裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 お待たせしました。
 今回は短めです。

 最近基地のバッテリーの使い道がフロッピー作成位しかなくてあぶれちゃう()


-77-記憶、一つ動く歯車

 

 

 

 ねぇ、サーリャ

 

 何? 姉さん

 

 私、貴方が妹で、良かった

 

 そう。私も、リーリャが姉で良かったと思ってる

 

 ありがとう、嬉しいわ

 

 ・・・リーリャ

 

 ・・・うん?

 

 私たち、死んじゃうのかな?

 

 ・・・うん。このままじゃ、死ぬでしょうね

 

 ・・・そっか

 

 ・・・ごめんね

 

 何で謝るの?

 

 サーリャを、巻き込んじゃったから・・・

 

 ・・・私たちが私たちとして生まれた時点で、運命はきっと決まってた

 

 サーリャ?

 

 だから、リーリャが気にすることなんか無い。悪いのはリーリャじゃないんだから。

 

 ・・・ごめんなさい、サーリャ。

 

 謝らないで

 

 ・・・ありがとう。優しい妹を持てて、私は幸せだったわ

 

 ・・・リーリャ?

 

 サーリャ、ごめんね・・・お姉ちゃん、先に逝くから・・・

 

 ・・・・・・バカ

 

 ・・・

 

 いつも、一緒だって。約束したでしょ?

 

 サー、リャ・・・

 

 だから、笑って・・・ね? リーリャ姉さん

 

 ・・・本当、サーリャは、優しい子・・・ね———

 

 ・・・リー、リャ?

 

 ・・・

 

 ・・・・・・

 

 ・・・

 

 ・・・・・・バホ姉、私もすぐ、そっちに、行く、か、ら———

 

 ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ———————————

 

 

 —————

 

 

 ——

 

 

 


 

 

 

「はっ・・・」

 

 

 ・・・目が覚める。外はまだ暗い。

 レイとティナと共に暮らす寝ぐらの、私とティナが寝ている部屋。見覚えのある天井、間取り、床に敷かれたマットレスと、そこで気持ち良さそうな寝顔を浮かべるティナ、何一つ変わりなくあるもの。

 上体を起こしつつ、私は周囲がいつもの光景であることにほっと一息吐き、さっきまで見ていた夢を思い返す。

 

 前に見た、私たち姉妹が地獄を味合わせられた凄惨な悪夢。両手両足を切り落とされ、切られた断面は熱した鉄を押し当てられて無理やり止血させ、殴り、蹴り、骨を折り、砕き、徹底的にいたぶってからジワジワと死なせる・・・憎悪の極まった者達はここまで非道になれるのかと、そう言わずにはいられない所行の数々。

 今日見た夢は、暴力が終わり、あとは消えゆく命の中で横に並び合った姉妹で話していくだけのもの。そして——

 

 

「かひゅっ」

 

 

 息が詰まった。

 脳裏に鮮明に思い起こされた光景の全てに、気付けば体は震え、冷や汗が流れ落ち、浅い呼吸を繰り返すばかり。

 

 自らの体を抱く。恐怖が強烈な悪寒となって全身を駆け巡っている。寒い、怖い。

 だって——

 

 

「なんで、今になってまた思い出すの・・・」

 

 

 ()()()()()()()()()()()、思い出したくもない忌まわしき光景。記憶に蘇るたびに尋常でない恐怖に苛まれるそれを、まさか二度も夢で見ることになるなんて。

 

 

「・・・本当、なんて夢」

 

 

 吐き捨て、ベッドから立ち上がる。

 最悪の寝覚めに冷や汗と、とてもすぐに寝付ける状態じゃない。

 

 水は節約しなきゃいけないけど、汗で臭いままなのはイヤ。レイだって、汗をかいた女はあまり好まないだろう。

 

 私はお湯を沸かしにリビングへと向かった。

 

 

 

 -----

 

 

 

「・・・・・・あり?」パチッ

 

 

 頭の上を静かに歩く様な気配に、私の意識は覚醒する。

 サーちゃんのベッドの方を見ると、布団が捲れ上がってもぬけの殻。ありあり? トイレかな?

 

 んーでも、サーちゃん夜中にトイレに起きる事今まで無かったし・・・あ、さては出張中のご主人の事が心配で寂しくなっちゃったとか?

 

 

「むふふぅ・・・サーちゃんもむっつりなところがあるし、さてはご主人の部屋に突撃したんだね!? ずるーい私も突撃するー!」

 

 

 と、根拠も何もない適当な考えを浮かばせた私は、ご主人の部屋に突入すべく一旦リビングへ。もちろん静かに突撃しないとだから、抜き足差し足忍び足だよん。

 そっと扉を開けて中を見ると、月明かりに照らされた暗い部屋で、上だけ脱いだサーちゃんがこちらに背中を向けてタオルで体を拭いてた。わお、キレイなぼでーらいん。これ見たらきっとご主人もイチコロだね♪って・・・あれ?

 

 

「サーちゃん、その背中のキズってどうしたの? それに、手足の接合部もなんか・・・」

 

 

 元々ある胴体に後から人工の四肢を継ぎ足したみたいな、そんな様な繊維状の素材で繋がっている様に見えた。

 でもそれは、私がご主人に鍛えられてる頃、訓練が終わった後に体を拭き合ったりの裸の付き合いでは()()()()()()モノ。

 あの時は人間の様にきめ細やかな肌で、綺麗な体だなってジロジロ見ちゃったくらいだったのに・・・。

 

 まるで私に見せた姿は偽りの体で、キズだらけの今の姿がサーちゃんの本来の姿みたいで———

 

 

「!?」

 

 

 私が声を掛けた瞬間、サーちゃんは物凄い勢いで首をこっちに向けると、隠す様に脱いでたパジャマを素早く羽織ってしまう。

 なんでいきなり・・・そう思って首を傾げる。

 

 

「・・・??」

 

「い、いつからそこにっ!」

 

「サーちゃんがご主人の部屋に突撃したのかなーって思っtうぇえうぶっ!!?」

 

 

 次の瞬間、物凄い形相で目の前まで飛んできたサーちゃん。右手で私の口を塞ぎ、聞いた事無い位冷たい声で静かにこう言った。

 

 

「今見たモノ・・・絶対誰にも言うな」

 

「ヒッ・・・」

 

「聞こえてるなら頷きなさい。もし誰かに言ったら、(わたし)絶対許さないから。分かった?」

 

 

 コクコク。今までと全く違うサーちゃんが怖くて、私は押さえつけられた頭を必死に何度も振った。

 

 

「・・・そう。約束よ。特に・・・レイにだけは絶対に、絶対に言わないで」

 

 

 コクリ。

 サーちゃんがなんでここまで必死になるのか全く分からないけど、余程触れて欲しくない一面に私は触れてしまったらしい。それだけは分かった。

 

 サーちゃんはごめんなさいって呟く様に言って私から手を離すと、こっちに背中を向けて体を拭くのを再開する。でもサーちゃんの体は小刻みに震えてて、なんとなくだけど、寒いからという理由で震えてるんじゃない、と思った。

 いつもだったらスキンシップも兼ねてそのまま一緒にフキフキしようなんて思うけど、今のサーちゃんはそんな事を許してくれる状態じゃないっぽいし・・・。

 

 

「ね、ねぇサーちゃんっ」

 

「?」

 

 

 手を止めず、顔だけ振り向くサーちゃん。

 

 

「あ、あの、その・・・理由って、聞いちゃダメ・・・かな?」

 

 

 キズのある体をご主人に見られたくないって気持ちは分かる。だけどそれなら、お金は掛かるかもしれないけど、ご主人に頼めば部品交換って形で背中の人工皮膚を取り替えられるんじゃって。

 私達は人形であって人間じゃない。見た目は人間そっくりでも、体の全てを形作ってるのは機械か人工物。

 わざわざそれを残す理由が何なのか、どうしても聞かずにはいられなかった。なんだか、とても重大な事情がある様な気がして。

 

 サーちゃんは目を閉じ俯きながら、自傷する様に小さな声で言う。

 

 

「・・・変えられるならとっくに変えてるわ。それが出来ないから、普段は傷跡が見えない様に擬態迷彩(ステルスカム)で隠してるのよ。私の背中を囲うように埋め込まれた、マイクロサイズのユニットがね」

 

「ま、マイクロユニット・・・?」

 

 

 サーちゃんの背中にそんな物があるなんて知らなかった。

 でも待って・・・戦術人形なのに、そんな非効率な物をなんでつけてるの? それに、皮膚の交換が出来ないって・・・?

 

 

「・・・サーちゃん」

 

「何?」

 

「その、変な事聞いちゃうけど・・・」

 

「・・・」

 

「サーちゃんって・・・”何者”なの?」

 

 

 空気が凍った。

 サーちゃんの冷たい視線が真っ直ぐ私を捉え、なんの感情も読み取れない凍てついた瞳が向けられて・・・。

 

 

「あ、あぁ、あの」

 

 

 得体の知れない恐怖。メンタルを支配した感情。

 しかし次の瞬間には、再び瞳を閉じて顔を逸らすサーちゃん。

 

 

「・・・お願い、今は放っておいて」

 

「サーちゃん・・・私っ、サーちゃんがもし何か悩んだりしてるなら力になりたいよ! だって、そんな辛そうな顔してるのに!」

 

「・・・・・・ごめんなさい。今は、一人にして欲しいの」

 

「っ! ・・・う、うん、分かった」

 

 

 拒絶。

 サーちゃんの心は、私を拒んだ。

 

 私じゃサーちゃんの沈んだ心を救えない・・・そのことを叩きつけられた様な気がして、胸の内にやり切れない悲しさと不甲斐なさが込み上げてくる。

 私じゃ、ダメなんだね・・・。

 

 

「・・・じゃ、じゃあっ、私先に寝るね! おやすみサーちゃん!」

 

「・・・おやすみなさい、ティナ」

 

 

 私はリビングにいるのが居た堪れなくなって、逃げるように部屋に帰って毛布を被った。

 真っ暗な中で目を瞑ってスリープモードに入ろうとしたけど・・・なんでかスリープに入ろうとする電脳とメンタルの動きに齟齬があって中々寝付けない。

 心の中に抱えたモヤモヤが眠気を飛ばして、休もうにも休ませてくれない、みたいな・・・。

 

 

(はぁ・・・()()()()、めんどくさい生き物だなぁ————)

 

 

 スリープに入る時くらい、すんなり寝かせてくれたって良いのに。

 思わず悪態を吐きたくなる。結局その後も、私は全然寝付くことが出来なかった。

 

 

 


 

 

 

「・・・今宵、ご多忙の中お集まり頂いたこと、心より感謝申し上げます」

 

 

 グリージョはそう言って、自身の眼前に座る者達を見渡した。

 そこにいるのはいずれも荒々しいオーラを纏う男達。身に着けたスーツからでも分かるほど隆々と鍛え上げられた肉体。中には顔などの目立つ所に大きなキズを持つ者もいる。

 一見カタギじゃない様に見えるが、彼らの社会的立場は一応はオモテに暮らす者に入る。

 

 

「・・・何故、我々複数のPMCのトップを招いたのか。理由をお聞かせ願おうか? Mr.グリージョ」

 

「もちろんです」

 

 

 彼らは皆、自社で管轄区域を有する程の力を持ったPMCのトップである。

 人間の歩兵、その中でも傭兵業を中心事業に据える『FLAME SCORPIONS Co.ltd(フレイム・スコーピオンズ社)』。主に新兵相手に武器の使い方などの教導を専門に手がける『Predarea Şoim CO.LTD(プレダーレァ・ショイム社)』。

 第一世代戦術人形を戦力に組み込み、専らクライアントの求めに従って敵を攻撃する『Наемник Крукодил(マユーニック・クロッカジル)』と、自社で四足歩行の犬や狼を象った自律戦術兵器を開発、戦場で運用し戦果を上げている『Uwolnione Wilki(ウヴォルニォーネ・ヴィルキ)』。

 いずれも東欧地域にルーツを持つPMCであり、同時にG&Kの競合他社でもある。しかし、彼らのいずれにも当てはまることが一つある。

 

 

「皆さん。突然ですが、G&Kって目障りだと思いませんか?」

 

「「「「・・・」」」」

 

 

 第三次大戦が終結後、新ソ連政府から行政管理を業務委託されたPMC。東欧地域にて政府直轄地を除いたエリアを管理しているのは十にも満たないPMC。その中でも勢力の大きい企業がG&Kと彼らの計5社、そのトップはクルーガー率いるG&Kだ。

 国家が自国の領土をまともに管理しきれない状況を踏まえ、現在に渡って推し進められたPMC委託による行政管理。一応は新ソ連政府と正式な取り決めを経た上でどのエリアをどこが管理するかを分けているのだが、しかしその振り分けはお世辞にも公平公正とは言えない結果になっている。

 というのは、社長のクルーガーは元ロシア内務省系の軍人出身という立場を生かし、新ソ連の軍人や政府要人に様々なパイプを持っている。そのコネを利用し、あからさまにならない範囲で自社に有利な条件を取り付けたのである。

 不公平? 不平等? そうした文句を言われれば、彼は鼻で笑ってこう答えるだろう。『世界の誰一人として真に公平・公正な社会に生きた事は無い』と。生きるために他者を蹴落とさねばならない様な時代でもある。故に、彼の行為は自社を生き残らせるにはある種当然の行為と言える。

 

 しかしそれは、割りを食う側からすればたまったものじゃない。

 比較的肥沃でまだ汚染の少ない土地は大半がG&Kの管轄地に加えられ、彼らは残りの決して多くない土地を分けられる事となる。それでは社の存続はもちろん、管轄地域に住む民間人の生活にも関わる極めて重大な懸念事項だ。

 管轄地の分譲の取り決めの際に4社の代表は揃って抗議をしたが、それが聞き入れられる事のないまま取り決めが交わされてしまう。それは彼らの内心に大きな蟠りを残している。それこそ、もし隙があれば引き摺り落としてやろうと本気で考えさせる位には。

 

 

 グリージョはその事実を、先日のカーター准将とのやり取りで聞いていた。

 敢えて元部下であるクルーガーに有利に取り決めが進む様働き、残りの大手4社の経営陣に禍根を植え付ける・・・それはカーターの考えているプランに従い、時が来ると共に大きな災禍となってG&Kを巻き込むのだと。

 グリージョの進めるプランにおいても現状カーターの進めるそれとはほぼ利害が一致するため、表向き軍とは関係ない自由な身分を利用して、G&Kを快く思わない4社の代表を招き入れたのである。

 

 

「・・・確かに。我々は奴の手腕に苦汁を嘗めさせられた立場だ。だが、それがなんだと言う?」

 

「そうだ。我々は政府に認められたPMC。思う所はあれど、おかしな事をするつもりはない」

 

「えぇ。もちろん分かっております。ですが今回のお話、上手くいけば・・・G&Kという会社の勢力を大きく削ぐ事が出来ます」

 

「なに?」

 

 

 フレイム・スコーピオンの社長は、グリージョを胡散臭そうに睨みつけた。

 だがその視線は、本職の兵士達を束ねる長としての貫禄に満ちた重圧そのもの。そんじょそこらの人間では簡単に萎縮してしまう程。しかしそれを受けてなお、グリージョは口元に人好きする笑みを浮かべ————

 そして、小さく舌で唇を舐めずった。




 PMCの名前の解説↓


FLAME SCORPIONS Co.ltd(フレイム・スコーピオンズ社)
 読んで字のごとく、炎のサソリ。

Predarea Şoim CO.LTD(プレダーレァ・ショイム社)
 ルーマニア語から。プレダーレァは教示、ショイムは鷹の意。

Наемник Крукодил(マユーニック・クロッカジル)
 英語に直すとマーセナリー・クロコダイル。金銭ずくな、報酬目当てといった意味と、あとワニ。

Uwolnione Wilki(ウヴォルニォーネ・ヴィルキ)
 ポーランド語から、解き放たれた狼たちの意。英語で言う解放された(liberated)ではなく、解き放った(unleashed)の方のニュアンス。

 ※あくまでGoogle翻訳と単語辞書を組み合わせて調べただけなので、文法等間違ってる可能性有。その際はご連絡いただけると幸いです。

 なんで動物なのかって?
 もちろん理由はありますとも。
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