裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件)   作:chaosraven

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 時系列的前話→『https://syosetu.org/novel/186365/85.html


 お待たせしております。
 コラボレーションは大型(当社比)なのでまだまだ続きますよ。


-81-"Two-up"/01 Sneaking

 

 

 

 地区入口の受付をパスした俺は、街中を進む事暫し、アインスのピックアップした目立ちにくいスポットに車を滑り込ませる様に停めた。煌びやかな明かりを灯した居住区から少し離れた場所・・・大火事の後も碌に復興の手が伸びず、スラムと化した旧市街地跡の一角だ。

 

 ハイブリッド車の特性・・・パワーの要らない場面ではエンジンを止めてモーターのみで駆動するという特性を利用し、地区に入ってからここまでとても静かな動きで入り込むことができた。

 市街地の監視カメラは? 立ち入り禁止区域にどうやってデカイ車で乗り付けたかって? その程度ワケも無い。

 これでもウチのギルドの名はこの辺の裏社会には轟いている。現地のフィクサーを雇って警備体制の情報を得るとか、カメラ自体をハックして映像を書き換えるかをしただけである。ちなみにハッキングはカルフェルを介してアインスに任せた。閑話休題。 

 

 焼け残ったある一軒の家屋、そこに車一台止められる元駐車スペースらしき空間があった。衛星写真からピックアップされたポイントである。一旦エンジンを切り、ドアを開けて出たちょうどそこへ、スーパースポーツタイプの真っ黒なバイクがやってきた。乗っていたのは黒一色のライディングスーツに身を包んだ二人の女性。その正体は、形式上俺の所有物ということになっている人形たちだ。

 

 

「よう、遠路遥々ご苦労さん」

 

「お互い様ですわ」

 

「とりあえずバイクは仕舞っちゃうね」

 

 

 二人はヘルメットを外してスーツを脱ぐと(ちゃんと下に普段の服を着てた)、手早くストレージに乗ってきたバイクと共に格納。続いてティナが俺の武器や戦闘服を具現化していく。P90の装填済みマガジン30個にサブアームのFive-seveNと専用マガジンも30個。さらにL96 AWM本体にラプアマグナム弾入りマガジンが10個、それと手榴弾(リンゴ)にスタンにチャフにクレイモアがゴロゴロと。さらに刃渡り80cm程の高周波ブレードまで。選り取りみどりだな。

 

 

「持ってきた物はだいたいこんな感じだよ!」

 

「十分だ。ひとまずそれ仕舞って乗ってくれ。後席で一瞬着替えさせてもらう」

 

 

 刹那、スケアクロウの視線が俺の顔から身体へと一瞬動く。そしてそれを目敏く見ていたティナ、ニマリと笑ってツッコんだ。

 

 

「サーちゃんむっつり」

 

「なぁっ」

 

 

 とりあえず二人を一旦前席に乗せ、俺はブラインドをフル展開した後席でパパッと戦闘服に着替える。

 

 ちなみに、今回はストレージ機能を持つハイエンド三人分のアクセサリーを持って来てもらってる。俺はウロボロスのをバッグに、スケアクロウは結いていた髪を一旦解き、両側頭部にゲーガーのを身に付け、ティナは持ち運んでるバッグにアーキテクトの弾頭みたいな髪留めを入れて持ち運ぶ形だ。

 なので現在のスケアクロウはカールの掛かったロングヘア。普段の髪型(ハイツインテール)にゲーガーの髪留めは合わないだろうから、妥当なスタイルチェンジってとこだろう。

 

 いつもとまた違う相棒の姿は眼福だが、時間の余裕はあまり無さそうなので褒めるのは仕事が終わってから。彼女も俺のそういう性格を知っているので特に意見を求めたりはしてこない。黙々と用意を整えている。

 そんな彼女達を他所に俺は愛用のバイザーを取り出すとストレージとリンクさせ、中身を取り出せるのを確認する。

 

 実はここにくる前、アインスから送られた持込品リストの中に『アンタのバイザー(脳波スキャン対応改造済)』と書かれていた。

 ギルドの部屋に置いといたモノを勝手に持ち出して改造した事に、思うことはちょこっとだけある。が、本格的なドンパチ用の装備にストレージをリンクさせられる事は非常に大きなメリットとなるため、文句は胸の内に仕舞っておいてやろう。

 オークションに潜入する時みたいな場合ならスマートグラスでも良いが、本気で命のやり取りをする場面では眼鏡だと直ぐに落っことしそうで、その点ではバイザーの方が何かと使い勝手が良い。

 

 周囲に人影や気配は無し、さて出ようかとドアノブに手を掛けたその時、車載OS(カルフェル)を経由してアインスから音声通信が届いた。

 

 

『私よ。現地入り出来たみたいね。感度はどう? 聞こえてる?』

 

「問題無い。クリアに聞こえてる」

 

 

 腐っても高級サルーンである。当然、中に使われてるスピーカーも最上級品。おかげでこんなどうでもいい通信すら、臨場感あるダイナミックサウンドで表現されてる。

 

 

『そ。じゃあ改めて依頼内容について説明するわ。カルフェル、データを送ったからレイ達に見せてやって』

 

『畏まりました。Ms.アインス』

 

 

 言うや否や、前席はセンターコンソールに据え付けられたマルチインフォメーションディスプレイに、後ろでは前席背後に設けられた専用ディスプレイに、それぞれギルドからのデータが展開されて表示される。

 入っていたデータはG&Kが管理してるR20地区全体の地図と、居住区エリアの詳細な地図、それとクルーガーが寄越した依頼メールに例の武器商から押収した武器のリスト、そしてこの地区を統括する『指揮官』の個人情報。

 

 俺は早速、押収した武器リストを開く。

 

 

「・・・うーわ、本気でこんなモン運んでやがったのか?」

 

『信じられないでしょ? でも事実よ。あれだけの武器をヘンブリーがR20(そこ)に持ち込もうとしてたのはね。

 ただ、ヘンブリーの自白だけじゃグリフィンが動くには全然情報が足りないの。交戦規定やら条約やら、大手といってもPMC(企業)の枠からは逃れられない。力を行使するには相応の理由が要る。

 さっき話した特殊部隊もそっちに向かってはいるんだけど、アンタ達にも独自に潜入調査を試みてほしいんだってさ』

 

 

 独自に潜入調査ねぇ・・・確かに、自白した証言の内容、実際に押収できた武器の質と量を鑑みれば、どう考えても武装蜂起の予兆だと誰だって捉えられる。が、密輸に失敗した商人一人だけの証言で大規模な武力を動かすには証拠が足りない。

 もし空振りに終わった時の掛かったコストとか、色々と考えるべきポイントがあるからな。

 

 それに、日和見主義なヤツは密輸を阻止できた事で武装蜂起も未然に防げたはずだとか、まるで根拠の無い確信を持ち始めそうでもある。それが下っ端ならまだしも、会社の上層部にそういう頭の奴がいるとかなり足を引っ張るからな。・・・まぁつまり、そういうことなんだろうが。

 多分、特殊部隊だけじゃ”事”が起こる前の情報の裏付けが取りきれないと判断したのだろう。加えて、送ってきた情報を見るにクルーガーは別の不安も抱えてるとも取れる。

 

 

「向こうの要求は分かった。でだ、()()()()この地区の指揮官の情報まで添付してきた理由については俺の思ってる通りと判断して良いワケ?」

 

「この男・・・グリフィンのスポンサーの息子とは。コネ入社というやつですの?」

 

「写真見てみたけど、パッと見金銭感覚バグってそうな()な目してる〜」

 

「キミ達容赦無えな」

 

 

 後ろからバックミラー越しに二人の顔を覗いてみたが、どちらも露骨に嫌そうな表情を浮かべている。

 なんというか、生理的に受け付けない異性と出会した時の如何ともし難い状況に辟易した様な、そんな顔である。

 とりあえず俺も写真付きの指揮官の情報を開いてみる。

 

 メガネを掛けた優しげな痩せ型体型の男。名は『ハロルド・フォスター』。

 自分に自信があるのか、微笑みを浮かべた写真にわざわざ歯をチラ見せしてるあたり、ナルシズムも少々といったところ・・・うん?

 添付の画像が無駄に高解像度(クルーガーが送ったのが内部資料用のオリジナルの画像データと思われる)なのを良いことに、ある一点が気になった俺は400倍ほど画像を拡大してみる。

 

 

「コイツ・・・白人の割に歯が黄色いな」

 

『気付いた? ちなみに彼、グリフィン諜報部からの報告によると日々の愛用品は()()()葉巻だそうよ』

 

あ? ケッ、俺でもあんま吸えない葉巻を毎日燃してやがんのか。

 ・・・この件解決したらドサクサに紛れてコイツの葉巻パクっt「レイ?」分かった分かった冗談だからビットしまってくれ」

 

 

 憤怒の表情で振り向きながらビットを展開したスケアクロウをなんとか宥めつつ、咳払いして場の空気を整え直す。・・・良いなぁ葉巻、羨ましいぞコンチクショウ。

 

 

「で、要するにコイツは自分が贅沢するために地区運営を頑張ってるダメ指揮官ってわけだ」

 

『そう見ておいて良いと思うわ。この手のヤツは自分の縄張りをチョコマカされんの嫌がる人種だし、何かしらコネクションを生かして早々に特殊部隊を引き上げさせる可能性がある、恐らくクルーガーはそうなった時のスペアとしてレイを指名したんじゃない?』

 

「いくら特殊部隊と言えど、社長の独断だけで留まらせるのは難しいか・・・」

 

 

 下手すりゃ指揮官の実家(スポンサー)から口出されて下げさせられる、なんて事もあり得るワケだ。

 

 

『ま、詳しい指揮系統がどうなってんのかとかは知らないからなんとも言えないけどね。とにかくキーワードは『教会』よ。そろそろ夜になるわ、闇に紛れて調べなさい。

 それと一応言っておくけど、特殊部隊の指揮官とは鉢合わせない様に気を付けることね』

 

「・・・は? 特殊部隊の指揮官? 現場に来んのは人形だけじゃないのか?」

 

 

 部隊と一緒に来てんのは分かるが、普通は基地で指揮をするんじゃねえのかい。

 その疑問は、此方にとって歓迎したくない経歴紹介で解けた。

 

 

『元新ソ連軍の兵士だそうよ。後方で指揮するよりも現場で一緒に戦う方が得意なんですって。

 察してるだろうけど、戦術人形の普及でより高度になった”今の戦場”に適応してる人種よ。彼からすればアンタは勝手に地区を彷徨いてる不審者、加えて隣に浮いてる鉄血人形(スケアクロウ)は完全な敵対対象。注意して』

 

 

 そりゃまぁ、出会ったら面倒くさい事になるわな。しかも軍人上がりっつうことは、スケアクロウの姿を視認した瞬間問答無用でぶっ放してくる可能性も。

 お互い余計な面倒事は御免だ、バレない様に立ち回っていくかね・・・。

 

 

「「「・・・・・・はぁ~~あ、りょーかい(ですの)(です)」」」

 

『息ぴったりねアンタ達』

 

 

 良い事だ。

 

 

 

 -----

 

 

 

 さて、煌びやかな居住区とはまるで異なるボロボロの立入禁止区域、またの呼び方をスラム街。

 現時点で俺たちに任されてるのは、このスラム街のどこかにある『教会』を捜索し、ヘンブリーが武器を渡そうとしていた相手を探し出す事の二点。

 が、こんな場所、ここを統治してる男の素性から察するに、恐らく何回かドンパチすることも想定し得る。特に、武器の密輸相手次第では隠密行動とか言ってられなくなるだろうしな。下手すりゃろくなサポートも無く、だ。

 

 指名されてしかも受けちまった以上はやらないわけにはいかない。だが、それはそれとして連チャンで仕事が入った俺の気分はあまりよろしくない。もっと良いニュースが無いかねぇ・・・。

 

 

「・・・っと、行く前にコイツを誤魔化しとかないと」

 

「「???」」

 

 

 二人揃って首を傾げる。

 俺はその様を横目にストレージからパナメルカーラのリモコンキーを取り出す。

 キーは純正だと施錠・開錠・トランク開錠と3つのボタンがあるのだが、このキーには4つ目の『camo』と刻印されたボタンが存在する。

 俺は『camo』のボタンを押す。すると、

 

 

「うわぁーお」

 

「・・・ギルドが持ってる乗り物はなんでもありですわね」

 

 

 ロックが掛かり、ミラーが自動で畳まれるのはいつものこと。

 さらにそこから外装や窓に至るまで、その全てが焼けて朽ち果てたボロボロの自動車を模した姿に瞬く間に変わる。それも見た目だけでなく、質感や温度まで。

 流石に匂いや内装まで誤魔化すことは出来ないが、これでパッと見家屋と運命を共にした哀れな自動車にしか見えないだろう。周囲の環境に合わせた、完璧なカモフラージュである。

 ・・・一瞬、第三工廠で見事な擬態を見せたタコ女が脳裏を過るが、今は関係無いことを考えるな。仕事に集中しろ。

 

 見た目の変化が終わったのを確認し、キーをストレージに戻す。

 

 

「よし。スケアクロウは迷彩マントを羽織って空から監視、ティナは俺とツーマンセルで地上から捜索だ。何かあればすぐに回線に音声を飛ばしてくれ」

 

「「了解」」

 

 

 P90を構え、セーフティーを解除。バイザーの電源を入れ、自らの五感を鋭く研ぎ澄ます。

 

 

「行くぞ」

 

「ええ」

 

「いぇっさ」

 

 

 仕事の始まりだ。

 

 

 


 

 

 

 教会、と一言で言っても、宗教自体の違いや宗派や地域の実情など、様々な理由で建物の形は千差万別だ。

 おまけに基礎や骨組みを残して焼け落ちた建物ばかりという中で、果たして教会だったと思しきそれを見つけるのにどのくらい時間が掛かるか。

 

 天候:晴れ、時間:日没後15分経過、備考:周囲にまともな人工の光源は無し。唯一頼れるのは月明かり。

 

 人形なら暗視モードを使ってなんとかなるかもしれないが、人間の目ではどうしても要所の特徴を見落としがちになる。バイザーやスマートグラスといった装備品は欠かせない。

 それを使ってたとしても、このボロボロの廃墟ばかりの地形を動き回るのは少々厄介だ。まともに復興案が議論されてた頃の名残で、元々道路だった部分だけは最低限瓦礫がどかされてるのは不幸中の幸いか。一応立入禁止区域のため、頻度の多少はともかく巡回警備はやってるのだろう。とりあえず走り回れる位の幅とコンディションはある。が、それはそれ。

 はぁ、反重力で浮けるスケアクロウが羨ましい。っと、その彼女が回線にコールしてきた。

 

 

『聞こえますの?』

 

『聞こえてるよ。ご主人も聞こえてるってグッジョブしてる♪』

 

『結構。今貴方達のいるところから北西方向に4km辺りに、道沿いのレンガの壁面に十字架らしき物が掛けられた廃墟を発見しましたわ』

 

 

 おっ? 早速当たりを引き当てたか?

 

 

「OK。遠目から双眼鏡とか使って調査してくれ。こんな場所だ、中にトチ狂った奴が潜伏してる可能性もある、くれぐれも俺たちがそっちに行くまでは近付きすぎるな」

 

『了解』

 

 

 ここから北西方向に4kmか。エリアで言うと地区の一番外側にほど近い外周部にある辺りだな。

 歩いて行くには少々時間が掛かる距離だが、せっかく見つけた手掛かりは調べておきたいところだ。

 

 

「ティナ、少し急ぐぞ」

 

「りょおかい♪」

 

 

 ハンドサインで音を出すなと指示した上で、俺たちは北西方向に走る。

 

 

 

 20分後、スケアクロウの現在位置座標の近くまで来ると、音も無くゆったりした所作で彼女が降りてくる。

 その表情を見るに、間違いなくここは元教会だと確信してるらしい。

 

 

「どうだ」

 

「今の所付近に生命反応は無し。しかし、定期的に人がここへ出入りしている形跡が見られますわ」

 

「ん? 何があった?」

 

「見た方が早いですわ」

 

 

 彼女につられて目を向ける。

 基礎と外壁のレンガを残して吹き抜けになった建物。正面の大きな扉が嵌っていたのであろうアーチ型の穴から遠目に覗き込むと、床に何枚かの大きな布が規則正しく敷かれてるのに気付く。燃え残った残骸ではない、火が収まった後に敷かれた絨毯のようである。

 そして、綺麗に並べられた絨毯の周囲に何本も立つ燭台。どうせ誰も来ないと高を括ってるのか、ミサらしき行事を行った形跡がそのままになっていた。

 

 

「なぁるほど・・・で、教徒諸君はこの場にまだ来てねえのな」

 

「ええ。探し回るなら今ですわね」

 

「同意見だ。見た感じまともに隠れられる環境じゃねえ、チャッチャと終わらせよう」

 

 

 周囲の確認をしつつ、俺達は教会の敷地内へ足を踏み入れる。

 中央には横2列縦4列できれいに並べられた絨毯、壁で囲われた外周の隅には燃え残った木材が除けられている。

 絨毯は幾何学模様が描かれた独特のデザインで、教会の面影を残すこの場においては三大宗教の何れとも異なる異質さを感じさせる妙な雰囲気があった。

 

 一段高くなってる床、おそらく教壇が置かれてたと思しき辺りの壁を見上げると、火事で煤けた十字架と、それに磔にされた人型の死体が目に入る。

 ・・・生贄か、悪趣味な。

 

 

「・・・分かっちゃいたがこの教会、まともな宗教に使われてねえな」

 

「・・・ですわね。行政が行き届いてない地域で信仰されている宗教など、大半は現地で生まれた新興宗教の類でしょう」

 

「だよねー。ところでご主人サーちゃん、ヘンブリーが武器を渡そうとしてた相手って、やっぱりここに来る教徒さんなのかな?」

 

 

 そう、気になってるのはそこだ。

 

 

「どうだかな・・・そいつらが仮に武器手に入れたとして、何のために立ち上がろうとしてんのかがイマイチ見えてこねえ。単にスラムまで物資や復興の手を回せと訴えるのに武器持って立ち上がる、なんてことは無いだろうからもっと別の目的があると思うが」

 

「スラムができて何年も経ってる訳ですし、とっくに爆発して内乱が起こっていてもおかしくないですものね」

 

 

 居住区以外のこの大半を占めるスラムが出来て既に年単位の時間が経っている。結局いつ何が崩れるか分からなくて危ねえから立入禁止にしてるとは言うが、ここのボスの本音はスラムで生きてる人間を切り捨てたいという事に尽きるんだろう。

 人道的にどうなのかとか色々言われるところはあるかもしれんが、企業が持つリソースも無限じゃない、と言えば大半は黙らせられる。無論、スラムの住人からすれば鬼の所業だが。

 

 おかげでまともな食料が手に入りにくいクソな環境が出来てる訳だが、スケアクロウの言う通りで蜂起するならとっくにしてなきゃ可笑しい。

 なにせこの地区では、現時点でグリフィンに対する暴動というのは一切起こっていないのだ。

 故に、ヘンブリーの行動、誰が武器を受け取るのか、この一連の下準備とも取れる動きが非常に際立っている。

 

 

「・・・案外、教祖様的な人が煽ってたりして?」

 

「さあてな、どの道碌でもねえ展開になるって事だけは分かる」

 

「うへぇ」

 

 

 やだなーめんどっちそうだなー、なんてぼやきながら腰から上だけ回して警戒を続けるティナ。喋りながら手と体を動かせという教えはきちんと根付いてるようで何より。

 ・・・しっかし、このお祈り場以外には特に目立ったモンは見当たらねえな。ん、遺体はって? 磔にされて無惨な死に方をした者には申し訳無いが、人間心が病むとどんな真似でもしてしまうもんだ。こうなったのも運が悪かったと言う他無い。

 

 だが一応、どんな人間が生贄になったのかは見ておくか。

 バイザーを望遠モードにし、全身が弾け飛んだ様な死に方の遺体を観察してみる。

 

 

「あ? あの遺体・・・人形だな」

 

「んぇ?」

 

 

 弾け飛んだ穴から覗き見れる骨格が人の骨じゃない。金属のフレームと、それに沿う様に這わせられた、絶縁ビニールに包まれた細いコード。もしかしたらサイボーグかもしれないが、こんなトコに人形作るより金掛かるサイボーグがいる理由は今の所見当たらない。

 おそらくコイツもG&Kの人形で、巡回中にここを拠点にしてる連中に取っ捕まって殺られたのだろう。理由は知らんがな。

 

 

「いや、にしても・・・なんだコレは」

 

 

 遺体の状況と死に方に違和感を感じた。

 磔にした状態で、どうやってあの弾け方をさせたんだという点に。

 

 仮に十字架に磔にして殺すとしよう。

 教壇上の十字架が掛かってる高さは約4m。アレに遺体を括り付けるのはともかく、顔も何も分からん、辛うじて人型の死体なのが分かるというレベルで弾けてる遺体の状態がキモだ。

 あそこまで表皮の繊維をぶち抜いて中身が飛び出すには、それこそ血管を通れる程のマイクロサイズ爆弾を大量投与した後で一斉起爆するか、外からよほどの圧力が掛かってでもないとああはならない。

 だがマイクロ爆弾なんて代物をここの住人が手に入れられる訳はない。

 なら残る方法、まるで、巨大な何かで体を包んで絞め殺す、みたいな・・・。

 

 

「・・・腑に落ちねえな」

 

「不可解な点があるようですわね?」

 

 

 漏れた呟きをスケアクロウが拾う。

 彼女の顔にも、この場の不自然さをどう捉えたものかという困惑が浮かんでいる。

 

 

「あぁ・・・遺体の状態とこの状況が噛み合わなくてな」

 

「確かに。見事なまでの弾けっぷりですわ。こうまで体を弾け飛ばす手段を()()()()持ってるのかも大いに疑問ですし。それに・・・」

 

「弾けさせてからもっかい磔にする理由も分からん。トチ狂った新興宗教の考えといえばそれまでだが」

 

 

 せめて教徒達が何か書き置きでも残してくれてりゃ多少の手掛かりにはなっただろうが、残念ながらメモ書き一つもここには残されていなかった。

 はぁ、調査っつっても取引に関係するような手がかりは現時点では得られない、か。これ以上知りたきゃ、教徒達とコンタクトを取る必要がありそうだ。

 

 

「ねぇねぇご主人? とりあえず手掛かりらしきモノはあんま見つかんないっぽいし、此処使ってる人が来るまで隠れて待ってみるのも良いと思うんだよね♪」

 

「教徒達を待って動くのは同意見だが、この吹き抜けだらけの環境でどこに隠れるって?」

 

 

 俺は一旦教会から出て周囲を見渡す。

 例外は壁面がレンガで出来てる教会位で、この周りのどの廃墟も、ほっそい基礎や鉄筋が残ってる程度。まともに身を隠せる遮蔽物は殆ど無い。強いて言えば、積もった瓦礫の下に隠れるかだ。

 

 汚れんのはどうって事ないが、上手く見つからない様潜るのも出てくのも地味に面倒そうだ。

 だがティナの顔には自信たっぷりな笑みが浮かんでおり、事実むっふっふーと溢しながらクツクツ肩を震わせ始めた。

 

 

「そりゃあご主人、サーちゃんと密着ステルスプレイってやつですたい」

 

「「はぁん???」」

 

「二人とも息ぴったりだね」

 

 

 密着? ステルス?? プレイ???

 言葉の意味というか指し示す行動が飲み込めず、俺達は揃って首を傾げた。と、その時、南方向からこちらへ向かって走ってくるエンジン音が俺の耳に流れてきた。

 

 

「考えてる時間は無いな。観測用にビットだけ出してとっとと隠れよう」

 

 

 言うが早いか早速ビットが空に上がったのを確認しつつ、道を挟んで教会の対面にある敷地の瓦礫を持ち上げ、ティナを先に潜り込ませる。っつか、流石に重てえなって、あぁありがとうスケアクロウさんや。

 

 

「礼はいらなくてよ。さあ早く」

 

「頭ん中読んでることにはもうツッコまねえぞ」

 

 

 フヨフヨパワーで浮かしてくれた瓦礫の下に俺たちも潜り込み、やさしいタッチで丁寧に元の位置へ瓦礫を下ろす。

 一応小さく開いた隙間から辛うじて教会の様子は見えるが、メインはやはりビットからの俯瞰映像で様子を探るべきだな。

 

 バイザーの右半分を実際の視野に、左半分をビットからの映像を写す。インカムにもビットが拾った音を飛ばしてもらう事で、簡易的な諜報の用意が整った。

 いやはや、電子戦モデルと言っておきながらやれることの幅が広くて本当助かりますわ。

 

 

 それから間も無くエンジン音はどんどん大きくなっていき、やがて教会の前で一台のジープが止まった。

 黒に近い程の暗いトーンの森林迷彩を施されたジープ。その側面にはG&Kの社章が描かれている。

 

 どうやらクルーガーお抱えの特殊部隊のお出ましらしい。

 

 ドアを開け、銃を構えながら続々と地に足を付けていく兵士たち。と言っても、運転席に座る一人を除いて個性溢れる様々な服装の美女ばかりで、誰が指揮を執る人物なのかはすぐに分かった。

 

 ふむ、サブマシンガン二人、アサルトライフル二人、S10所属と思しきライフル(わーちゃん)一人、機関銃が一人か。

 ジープ一台で来たって事は恐らく先遣隊役か。火力バランスはまぁまぁ取れてる方ではあるが、アサルトの人形が二人・・・この布陣だと、指揮官の男もアサルトを持つのがちょうど良く安定して対応出来そうだ。

 

 そこへ、唸るように響いていたアイドリング音が止まってドアが開く。唯一本物の軍人並みに武装した、この場に最も相応しい身なりの男が車から降り立つと、先に降りて警戒していた人形達が一斉に男の方へ向く。

 

 

準備はいいか?(We all set?) 仕事にかかろう(Let's go to work.)

 

了解(Roger that.)

 

 

 さぁ、お手並み拝見といこうか。




 エクスキューショナーのいるエリアで捕獲してたらエクスさんが出てきたので、試しに確率25%の通常捕獲でやったら捕まえられちゃった。
 星3モデルをピーク解析までやるにはかなりのお金が要りそうなので、とりあえず通常モデルの育成を優先してって感じですかね。

 
 さて次回、接触(コンタクト)
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