裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
サブタイ考えるのも色々と頭捻ったりなんなり・・・あと上手いこと伏線を巡らせることができなくて色々辛いです。とあるシリーズの鎌池大先生とか凄すぎねって思います。
スケアクロウ編コラボ4話目。次でオチをつけたい(切実な気持ち)
20/06/04 恥ずかしい誤字と誤解を招く表現があったので修正
「・・・U-02地区に絞って衛星に向かって発信された信号を徹底的に探したけど、ようやく手がかりを見つけたよ」
店にいる者全員で協力してスケアクロウを守ると宣言してから2時間余り。店内に持ち込んだPCをひたすら打ち込み続けて何かを捜索していたアーキテクトは、自身の探し出した結果を映すモニターを見て険しい表情のままそう呟いた。
彼女が必死に行っていたのは、U-02地区近辺を発信源とする全ての電気信号の捜索である。たまたまU-02地区に鉄血の支部が置かれていたのが幸いし、支部からのネットワークを使用して拾える限りの全ての信号を片っ端から拾っては発信元を調べていた。
情報化社会の現代において飛び交う電気信号の数は、たとえたった一つの街の中だけでも文字通り桁違いの数量を誇る。だがアーキテクトはハイエンドモデルとしての自身の演算能力を限界まで駆使して、莫大な量の情報を捌ききった。
格闘の末、彼女は地区内で微弱ながら発信され続けているあるコードを発見する。それは鉄血の中でもごく少数の者しか知らない、世間に普及する前に開発が終わった旧式の独自通信規格。そう、数少ない規格採用ボディの
しかし、まだ彼女の居場所をはっきりと断定できた訳ではない。信号そのものが微弱なため、地区内に飛んでいるとはいえ発信元の位置を特定するには至っていないのだ。信号がどの位置から衛星に向けて発信されているのか、一番重要な情報が得られず歯噛みするアーキテクト。そんな彼女の肩に隣で見ていた代理人が優しく手を置く。
「落ち着いて、アーキテクト。衛星本体に届かないくらい微弱な信号でも、街を飛び交う数多の信号の中から発見できたのです。つまり、”微弱な”ESシグナルでも外に飛び出せる場所にあの子がいるという事ではないですか?」
「! ってことは・・・」
代理人の助言にハッとした顔を浮かべたアーキテクトは、落ちこみかけていたキーボードを打つスピードが再び目まぐるしいものへと変わる。
地区内で代理人の言った条件に該当するスポットをこれまた片っ端から洗い出し、そして見つけたある場所。
「・・・うん、ここなら誰にも悟られずに色々なことが出来るね。それに、スケアクロウが今どんな状況に置かれてるのかもこれでなんとなく分かった」
モニターに映されたのは街外れにある大きな倉庫跡の衛星写真。長期間手が入っていないらしく、屋根はボロボロに朽ち果て所々に隙間が出来てしまっている。恐らくこの開いた隙間から信号が外に漏れ出ているのだろう。
そして次の瞬間、アーキテクトたちの顔は驚愕に染まる。
「・・・えっ? ウソでしょ??」
この倉庫跡の管理者は現時点で誰なのか、それを調べていたアーキテクトの指が呟きと共に止まる。表示されていたのは『管理責任者:KCCO エドワード・ヴァーレンタイン中将』の文字。
まだ事件だと明確に判明したわけではないが、もし仮に事の犯人が地元のギャングだとして、軍の上級将校が管理している建物を自由に出入りできるか? 否、将校と直接癒着でもしていない限りはそれは難しいだろう。即ち、スケアクロウに迫る危機に正規軍の人間が関与している可能性が浮上したのである。
予想もし得ないビッグネームの登場に、喫茶鉄血の面々は驚かずにはいられなかった。
「・・・どうやら、我々の思っているよりも”事”の闇は深いようですね。いずれにせよ、レイさんにも伝えた方が良いかもしれません。
アーキテクト、私のテレポートで移動しても問題の無さそうな場所はどこかありますか?」
「え? あ、うん! 探してみる!」
代理人がテレポート機能を使うと宣言した事に、彼女たちに二度衝撃が走った。
本気。場合によっては正規軍と正面からかち合ってでもスケアクロウを取り戻す、その決意が短いその単語から滲み出ていたのだ。
代理人の気迫に後押しされたアーキテクトは、突然人形たちが現れてもトラブルの無さそうなテレポート先をいくつかリストアップしていく。
「代理人、ここなら多分大丈夫だと思う。それで・・・その後はどうするの?」
「もちろんーー
滅多に聞く事のない代理人の凍てついた声色に、その場にいた鉄血人形は一人の例外なくゾクリと背筋を震わせた。
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『やあ、お目覚めかね? ミセス鉄血』
意識を取り戻した私にそう声を掛けたのは、黒一色のスーツに身を包みサングラスを掛けた老齢の男・・・のホログラム映像。後ろに手を組み、カツカツと足音を立てながら悠々とした足取りで歩く。
ここは・・・廃墟? ボロボロの屋根に所々開いた隙間から、憎々しいほど明るい月明かりが建物の中へと降り注いでいる。おかげで自分がどういう状態なのか、暗視モードで見渡さなくても把握する事が出来た。
私の体は今、まるでかつてのイエスの様に十字架に
おまけに高台で私を無力化したジャマーも健在で、常に発される電磁波によって重い頭痛が絶えず私を苛み続ける。そんな私と対照的にクツクツと笑みを浮かべる男に、私は強い忌避感を覚えずにはいられない。
『そう怖い顔をするものでもない。せっかくの美人に”造られた”顔が台無しではないか』
「どの口が、言っているんです・・・?」
反論するのも億劫なほどに体に怠さを感じる。口を動かすコマンドを演算し実行する、ただそれだけのタスクすら満足に出来ないこの状況。私は男の後ろに鎮座する大きな機械を睨みつける。
ドールズジャマーと呼ばれる、人形の行動を強力に制限する行動阻害装置。私たちの電脳に作用する電磁波を発し、強度によっては電脳の回路を焼き切る事も出来てしまう、人形にとっては天敵とも呼べる発明です。
自律人形の開発が進み、ほぼ同時に戦術人形というカテゴリも普及し始めた当初、テロ行為に戦術人形が利用される事件が頻発したのを機に被害軽減のために人形無力化を目的に造られたもの。しかしそれが今、何の犯罪行為も働いていない私に向かって行使されている。正義のために行使されるべき道具がだ。何のための
『君ほどの人形となれば、もしかしたら我々の知らぬ手段で状況を打破される恐れがある。我々”人間”は残念ながら非力な存在なのでね? 念には念を入れてコイツを使わせてもらっているよ。・・・さてと』
男はそう言うと、ホログラム越しにシワの刻まれた右手で私の顎を掴む。
実際に触れられてなくとも不快極まりない男の行為に、私は最大限の怒りを込めて睨むほかに出来ない。
『ククククっ、良い顔をする。こういう顔ができる奴は戦場で必ず伸びる。人形でなければスカウトしていたところだよ、スケアクロウ君』
「はっ、下らない話ですね・・・わざわざ私の身を拐って言いたかった事は、こんなどうでも良い話ですか・・・?」
『ククククク・・・出力をレベル3まで上げろ。このボディなら耐えられる』
「何を・・・がっ!!?」
突如笑みの消えた男が何かを命令した直後、先とは比べものにならない激痛が私の電脳を襲う。
無数もの稲妻が頭の中を無茶苦茶に駆け巡る、轟音が、衝撃が、全てが痛みとなって私の頭に襲い掛かった。
「ああぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!???」
『クハハハハハハハハハ!!! 良い顔だよ! 実に素晴らしい!!』
男が何かを言う。けれども私は頭の中で暴れまわる稲妻に辛うじて意識を保つだけで精一杯。さっきまでと桁違いな痛み、気が狂いそうになる。
こんなモノをいつまでも食らい続けてたらいくら私でも耐えられない。いつかは回路が焼き切れてしまう。
・・・レイ。
貴方に伝えたいことがあったのに、結局伝えられずに私は”死ぬ”の?
ジャマーに電脳をグチャグチャに掻き乱されて、正気を失ったまま私は”消える”の?
・・・嫌。
貴方に会えないまま”死ぬ”なんて、嫌。
伝えたいことすら伝えられないなんて、嫌。
何よりもーー
貴方と二度と一緒にいられなくなるのが、嫌だ。
・・・? 痛みが弱くなった。ジャマーの出力を弱めた?
男は私の顔から目ざとく考えていることを読み当てた。
『舐めた口をきけばこうなる、今のはちょっとした見せしめだよ。それに、彼が来ていないのに君にトドメを刺しては面白くない。
君が手元の置いておきたかった彼の目の前で君を壊す・・・我々の目指すショーのコンセプトだ』
「・・・ショー、ですって?」
まるで私の仕事を侮辱するかの如く言い様に、私はこの男への強い怒りが湧き上がってくる。
芸で生きていくことの苦労も挫折も知らないこの男が”一人前にショーを語っている”なんて、随分と舐められたものですね・・・??
『そうだ。君の終焉をテーマにした最高のショータイムだよ』
「巫山戯た事を・・・」
『残念だが大真面目だ。我々は欠片も巫山戯てなどいない。既に沢山のオーディエンスが君の終わりを楽しみにしているのだ』
「・・・沢山の、オーディエンス?」
男の言った言葉に、僅かばかりに動く首を目一杯回して周囲を見渡してみる。
しかし、男のホログラムと私を苛み続けるジャマー以外には、私を複数方向から見据える数台の大型カメラしか見当たらない。
なるほど・・・。
「女が磔にされている所を、全世界にネット中継とは・・・随分と歪んだ性壁をお持ちなのですね?」
『減らず口もその辺りにしておく事を強く推奨するよ。私たちの堪忍袋の尾が切れれば、彼の到着を待たずして君を抹消する事となる。それはこちらとしても避けたい展開だ』
「・・・そもそも、何のために彼をここへ招くのです」
先ほどからの口ぶりから察するに、どうも私とレイがこの場に揃う事を男は望んでいるように思える。
しかしそれなら、私たちが別れたタイミングで私を拐わずとも、一緒に行動しているその時にコンタクトを取れば良い。わざわざレイと一旦離す意図が掴めない。
『君と彼、二人が揃って初めて終焉は幕開けとなる。だがね、プリンセスを救いに来たナイトは遅れて登場するのが王道というもの。私はそれを演出したに過ぎない。素敵なショーの前のいわば余興という奴だ』
「・・・バカにするのも大概にしなさい」
囚われの
私を侮辱するならまだ許せる。でも、エンターテインメントを下に見るような男の口ぶりは到底許すなんて出来ない。この男の取った行動言動は私だけじゃなく、この仕事に誇りを持つ全世界のエンターテイナーに対する明確な侮蔑だ。
内に燃え盛る怒りに拳を握り締めた次の瞬間、男の口からとんでもない事実が吐き出された。
『ああそうそう。君の体を拘束している全てのリングには起爆装置が付いている。下手に動かないことだ。吹き飛ぶぞ』
「・・・・・・は?」
右手側を拘束しているリングに目を向ける。見た目は金属製の黒い拘束具に見えるが、この中に爆弾が仕込まれている?
なんて悪夢ですこと・・・これでは私の力だけで状況を打破するなんて不可能。この手の込み具合、私を拐うまでの周到な用意、民間人には到底持ち出せない
この男、一体何者なのです?
「・・・貴方は、何者?」
緊張で暴れるような鼓動を内に隠しつつ、私は男へと問う。
こうまでして私たちを痛めつけたいと思う男たちの感情。何ゆえ彼をそうさせるのか、私は気になった。
『クククク・・・彼が来た時にまた話そう。時間通りに彼が君の元へ辿り着ければ良いがね』
「なっ、待ちなさい!」
私の質問に答えることなく、男は意味深な言葉を残してホログラムを切った。
・・・レイが来た時にまた話そう? 時間通りにレイがここへ辿り着ければ良い?
つまりレイの動向を男は常に把握できているということ? その上でレイに何かをさせている?
男の言葉がこれから起こることを言っているであるなら、恐らくは男の指定した時間までにレイがここへ来るということ。しかしそれならさっきも考えたように、わざわざ一旦私たちを離れ離れにする意味がどこにあるのかが気になる。
世間に名の知れた
それに、今も私に頭痛を与え続けているこのドールズジャマーは、本来犯罪に加担している人形を無力化するための機器。自律人形の進出が進んだ現代でこれを無制限に使えば大混乱になるため、ジャマーを扱う権限は警察特殊部隊や軍などの法執行機関にのみ与えられている。もし権限のない者が扱えば被害の有無にかかわらず重い刑罰が科されるのは、ジュニアスクールの高学年でも知っていること。
即ち、ジャマーを持ち出してまで私に害を為そうという行為そのものが、彼らにとって極めてハイリスクな行動である。であれば、それを実行しようと思えるだけのリターンが彼らにはあるはず。けれども、今ある情報ではそれが何なのかが分からなかった。
「・・・一体、何を企んでいるの?」
呟いた私の疑問は、月明かりの注ぐ廃墟に寂しく響くだけだった。
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「エドワード・ヴァーレンタイン・・・この男か。ついに見つけたぞ」
1号が遺してくれた映像に映る横顔。顔に刻まれた深い皺を元に徹底的に探し続けた結果、ある一人の上級将校が候補に浮かび上がった。それが『エドワード・ヴァーレンタイン』という男、中将というかなりの地位に座する司令官の一人である。
傭兵のネットワークを駆使して調べてみたところ、ヴァーレンタインは人形の能力だけに頼らない人の力を主軸とした作戦遂行を得意とする軍師として、戦場に身を置く界隈ではかなり有名な話らしい。
この少ない情報だけで見ても、ヴァーレンタインが人形の社会進出には否定的立場であるのが分かる。しかし過激派というわけでもなく、あくまで戦術行動の主軸は人間だという見方で時代の流れを見据えている・・・というのが表向きの顔だったらしい。
実際にはスケアクロウを捕らえ、挙句お供たちもボロボロに壊してくれたあたり、根に抱えてる人形への反感はその実相当強いものであろうことは想像に難くない。であれば、人形に雇われた人間というある種可笑しな関係を結んでいる俺にも不快感を感じて当然ではある。
でも、だからと言って手を下していい理由にはならない。誰に迷惑をかけてる訳でもなし、むしろ人々の笑顔のために彼女は今までたくさんのパフォーマンスを届けてきた。なぜそんな彼女が、極端に言えば『人形嫌いだから』という理由で傷付けられなくちゃならない?
理屈の通った説明とともに否定的立場としての意見を述べるのなら分かるが、奴らが直接彼女に手を下した事実は到底許せるものじゃない。腹に一発決めやがった事もそうだし、ジャマーを持ち出してまでなんて、尚更だ。
「さて、コイツなら誘拐したスケアクロウを何処へ隠すかって事だが・・・」
俺は地区の東端、今いる高台よりさらに東に行ったところへと目を向けた。
元々この高台の公園はこの辺りの丘陵地帯の一部を切り開いて作られたもので、自然保護を理由に人が切り開いていない箇所は今でも森林のような環境になっている。夜になればまるで光の届かない暗い森を超えたその先に、かつては兵器保管拠点として使われ、今は放棄された軍のボロい倉庫が建っているのである。
U-02地区は丘陵地帯と平地で出来た一般的な居住区エリアの一つ。戦略的に重要と呼べるのは”強いて”言えば武器を作れるであろう工場町くらいで、軍が保有していた兵器保管拠点の役割も既に別の場所に移っている。つまり、現在の正規軍にとってこの地区はそれほど重要な拠点じゃない。
しかし、あの倉庫は役割としては完全に放棄されたにも関わらず、未だに軍が管理者として保有し続けているのだ。・・・なぜ?
答えは管理責任者の名前を見れば類推する事が出来る。
「やっぱり、管理責任者のとこにヴァーレンタインの名前が入ってやがる。・・・どうも腑に落ちねえな。戦場で名の売れた頭の回る軍師にしちゃ、俺を答えに導く導線が幾らなんでもあからさま過ぎやしねえか?」
あの男が噂通りの切れ者とするなら、こんなすぐに答えが分かるような導線で果たして俺に”ゲーム”を仕掛けてくるだろうか?
奴からすれば、俺が奴のもとに辿り着くことに何のメリットも無い。むしろ来ない方が良いはずだ。誰にも邪魔されずスケアクロウにトドメを刺せるのだから。
そうしないで、あえて俺を招こうとしている理由はなんだ?
俺は何か罠に嵌められようとしている?
「いや、考えてても埒が明かねえか。正直このリボルバーだけでどうにか出来るかは怪しいが・・・」
俺はホルスターから、どんな時でもいつも持ち歩いていたリボルバーを取り出す。
弾倉に込められる弾はたったの7発。サプレッサーを付けられるという変な特徴はあるにせよ、まともに”殺しのプロ”を相手取るには正直心許なさがある。
どれだけ大切に扱ってきた愛銃だとしても、敵の布陣次第じゃ一瞬で俺の体は蜂の巣にされて終わるだろうな。
だとしても・・・出来る出来ないじゃない、やらなきゃいけない。
待ってろスケアクロウ。俺の命に代えても必ず助け出すからな。
命賭ける覚悟を決めた瞬間チクリと胸が痛んだ気がしたのは・・・なんでだろうなーー
私は決してお前たちのやったことを忘れない
お前たちが、私の、私の---を、
赦さない、決して赦さない、赦してなるものか
必ずこの手でお前たちを地獄へ送ってやる、たとえこの身が破滅を迎えたとしても・・・