田所浩二は女の子である   作:ほろろぎ

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最終話 散って、また咲いて

「『邪拳・夜』……逝きましょうね……」

「ぐはぁ!(致命傷)」

 

 全ての光に夜の帳を下ろす、田所の究極のパンチを腹筋ボコボコに食らったGOは、その身にかつてない程のダメージを受けた。

 

「ゲッホゲッホ(迫真)」

 

 咳と共に大量に吐血するGO。鼻や耳、目からも血が流れており、もはや戦える状態ではないのが明らかだ。

 

「……GO、お前の負けだ……!」

 

 対する田所も最終奥義を使った反動に加え、連続使用した満開の影響もあり満身創痍である。

 それでも、勇者部と言う仲間がいるためまだ田所側に分があった。

 

「まだまだまだ、まだ戦いは続いてんだよ」

 

 GOはまだ引く気はないようだ。

 

「体の中しまっときたいよ? そしたらいつも一緒だもん体の中しまっといたらいつも一緒だもんね」

 

 そう言うと、GOは自らの胸を手で割り裂いた。

 裂けた胸の中には全てを吸収する穴──ブラックホールが広がっており、近くにいた田所は抵抗する間もなく、その中に吸い込まれてしまう。なんていやらしい穴なのだ……。

 田所を自らの体内に取り込んだGO。彼女から受けた傷が見る間に癒えていく。

 

「(ここまで追い詰めておいて止めを刺せないなんて)そんなんじゃ甘いよ(棒読み)」

 

 命まで奪わなかった田所の甘さをGOは指摘する。

 

「ッ……この、タドを返せええええ!!」

 

 激高した風がGOに突撃する。

 剣を大きく振りかぶり、GOの頭目がけて振り下ろす。

 

 バキィ!

 

「ぁわっ! 折れたぁ!?」

 

 大剣はGOが薙ぎ払った腕の一振りで、敢え無く叩き折られてしまった。

 さらにGOは腕を伸ばし風の首根っこをつかまえる。

 

「……ッ! ……グ……ァ!」

「しまいには、首の骨が砕けるぞ!」

 

 ギリギリと力を込めて風の首を絞めるGO。

 小枝のように細い首の骨をへし折らんとしたその時

 

『お姉ちゃんを離してッ!』

 

 樹が、風を助けようとGOの腕につかみかかった。

 

「ン何だお前?!(驚愕) 流行らせコラ!」

 

 GOは樹を引き剥がそうとする。と、突然腕が言うことを聞かなくなった。

 

『……GO、こいつらには手出しさせねえゾ……』

 

 吸収されたはずの田所が、GOの中で彼の意識に抗っているのだ。

 

「転校しても無駄だ!!」

 

 田所の抵抗する意思を、GOは無理やり押さえつけようとする。

 

『この時代での戦いでは、俺は力尽きて仲間の死になにもできなかった。だから、今度はなにがあっても最後までもちろん抵抗するで? 拳で』

 

 田所の強い想いで風を掴んでいたGOの腕は彼女を離し、逆に両腕でGO自身の首を絞め始めた。

 

「タドはまだ生きてる……! タドを流行らせコラ!」

 

 風と樹が、GOから田所を引き離そうと彼に組みつく。

 

「オロナイン控えろ!」

「タドちゃんを流行らせコラ!」

「〆鯖ァ!」

 

 さらに東郷、友奈、夏凜もGOの体に飛びついた。

 

「やあめろお前……あーご……」

「抵抗しても無駄だ!」

「うざってぇ……」

『大 人 し く し ろ よ ぉ ……』

「お前ら、お前ら5人なんかに負けるわけねぇだろオマエコラ!(慢心)」

「5人に勝てる訳ないだろ!!」

 

 暴れるGOから少女たちは、次々と彼の衣服を脱がせていく。

 

「ムーミン野郎お前離せコラ!」

 

 ついにGOは群がる少女たちを引き()がすが、すでに全裸にひん()かれた後だった。

 もみくちゃになった双方は、全員が肩で息をしている。

 

「惜しい、あとちょっとでタドを取り返せたのに!」

「いくら頑張った所で、人と神では力の差が圧倒的なのは歴然だ。無駄なことせずに、俺が人類を滅ぼすのをケツマンおっぴろげて神妙に待ってろ!」

 

 友奈がGOに、切実な問いかけをする。

 

「あなたはタドちゃんを……仲間を傷つけてまで人を滅ぼしたいんですか!?」

「親の言うことを聞かない子供に罰を与えるのは、当たり前だよなぁ?」

 

 GOのその言葉に、風はカチンと来て言葉を発する。

 

「親ってのは子供を守るものでしょ!? アタシたちの親も、アタシと樹をとっても大切にしてくれた。そりゃ怒られることだってあったけど、それは決して憎いからなんかじゃない! 子供を大切にしない親なんて必要ねえんだよ!」

 

 風の言葉を聞いて、GOは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

「嫉妬がぁ! 鼻糞がぁ!」

 

 返す言葉が無かったからか、代わりにGOはチンポガを放つことで返答とした。

 少女たちは必死でチンポガを避ける。

 

「これ以上攻撃を食らったら体が持たないわ!」

「仕方ないわね。覚悟決めろ……」

 

 夏凜の言葉で風は、この状況を乗り切るには満開を使うしかないと判断、自分に活を入れる。

 

「満開!」

 

 オキザリスの花が輝き、風の体に再びヤメチクリウム合金の鎧と武器が装着された。

 振り下ろした大剣は今度は破壊されることは無かったが、それでもGOは片腕で受け止めてしまう。

 

「だから無駄だっつってんじゃねえかよ(棒読み)」

 

 空いた腕でチンポガを撃とうとした時

 

「余裕があると隙だらけになるって、それ一番言われてるから」

 

 風に続いて満開した夏凜が、6本の刀で背後からGOに切りかかった。

 標的を夏凜に変えようとするGOだが、その腕を、やはり満開した樹のワイヤーに止められる。

 さらに東郷の砲撃と友奈のパンチを受けて、GOは大きく吹き飛ばされた。2人も同じく満開済みだ。

 

「あ、アンタたち……満開を使ったら、体に反動があるの忘れたの!?」

「ここで負けたら、そんなの気にしてる場合じゃなくなるでしょ」

『そうだよ』

 

 夏凜の言葉に樹が便乗する。確かに散華を恐れていては、GOに対抗することは出来ない。

 

「人間の屑がこの野郎……シュバルゴ!」

 

 GOはシュバルゴを仕掛ける。

 勇者たちはこれを回避し、田所が行ったのと同様にGOの間合いの外である懐に飛び込むが

 

「まま、そう焦んないでよ」

 

 5人は満開での攻撃を繰り出すが、GOの体に傷をつけることは出来ない。

 

「火で死ね」

「「「「「きゃあああああッ!!」」」」」

 

 逆に、GOの攻撃によって少女たちは傷つけられていく。

 

(や……やはり、人の身では神には敵わないというの……?)

『諦めんなよ……諦めんな!』

 

 くじけそうになる東郷の頭に、突如励ましの言葉がかけられた。

 その声は少女のもので、東郷にとっては懐かしさを覚えるものであった。

 

「……乃木、園子……そのっち……?」

 

 東郷の過去の記憶は失われたままである。だが、それでもまだ心の繋がりは切れなかったのだろう。彼女は無意識に園子のあだ名を呟いた。

 園子は300年先の未来から遠野の力を通して時を超え、御子としての素質を持った東郷に交信を試みたのだ。

 

『わっしー、これ使って~』

 

 園子の言葉と共に、地球から高速で飛来する物体が現れた。東郷の手に収まったそれは、一振りの日本刀であった。

 

「これは……?」

『ご先祖様の物だよ。それでやじゅじゅを助けてあげて』

 

 東郷は刀──生太刀──を構えて、GOに対峙する。

 GOは東郷に攻撃を加えようとするが、体に樹がワイヤーを絡め、その上から友奈と夏凜がビッグアームでガッチリと彼の四肢を拘束したため動きを阻まれた。

 

「繰り出すぞ!(切り札) フル焼きそば!(銀との思い出)」

 

 その隙に東郷が生太刀を一閃し、GOの体を袈裟切りに切り裂いた。

 裂けた体からズルリと田所が出てきたので、東郷は彼女の体を掴み引っ張り出すことに成功する。

 

「おっ、大丈夫か? 大丈夫か?」

 

 みんなで田所の生還を喜ぶが、彼女はGOに生命力を奪われた影響で半死半生の重症だった。

 

「ア゜ァー!……アァー……」

 

 対するGOも田所を引き剥がされたことで、これまでの傷が再び広がり一人苦しみにあえいでいた。

 

「もう許せるぞおい! もう許さねえからなぁ? ジュージューになるまでやるからなオイ!」

 

 苦痛に顔をゆがめ、尚も人間を滅ぼすことへの執念を燃やすGO。

 その姿を見て友奈は心を痛め、GOの本質に気付いた。

 

「あっ、そっかぁ。GOさんも、独りきりで寂しいんだ……。私たち人間と同じなんだよ」

「お前たちなんかと……一緒にするな……! ……俺は、お前らとは……違う!」

「なにも違わないよ! GOさんにも大切な人がいたんでしょ!? 今、その人のために戦ってる……私たちも、大切な人を守るためにこうしてる! 一緒だよ!」

 

 友奈の言葉でGOの脳内に、マジメ君の思い出がフラッシュバックする。

 

「違う……違う! 違う!」

 

 友奈の穢れのないまっすぐな瞳がマジメ君の顔と重なり、GOは動揺を露わにした。

 GOが最愛の人であるマジメ君を失った哀しみもまた、人類粛清という凶行に至らせた要因の一つなのだ。

 

「GO! この宇宙は暗闇なんかじゃない。神は……人は……生命は、憎しみあうために生まれたんじゃないだルルォ!?」

「ああああああああああああああああああああ!!!」

 

 田所の言葉に、GOは発狂したように叫びをあげる。

 GOの記憶の中にいるマジメ君もまた、GOの行いを見たらきっと彼を止めただろう。

 その事実が次第にGOに、自らの過ちを自覚させていく。

 しかしGOはその思いを振り払うかのように、『火で死ね』の炎を辺りにバラまき始めた。

 

「このままじゃGOを止められないゾ……」

「どうするの? 私たちの力じゃ、彼には敵わないわよ」

 

 風の言葉で、田所は友奈に視線を向けた。

 

「YUNの魂は、この西暦の時代と神世紀の2度に渡ってGOの体に傷をつけることができた。その因果を持ったYUNに、みんなの力を集めるんだゾ」

 

 友奈のビルダー系肉体と勇者部のイケメンと超デカマラがコラージュできれば完璧なんだよな! まあ、だからこのいいトコ取りの6Pも意味あるんだけどさ。

 少女たちの持つ6つの輝きが1つとなり、友奈の身に収束していく。

 光の中から現れたのは、虹色の光を放つ最後の満開──満開()(しき)の姿が。

 

「……うぅ……」

 

 少女たちの、仲間を想いあう友情の力によって誕生したその輝きを見て、GOはかつての、まだ神になる前の時代……仲間たちと協力して生きていた時のことを思い出させられた。

 マジメ君、田所、遠野、AKYS、MUR、KMR、他にも数多くの友と呼べるものたちが、GOの周りにはいた。

 しかし今、自らの子供を手にかけようとするGOを見て、仲間だった者たちはみな離れていったのだ。

 

「ああああああああああああああああああああ!!!」

 

 現実を認めたくないのか、GOは思いを振り払うように雄たけびを上げ、友奈に攻撃を仕掛けた。

 

 ガッシ! ボカッ!

 

 友奈はGOの慟哭を受け止めるように、彼の拳を抵抗することなく受け入れる。

 やがて殴りつかれたGOの腕が止まった。

 

「よぉ、ホモの兄ちゃんもう終わりか?」

 

 GOの動き止まると友奈が拳を振り、自動的に激しいガン殴りガン殴られ状態が続く。その繰り返しでどんどん2人が狂っていく。たぶんあと数行でこの激しすぎる戦いはおわるぜ。

 

「ハァ……ハァ……!」

「ゼェ……ゼェ……!」

 

 激しい殴り合いの応酬で、2人とも肩で息をしている。

 

「……お前……名前は確か、結城 友奈……だったな」

 

 GOが問いかけ、友奈は頷く。

 

「お前、なんのためにそうまでして、神と戦うんだ……?」

 

 GOの質問に、友奈は彼の瞳をまっすぐに見据えてこう答えた。

 

「明日も、みんなで笑いあうために」

 

 その答えにGOはなにを想うのか。

 友奈の回答を噛み締める様に瞑目し、やがて目を開くと、GOは決着をつけるための言葉を口にする。

 

「なら……おい、打ってこい打ってこい」

 

 最後の一撃をあえて友奈に決めさせることにしたGO。

 田所が友奈の背を押す。

 

「最後の一撃くれてやれよオラ」

 

 友奈は頷き、GOに拳が届くところまで近づいた。

 右腕を振りかぶり、田所の、風の、樹の、夏凜の、東郷の、そして友奈自身の、ありったけの想いと力を込めた一撃が放たれる。

 

「ビッグ・バン……勇者パンチ!!」

 

 神と人の想いが連なったそれは、局地的に宇宙創成のビッグ・バンにも匹敵する大爆発をもたらした。

 宇宙が揺れ、眩いばかりの閃光が暗黒の世界を包み込む。

 衝撃が収まった先にあったのは……

 

「ぁ……」

 

 尚も立ちはだかっているGOの姿があった。

 GOはビッグ・バン勇者パンチの全ての力を吸収してしまったのだ。

 これまでの怪我はすべて回復し、神々しさを感じさせる光を放っている。

 

 ダメだやっぱ……。

 

 すべての力を結集した最後の一撃すら、GOには届かなかった。

 もはや策なし。結い式の満開が解け、友奈の体は力を失い倒れていく。が、

 

「お、大丈夫か? 大丈夫か?」

 

 倒れ行く友奈を支えたのは、誰あろうGOであった。

 彼の顔からは憎しみの色がすべて抜け落ち、清々しい爽やかな微笑みを称えている。

 

「君たちの(たましい)、しっかりと見せてもらったよ。……俺が間違っていた。許して亭ゆるして」

 

 GOは謝罪の言葉と共に、少女たちに向かって深く深く頭を下げた。

 勇者たちとのぶつかり合いの果てに、ついにGOは人に対する憎しみを捨て去ることができたのだ。

 

「やったぜ」

 

 とうとう神と人との戦いを、完全に終結させることが出来た。少女たちは喜びに沸き立つ。

 

「みんな、おめでとナス」

 

 田所も、共に戦ってきた仲間たちに労いの言葉をかけた。

 少女たちの視線が田所に向けられる。みんな、彼女の姿を見てギョッとした。

 なぜなら田所の体は、度重なる戦いのダメージで胸から下が光の粒子と化し、消滅していっているからだ。

 

「ちょ、タド大丈夫なの!?」

「んにゃぴ、ダメみたいですね……。無理して戦いすぎたからね、仕方ないね」

「それだけじゃないだろ?」

 

 GOは田所の怪我の理由を見抜いており、そのことを口にした。

 

「先輩は、君たちの満開の代償を肩代わりしたんだ」

 

 GOの言う通り、田所は遠野の加護を失ったあとの少女たちの散華を、自身の命を代償に引き受けていたのだった。

 

「そ、そんな……」

 

 少女たちの間に動揺が走る。

 

「GOさん! あなた神様なんでしょ!? タドの怪我を治してあげて!」

 

 風の頼みに、GOは悲しげな顔で首を横に振った。

 

「砕けたコップにいくら水を継ぎ足しても水は零れてしまうように、先輩の魂という器もすでに修復は不可能なんだ……」

 

 神の命にも限りはある。田所の命も、ついに限界を迎えようとしていた。

 

「タドちゃん先輩! 明日の誕生日を私のぼた餅ケーキで一緒にお祝いすると言ったでしょう! こんな所で死なないでくださいお願いします、なんでもしますから!」

 

 東郷は涙を流し田所に叫ぶ。

 

「あっ、そっかぁ……。生きてえなぁ……」

 

 呟く田所の顔はすでに虚ろだ。体も首から下にまで消滅の範囲が迫っている。

 田所は、GOに向かって1つのお願いをした。

 

「GO、俺の最後の頼みだ。勇者部のみんなを……この素晴らしい友人たちを、元の時代に帰してやってくれよな~……、頼むよ~」

「あ、いいっすよ(快諾)」

 

 自分の命の炎が消える最期の時まで、田所は勇者部の少女たちの身を案じ、その願いをGOも了承した。

 

「(もっと一緒に)居たいんだよォォォ!!」

 

 風たちはみんな、涙を流し田所との別れを拒絶する。

 

「俺たちの別れに涙なんか必要ねえんだよ! みんなには笑顔が一番似合うって、はっきりわかんだね。……ほいじゃ、まったの~」

 

 また会おう、田所は最後にそう言い残して、仲間達の元から消え去っていった。

 

 涙にくれる勇者部の少女たちの前に、時空を超えるための穴を広げたGO。

 彼は最後に、少女たちに1つの約束をした。

 

「これからは、この世界のことを人間だけに任せず、俺たち神も協力してより良い世界を作っていくことにするよ」

 

 GOの言葉に頷く少女たち。そうして戦いを終えた勇者部は、(ゲート)に飛び込み、彼女たちの住む世界である神世紀300年に帰っていった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 穴を抜けた少女たちは、讃州市の大地へ立っていた。

 人々は何事もなく日常生活を営んでおり、世界終焉の兆候はどこにも見られない。

 

「本当に、戦いは終わったんだね」

「そうだよ。(便乗) みんな、お疲れ様~」

 

 友奈が呟くように言った言葉に便乗する声、その持ち主の人物は車いすに乗って勇者部の前にやって来た。

 

「そのっち……」

 

 東郷が車椅子の人物──乃木 園子に気付いた。

 さらに園子の後ろでは、彼女の車椅子を押す1人の少女の姿が。

 

「ぁ、あなたは……!」

「よっ、須美。久しぶりだなぁ!」

 

 園子と共に現れたのは、神世紀298年のバーテックスとの戦いで命を落とした先代勇者、三ノ輪 銀であった。

 勇者部の歴史改編でバーテックスの襲来が無かったことになり、彼女も死ぬはずだった歴史が書き換えられたのだ。

 

「ねー友……ねー友……」

 

 かつての友達との念願の再会を果たした園子、銀、東郷の3人は、お互いの肩を抱き合い喜びを分かち合った。

 

 この世界が果たしてどのように変化したかを確認するため、他の面々も自宅へと向かう。

 風と、樹も自宅のマンションへと帰った。

 扉を開けると、その先には2人が待ち望んだ光景が広がっていた。

 

「お帰り、風、樹」

 

 扉の先には、バーテックスの襲撃で命を落とした姉妹の父と母の姿があり、2人の帰還を温かく迎えてくれたのだ。

 風も樹も涙を浮かべ、両親の腕の中へ飛び込んでいく。ずっと言いたかった言葉と共に。

 

「お父さん、お母さん……ただいま!」

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 勇者たちが人知れず世界を救ってから、いくらかの時が過ぎた。今は春。

 修正された歴史の中で慌ただしい日々を過ごしていた勇者部の面々は、この日お花見を兼ねて久しぶりに集まったのだった。

 

 世界は炎に包まれることも無く、地球はかつての青く美しい姿のままだった。

 四国以外の世界も無事で、いろんな国の人々がせわしなく行きかっている。

 

 西暦2015年にGOと和解した大赦は、神に感謝する謝謝茄子(ありがとナス)の精神で『大謝』と名を改め、GOの教えを広めるGO教の布教に努めていた。

 GO教は世界中に広がり、LGBTを許容したそれは神樹信仰と変わらない平和を築くまでになった。

 

 友奈は散華で失ったはずの東郷との記憶を、断片的にではあるが思いだしつつある。

 東郷の下半身も回復の兆しを見せ、今は車いすではなく松葉杖をついての歩行が可能となった。

 樹も次第にではあるが、前のように声が出せるようになっている。

 以前のように上手く歌うことはまだ出来ないが、それも時とともに回復していくことだろう。

 

「きっとタド先輩が、私たちの散華を治してくれたんでしょうね」

 

 樹だけでなく、少女たちはみんなそう感じていた。

 

「タドちゃん先輩は、私たちのために自分の命を犠牲に……」

「東郷さん……」

 

 東郷は田所のことを想い涙を流し、そんな彼女を友奈が慰める。

 あっ、と友奈は、東郷が持ってきていたおはぎに目を止めた。

 

「見て、東郷さん。このおはぎ、タドちゃんみたい」

 

 友奈の言うように、おはぎの凹凸が印影となって、どこか田所の顔を思い起こさせる。

 おはぎだけではない。

 東郷が持ってきた弁当箱の中身──ステーキの焼き目にも、みたらし団子にも、ジュースのパッケージにも。

 地面にも、水たまりにも、空の雲にも……この世のありとあらゆる所に、田所の面影が宿っていた。

 

「タドちゃんはここにはいない。けど、どこにでもいるんだ。タドちゃんが生き残らせてくれた私たちがいる限り、タドちゃんの魂は私たちが受け継いで、それを未来に繋げていくんだよ」

 

 咲き誇った花は散る。けれど、それで終わりではない。散った花は種を残し、それをまた息吹かせるのだ。

 

 不意に、一陣の風が吹いた。樹のかぶっていた帽子が風にさらわれ、飛ばされていく。

 

「あっ。おい、待てい」

 

 風、樹、夏凜が飛んでいった帽子を追いかける。

 残された友奈と東郷の元に、風で揺れる桜の木から花びらがハラハラと舞い降りた。

 

「ねえ、友奈ちゃん」

 

 東郷が友奈に語り掛ける。

 

「私、友奈ちゃんのこと……好きよ」

 

 友奈も、東郷に微笑みを返す。

 

「うん、知ってる」

 

 満開の桜の下、2人の影が重なった。

 東郷と友奈は幸せなキスをして終了。




最後まで読んでくれてありがとナス!

やっぱり僕は、王道を行く、ハッピーエンドですか
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