ払ってもらおうかと双眼鏡を覗いたその時。
「! 1時の方向、何か動きました!」
「こっちも捉えた。ありゃなんだ?」
劇場の屋上から特異な武器を持った人影が飛び降りた。何だあれ、ガトリングとアサルトライフルをくっ付けた様な。
・・・あんな目立つ武器を持った人形、カタログに載ってたら一発で覚えられる。だが俺はあの武装に見覚えは無い。
もしかしてと思い、イントゥルーダーとやらの情報を齎したUMP45に回線を繋ぐ。
「45、聞こえるか?」
『バカバカバカバカバカーーーーーー!!!!』
「うおっ」
しかし繋がった瞬間、
え、なんで?? キミ達今どこにいんのよ?
『バッカじゃないの!!? 私たちが動き回ってるのにガトリングにミサイルにグレネードポンポン撃ちまくって! 私らごと地上焼き尽くす気!?』
「はぁ?? キミらはカーラを連れて撤退してるんじゃないのか? とっくにこのエリアから離れたもんだと思ってたが」
『・・・・・・あっ』
「・・・・・・」
・・・しばし沈黙が支配する。どうも45達、俺と別れた後に引き続きここで独自に動いてたらしい。
しかし悠長に待ってる時間が惜しい。とりあえず呼び出した要件を話すとしよう。
「まあいい。さっき45が言ってた新型のハイエンドだが、それってアサルトライフルとガトリングをくっ付けた様な武器を持ってるって認識でOK?」
『え、ええそうよ。妙に露出の多い格好してる割に、結構ゴツい武器持ってるの』
ほう、そりゃまた戦場じゃ随分と目立つ格好じゃないか。戦場で体を露出したところで何のメリットもない。にも拘らずそんなデザインを採用した辺り、暴走してても
あるいはハイエンド、そして指揮型モデルである事も露出多めな格好をした理由かもな。後方での行動がメインなら、必ずしもそれほど武装や装甲を強固にする必要は無い。だからといって肌面積多めにする理由も無い訳だが。
ともかく格好は置いといて、あんな武器を持ってるなら暗闇でも一発で見分けられる。エリアごと鉄血ボス諸共叩き潰してやるつもりだったが・・・動ける伏兵がいるんならプラン変更だ。
暴走後に作られた個体ってのも、ペルシカリア博士とやらにとっちゃ貴重な情報源になるだろう。
「了解した。404小隊、今から言うポイントに向けて動いてくれ。上空から援護させる」
『は? え、ちょっと待って、何させる気?』
「スケアクロウ。座標軸『Hf-14』付近にいる人影を片っ端から熱で探れ。聞いてた通りの珍奇な武装を背負ったヤツだ。ソイツを見つけ次第マーク、45達に位置を共有。袋の鼠にしてやれ」
『そう来ると思って既に発見済みですの。皆様こちらに向かって下さる? ハイエンドをもう一機鹵獲できるチャンスでしてよ?』
その瞬間、ノイズの向こうで45が息を呑んだのが分かった。
敵にとっての指揮官役であるハイエンドを鹵獲するなど、普通に考えてたった三人しかいない兵士たちに任せる仕事じゃない。
しかし俺たちがこの情報を共有できるのは現状404のみで、こちらがある程度掃討したとは言っても鉄血の兵力は未だG&Kと交戦出来る程には残っている。
即ち、またとないチャンスをモノにできるのは彼女達しかいないのである。まさにハイリスクハイリターン、仮に成功すれば彼女達もクルーガーから多額の報酬をぶん取れるだろう。
そして上には、俺が信頼してるやつらがいる。決して分が悪い賭けじゃないはずだ。
考えること数秒、半ばヤケッパチになった45がキレ気味に言い放った。
『・・・あぁもう! やってやろうじゃないの!! いいカカシちゃん! 私らに誤射したらぶっ殺すからね!!』
『誰にモノを言ってますの? そのようなミス、私が絶対に起こさせませんわ』
「そう言う訳だ。二人とも任せたぞ」
『了解ですの』
『首洗って待ってなさい!』
程なくして再びIDWSによる銃撃が始まる。
ただし今度は、ターゲットにした『イントゥルーダー』の逃げ道を阻む様にして。
時たまウロボロスのミサイルが放たれては、折角逃げ込めそうな細い裏路地や足場もボロボロに破壊してしまう。
チミっ子もまた、宙ぶらりんになりながら狙いを定めて投下を繰り返していく。その全てが、逃げ道を潰すための布石となる。
「ほんじゃ俺たちも行こうかね」
「護衛は任せて下さい」
捕まえるのにちょうど良い試作品もあることだしな。
俺はウラカン達から託された、今はストレージに入っている
「・・・一体どうなっているの?」
山上都市唯一だった劇場跡。そのステージに腰掛けながら悠々と指揮を執っていたはずの私は、焦りに表情を強張らせ冷や汗を垂らしていた。
自身の電脳内に次から次へと入ってくる味方部隊壊滅の報。損害や撤退、増援要請といったものは殆ど無く、送られてくるほぼ全ての報せに”壊滅”の文字が記されていた。
何が起こっているかは分かっている。指揮型のハイエンドたる己にとって、指揮下の人形の視界を同期して状況把握することなど実に容易いことだから。
しかし情報を得た上で、何故そうした現象が起こっているのかを理解することは出来なかった。
完全に想定外の事態。
人形が主戦力。一部特別製のもいるみたいだけど、それ以外は全て価格の差こそあれど所詮量産品。その他には補給物資輸送用のドローン、兵員物資輸送のヘリコプターくらいしか持っていないのがグリフィンだ。何故ならPMCとして持てる軍事力には限りがあるから。
その様な狭い枠組みの中でしか運用出来ない規模の部隊なんて、この地域一体に忍ばせた私の部隊の力なら十分崩せる。数というのはそれだけで力になる。いくら質が良くても一対他で出来る事には限りがあるのだから。
現についさっきまでは着々と追い詰めていた。ジリ貧に追い込み、人の手の届かないところで少しずつ殺していって、最後にM4A1を
どこからともなく現れた
スカウト達も届かない高度からの一方的な爆撃と銃撃。しかも誘導性能のある弾頭と、無誘導の弾頭まで使い分けて都市全体を虱潰しに叩き潰しにきている。
これではせっかく私の施した誤魔化しも全く意味が無い。そして奴らの攻撃はいずれ、劇場にも・・・。
こちらに一切の容赦無く降り注ぐ弾丸の雨。・・・このままでは為す術もなく大損害を被ってしまう。
そうなれば
「全部隊に命令。これより私たちは当エリアを放棄、撤退します。もはやグリフィンに対する戦力的優位性は失われました。これ以上の損耗は主の意に背くのみ、せめて引き際くらいは華麗に見せましょう」
結局、私に出来ることはこれしかなかった。現状、私の指揮下にいるどのモデルでも空の敵を落とすことは叶わない。
もちろんマズルフラッシュからどこから撃たれてるのかは分かる。しかし、機体の明確な形状が分からない。
真上から堂々とこちらに攻撃してきてるからには、少なくとも機体に最低限の耐久性はあるということ。光の位置から大凡推測できる敵の高度を考慮しても、いくらイェーガーでも流石にアレを落とすのは無理。せめてウィークポイントが分かれば・・・。
「なんて、考えてる場合じゃないわね・・・。代理人、聞こえますか? 申し訳ありません、想定外の敵の出現及び妨害により任務に失敗しました。これ以上の部隊の損耗を抑えるため、これより我々は撤退致します。処罰は後ほど如何様にも・・・では」
回線越しにポカンとした代理人の顔が目に浮かぶ。すぐに我に帰って何かお叱りの言葉を頂戴しそうだったけど、それはまぁ生きて帰ってからで良い。
本来前線に出る
「・・・ふふふ、初めての戦いがまさか負け戦になるだなんて。ツイてませんわね」
己の相棒を構え、双方の射撃機構のセーフティを解除する。
ガトリング砲もアサルトライフルも問題無し、それでは参りましょう。
私は一旦劇場の屋上に上がり、そこから尚も地上に向けて攻撃を続ける敵の航空機を睨んだ。
・・・いた。けどやはり、この暗さでは明確に姿を捉えることは難しいか。
空の敵に出来ることは無いのを把握し、すぐに屋上から飛び降りる。
「・・・!!?」
次の瞬間、私は蛇に睨まれた様な錯覚を感じた。
今自分は敵に完全に目を付けられ、これから徹底的に追い回される。どこまでも、どこまでも、私を捕らえるまで決して見逃すことのない、得体の知れないそんな恐怖がどうしてだか込み上げてくる。
「ッいいえ、これは錯覚よ・・・とにかく撤退しないと」
自分の武器を構え、鉄血の拠点にある方角に向けて走り出す。
その時だった。空からの機銃攻撃が明らかに私の行先を塞ぐ様に放たれた。
数十m先の建物を抉り取る勢いで放たれる弾丸。朽ちた壁は簡単にボロボロと崩れ、レンガやコンクリートの破片がそのまま道に落ちる。どう考えてもただのヘリコプターが搭載できるレベルの火器じゃない。威力、発射速度、秒間あたりの発砲数から鑑みて、恐らくM61に近い大火力の機銃。
いやでも、射撃時の反動だってバカにならないモノを積める機体なんてそう多くない。それこそ改造してジェット戦闘機に搭載される様な代物よ。ならあれを撃ってくる機体は何?
阻まれた道を避け、来た道を戻ろうとする。すると今度は地上を蹂躙していたミサイルらしきモノが、また私の行手を阻む様に廃屋に複数発撃ち込まれた。
「!? くぅぅっ!!」
真正面から襲いかかってくる爆風を咄嗟に伏せることで避けつつ、視線だけでどこか逃げ込めるルートを探す・・・細い裏路地、ここに逃げ込むなんて悪手だけど、考えてる時間が無い。
爆発の衝撃も収まらない内にすぐ立ち上がり、急いで路地へと駆け込む。この路地は建物の屋根が伸びていて、一瞬でも姿を隠す事は出来る。けれどそんな事は敵だって分かり切ってる。早く、遠くへ逃げないと。
そう思ってた直後、気の抜ける様な風切音と同時に再び私の背後が爆炎に包まれる。今度は咄嗟の回避も出来ず、後ろからの人を軽々吹き飛ばす爆風に路地を追い出される。
「がふっ! ぐ、うぅぅ・・・!」
路地から出た先、空から丸見えの通りでうつ伏せで倒れる私。
碌に受け身も取れず、無様を晒して。代理人が見てたら何て言うでしょうね?
だけどこの程度の痛み、いちいち気にしてられない。
立ち上がり、走り出す。
近くにいた指揮下の人形達が合流し、私を守るための体制に入ってくれる。
しかし敵はそんな私たちを嘲笑うかの様に、持てる大きな火力でねじ伏せた。
再び降り注ぐ大口径の弾丸の雨。それはまたも建物を抉り、行く道を塞いでしまう。その後に来るミサイル、降ってくる爆弾も、私たちの進めるルートを確実に潰す。
そして一つだけ道を残すのだ。お前の進める道はここだけだと、嗜虐心に嗤いながら誘い込まれているのだ。
分かっていても、所詮歩兵でしかない私たちには残された道以外を進む力は無かった。せめて
「!!
「・・・え?」
そんな”たられば”な事を頭の片隅に考えてたその時、部下のガードに思いっきり突き飛ばされた。
振り返ればガードの周り・・・つまり私の周囲を守っていた人形達は何故か此方に向けて一斉に敬礼しており、彼女達のもとへ40mmグレネードが飛んできて・・・弾けた。
ベチャァっ、私の顔に人形達の生体部品の名残が飛び散った。
「なっ・・・・・・!?」
「
「大人しくする事だな、イントゥルーダー」
「これ以上手間掛けさせないでよ? 私としては抵抗しない事を強く勧めるわ」
爆破された部下達に意識を割く間も与えられず、私を取り囲う様に現れるグリフィンの人形達。
冷徹な眼で見据えてくるHK416、油断なく私に銃口を向けるM16A1、そして飄々とした笑みを浮かべつつも隙の無さを滲ませるUMP45。
それぞれが三方向から私を狙い、銃を構えていた。
あぁダメだ、完全に詰んでしまった。
一目見て分かる。この人たちは皆長い時間を戦場で過ごしてることが。生まれて間もない私如きが直接戦って勝つには、余程の奇跡が起こらなきゃまず無理だってことが。
この状況で戦う? 代理人ならテレポートでどうにか出来るでしょうね。でも、指揮型の私にはこのキメラ染みた武器しかない。これでどう戦えるかしら?
「・・・ふふ、うふふふふっ、ふふふふふふふ!!」
「・・・何が可笑しいの?」
あぁ可笑しい。
馬鹿正直に戦いを挑んだところでまるで勝負にならない。どう立ち振る舞っても私は的確に体を撃たれて行動不能にされる、どう動いても必ずそうなるのだから。
人類を抹殺せよ、なんて大きな命令を言付かり生まれたのがつい数ヶ月前。ようやく迎えた初めての実戦でここまでの無様を晒すとは、一体誰が思っていたでしょう。
あぁ可笑しい。というよりも、馬鹿馬鹿しい。
「それはそうですわ。抵抗しないこと、なんて指揮者たる私が一番してはならない振る舞いですもの。ですからせめて・・・」
私はアサルト側の銃口をグリフィン達に向けようとしたが、突然右腕に何かが絡みついたかと思うと強い力で引っ張られた。
それは廃屋の屋根まで伸びる光るロープの様なモノで、線を辿ればそこには対汚染用の戦闘服に身を包んだ人物が立っていた。
そしてその隣には、ボウガンの様なマシンガンを持った
「・・・あぁ、貴方は。第三にいたゲーガーの初号機でしたのね。そうなると、ここまでの空爆の苛烈さにも納得がいきます。私たちとは考えを異とするハイエンド、それが貴方達なのですね」
ご主人様の元、意思の統一がされていない私たちの同胞。
まさかここで出会うとは思いもしませんでしたわ。けど、こうなっては最早どうでもいい・・・。
どう足掻いたとて私の滅びが免れないのなら、一人くらいは道連れにして滅びましょう。それがご主人様に対する僅かばかりの”償い”になる。
「まともに敵に一矢報いることも出来ぬまま滅ぶ・・・私の無様をどうかお許し下さい、ご主人様。もし叶うならば、来世でまたーー」
「不味いっ!!? コイツ自爆する気だ! 離れろっ!!」
全ての入力プロセスを完了し、自爆コードを実行しようとした刹那、身体中を駆け巡る凄まじい激痛に私の意識は落とされた。
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「ひぎぃあぁぁぁぁっっっ!!?」
イントゥルーダーの右腕に巻きついていた非実体の光るロープ。奴が自爆しようとした途端、そこから送り込まれた高電圧高電流に体が包まれ、激痛に思わず叫んだ奴は程なくして意識を失い倒れ伏した。
すぐさま屋根から飛び降りたロープの主たち・・・レイとゲーガーは奴に近づくと拘束用の枷をどこからか取り出し、奴の手足を拘束し始めた。って!?
「お、おい! 自爆するかもしれないぞ!?」
「心配要らん。
「な、なんだ・・・」
といったやり取りがあったり、拘束する際、
バチィッッ!!!
「い゛ッ!!?」
今まで見たことない程ハッキリ光る静電気がレイと奴の体の間で起こったりはしたが、それ以外は特に何もなく拘束を終えたレイ達。
やる事を終えるとレイは此方に顔を向けた。
「さて、どうやって運ぶ?」
「レイんとこの飛行機で運べない?」
「運んでも良いが、掛かった経費は請求するぞ」
「おっけー。それじゃついでに私らもご厄介になろうかしら」
「それでも良いかもな。向こうの指揮官側がさっきまでと攻撃の仕方が変わったのに気付いたらしい、もうすぐ此方に部隊がくるはずだ。俺たちも潮時だろう」
潮時・・・つまり、レイとはここで別れる。
ってことは次はいつ会えるかも分からない・・・もしかしたらもう二度と会えない、なんて事だって。
やっぱ・・・感謝は今伝えるべきだよな。ついでに私の気持ちも・・・なんて。
「れ、レイ!」
「ん?」
私が真剣な顔で呼んだのが気になったのか、首を傾げるレイ。
そんなアイツになんだか急に驚かせたくなって、私は近くに立ってた416の腕を引っ張るとその肩に腕を回した。
いきなりの事に驚いたみたいだけど、私の意図を察すると、照れ臭そうに416も私の腰に手を回してくれた。
きっと顔が見えてたら目を見開いてるかも、なんてな。
でも顔が見えなくても、なんとなく今レイがどんな顔してるかは分かる。
「ありがとな、レイ。お前のおかげで私は・・・いや”私たちは”やっと前に一歩進めたよ」
「・・・私からも。ありがとう、レイ」
私たちからの感謝の言葉に、けれどもレイは即座に首を横に振る。
「俺はキッカケを作っただけさ。歩み寄る努力をしたのはキミ達二人。物凄く勇気の要る行動で、決して誰にでも出来る事じゃない。俺が同じ立場だったとして逃げることも思わず考えちまう位にな。・・・二人とも本当に頑張ったな」
「お、おう・・・」
「うん・・・」
ツンとしたものがまた込み上げて来そうになるが、ここは我慢だ。
それより、ずっと想ってた私の気持ちを・・・!
「れ、レイ! 伝えたい事があるんだ!」
「うん?」
再び首を傾げるレイ。
言え、言うんだM16! 何年も抱えて来た想い、今言わないでいつ言うんだ!
けれど、唇は緊張のあまり震え、段々頭の中も回んなくなってきて・・・。
「レイ、わた、私と、そ、その・・・」
「私と?」
「そ、その、つ、つ、つき・・・」
「つき?」
「つ・・・月が今夜も綺麗ですね」
「思っクソドン曇りだけど・・・・・・」
横で45とゲーガーが思いっきりズッコケたのが見えた。
あぁぁぁぁぁ・・・なんだよ月が今夜も綺麗ですねって。私のばかぁ・・・ヘタレ、意気地なし。
『こちら第三部隊、まもなく目標地点に到達します。現状鉄血はボロボロになった個体しか見当たりませんが、引き続き警戒を怠らない様にお願いします!』
結構勇気を込めたはずの告白が失敗に終わったところへ、我が妹の時間切れメッセージが味方の回線に入ってくる。
はぁ・・・ここでお別れか。いっそのこと私を盗んでとか言ってみるか? ・・・ダメだ、本気でレイに心配される未来が見えた。
「うし。ズラかるとしますか。そういやカーラに一つ聞きたい事があったのを思い出した」
「へっ!? な、なんだ!?」
「なんでコードネームが
「えぁ、あ、あぁ・・・それは私の銃にまつわる史実から来てるのさ。M16から派生した銃、つまり私にとって姉妹にあたる銃の中にはコルト・コマンドーやM4カービンと称されるモノがあるだろ?
カービンの語源は一説にはフランス語で騎兵隊を意味する『
当時はM16から派生した銃を持ってたのは416だけで、他は誰も生まれてなかったからさ。もちろん416も大事だけど、姉妹ともいつか会えたら良いな、なんて思って名乗ってた」
なんて事はない、ふとした時に思いついたからそう名乗ってただけだ。
「なるほど、妹想いなのはカーラらしいけどな。さてと、もうすぐキミの妹率いる部隊がここに来る。俺たちとはここでお別れだ」
「また、会えるか?」
「巡り合わせが良けりゃ多分な」
「ふふ、そうか。元気でな、レイ」
「キミこそな」
どちらからともなく手を差し出した私たち。互いに固く握手して、お互いの帰るところへ歩み始める。
私はM4達の元へ、レイ達はイントゥルーダーを持ってどこかへ。多分ヘリで回収できる場所まで行くんだろう。
・・・じゃあな、レイ。
今度会った時こそ、ちゃんと伝えるからな。
※おまけその1 姉妹、感動の再会編
「! 姉さん、姉さん!!」ヒトミウルマセ カケヨルM4
「M4! 会いたかったぞ!」イモウトミッケテ リョウテヒロゲル
「やっと会えた! 姉さnクサい!!?」トビコンデキヅク ゴミノニオイ
「ごっ・・・」チーン
※おまけその2 搭乗拒否
「毎度お世話になりまーすUMP45ですぅ」
「よろしくお願いするわ」
「あの、こんなこと言いたかないんだけどさ・・・貴女達、凄くクサいよ?」アインスデスゥ
「⊂⌒~⊃。Д。)⊃ ドテッ」
「⊂⌒~⊃。Д。)⊃ ピクピク」
Q.結局アレの正体ってなんだったの?
という疑問を抱える方にご説明のコーナー。
無茶苦茶なオリジナル設定を多数混ぜ込んでるので、あんまリアリティを追求し過ぎず軽い頭で覗いてください(殴
V-22 S
ギルドが運用する輸送機。ドルフロを始めミリタリーの分野に興味ある方なら絶対名前くらいは聞いたことのある機体。通称はオスプレイ。固定翼機とヘリコプターの二つのいいとこ取りをした航空機で、垂直離着陸やホバリングが出来て、かつヘリよりも長い距離をヘリよりも速いスピードで移動できるのが最大の特徴。
余談だが、開発自体がスタートしたのは1980年代から。その後色々あって開発が止まったり再開したりを繰り返した後、2007年に運用が開始されているので、実は意外と歴史は長い。
本編に出て来た機体は、第三次大戦中に流出したオリジナル型の設計図を裏の繋がりで入手したギルドが『図面から手を加えて魔改造』を行い、その設計図を基に魔改造された図面通りに製造したモノ。Sは『Specialization』の頭文字。
具体的には機体寸法がおよそ1.5〜1.8倍程度大型化されており、より輸送力や航続距離、さらに搭載できる火器などのバリエーションが増えている。
また、古い世代の機体に現代でも通用する製造当時の最新技術を随所に採用しており、周囲に植生がある環境下での離陸時、ジェットが植物を燃やさない安全高度まではエンジンを使わずバッテリーのみでローターを回す機能を始め、機体表面の外装に光学迷彩可能な特殊装甲を搭載、火器管制システムやレーダー、各種観測機器も21世紀前半とは比較にならない高性能な機器を搭載している。
一方で操縦系統や後部ハッチの構造、吊り下げ用のホイストといった部分にはあまり手を加えていない。
しかし胴体中央部の下っ腹から出てくるIDWS(Interim Defense Weapon System:暫定防御兵器システム)に関しては、オリジナルでは7.62mmの所謂ミニガンを搭載していたが、大型化したことで設置スペースに余裕が出来たことから20mmの『M61 バルカン』を搭載。ミニじゃなくなったので火力も凄まじい事になっている。
ちなみにこの大型化に伴ってローターの羽根がオリジナルの3枚から4枚に増えている等、その他の細かな差異もあるが、デカくなった時点でそもそも細かくないので、オリジナルのV-22とは全く別物と捉えて良い機体。
ただし航空機という性質上、一回飛ばすとどうしてもそれなりにお金が掛かるのであまり出番は無い。
※実はレイは航空機の操縦が出来ません(小声)。
新アイテム:グラップリングビーム(仮名)
ウラカンとアーキテクトに頼まれたお使いの成果。元ネタはメトロイドでサムスさんが使う便利ビーム。
何かに捕まってターザンみたいなことをするのにも、高所から安全に降りるのにも、本編の様に敵の動きを制限するなど、使い勝手の良い装備(の試作品)。
現状ギルドの設備では部品から新規製造及び修復する事は不可能のため、壊れたら生きてるスカウトをまた狩ってこないといけない。けどとても便利なアイテムになる予定。