戦いは終わらない。
バーテックスは無限に再生し、人類を襲いにやって来る。
勇者はその度に自分の大切なものを失い、それでもなお戦い続けなければならない。
その事実に打ちのめされた東郷 美森は、神樹を殺せば世界も消え、仲間が苦しむことも無くなると思いいたり、四国と外の世界とを隔てる壁を破壊した。
勇者部の活躍で東郷の暴走は鎮めたものの、壁を壊したことに怒った敵の首魁である天の神が、突如として現実の四国に襲来したのだった。
天の神が放った数千、数万、それ以上の数の、先兵である星屑が四国全土に飛んでいく。
星屑は人間だけに狙いを定め、次々と襲い始める。
「マズいですよ!」
田所たち勇者は急いで民間人を救おうとするが、それを邪魔するように天の神が雷撃を放った。
「「「「「きゃあああああッ!?」」」」」
「オォン! アォン!」
成体のバーテックスの攻撃を防ぐ精霊のバリアをもってしても天の神の攻撃は阻めず、雷をその身に浴びた少女たちは全身に火傷を負い倒れてしまう。
神樹は急ぎ樹海を再展開しようとするが……
バァン!
天の神が放った火球が直撃し、その体は本物の木と同じく炎が燃え広がる。
「あぁ……」
「そんな……神樹様が……」
燃え落ちていく神樹と殺されていく四国の人々を見て、これまで不屈の精神で戦い抜いてきた勇者たちの心もいよいよ折れそうになった。その時
『勇者たち! 困ります! あーっ! いけません!』
少女たちに檄を飛ばしてきた相手。その姿は幽霊のように向こう側が透けて見えていた。
どこかトカゲを思わせる顔つきの成人男性、それは
「遠野!?」
田所が男性の姿を見て叫んだ。
そう、この男こそ田所の恋人であり、神樹の中枢を担っていた人類の守護神なのである。
「……神樹……様?」
『申し訳ないが敗北展開はNG』
尋ねるように発した友奈の声に、神樹──遠野はそう返した。
『このまま人類が滅びるのはやはりヤバい。なんか自分の手から、愛すべき子供たちの命が転げ落ちたような感じで……(中略)なんかやだ』
「このままじゃ世界壊れちゃ~う。遠野、どうにかしろ(無責任)」
『たった1つだけ、とれる手段があります』
全員が遠野の言う解決策に耳を澄ます。
『僕が最後の力を使って、君たちを過去──今から300年前の時代に飛ばします。そこで復活直後の天の神を倒して、歴史をやり直すしかありません』
ただし、と遠野は続ける。
『一度過去に行ってしまえば、もう今のこの時代に戻ってくることは出来ません』
「やろう、みんな!」
迷うそぶりも見せず友奈が言った。これが原作主人公の貫禄だお前らもよーく見とけよ。
「そうね。このまま何もしなくても、世界は滅んじゃうんだし」
「こうなったのも私が原因……その責任は取ります」
風と東郷も友奈の考えに乗り、夏凜と樹も頷く。
「遠野、(過去への跳躍)おっすお願いしまーす」
田所が全員の了承を得てそう言うと、それを受けた遠野の体が光の渦へと変わる。
勇者たちは、過去の時間へと繋がっちゃっ……たぁ遠野の体に吸い込まれた。
過去へと飛ばされる直前、遠野の最後の言葉が聞こえる。
『僕の力で一度だけ、満開を代償なしで使えるようにしました。みんな、どうか無事で……』
◇ ◆ ◇ ◆
時空間を超越するトンネルを抜け、勇者部は西暦2015年に到着した。
それも四国ではなく、宇宙空間に放り出される形で。
「(真空の海に)溺れる! 溺れる!」
宇宙では呼吸ができない、と一瞬慌てる少女たちだが、精霊とバリアのおかげでしっかりと酸素は供給されていた。
「みんな、あれを見て」
夏凜の声で彼女の言う方に目を向ける。
視線の先には、暗闇の宇宙に浮かぶ、青く輝く地球の姿があった。
『綺麗ですねぇ……』
「これが、炎に包まれる前の地球……」
樹と東郷が、地球の美しさに圧倒されたように呟く。
友奈、風、夏凜、それに田所も同様に、その美しさに目を奪われていた。
「この綺麗な世界が、バーテックスや天の神のせいで台無しになっちゃうわけね……。でも、アタシたちが来たからにはそうはさせないわよ!」
少女たちは円陣を組む。
「みんな、泣いても笑ってもこれが最後の戦いよ。アタシたちは絶対に勝つ! 勝って、すべてを取り戻す!」
「おう!」
『うん!』
「はい!」
「ええ!」
「当然!」
風の言葉に田所、樹、友奈、東郷、夏凜も気合を入れる。
「勇者部、ファイトーッ!!」
「「「「「おーっ!!」」」」」
みんなの心が一つになった。
それを合図に、遠方から星座型のバーテックスが12体、集結して向かってきた。
その向こうの空間では、それまでバーテックスと戦っていたであろう遠野たち神々の姿があった。みんな傷つき、力なく倒れ伏している。
「遠野! ……みんな、待ってろよ。俺たち勇者部がお前らの代わりにバーテックス共をたおして、人類を救ってみせるゾ!」
バーテックスが急速に接近してくる。
「みんな分かれてバーテックスを各個撃破、ハイ、ヨロシクゥ! それと、絶対に死ぬんじゃないわよ!」
「「「「「かしこまりッ!!」」」」」
部長の指示を受け勇者たちは散開、それぞれに迫るバーテックスを相手にしていく。
誰が誰と戦ったかなど、もはや書く必要もないだろう。
少女たちは相対した怪物を、ものの数分でやっつけてしまったからだ。
これまでの戦いを経験した勇者の前には、もはや成長体と言えど敵ではない。
「調子こいてんじゃねえぞこの野郎! 怪物のくせによぉ、何が人類殲滅だぁ、お前が滅びろよ(棒読み)」
敵を挑発する風。
その声が聞こえたのか、星屑が集まり再び12星座のバーテックスが再生されていく。
「いいよ、来いよ! 何度復活しても何度でもたおしてやんよ!」
田所も挑発の声を上げる。
しかしバーテックスは、予想に反して攻撃を仕掛けてこなかった。
「あれーおかしいね、誰も来ないね」
田所が疑問に思った時、バーテックスに動きがあった。
12体の怪物は獅子座を中心に集合し、その体を1つに溶け込ませ始める。
「! これは……!」
「スタークラスターみたいに合体しようって訳ね……」
友奈と夏凜が言った。
夏凜の言葉通り、12体のバーテックスは融合し、1つの体を形作っていく。
100メートルはある巨大な体は、光を放ちながら徐々に小さくなり、やがて174,5センチメートルほどの等身大のサイズにまで縮んだ。
これこそが、スタークラスターをも超える全12星座完全結合体、ゾディアック・バーテックス。
その究極進化形態であり、肉体を持ちこの世界に顕現した天の神……その真名を──GO──。
GOの姿を見た少女たちの顔が驚愕に染まった。
「な、なんで天の神が人の姿に……!?」
「……当たり前だよなぁ?」
風の驚きの声にGOが応えた。
「なぜなら、お前たち人間を生み出したのは、俺たち神なんだからなぁ」
人間の歴史では、人は猿から長い時間をかけて進化したと教えられている。
しかしGOは、自分たちが人という種を生んだと語る。
「冥途の土産に教えてやるよ。この世界にはお前たち現存人類であるホモ・サピエンスが誕生する遥か昔、神話と呼ばれる時代──そこにはお前らの祖先である先住人類、ホモ・サピエンス・サピエンスがいた」
そして、と言葉を続ける。
「俺やそこにいる先輩、そして向こうでやられている遠野たちが、そのホモ・サピエンス・サピエンスだったんだ」
「な……天の神は、私たちと同じ人間だったの!?」
驚く夏凜。他の面々の表情にも衝撃が走る。
GOは、「お前らプロなのに、正しい歴史も分かんねえのかよ」と、嘲りの笑みを浮かべた。
「神とは、宇宙のどこからやって来た大いなる意思、『
C.Ω.α.T、それこそがかつて田所が夢の中で追体験した、天より降り注いだ謎の光の正体。
「そして神となった俺が、恋人であるマジメ君との間に創った子供……それが、お前たち人間の正体だ」
「貴方が……神様が人間の親なら、どうして私たち子供である人間を滅ぼそうとするんですか!?」
『っていうか、
友奈が問いかけ、樹がん? と沸き上がる疑問を文字にする。
「そうだ、俺はホモだ」
「「「「「ファッ!?」」」」」
GOの突然のカミングアウトに、田所以外の少女たちがおっぱげる。
「なんで人間を滅ぼすかって? それはなぁ……俺はお前らに、俺とマジメ君のように同性への愛を持てる、優しい子になってくれることを願ってたんだ。
マジメ君はお前たちを生んだ後、不幸にも病にかかり天に召されてしまった。俺も子作りの疲れから眠りにつき、他の神々も次々と微睡みに落ちていった。
そうして長い間夢の中で、新人類の進化を見守っていたんだ」
だというのに、とGOは怒りを滲ませる。
「2015年のこの時代にやっと目覚めてみれば、お前らはなんだ? 同性愛を禁忌として封印し、あまつさえ蔑みの目で見る。(そんな人間への)愛は枯れました」
真実の愛だと思っている同性愛。それを忘れた人類に愛想をつかしたため、GOはこの世界を滅ぼすことに決めたと言う。
「お前精神状態おかしいよ」
「やだ(この神様の頭)怖い……(人類粛清とか)やめてください……アイアンマン!」
「(言ってることが身勝手すぎて)笑っちゃうんすよね」
「全ては誤った進化をしたお前たち自身の責任だからね、しょうがないね」
神の勝手な理屈に怒る勇者たち。だが、GOは少女たちの言い分を聞き入れようとしない。
「てかさぁ……なんで先輩が人間なんかと一緒にいるんだよ?」
「? どういうこと……?」
GOの言葉を風が問い直す。
「そこにいる先輩は、俺と同じホモなんだよ」
「……は? タドは女の子じゃないのよ」
「今はな。かつて俺たちと同じ時代にいた先輩は男だったんだよ」
「なんですって……!?」
GOの言葉に驚く風。今の田所は少女の姿をしているが、本来は男体神であったのだ。
もともと神には男女の性別という概念はあやふやなものだから、過去に飛ばされた際に女性に固定されてしまったのだろう。
「GO、確かに俺はホモだ。けどなぁ……だからって人間を滅ぼそうなんて思わないゾ。
それは、こいつら勇者部との出会いのおかげだ。こいつらが俺に、人間は素晴らしいって、そう思わせてくれたんだ。
確かに人は、お前の言う同性への愛は失ってしまったのかもしれない……。
けど、他人を思いやる優しさや、慈しみの心は変わらずに持ち続けているゾ!」
人の素晴らしさを語る田所。そんな彼女をGOは冷めた目で見つめ、溜息と共にこう漏らした。
「あぁ(神としての品格が地に)堕ちたねぇ、堕ちましたね……。これが、腰抜けだ」
かつては自分に比肩する実力を持っていた田所をGOは蔑む。
「そっか、あったまきた」
自分たちを守ろうとしてくれる守護者であり友人を侮辱されたことに、勇者部の少女たちは怒りを覚えた。
「みんな! ヤメルルォ!!」
田所が止めるのも聞かず、少女たちはGOに攻撃を仕掛ける。
友奈の拳が、東郷の銃が、風の大剣が、樹のワイヤーが、夏凜の双剣が、次々とGOに叩き込まれる。しかし──
「「「「「なっ!?」」」」」
順々に放った攻撃は、無情にも全てGOの体をすり抜けて行ってしまった。
GOは身じろぎ一つせずその場にとどまっている。
「ど、どういうことなの……!?」
動揺する少女たちの中で、夏凜が言葉を発した。
「みんな、慌てないで! 今度は一斉にやるわよ!」
風が檄を飛ばし冷静さを取り戻した勇者部は、彼女の指示通り同時攻撃を見舞う。
「デヤーッ!!」
「ウワーッ!!」
「イヤーッ!!」
「アアッ!!」
勇者の力で放たれる渾身の攻撃がGOの胸に迫る。
「チッ、馬鹿じゃねえの」
しかし一点集中の攻撃さえも、GOの張ったバリアによってそのまま反射されてしまった。
自分で放った攻撃を自分の身に食らい、少女たちは吹き飛ばされてしまう。
「(神の前では人の力なんてあまりにも)小っちゃいっすよね」
嘲笑するGO。
仲間を傷つけられた田所も怒りを滲ませ、迫真空手でGOに迫る。
「チッ、うざってぇ……」
ここにきてGOは初めて動きを見せた。田所の拳の連撃を両手で防ぐ。
さらにGOは田所の攻撃をいなし、返しの一撃を食らわせた。
「くっ……!」
田所はたまらず後ずさる。田所以上の力を持つGOには、彼女1人の技では太刀打ちできない。
「生半可な力では敵わないわ。みんな、満開を使いましょう!」
東郷が叫ぶ。
遠野が一度だけ代償なしに発動できるようにしてくれた切り札を、今こそ使う時だ。
「「「「「満開!!」」」」」
「満開~」
宇宙に5色の華と1つの輝きが生まれた。
長くなるので分割しました
なので、あと1話追加しまーす