裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 お待たせしておりました。
 ここんところ体が怠い日が続く今日この頃。夏は体が溶けるので更新のペースが落ちがちになります()。

 いやもぅマジで纏まらん。湿気も熱も・・・必要以上には要らんのじゃっ!


-76-16Labの一幕

 

 

 

「おー、来たねぇCEO」

 

 

 I.O.P.社の上位研究機関16Lab。その中の最重要区画の一つである主任執務室にて、主任研究員のペルシカリアはある人物を出迎えていた。

 

 

「重大発表などと勿体ぶるから、わざわざ組んでいた予定をリスケしてまで来たのだ。・・・私を振り回すに足る事なのだろうな? ペルシカ」

 

「そこは心配しなくていーよ。これからお見せするのは、ウチが本格的に鉄血に対抗し得る手段の一つになるかもしれないモノだからね。

 通信越しじゃなくて直に来てもらったのはそういう事だよ。あ、コーヒー飲む?」

 

「いらん。お前の作るコーヒーは泥水の様で不味い」

 

「えー、美味しいのに・・・」

 

 

 肩をすくめるペルシカリア。

 しかし相手は、この時勢でなお分刻みのスケジュールを生きるVIP。用件に関係の無いトークは早々に切り上げ、彼女は杖をつく男性をエスコートしながら執務室を出て、研究室へと歩き始めた。

 脚にハンデを抱えているため、どうしてもペルシカリアより歩くスピードが遅くなる男性。

 彼は本来ならエスコート役は男の役目なのだがなと漏らすと、やれやれといった風に首を振った。

 

 

「まったく・・・歳を重ねるとますます体が言う事を聞かなくなって仕方無い」

 

「そりゃあ年考えたら当然ってもんでしょ。あ、ウチの外骨格着ける?」

 

「もう少し体が動かなくなったら、それも考えねばならんかもしれんな・・・」

 

「あら。・・・っと、着いたよ」

 

 

 辿り着いた研究室のロックを、ペルシカリアは素早く解除していく。安全と機密保護の為、何重にも掛けられたセキュリティの全てを、彼女は一切の淀みもミスもなく解く。

 この辺りは流石に世界レベルの天才というべきか。

 

 無事認証を終えると、分厚い鋼鉄の扉が重々しく音を立てて開かれていく。細身な人間と同じくらいの厚みがある扉のレールを潜り、真っ暗な研究室へと入る二人。

 するとすぐさま扉は閉まり始め、完全に外界との接続が絶たれて数秒の後、内部の灯りが点く。

 

 この部屋は建屋の中に三つ設けられた、如何なるネットワークにも繋がっていない電子的に完全に閉ざされた空間である。

 人形メーカーの上位研究機関16Lab。その施設の中にこのような設備を設けているのは何故か?

 

 それは、人形は義体を触れ合わせるだけでデータをやり取り可能だからだ。

 言うなれば、コンピューターウィルスを感染させられると共に、電子戦に長けた相手であれば接触させた途端ハックされる危険もあるということ。

 

 そのため、この部屋に使われているコンピューターや人形の修理等に使うマシンアーム類は全て、この建物にある他のいかなる機器と電子的に完全に隔離されている。

 唯一物理的に繋がっているのは機器を動かす為の電源供給線のみ。それも万一に備え、この部屋から電力供給のコントロールを行う事は出来ない。

 即ち、最重要機密を抱えた人形を生み出したり、敵から鹵獲した兵器を解析するために、I.O.P.が多額の投資をして拵えた空間なのである。

 

 

 コンソール類が並ぶ操作室と、鹵獲した兵器を実際にバラしたりする技術作業室(テクニクスルーム)で構成される研究室。双方は7.62mm弾でも貫けない強化ガラスで仕切られている。

 男性はガラスに歩み寄り、中で拘束された『研究対象』を見据える。

 

 四肢を取り外され、首、両手足の付け根、それと腰周りの計6箇所をリング状の拘束具で作業台に磔にされている研究対象。

 

 中で眠っていたらしい研究対象は、しょぼしょぼ眠たげに目を瞬かせながら首を動かし、ガラスの向こうに立つペルシカを見つけるとなんて事のない様にこう言った。

 

 

「・・・ん? なんだ、もう朝か」

 

「残念。もうすぐお昼よ」

 

「んあ? ったく、こんな所に閉じ込められてちゃ時間も分かんねえっての。んで、今日は何すんだ?」

 

「紹介するわ。アタシの雇い主よ」

 

 

 ペルシカは手元の端末を操作し、研究対象の拘束されている作業台を縦方向へと動かし、研究対象を立っているのと同じ状態にしてやる。

 互いに正面から向き合う構図となった両者。

 

 

「雇い主ぃ? つう事は・・・」

 

 

 研究対象は目を細め、ジロジロとペルシカリアの隣に立つ男性を眺める。

 

 

「アンタがグリフィンの人形を作ってる会社のトップって訳か」

 

「ああ。初めまして、と言っておこうか。エクスキューショナー。私は『ハーヴェル・ウィトキン』だ」

 

 

 男性・・・ハーヴェルは、深く皺の刻まれたその顔に笑みを浮かばせた。

 一方、研究対象・・・エクスキューショナーはというと、ハーヴェルのどこか飄々とした佇まいに少しだけ目を丸めてみせた。

 

 

「ほぉ・・・鉄血(ウチ)の”元”トップとおんなじ位の歳に見えるな」

 

「それは『イヴァン・リューリカ』の事かね?」

 

「あぁそうそう、そんな名前だった。確かオレ達のボスが見つけて即ぶっ殺したらしいけど、詳しくは知らねえ。そん時オレはその場にいなかったからな」

 

「ふむ・・・」

 

 

 あっけらかんと言うエクスキューショナー。その顔は今の自身が捕虜と同じであることを感じさせない、妙な明るさを含んだものに思える。実際、恐らく元々は人当たりの良いメンタルをしているのだろうとハーヴェルは思う。個人的には嫌いじゃないタイプである。時間が許すのなら、もう少し親睦を深めてみようとも感じた。

 現在、彼女が手足の無いダルマそのものの姿であることに目を瞑れば・・・だが。

 

 元々脚部のブースターと右手のコアユニットがレイ(誰か)のせいで使い物にならなくなってたのに加え、その後人形商に拐われてからグリフィンに鹵獲されるまでの最中にもなんだかんだで色々と損傷を受けてしまい、結果ここに持ち込まれた際にどうせだし取り外せとなって今に至る。

 上位クラスの戦術人形のため、捕虜としておくにも研究を進める上でも、尚のこと身動きを完全に封じた方がペルシカ的にも安心だったと言う理由もある。

 

 16Labに移送された当初、オークションから助けられたとはいっても彼女にとって敵であるグリフィンの業務提携企業ということで、ペルシカに対する当たりも中々手厳しいものだった。手足のどれか一本でもあれば、どんな足掻き方をしてでも殺すと言わんばかりに。

 そんな彼女の殺気を浴びせられつつも、以前渡された設計データを参照しながら少しずつメンタルの解析を進めていく内に、ペルシカリアは暴走の鍵となっているコードを遂に発見。それから時間をかけて少しずつコードを除去していった結果、ご覧の様な本来の彼女に戻ったというわけだ。

 

 従って、今のエクスキューショナーに人類殲滅というコマンドは既に無い。

 ただ、ペルシカリアが未だ鉄血人形の内部構造(OS)を解析し切れていないので、彼女自身のシステム面を見せる形で調査に付き合っているのが現状である。ちなみに捕虜という立場上、自身の内部を隅々まで見られる事に関しては本人も達観し諦めた様子。

 そのうち解析作業の傍らペルシカリアと会話をする様になった彼女は、気付くと知人以上友人未満みたいな関係を築いている。

 

 無論、ペルシカリアはまだその辺りの詳しい事情をハーヴェルに説明していないので、彼は単にエクスキューショナーが抵抗は無意味と察して渋々作業に付き合っている様に見えていた。

 しかし、たった一体とはいえ鉄血人形の暴走解除に成功した事実は、ハーヴェルにとっては十分過ぎるほどの重大発表と言って良い。これからその事実を伝えたときに、どんな顔して驚くだろうか。

 雇い主が浮かべるであろう顔を思い浮かべながら、ペルシカリアはこっそりほくそ笑んだ。

 

 

「・・・ペルシカ。彼女とは今のところは良好な関係を築いている様だな」

 

「まあね。この子に限ってではあるけど、人類殲滅という上位コマンドを成立させてるコードの除去に成功したの」

 

「・・・・・・今、なんと?」

 

 

 案の定彼は呆けて、続いてその顔を強張らせた。

 

 

「このエクスキューショナーはもう暴走していないって言ったの」

 

「・・・それは本当なのか?」

 

 

 こんな場所に連れてきてまで嘘を吐く意味は無い。

 分かってはいるが、それでも聞き返さずにはいられなかった。

 

 ただ、彼の問いに答えたのはペルシカリアではなく、割り込む様に口を挟んだエクスキューショナーだった。

 

 

「おうよ。ついこの間まで、オレの頭ん中にゃ『人間は問答無用でぶっ殺してやる』って感情で一杯だったんだけどな。ペルシカがコードを掃除してくれたお陰で、今オレは久々にとっっってもクリアな気分を味わってる。

 端的に言うと物凄く気分が良いから、義肢さえ着けてくれりゃ今ならアンタをお姫様抱っこでI.O.P.本社までダッシュで運んでやっても良いぜ」

 

 

 鉄血のハイエンドにお姫様抱っこされるI.O.P.のCEO・・・絵面はシュールを通り越してショッキングですらある。

 それに、なんのアナウンスも無くいきなり彼女を外に露出させれば、誰がどう考えても非常に面倒な展開になることは明らか。

 

 ハーヴェルは頬を引き攣らせながらも、なんとか冷静に取り繕った。

 

 

「気持ちだけ貰っておこう。それはそれで面白そうな提案だがね・・・なるほど。それで、今はどういう状況なんだ」

 

「鉄血の人形に採用されてるベースのOSを改めて解析してるところ。例の仕事人(フィクサー)が工場から持ってきてくれたデータのおかげで、暴走前のサンプルデータはウチにあるんだけどさ。暴走した後に何か他に変化は無いかっていうのを念のため隈なくチェックしてるところ」

 

「ふむ・・・なら、その役目に適任な人物をここに招くとしようか・・・」

 

「へ?」

 

 

 今度はペルシカリアが呆けた。

 適任・・・つまり、鉄血に属していたエンジニアのことだろう。はて、例の暴走事件発生時に鉄血の従業員は全滅してたんじゃ? そうした認識でいた彼女は頭にハテナを浮かべ首を傾げる。

 

 

「とりあえずこの件は追って伝える。それと、先日鹵獲されてきたイントゥルーダーについてはどうだ?」

 

「ん? いやぁ、あの子はこの子とはまた違った方向で面倒臭くて手焼いてるとこだよ」

 

 

 首を大きく振り、やれやれと口に出した後に大きな溜め息。

 腹に据えかねる何かが彼女とイントゥルーダーの間にあったのかと、ハーヴェルはペルシカリアに問いかけた。

 

 

「何があった?」

 

「生まれてからまともな活躍一つも出来ずに捕虜になった〜とか言っててさ。まあ有り体に言うと『どうせアタシなんかポンコツなんだ』って感じで物凄く拗ねてる。ぶっちゃけコミュ障気質の私には手に余るね」

 

「・・・・・・」

 

 

 ハーヴェルは手で目元を覆い、思わず見えない空を仰いだ。

 なんだそれは。ハイエンドモデルの癖してそんなしょうもない事でイジケテるのか? いや、気持ちは分からないでも無いが・・・。

 人間を見下し、殲滅するとまで宣言したはずの鉄血人形の妙に人間臭い部分を垣間見て、ハーヴェルは如何ともし難いモヤモヤを感じる事となる。

 

 

「・・・それで、具合は?」

 

「さぁて・・・彼女の場合は鉄血がああなった後で生まれた個体だってのはご存知の通りで、何を根拠に正常と言うのかって所だよねぇ・・・」

 

「あぁ、なるほど・・・正常(デフォルト)が我々から見て暴走状態に当たるゆえ、手を加えるにはもう少し情報を集めたいと?」

 

「そういうこと。サンプルのデータを見た限り、ハイエンドごとにメンタルの構成にかなり差異が見られるもんでさ。

 私も見て驚いたんだけど、例えば廉価版のスケアクロウやエクスキューショナーにハンター。この3モデルを比較しても全っ然似通った所って無いワケよ」

 

 

 ペルシカリアは白衣のポケットから携帯端末を取り出すと、画面に3モデルを構築するデータから抜粋した一部をそれぞれ表示させる。

 ハーヴェルはすぐに書かれたコードを読み解き、抜粋元がメンタルの人格に関わる部分であることに気付く。画面をスクロールして更に読み進めていけばいくほど、細かなコードの違いの組み合わせにより豊かな擬似人格を見事に形成している事が見て取れた。

 一つ一つのコードは大した事のないモノ。しかしそれらがいくつも組み合わさってタスクを実行する事で、本物の人間と遜色無いまでの非常に洗練された人格を成しているのだ。

 

 ハーヴェルは自らの指揮する会社(I.O.P.)が、ライバルの鉄血を市場から駆逐しきれなかった理由の一端を改めて察した。

 

 彼の顔からそれを察したペルシカリアは一息吐いて、結論を口にする。

 

 

「もちろんモデル毎のコンセプトの違いを加味しても、ここまで内面に差が現れる様に『イチから』組むって中々手間の掛かる事をやってる。多分だけど、設計者はオーナーにとって心から支え合える戦友を作りたかったんだろうね。

 ま、そんな訳で、サンプルが手元に無いあの子は尚のこと解析に時間掛かりそうなんだ」

 

「ふむ・・・分かった。どのみちペルシカ一人では作業に時間が掛かると言う事だな?」

 

「そうなるね」

 

 

 ペルシカリアの現況報告を聞き終えたハーヴェルは一つ頷き、用は済んだとばかりに踵を返す。

 

 

「近々お前の研究がより早く進められる様手配しよう。イントゥルーダーの件は引き続き任せる。

 それとエクスキューショナーについてだが、全ての解析が完了次第義肢を着けて構わん」

 

「え、いいのか?」

 

 

 他ならぬペルシカリアの雇い主から下りた、手足装着の許可。思っていたより早くその言葉が聞けたことに、エクスキューショナーは目を丸くし聞き返した。

 ハーヴェルは口元に緩い弧を浮かべ、頷く。

 

 

「ああ。これでもペルシカは優秀な人材だ。私も信用しているよ」

 

「ふぅん・・・お前、ホントに一目置かれてんだな」

 

「アンタ今まで私の事なんだと思ってたの?」

 

 

 ピクリ、顔を引き攣らせるペルシカリア。

 対するエクスキューショナーはなんて事無い風にこう言った。

 

 

「頭はイイけど、30越えても猫耳カチューシャ着けてるのが痛くて男に巡り会えないおボコ科学者」

 

「カチューシャじゃなくてヘッドフォンよ!! ていうかおボコで悪かったわねっ!?」

 

「30越えておボコって・・・人間って大変なんだな」

 

「大 き な お 世 話 よ ! ! !」

 

 

 気のせいか、ボサボサの髪がメラメラ逆立っている様に見えたハーヴェルは、面倒事に巻き込まれるのはゴメンだとばかりにスタスタと出口に向かって歩いていく。

 女同士の姦しい口喧嘩に巻き込まれると、どうしても男にとっては肩身が狭く感じてしまう。そのうちヒートアップしてくると、聞きたくなかったエグい話題も飛んできたりするからだ。

 それを豊富な人生経験で嫌というほど身に沁みて理解しているハーヴェルは、出せる限り早歩きで逃げるように出口に。

 

 

「おっ、もう帰んのか? じゃあなー」

 

「ちょっ、アンタ今露骨に話題逸らしたわね!?」

 

「ああ。面倒くせえと思って」

 

「こん、のぉ・・・・・・!!」

 

 

 内心大きな溜め息を吐きながら、後ろで喧しく喧嘩する部下と研究対象を尻目にハーヴェルは足早に去っていった。

 

 

 

 -----

 

 

 

「リーサさん。貴女のスキルをより活かせる場所に出向する気はないかしら?」

 

「は、はい??」

 

 




 コロチン打って左腕が痛い()

 良い加減コロナのおかげで満足に遠出もできなくてフラストレーション溜まりまくり。
 全員で協力しなきゃ意味無いんだってのを理解してくれてない人のなんと多いことか。

 さて次回、グリージョ一派の悪巧み編(の予定)。
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