裏稼業とカカシさん(旧題:裏稼業の何でも屋が出向く先には必ずカカシが待っている件) 作:chaosraven
大型コラボ本編の第三話となりまする。
今回は『https://syosetu.org/novel/186365/86.html』のレイサイドの展開です。コラボ先のお話と合わせてお読み頂きたく(・–・)ゞ
なお、本編1万字超えですのでお時間あるタイミングにどうぞ。
「
『
瓦礫の下に隠れて程なく止まった一台のジープ。
そこから降り立ったG&Kの戦術人形達と指揮官と思しき男は、そう言って教会の周囲を油断なく見渡した。
『皆エリート戦術人形ばっかだね。一人だけ見覚えない姿に
ティナから音声信号が来ると同時に、ビットからの視界にそれぞれの戦術人形のモデル名が表示される。
クリスヴェクターを持つ銀髪ショートはそのまま『Vector』、白のワンピースっぽい(にしては少し生地が薄いようにも見える・・・もしかしてあれインナーか?)服に黒の革ジャンという一見ストリッパーにも見えるのは『FAL』で、ティナみたいな団子ヘアのは『Am RFB』と。
黒髪ロングのセーラー服を着てるのは『一〇〇式』で、わーちゃんは分かるから置いといて指揮官らしき男のそばに控えるマシンガン人形は・・・『LWMMG...
詳しい事は知らんが、このLWMMGはティナの記憶にあるカタログの姿とは似て非なる格好らしい。まぁどう見てもマシンガンにしか見えないデカい得物ぶら下げてんだし、部隊内での役割には変わりないだろう。ひとまずLWMMG(仮)とでもしておこう。閑話休題。
ところで指揮官の男。降りた直後から今の今までキョロキョロしきりに視線を動かしているが、その様子はどう見ても不安からくる無意識の行動、すなわち新兵が挙動不審になって起こすソレとは異なる。
一通り見渡したあと、一度掛けてるサングラスに触れてから再度隈なく辺りの様子をチェックしているあたり、多分誰かが覗き見てるんじゃないかという見当を付けてるらしい。
彼の行動から察するにあのサングラスはスマートグラス・・・それも男の立場を鑑みるとかなり優秀なサポート機能を持っている。
例えばX線を照射して壁を透視したり、音をキャッチして発生源を特定して表示したり。その位の機能は最低限あると見た。グラスに手をやってから同じとこに目を向けた、つまり機能ONにしたグラス越しに別の視点で見てるのが何よりの証拠だ。
・・・少しでも気ぃ抜くともしかしたらバレっかも。下手に声出すとそれもキャッチされる可能性がある。部隊が教会の中に入るまでは黙っとくのが吉だな。
俺たちは息を潜め、気配を殺し、ただひたすらこの場の空間に己を同化させてゆく。
立ち居振る舞い、纏うオーラ、なるほど。クルーガーが切り札の一枚に数える訳である。真正面から戦うのは避けたい、避けるべき相手だ。
そんなことを考えながら気を張っていたが、幸い男は一通り自分の目で見ても何も見つけられなかった様で、武器を構え直して人形達に指示を下した。
ひとまずは本来の仕事を始めるみたいだ。
「ワルサー、一〇〇式。二人は教会周辺をクリアリング。FALとRFBは車で待機、見張っててくれ。ライト、Vectorは俺と来い」
「ええ~待機なのぉ?」
皆が了解と声を上げる中、RFBはあからさまに頬を膨らませて口を尖らせた。
不満気な彼女を、横に立つFALが肩に手を置きながら諫める。待つのも仕事の内、文句は言うなと顔で言っていた。
RFBは「ぶぅ〜」と言いつつも特に何かするわけでなく、二人の様子を尻目に一〇〇式と”この部隊のわーちゃん”はスタスタとクリアリングに向かって行った。
『ふむ・・・あの”わーちゃん”は
知らんがな。
少なくとも特殊部隊のメンバーになってんだし、相応の実力はあるだろう。
今は喋るどころか下手に動けもしないから、何の返答も出来ないが。
『あの人の一〇〇式ちゃんすっごいね。サブマシンガンに銃剣着けてんのにさらにオノまで持ってるよ』
『普通は持たないんですの?』
『うん。よっぽど近接戦でウラーってやるのが好きなのかもね♪』
『・・・バトルジャンキーか何かですの?』
『さぁ?』
流石I.O.P.製戦術人形のティナ。戦術人形についての補足情報ありがとう。
確かに、言われてみりゃなんでオノなんか持ち歩いてんだ。アレ位のブツを人形のパワーでぶん回せば、鉄血のノーマルモデルくらいは頭カチ割れそうだが。
・・・あのオノ片手に鉄血の返り血塗れになった
指示したそれぞれが動いたのを確認した男・・・指揮官は、教会に入る前にバックパックから何かを一つ取り出してピポパと打ちこん?
『アレ爆弾だねご主人』
オイオイオイまさかあの野郎、こっちに投げ込みやしねえだろうな?
『浮かせる用意は整ってましてよ』
血の気が引いた顔でどうするのかを見ている俺たち。こっちに投げ込まれた途端、瓦礫を浮かせて緊急脱出するつもりで様子を伺う。
だが指揮官はこちらの心配を他所に、近くで完全に朽ち果てた燃え残りの車に向けて爆弾を投げた。
二回三回とバウンドしたそれは、車の下へ滑っていって止まった。
少しだけ、周りに音が漏れない程度に息を吐く。
・・・わざわざあそこに一個だけ爆弾を放り込んだって事は、アレは
G&Kに捕まった
指揮官はこの教会を拠点にしてる教徒達に既に別ルートで武器が渡っている、そういう前提で事を進めてる様だ。つくづく油断も隙も無く動く。流石に現場の人間だな。
益々顔を合わせたくない思いが強まってる俺の気持ちなぞ露知らず、指揮官は銃を構え直して残った人形・・・LWMMG?とVectorに目を向け、立てた親指を教会へ向けて右手を振った。
二人も警戒態勢を取りつつ、指揮官を先頭にVector、LWMMGの順に教会へ入っていく。
入って早々、三人はただの教会とは言い切れない異質さを感じ取ったらしい。
まず目を向けたのは幾何学模様が描かれた絨毯、続いて燭台、そして十字架に磔になった人形のスクラップ。
相入れない要素が混在するあの場にて、三人は強い違和感を感じながら調査を始める。
床や絨毯、燭台に溜まった蝋の具合を見れば、直ぐにここが最近も使われてる場所だと気付くだろう。それも10人単位でな。
『皆で仲良く天体観測、って場所では無いみたい』
『勿体無いね。肩の凝らないシャレた空間なのに』
人形らの軽口がインカム越しに聞こえてくる。
どちらも顔こそ至って普通の表情に見えるが、その声色は皮肉る気持ちが篭ったモノ。
指揮官もそんな二人の言葉に小さく溜め息を吐く様な仕草を見せた。
『見たところ何かしらの宗教かな。お祈りの場として使ってたのかしら』
一応は綺麗に並べられた絨毯を見やり、LWMMGが言う。
『教会だからな。教徒でもいるんだろう』
指揮官は首を傾げつつそう返した。カルト教徒のやる事なんか理解しようと思って出来るもんじゃない。その反応は当然のものと言える。宗教の分野に専門知識があっても無くてもな。
『・・・さて』
そう言って指揮官は十字架を・・・正確にはそれに磔になった人形を見上げた。
全身を握りつぶされた様な、惨い
よーく観察すれば、人間がああ潰されたらここまで原型を留められない事に気付くだろう。
『・・・ん?』
案の定違和感を感じ取った。
グラスに手をやってからもう一度義体に目を向ける指揮官。正体を理解した時、益々訳を理解出来ないと眉を顰めた。
しばし顎に手を当て考え込む素振りを見せる。だが、彼もこの場でこれ以上の情報を得る事は出来ないだろう。
あるいは磔になった
が、それは一先ず完全に危険が無いことをチェックして、あるいは排除してからの事だ。
指揮官はそう判断した様で、一旦十字架から視線を外して空を見上げる。
そして、俺たちと
明らかにビットに視線を射抜く様に見据えながら、彼はグラスに手をやりその目を鋭く細める。
「・・・バレたな」
『バレちゃったねご主人』
『バレましたわね』
「けど、こっちが準備する位の時間はありそうだ」
小声で呟く。
ビットの捉える風景は何も教会だけではない。
空から広範囲を見ていた俺たちに、彼の下に彼が危惧していた存在が近付いているのを映していたのだ。
乗ってきたジープに群がる、トンガリ頭の目出し帽を被った白装束の集団。まるで旧アメリカの『KKK』を模した様な見た目は異様さを醸し出している。しかも、全員アサルトライフル所持で。
連中はジープで待機していた二人の人形に銃を突き付け、持っていた武器を取り上げてからぞろぞろと教会へ向かう。
程なく人形から事態を伝えるため、口を使わず直接無線でコールしたのだろう。指揮官は意識をヘッドセットへと向け口を開いた。
『FAL、どうした』
『・・・ブリッツ』
FALに詳細を聞こうとしたところ、マシンガンの人形が直に声を掛ける。
何事かと振り返れば、珍妙な格好をした武装集団がぞろぞろと入ってきており、数瞬経って状況を理解した彼はうんざりした様子で深い溜め息を吐いた。
集団はドタドタと、まぁ瓦礫の下にいる此方にも届く様なデカイ足音を鳴らしながら彼らを包囲していく。それだけならまだしも、包囲の最中に地面に蹴っ躓いちまうのも何人か。フォーメーションが整った段階で直ぐに銃を構えるものの、体勢をみる限り余計なところに余計な力が入ってるのが丸分かり。
どう見ても、どう好意的に捉えても、この集団はただ武器を持ってるだけの素人の集まり。一対一なら天地がひっくり返っても彼らが負ける事は無い。
が、この状況下では下手に動くと蜂の巣になってしまう。上手い事隙さえ作れれば、後は圧倒的な経験と技量の差で無理やり押し流せるだろうが。
『だから待機はイヤだったんだよぉ』
後頭部で手を組み、背中に銃が突き付けられているRFBが唇を尖らせ言った。
さーて、現状を整理しようか。
教会の中にいるのは指揮官とVector、LWMMG、それと武器を没収された二人のアサルトライフル人形。
たかが武器構えて敵を見据えるだけでもド緊張してる連中だ。恐らく先にクリアリングに出た残る二人の人形には気付いてないだろう。
今のところは特殊部隊側が不利ではある。が、素人相手なら正直いくらでも隙は作れる。例えば、さっき放り込んだ爆弾でも使ってな。
浮足立った弱兵を始末するなんて、文字通り赤子の手をひねるくらい簡単なことだ。
場を俯瞰して見た場合のトータルの状勢など全く見えていないんだろう。教徒連中、その代表格らしき人物が、面子の中で唯一堂々とした一歩で前に出る。
『貴様ら、グリフィンだな? ここは我らが神へ祈りを捧げる場、神聖な場所だ。貴様らが気安く足を踏み入れていい場所ではない。ただちに出ていけ』
『さもなくば殺すか?随分と暴力的な宗教団体様だな』
脅迫、または警告とも取れる言葉など意に介する価値も無いとばかりに、指揮官は吐き捨てた。
『黙れ! 利益を独占し、富める者をどんどん富ませ、貧しき者を貧しいままにさせる偽善者どもめ! 我らが神の使徒様の命に基づき、貴様らをここで粛清してくれる!』
出ていってほしいんじゃねえのかよ。
結局ぶっ殺す気満々じゃないか。
にしても”神の使徒”様たぁ、キナ臭いワードが出てきてしまった。
無論、正常な思考を失った連中の言うことといえばそれまでだが、この口ぶりではまるで実際に使徒様とやらに出会った様にも取れる。そこがただのカルト教徒の言う事にしてはキナ臭さを増してる。
『———、———————————』
何か呟いた。
その瞬間、指揮官の周りの人形全員から力が抜け・・・いや、違う。殺しの態勢に入った。
連中には彼の呟きが聞こえてない様で、恐らくインカムが拾った小さな声が戦闘命令に類するモノだったのだろう。流石に上からじゃ正確な唇の動きは分からんが、いよいよお手並が見れるらしい。
『わかった。降参だ』
ハッキリと聞こえるよう言葉を発して、しかし刺激をしないよう徐に指揮官は膝を地につけしゃがみ、左手で持ってる銃をそっと置いた。
その間にも空いた右手は肩よりも高い位置に上げておき、あたかも抵抗の意思は無いように振る舞う。
ボスの動きに倣い、LWMMGとVectorもそっと銃口を下げた。
『さっきはキツイ言い方をしてすまなかった。穏便に行こうじゃないか』
(——、————。—————、——、————)
連中にはハッキリとした声量で語りかける一方で、よーくよく覗き込むと小声でプツプツ呟く様に口を動かしている。
・・・月明かり以外にまともな光源の無いシチュエーション。目出し帽で視界が制限される、その上大半が緊張状態で冷静な思考が出来るとは言い難い連中の心理状況。
なるほど。彼はこの状況を上手く使って人形に指示を下してるらしい。
人形はデータリンクを介して様々なデバイスにデータを飛ばせる。俺自身、バイザー越しの視界に直にAR方式で情報を表示して、サポートを受けながら仕事をしてきたもんだ。鉄血のスケアクロウに出来るんだから、I.O.P.の人形に出来ない訳は無い。
今誰に照準を合わせてるのか、誰はやってよくて誰は残したいのか、掛けてるグラスを通して指揮官へ問いを飛ばせる。彼はそれを見ながら小声でどれを狙うか狙わないかを伝えれば良い。はぁ、便利だねぇ。おんなじ様な事現在進行形でこっちもやってるんだが。
『聞きたい事があるんだが、いいかな。実は、とある密売人がここで商品の取引をするという情報を掴んだんだ。何か心当たりがあれば教えてほしい』
(———————————。———、———)
両手を肩の位置まで上げながら立ち上がり、指揮官は自分らを取り囲む白装束たちを見渡す。たったそれだけの動作ですら、白布越しにも分かるほど体が強張った。正真正銘教徒たちは武器を持った事すらも無い奴がほとんどの様だ。
なおのこと、彼らにとって都合が良い展開。
『知るか。その"武器"密売人が俺たちとなんの関係がある。そもそも貴様らグリフィンに答えてやる義理もない』
代表格の男が銃を構え直す。今すぐ引き金を引くかも分からん、そんな声色である。が。
「・・・他の連中と比べりゃ多少度胸はあったらしいが、コイツも所詮は素人か」
『だね〜。あの人完璧に墓穴掘ったね』
『とある密売人としか聞いてませんのに、見事に暴露しましたわね』
現に指揮官も、自分が質問した単語の前にさらにくっ付けられたフレーズを聞き逃すワケもなく、してやったりと口元に小さく弧を描いて言った。
『・・・そうか。ところで、なんでここに来るのが武器の密売人だと知ってるんだ?俺はとある密売人としか言っていないのに』
指摘した瞬間、教徒たちの間に動揺が走った。指揮官は目敏く見抜く。
『ゲート、やれ』
声を隠さず、彼は味方であろう人物へと命じた次の瞬間。
爆発が起きた。先程彼が車の下に放り込んだパイプ爆弾が作動したのだ。
動揺している所に爆発。
さっきは感覚的には爆竹鳴らして脅すと言ったが、案外火力高かったなあの爆弾。こっちにも振動が響いてきたわ。
当然、殺し合いのシチュエーションに慣れてない教徒連中は何の備えも無く爆発が起こって恐怖はピークだ。
完全に体が固っちまって、何をするにしても一歩動作が遅れる。そんで相対する相手は、その隙を見逃す様な甘ちゃんじゃあない。
勝負あったな。
指揮官は上げていた右手をホルスターに収めたサイドアームの銃に伸ばす。と次の瞬間、代表の男の隣に立ってた別の人間が横方向に吹っ飛んだ。
射線、弾着の衝撃から、クリアリングで外に出てたわーちゃんの狙撃と見た。
『エンゲージ』
静かに死刑宣告をした男、その右手に収まる
同時に、FALとRFBは自身を拘束していた敵に向けて攻勢に入る。
FALは思いきり背後の男の足を文字通りに潰しながら踏み抜くという容赦ない反撃の後、サイドアームを抜いて頭を撃ち抜いた。
RFBは一度腰を落とし腰に忍ばせたナイフを抜くと、身を翻しながら背後の男の鳩尾にナイフを突き立てる。すぐに引き抜いて今度は首に突き刺す。瞬く間に白布が黒っぽい色に染まる。
『これは私のだよ!返せ!』
『アナタには似合わないわ』
物言わぬ尸の腕から自身の銃を取り返し、即座に攻撃再開。
双方の使う7.62mm弾の重い銃声が吹き抜けの教会に反響し、近くにいた教徒たちに容赦無く銃弾を浴びせる。
さらにそれを掻き消すばかりに8.6mm口径の
もちろん教徒たちも応戦する。が、いまだパニック状態から抜け出せずにいる連中にまともなエイミングなど出来る訳も無い。せっかく放った弾丸も明後日の方向へ飛んでいくばかり。暗がりでもはっきりと姿が見える近距離だというのに、有効弾の一発どころか擦り弾すら当てられない。
撃てば当たる、そんな距離で向かい合っているはず。
にも関わらず、銃撃戦は一方的な形勢のまま2分少々で終わる。喧しく轟いていたはずの銃声など無かったかの様に、スラムは再び静寂に包まれた。
『クリア』
『クリア』
『オールクリア』
各人形から上がる状況報告。その最後を指揮官が締め、人形たちは警戒態勢を解いた。
この場に残っているのは赤く染まった白装束の尸たちと、完全に戦意を失いその場にへたり込んでいる代表格の男だけだ。
そこに別行動していたわーちゃんと一〇〇式も合流する。
『ダメージは?』
振り返り、指揮官が問う。
『損傷無し』とLWMMG?が。
『無いわ』とFAL。
『無いよ~』とRFB。
『無い』とVector。
『当然』とわーちゃん。自信とプライドの高い性格はこの子も同じか。
『ありません!』と一〇〇式。
『よし、全員無事だな。─────さて』
頷き、振り返った男は改めて空を見上げた。
視線の先にはカタカナのヨのような、やや細長で特徴的な形をしたドローン・・・スケアクロウのビットが浮かんでいる。
『さっきから何見てやがる』
「・・・スケアクロウ、上げてくれ」
「了解」
MP7の弾倉を交換し、ビットへ銃口を向ける指揮官。対して此方は、彼らに気付かれない様スケアクロウがそっと瓦礫を上げ、俺は静かに地上へ出た。
リンクした左目の視界には、ビットを通して此方に敵意を向ける指揮官が映っている。
見覚えが無く、そして夜空に紛れるという味方とは考えづらい行動。少なくとも純粋な味方ではない。なら敵であろうと同じ。そう考えるのは当然。
ビットの浮く高度はMP7の有効射程内。今から命令を打ち込んだところで、彼が撃ち落とす方が早いだろう。
最も、ビットは俺たちにとって換えの効かない貴重な装備であるため、撃ち落とされる訳にはいかない。バレた時点で腹は決めてたが、顔合わせしたくない気持ちを堪えて突っ込ませてもらうぞ。
ついでに、サシでどんだけやれるのかも合わせて試させてもらうとしよう。
射線を固定し、トリガーガードに掛けていた彼の人差し指が引き金に掛かる。
俺は左手にストレージからスタングレネードを召喚。ピンを抜き、扉が収まっていたレンガのアーチを通す様に、サイドスローで思いっきり投げ込んだ。
瞬間、横から飛び込んできたグレネードを咄嗟にMP7で打ち上げる指揮官。反射神経も良い。
開いた左手に高周波ブレードを呼び出す。電源は入れない。殺すつもりは無いからだ。なので敢えて利き手じゃない左手に持つ。コイツ本来の切断力も封印し、振り上げる向きに刀身の棟を置いて、俺は彼目掛けてフルスピードで突っ込んだ。
刹那、起爆したスタンの光と音が直上から降り注ぐ。が、ゴツいヘッドセット着けてるのに加えてああまで打ち上げられちゃ、幾ら暗い中の閃光といっても効果は低減してしまう。
まあ良い。目眩ましに引っ掛かるなんてハナから思っちゃいない。
ビットから俺に注意を逸らせられれば良いんだからな。
猛スピードで突っ込んでくる俺に気付いた指揮官。跳ね上げた体勢のMP7を此方に向けようと動くが、遅い。
肉薄と同時にブレードを振り抜き、棟でMP7を右腕ごと振り上げた。
しかし相手は特殊部隊を率いる元軍人。弾かれたMP7は即座に手放し、空いた左手で拳銃を抜きつつ撃ってきやがった。
(おぉっとっとっ!)
追撃に向けて体に掛かる慣性に急ブレーキを掛けるよう足を踏み込み、続いて体を捻りながら牽制に放たれた弾丸を避ける。
その間にも即座に体勢を立て直した男は、今度は真っ直ぐこちらに射線を合わせ、撃ちながらこっちに向かってきた。
俺も飛んでくる弾丸を眼で捉えつつ、どうにか体を捻って掠らない位置取りをしながら指揮官に向けて駆け出す。
見たところ彼が持っているのはアメリカのMk23っぽい拳銃。あれの装弾数は確か12発・・・なら、もうすぐ弾切れだ。
思った矢先、銃のスライドが下がったままロック、ホールドオープンに入った。実弾を使う限り、決して克服出来ない隙だ。
俺はブレードの刃先を内向きに変え、相手の懐へ急接近する。そして彼の首目掛けて横凪ぎにブレードを振るった。もちろん、寸止めするつもりで。
だが彼は迫る刃に目もくれず、左足を一歩踏み込みながら左腕を使い、ブレードを持つ俺の左手首に無理やりブレーキを掛けた。
間髪入れず、踏み込みのスピードに乗った右の拳が顔面目掛けて飛んでくる。
首を傾げて避ける。ついでにブレードも一旦手放し、元々フリーだった右手でボディブローを見舞う。左脇腹に当たる、少しだけ顔を顰めた指揮官。が、直後叩き込まれた左肘が顔面に当たり、思わずたたらを踏む事になった。
「(・・・チッ)」
「ブリッt「手を出すなッ!!」っ!」
続いて俺をチラリと流し見る。咄嗟の対応、戦闘経験がもたらす反射的な迎撃で、今まではまともに俺の姿を拝んでなかったってところか。
にしても、わざわざ高そうなグラスを地面に落っこすなんて。・・・面白い。
彼の示す意図・・・サシでやろうという誘いに乗っかり、俺もバイザーを外して懐へ仕舞う。
あぁ、そういや左眼の視界は上からの俯瞰のまんまだったな。首チョンパ寸止めで終わるかと思って直さず突っ込んでた。
どのタイミングで引き金引くかっていうタイミングを見計らってたからってのもあったんだが。
さってと、クリアな両目の視界になったところで第二ラウンドと行こうか。今度は利き手もちゃんと使わせてもらうぞ。
俺と彼、同時に向かい合って歩き出す。間合いに入って、左足を踏み込んで右拳を繰り出す。力を乗せたストレートには確かに手応えがあった。が、俺の顔も明後日の方向に
お互いに仰反る。ほんのごく一瞬、俺は衝撃で脳がシェイクされ気が抜けた。だが彼は踏みとどまった。それが、俺と彼の決定的な差となった。
俺よりも早く立ち直った彼は、続け様に俺の右足に右でインローを叩き込んで姿勢を崩される。
返しの左で右側頭部へとミドルキックが飛んでくる。なんとか右腕でガードするも、崩れかけの姿勢では受け止めきれず、ヤバいと思う間もなく俺は地面に転がされてしまった。
間髪入れず、腰から抜いたナイフを逆手に握る指揮官。立ち上がろうとするも彼が胸元を掴んで動きを拘束する。
—————情け無え、一人だったら此処で終わってたな。
振りかざしたナイフを、彼は勢い良く振り下ろす。
しかし、ナイフが俺に刺さる事は無かった。
何故なら、彼が真横から突っ込んできた第二の存在にぶっ飛ばされたから。
地面を転がり、突然襲った痛みに小さな呻きを漏らしながらも体勢を立て直した指揮官。彼は何事かと頭を上げ、月明かりに照らされた素顔を驚きに染めた。
彼の目の前にはフヨフヨパワーで浮かぶスケアクロウがいる。
観測に回してたのも含む三機のビットを己の周囲に浮かばせ、淡く緑に光る銃口はそれが何時でも彼らに向けて放てると言う事を示していた。
そして、当人はガスマスク着けてても分かる位の凄い顔。具体的には親の仇を見つけて憤怒と憎しみを湛えつつ、どこまでも残酷になれる冷徹な復讐者といった顔で彼を見据えている。
それこそ、今すぐ止めろなり待てなり言っとかないと、今度は彼とスケアクロウの間でバトルが始まるかも分からん、そう思えてしまう程度には相棒はキテる様だった。
・・・ややこしくならない内に止めておこう。今なら、間に合う。
「・・・スケアクロウ! 撃つな!」
次回、接触したあとのお前誰やねんと確認する回です。
70くらい貯まってた超電磁パルスと爆撃捕獲書2枚を削って漸くハンターを獲得したのはワタス。なんとかギリギリ間に合った(汗)。
それはそうと、捕獲作戦の画面で☆2が2体で☆1が一体という中で、☆1を捕獲すると全部☆2になるのヤメチクリ()。課金しとうないぞよ涙