裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
今回、オリ設定多数出現につき、ご注意下さいませ。
ドルフロ本来のストーリー軸から徐々に徐々にズレてゆきますぞ・・・。
3日前、
ある廃墟となった教会にてーー
「オイオイあんちゃんよぉ。ここが俺の縄張りだって分かっての狼藉かぁ??」
男が一人、血痕の残る床に立っていた。
男を取り囲うように立つ、バラバラな種類の拳銃を持った男達。お世辞にも整ったとは言い難い身なりの彼らは、俗に言うチンピラと呼ばれる集団である。
囲まれた男に向かって話しているのは、少し離れて置かれた教壇に寄り掛かる形で立つ男。小太りな体型に細い縦の白線が入った黒のスーツに赤のシャツ、首元には存在感を放つ大きな銀のネックレスと、まるでマフィアやヤクザが好むような装い。仲間以外は好き好んで話しかけようとはしない手合いであろう。
そんな男・・・一味のボスであるライが、仲間を集めて一人の男を囲んでいるのには理由がある。
「別に、このご時世で拳銃の一つ二つ持ってたところで可笑しくないだろう?」
男はそう言った。
「確かに。だがそれをやっちゃいけねえ場所もある・・・俺の縄張りがまさにそうだ。俺の許可無しに銃を持つ事は許してねえ」
「・・・」
ライは自らが支配している地域に暮らす者に、銃の所持を固く禁じていた。
仮に隠れて持ち込んだりしようものなら、見つけ次第即処刑する。神の見守るこの場所でライに逆らった大罪を懺悔させながら、長椅子をどかして作った処刑場で周りから銃弾を徹底的に撃ち込むのだ。
銃は武力蜂起の象徴、支配が崩される可能性がある。だから持たせない。
それ以外にもライは様々な制約を科していた。崇高な理想、思想を持って支配するのではない。自分のやりたいようにしたいからこその支配。
逆らえば殺され、逆らわなければ今度は”税”と称した多額の金を納めなくてはならない。納められなければ、迎える結末は同じ。
支配が続いた今では、ライの支配地で暮らす者達の表情は揃って死んでいる。
ただでさえ荒廃した世界でのこの支配、誰が希望を持てようか。
ライはそれを理解していて、自らの縄張りと称した独裁地を形作ったのだ。
そんなライのもとに仲間からある情報が齎されたのは、定期的に取り立てている”税”の計算をしている時の事だった。
やけにデカい拳銃を持った金髪の男が現れた、と。
薄手のロングコートを羽織り、下にはタイ無しの黒のスーツ。それに瞳が見えないサングラス。いずれも見るからに質の良さが分かる物で、治安の良くない街中ではとても目立つ姿。探せば直ぐに見つけ出す事が出来た。
呑気に道端でタバコを吸っていた男に銃を突きつけ取り囲み、処刑場に連れ込み、処刑台に立たせている。
ライは男の持っていた
罪を償うには、罪の象徴となるものを手に取りながら悔い改めるべきだと、下品な笑みを浮かべながら。
ちなみに弾の入ったマガジンは教壇の上に置かれている。
「・・・で? お前達はこれから俺を四方八方から撃ち抜くつもりか。それも、衆人に晒して」
自身を囲む男達の更に後ろ、そこには3台の三脚に据え付けられたビデオカメラがあった。
これで映像を録画し、後日街の放送網に加工していないそのままのシーンを流すのだ。
何かおかしな事をすれば、次はお前がこうなるという見せしめに。
「見ての通りだぁ。素晴らしい処刑の仕方だろう?」
「処刑、ね・・・」
周りから銃を向けられているにも拘らず、男は全く恐怖を感じているといった素振りを見せていない。
むしろ今自分が置かれている状況すら、心底どうでも良いと言わんばかりの退屈げな顔である。
少しくすんだ色合いの金髪、比較的整った目鼻立ち、スラっとしつつもバランスの取れた肉付きの体格、気障ったらしい男にそんな真似をされたライは頭に血が上るのを感じた。
「チッ、カウントダウンだぁっ!!」
同時に、一斉に銃を構えて引き金に指を掛けるチンピラ達。
しかし男の表情が崩れることはない。
「3」
「後悔したくないなら、俺をここで逃す事を勧める」
「2」
「これは警告だ。素直に従ってほしいところだが」
「1!」
「・・・バカに何言ってもムダか」
「・・・ゼェロ!!!」
放たれる拳銃弾。
銃声が轟くや否や即座に男は右腕を突き出し、猫の手の様に丸めた右手の指先から紫電に光る稲光を生み出した。
それは向かってくる拳銃の弾を尽く蜘蛛の糸の如く絡め取る。磁性体である銃弾は全てが宙に浮いたまま動きを止め、弾頭の向きを180°反転させた次の瞬間、丸まっていた5本の指がパッと開かれた。
「・・・は?」
絡めとられた弾が、目にも止まらぬ速さで
同時に断末魔の声一つ上げることもなく、何が起こったか分からない顔のまま後ろに倒れ込む男達。彼ら全員の鼻先には銃創があった。
しかし男は背後の様子など気にも留めず、ライに向けて手を伸ばした。
すぐさま手の平から放たれる稲光は、いまだ状況を飲み込めず唖然としたライの横を通り抜けて教壇に、その上にあるマガジン上部に露出した.50 AE弾に触れる。
するとマガジンは持ち上がり、ジリジリという音と共に男の手元へ取り戻されてしまう。
ハッとした顔になるライが男へ自身の拳銃を向けるも、手に取ったマガジンをセットし、左手に持った
「う、動くなよ!
先までに余裕綽々とは真逆、得体の知れない現象に対する恐怖で顔を強張らせるライ。
だが男はライのそんな様子を見ても全く動じる事は無かった。ライが瞬きしたほんの一瞬で、自身も銃を向けた。
拳銃弾最強クラスと称される『.50AE弾』を使う自動拳銃、その10inchバレルモデルを。
「死に行く者に名乗る理由が無い。じゃあな」
「ま、待t
眩いマズルフラッシュと共に放たれた.50AE弾が、桁違いの反動など無いかのように正確にライの鼻先を撃ち抜いた。
着弾時の衝撃で見るも無残な姿となるライの顔。それを見て死んだ事を確認した男は、冷ややかな目で遺体を一瞥した後、腰に提げたホルスターへセーフティを掛けた得物を収める。
「フン、他愛も無い」
踵を返し、懐から出したタバコに火を点けながら歩き出す。固い革靴の踵が奏でる足音がボロボロの教会に響く。
ところが数歩歩いたところで男は眉を潜め、歩みを止めた。
「・・・覗きとは、褒められた趣味じゃないな。
「イイじゃない別に。邪魔になったから片付けてたのを横から見てただけよぉ?」
大凡この場にそぐわない色香と妖艶さを兼ね備えた声がしたかと思うと、男の立っていた直ぐ側の瓦礫が色形を変え、男に寄り添うようにヌルヌルと動き始めた。
やがて巨大な赤い触手の下半身、そしてダークグレーのスーツを纏った見目麗しい上半身という半人半魔の如し美女が現れる。
しかし男は目を細めてロッソと呼んだ女を横目に睨むばかり。男の様子に肩を竦めた女は、今度はシュルシュルと触手がどんどん腰のあたりの根本に吸い込まれていき・・・
「・・・ハイ。これでイイんでしょ?」
そこにはタコの下半身とは全く違う、上半身と同様極めて人目を引き付ける体型の
ダークグレーのパンツを着こなした細身な脚部は、道ゆく中ですれ違う誰もが視線を奪われるであろう。
しまいに度の入っていない眼鏡を掛け、絹糸のような長く細い金髪を後ろで纏めれば、その姿は男に寄り添う秘書そのもの。
ロッソと呼んだ彼女の姿にようやく納得した様子の男は、再び外へと歩き始めた。
「ねーえ? 結局あのおデブちゃんに捕まって何がしたかったの?」
「良いように使われただけの話さ。これから会う本命にね」
「なにそれ? 貴方の事を都合よく使ったってこと?」
露骨に不愉快そうな顔を浮かべる彼女を横目に、真っ直ぐ前を見据えたまま男は話し続ける。
「実際目の上のタンコブだったはずだ。ここはE.L.I.Dの繁殖地から程近い。アレが昼夜問わず発生しては人住む地へ”帰ろう”とするせいで、軍にはたかが一地区のチンピラ上がりにかかずり合ってる余裕はないからな。
しかし放っておいたばかりに奴はどんどん付け上がり、チンピラにしては大きすぎる力を得た・・・無視し続けるにも限界があった。
だからこの地区を取引の場所に指定したのさ。こんな場所だ、護身用に銃を持ってこないバカはいないし、銃を持ってれば必ず奴の耳に入る。その後は見ての通り」
「生意気ね。私たちの力を体良く厄介事の始末に利用するなんて」
「思う所が無いわけじゃないが・・・計画の進行に影響は無い。概ね予定通りに事は進んでいるさ。ほら」
「?」
外へ出た二人の目に映ったのは教会の入り口でハザードを焚いて停まる、到底この街には似つかわしくない黒塗りの高級セダン。
その車の横に立つのは、緑色の士官服に身を包んだ背の高い男。彼は二人を見つけると恭しく一礼し、後部座席の扉を開けた。
「やぁ、
「どうも、カーター准将」
朗らかに笑う精悍な顔つきをした壮年の男性。陸軍総参謀部に所属する正規軍の将校、カーター。このような場所にはいるはずのない人物である。
士官から車に乗るよう促された男・・・グリージョは、車に乗り込む前に懐から出した携帯灰皿にタバコを仕舞おうとしたが、他ならぬカーターがそれを制した。
「良いじゃないか。我々は構わない。貴重な一本、最後まで味わうべきだ」
「お気遣いどうも。それじゃあ遠慮なく」
グリージョが乗り込んだのを確認した士官は、丁重な動作で扉を閉める。
ロッソのことも同じようにエスコートすると、彼は余裕を感じさせる上品なドライビングで出発させた。
-----
なんだかんだでイントゥルーダーを無事に
数日の休息と装備のメンテ期間(カーラとのやり取りで拗ねたスケアクロウ
ターゲットは『ライ』という男。身長180cm後半、体重は100kg越え、全身に肉の付いた小太りな体型。目つきは悪い、首に光る悪趣味な極太の銀ネックレスが嫌でも目を引く。性格は横暴にして自己中心的、そして縄張りと称して街を支配している。
依頼主は街唯一の病院に勤める女医。ライ一味の監視を逃れつつ、なんとかギルドにコンタクトを取ってきたらしい。報酬は女医が持つ全財産、それでライを殺してくれとのこと。
とはいえ、チンピラの支配下で暮らしてるんじゃ言うほどの金は持ってねえだろう。そう思ってアインスが問いただせば、案の定殺しの仕事をするには全然足りない額しか無かった。
故に、女医には足りない分の金を”別の対価”で払ってもらう事を確約させた上で仕事を果たす、という事に決まった。
例えば、裏の仕事に関わらせるとかな?
医療技術を持つ人材はこのご時世とても貴重だ。医療は学ぶのに多額の金と時間が掛かる。この世紀末な世界で医者になれると言うことは、生まれながらに幸運な人生が保証されているのと同義。わざわざ社会的に死ぬリスクを背負ってまで裏の人間と関わりを持つ必要は無い。
例外なのは俺の体を診てくれたあの女医くらいだろう。もっとも彼女の場合、病院の出資者自らに直接依頼されたからという経緯があるがな。
そんなわけで、女医にこれからウチのギルドに一生関わって生きていく事を確約させた上で、俺はライの抹殺のため情報を集めていた。
「が、皆そろって口を噤むばかり。よっぽど怖いらしい。おまけに仲間らしき奴とも碌に遭遇すらしねえ」
「・・・皆の反応は当然でしょうね。アイツ、逆らった者には本当に容赦しないから。ほら、口開けて」
「あーーー」
ツンと澄ました顔で素っ気なく言う女医。ここは女医が詰めている診察室である。
あまりにも口が固すぎて情報収集が全く捗らず、そうこうしてる内に夜になってしまったのでやむなくお邪魔している。
ただ、側から見ると用もなしに会いにいくのもおかしな話のため、ついでに身分柄普段あまり行えない健康チェックもやってもらう事にした。
ちなみに何してるのかはお察しの通り、虫歯がないかのチェックだ。
この女医、こんなところで医者してるだけあって医療に対する知識は非常に幅広い。昔で言う総合診療医の様な立ち位置で、持ってる知識をフル動員して色々と診てくれる頼れる医者というわけだ。
「・・・こんな生活してる割に、意外と綺麗な歯してるのね」
「自己経験上でしか言えねえが、今まで虫歯に当てはまる症状を感じたことは一度も無い」
「結構。歯が健康なら体の健康も保ちやすいわ。その調子で健康維持に努めることね」
医師からのお墨付きを貰ったので一安心。
診察も終わったので、本題の続きに入る。
「でだ、ライの根城がどこなのかアンタは知らないのか?」
「知ってるけど不用意に近付かない方が良いわ。下手に近づいたのが見つかると直ぐに目付けられる。実際何人もそれで殺されてるから」
「・・・どうやら本性は結構ビビリみたいだな。少しでも芽吹いた不安要素は徹底的に排する、か」
警戒心が強いようだ。やるなら徹底的にやる、そうやって恐怖による支配を住民たちに順応させていったってところか。
しかしそうなると、どこで奴を仕留めるか・・・。そういう性格してる奴は殺す側からすると大概面倒くさいんだ。
「とりあえず、知ってるんなら根城の場所だけでも教えてくれないか? その辺の情報も無いんじゃ流石に動きようがない」
「分かったわ・・・でも、ヘマしないでね」
「ある程度調べたって事は俺のことも知ってるんだろ? 仕事は仕事だ、気は抜かんさ」
「はぁ、だといいけど・・・」
そう言って女医は一枚の地図をプリントアウトして寄越した。
場所は街の外れにあるボロボロの教会と、隣接して経つ4階建のオフィスビル。主に使ってるのはビルのほうだろうが、なんで教会まで残してるんだ?
疑問に思った俺の表情から目敏く察したらしい。女医は厳しい視線を地図に向けて重々しく口を開いた。
「処刑場なのよ、そこの教会」
「はぁ?」
「神に祈りを捧げる、神の見ている場所。ライに刃向かった者は一切の容赦慈悲無く教会に連れ込まれ、罪を懺悔させられながら殺されるのよ・・・」
それはまた、無茶苦茶なやり方をしてらっしゃるわけで。
しかし何故そんなに詳しく処刑の様子を知っているんだ?
「・・・ライはとことん悪趣味なの。処刑したら、後日必ず街のテレビ電波にモザイク無しの現場を流すのよ。見せしめとしてね」
「・・・そりゃ誰も口開かねえワケだ」
何人も殺されてる上に事実上の公開処刑までする様なヤツ相手じゃ、いつ自分が何されるか本当に分かったもんじゃねえからな。
もし仮に本当に何もしていなくたって、ライに誤解されたら弁解の余地なくあっという間に人生強制終了。
怪しまれる様な行動は徹底的に避けるという心理が働くのは必然。俺がいくら聞いても答えないわけだ。
「分かった。とにかく動かなきゃ何も変わらん。ひとまず下調べしてくる」
「・・・本当に気を付けて」
「もちろんだ」
俺は席を立ち、上着を着て診察室を後にした。
奴の根城は病院からそう遠く離れていない位置にあるようで、月明かりを頼りに気配を消しつつ地図通りに進む事30分ほど、特に迷う事もなく目的地に到着した。
だが、女医の口ぶりから相応の警戒が敷かれている様に予想していたのだが、実際には敷地内はおろか敷地外まで警備役の一人も気配を感じられない。
それほどのやり手ばかりがいる? けどチンピラ上がりにそんな真似出来るのか?
様子がおかしく、接近するかどうか迷っていたその時。風向きが変わり、覚えのある匂いが俺の鼻についた。
「っ、このニオイ・・・死体が腐り始めた時のニオイだ。しかも結構強い。ってことは、処刑が終わってから処理をしてない?」
いや待てよ・・・?
人っ子一人の匂いだけでこんなに匂いが強く来る事あるか?
腐敗自体はまだ始まってそう時間は経ってないと思うが、風に乗ってきた分は多分一人分の量じゃない。もっと多くの死体が敷地内にあるのは間違いない。
ライが処刑した住人を碌に葬りもせず放ってあるだけか、それとも一味に何か起こったのか。
「調べてみる、か・・・」
ホルスターからFive seveNを抜き、セーフティーを解除する。
そして俺は慎重に敷地内に侵入し、調査が早く済ませられる教会から先に見て回る事にした。
木製の扉は開かれ、中からは腐臭が漂っている。
やはり中に死体があることは間違いないらしい。
銃を構え、音を立てずに内部へ。月明かりが所々屋根に開いた穴や生き残ったステンドグラスから注がれ、中をほんのり明るく照らす。
長椅子をどかして作られた血痕だらけの空間。その周りにはうつ伏せで倒れ、拳銃を握ったまま腐り始めている男達の死体。そのいずれも鼻先に銃槍が開いているのに気付く。
「・・・まさか、脳幹を一撃で撃ち抜いたのか? 確かに、一切の反撃を許さず一撃で仕留められる急所だが・・・どうやって」
死体の位置関係から鑑みるに、恐らくこれは件の処刑の瞬間だったのだろう。
処刑される
だが現実として処刑は失敗し、処刑人であるコイツらは全員一切の抵抗も出来ずに一撃で絶命させられている。・・・どんなマジックを使ったらこうなる?
俺は更に奥の方、教壇のある辺りに視線を向け、固まった。
屋根にほど近い壁に取り付けられた十字架。そこにかつてのイエスの様に、磔にされて息絶えたライらしき男の死体があったから。
「・・・おいおいおい、マジかよ」
とはいえ、顔は見るも無残な状態になってしまっていて、正確にライ本人だと決めつける事は出来ない。
服装や首元に光る銀のネックレス、依頼人から見せられた写真通りの体型から、恐らく間違いないだろうと言える程度。その位、顔は崩壊させられていた。
何でブチ抜けばこうなるのか。かなりの威力を持つ弾を至近距離で食らったとしか思えない惨状。そして先の男達を含むこの一味の腐敗の進みを見るに、俺がここに来る前には既に終わっていたと見える。
思いもしない顛末に顔が引き攣るが、結果として用が済んだなら長居は無用だ。
踵を返し、外へ出ようとした俺の正面に、黒のタイ無しスーツの上からロングコートを羽織った男が立っていた。
「その死体が気になるのかな?」
「!!?」
咄嗟にFive seveNを向ける。
いつ入ってきたこの男!? ついさっきまで誰もいなかった筈だぞ!
一方で男は、俺が銃を向けているにも関わらず余裕げな態度を崩そうともしない。
くすんだ色合いの金髪、デカい縁の黒サングラス、黒革のグローブを身に着けた男は、微笑みを浮かべると両手を広げてみせた。
「ふふふ、
「どういう意味だ・・・?」
「そのままの意味だよ。君の今のポテンシャルでは、俺は倒せない」
ほら、ね?
そう言った男は、俺が瞬きした次の瞬間には左手にロングバレルのデザートイーグルを持ち、尚且つその銃口をこちらに向けていた。
あり得ない。早すぎるなんてレベルじゃない。
物理法則の常識から外れてる。
冷や汗が流れた。心臓の鼓動が激しく高鳴っている。
勝て、ない・・・。
この男はまともに向かってどうこう出来る相手じゃない。
本能が、今までの経験が、フルボリュームで警鐘を鳴らし続けてる。
・・・どうやったら逃げられる?
どうすれば生きて帰る事が出来る?
「ふむ・・・そこで磔になってるバカと違って、君は実力の差を理解できるみたいだね。流石だよ」
「実力の差、だって?」
「さっきから君の呼吸、少しだけど荒くなっている。それにグリップを握りしめる力も不必要に強い。緊張状態にあるのは間違いない。
が、加えて君の視線は絶えず周囲を観察し続けている。本能的な恐怖で目が泳いでるのではなく、自分の意思で視界を動かし情報を得ようとしている。
それって、俺と戦うことが一番命を危険に晒すと理解しているからだろう? それは間違っていない、正しい判断だよ」
「知った様な口を・・・!」
だが、男の言うことは紛れもない事実だ。
1秒にも満たない時間の瞬き、ほんのごく一瞬視界がブラックアウトした次のシーンには、男が銃を構えてこちらに銃口を向けているのだ。
どんなトリックを使ってるのか知らないが、正面きってやり合おうとすれば俺が負ける可能性のほうが高いだろう。
デザートイーグル、あれの大口径弾は人体にさえ当たれば重傷を負ってしまう程高い威力を持っている。
けれど、逃げるにしても何かしらキッカケが必要ではある。
どう考えても素直に逃してくれるとは思えない、なんとかチャンスを掴むためにも・・・。
「ふふ、君の考えてる事が手に取るように分かるよ」
「・・・なに?」
「なんとか切り抜けて帰りたい、君の立場に置かれたら俺もそう思う。けれども、簡単には逃してあげられないな?」
「くっ・・・イチイチ勘に障る奴だッッ!!!」
Five seveNの引き金を引いた。
俺の顔を、飛び散った熱い金属の欠片が撫でた。
見ればFive seveNの銃口から煙が出ている。デザートイーグルの銃口からも煙が出ている。
だが弾は当たっていない、はず。いや、じゃあ顔に飛んできたこの欠片はどっから来た?
奴の銃の射線は微動だにしていない。撃ったそのままの姿勢をキープしている。
その射線はそのまままっすぐ進めれば、俺が向けていた銃口の射線にも重なり・・・
ちょうど俺と男の真ん中くらいの位置に、べチャリと潰れた金属の塊が落ちていた。
「・・・ハっ、化け物かよ」
「誰にでも出来ることではないが、君ならば出来る様になるだろうさ」
ふざけてやがる。
化け物、そんな言葉が出てくる位のワザ。規格外すぎる、もはや笑うしかない。
だって、一体どうやったら出来るっていうんだ?
「そう悲観する必要は無い。この俺が保証しよう」
「・・・何故、そう言える?」
「それはね・・・」
男は目元を隠していたサングラスを取り、コートの胸ポケットへ仕舞い込む。
そうして露わになった男の素顔に、俺は動けなくなってしまった。
やっと会えたな、兄弟・・・いや、
ーーそれは鏡写しの様に、自分とそっくりな顔だったからーー
タコ女ことロッソ、一年ぶりの登場。
え? タコから人にトランスフォームする時、どうやって下の服着たかって? それを聞くのは野暮ってモンだすよ皆さん( ̄▽ ̄)ノシ
ヒント:擬t(殴
次回、レイの(割とヤバイ大)ピンチ
P90のスキン当てたい()