田所浩二は女の子である   作:ほろろぎ

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第5話 勇者部誕生

 樹お手製、(糞の)フルコースを何とかすべて平らげた田所は、満身創痍でテーブルに突っ伏していた。

 狂乱の宴も終わり、樹と風は台所で食器の後片付けをしている。

 

「タド先輩、満足してくれたかなぁ」

 

 渾身の手料理を振るまえたからか、樹は嬉しそうに言った。

 

「え、えぇ。たぶん、めいびー、きっと。……樹、ご飯作るの面白かった?」

 

 隣で皿を拭きながら風がたずねる。

 

「うん。刺激になりましたよ。興奮しましたよ。またやりたいな~」

「ああ~ダメダメダメ(西田敏行)」

「え、何で?」

「あ、いや、火の扱いとか危険じゃない? 包丁で指切るかもしれないし、そんな危ないこと樹にさせられないわよ」

 

 風はあたふたと言い訳をする。

 お前の料理が不味いからだよ! などと妹の心を傷つけるようなことは、たとえ真実であっても言う訳にはいかない。

 

「もう、お姉ちゃんは心配性だなぁ」

 

 笑いながら樹が言った。思いのほか調理は難しかったらしく、当面はやめておくと言われ、風はほっと胸を撫でおろすのだった。

 片づけを終えた姉妹が台所からリビングに戻ってきた。樹は、やつれている田所を見て強烈な一言を放つ。

 

「もしかして、まだ食べ足りませんでした? ハンバーグの材料もありますけど」

 

 やばいぜ! これ以上胃に物を詰め込むなんて出来ないのにさ……。奴は他人の腹ペコを満たすのが趣味のプロ級料理人だ。

 田所は青かった顔をさらに青ざめさせながら答える。

 

「いやーもう十分堪能したよ……もう勘弁してくれ(悲願)」

 

 純粋な好意からの樹の発言だったが、それは田所を怯えさせる恐怖の言葉でしかなかった。

 エプロンを外した風が、田所の隣に来て言葉をかける。

 

「タド、ダウンしてる場合じゃないわよ。宿題あるの忘れたの?」

「あっそっかぁ……明日休みてえなぁ」

 

 くそー、あと数時間で日をまたぐのに今日中に宿題を終わらせられるのかよ!

 

「ついでだし、アタシとや ら な い か」

「ウホッ! いい女」

 

 一緒に宿題を片付けようという風の言葉に、田所は誘われるままホイホイと彼女の部屋について行っちゃったのだ。

 

「ちょっと! 待て! チョマテ……」

 

 そう言いながら、すぐ後から樹もついてくる。彼女も宿題を出されていたようで、せっかくだから3人で一緒に勉強をすることになった。

 田所は風に分からないところを教えてもらい、樹が分からないところは田所が教えるという、三角形になって3人でしゃぶりあうようなフォーメーションで宿題を進めていく。

 中学の勉強にはついていけない部分もある田所だが、さすがに小学生の宿題くらいは理解できるようだ。

 

「まぁ頭はいいけん」

 

 どや顔を披露する田所。クラスで相手にされない中学生が…小学生の遊び場に割り込んでガキ大将気取っているみたい。(そのまんま)

 宿題を始めてから1時間ほど経った頃、田所が伸びをしながら

 

「チカレタ……(小声)」

 

 と言ったことで、3人は一旦手を止めて小休止することになった。田所は大の字になって床に寝っ転がる。

 疲労困憊の彼女を見て、樹の中に不意に不安がよぎった。

 

「先輩、もしかして食べ過ぎですか? 私、ご飯作りすぎちゃいましたか……?」

「いや全然全然全然(じぇじぇじぇ)こんな、適量やったで」

 

 確かに量的にはちょうどよかったが、味がね……。だが田所は気を使って、そのことは言わないでおいた。

 

「それに、疲れてるのは勇者の訓練してたかr」

「てめェェェェェェ!! 何してんだよォォォ!!」

 

 突然風が大声を上げ、田所の言葉を(さえぎ)った。

 

「? ゆうしゃ?」

「何でもないから! タドはちょっとこっちに来いホイ!」

 

 聞きなれない単語に首をかしげる樹を誤魔化しながら、風は田所を連れて部屋から出ていく。

 

「樹には勇者のことは秘密にしてるんだから、黙れやサルゥ!」

 

 風は勝手に秘密を暴露しようとした田所を怒った。

 確かに彼女は春信に頼まれ、自分も樹も勇者になることを了承したが、出来る限り樹は戦いに参加させたくないと考えている。

 だから、そんな危険なお役目に選ばれたなどということも、妹を不安にさせないため伝えたくないのだ。

 そもそも選ばれる可能性自体が低いとも言われている。なら、余計なことを教えて怯えさせることも無いだろう。

 

「でも、勇者になる可能性はゼロって訳でもないだろ? ならいざって時に土壇場で教えて動揺させるより、今のうちに伝えて覚悟決めさせといたほうがinじゃねーの?」

「……それはそうかもしれないけど……」

 

 田所は、自分に勇者のことを教えてくれた園子に習って、樹にも包み隠さず教えておいてやれと風を諭す。

 

「あれ、なんか足りねえなあ~。姉妹的に何か足りねえなあ~、と思うんですよ、自分的に。でそれが何かと言ったら……やっぱり「信頼」ですね。信じる気持ちが足りない(中略)「愛」が足りない」

「愛……」

ITK()のことを愛してるんだろ? なら信じてやれよ。あいつ、気弱に見えるけど芯は強い心を持ってるって、はっきりわかんだね」

 

 風は目を閉じて腕を組み、ウーン……としばし悩んだ末に

 

「分かったわ、タドがそこまで言うのなら。アタシも樹のことは信じてるし」

 

 と言い、2人はこれまで秘密にしていた勇者やバーテックスなどのことについて、樹に打ち明けることになった。

 

「四国に怪物が攻めてきて、私たちがそれを倒さないといけない? あーもう1回言ってくれ」

 

 出たぜ! 可愛げな樹の極上首傾げポーズ。まったくさー、姉の言うこと疑ってるんじゃねーよ!

 さすがに突拍子のない話だったようで、初めは田所も風も自分に対して冗談を言っていると思う樹だったが、2人の真剣に話す様を見て彼女もようやくジョークではないと信じるようになっていった。マジビビるわぁ!

 

「私も勇者に選ばれてるって、うせやろ? そんなの無理無理無理無理! といいつつ……」

 

 いきなり怪物と戦えなどと言われて、それをすんなり受け入れられる人間などほとんどいないだろう。

 樹も自分にはそんなこと出来ないと即答したが、それはすぐに言い直されることとなった。

 

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい! 待って! 待って下さい! やっぱり私も戦うよ」

 

 勇者に選ばれたことは伝えた風だが、それで妹にも戦いを強いる気は毛頭なかった。

 だというのに、当の樹は自分も共に戦うと言い出したのだ。風は驚いてそれを止める。

 

「ああ~ダメダメダメ。(2回目) そんなことしなくていいから(良心)」

「あぁんひどぅい!(レ) 私が一緒に居ちゃ、いかんのか?」

「いかんでしょ」

「お姉ちゃん1人が危ない目に合うほうが、よっぽどいかんでしょ。ついていくよ、何があっても」

「樹……ありがとナス」

 

 風は妹の強い決意のこもった言葉を聞いて、目じりに涙を浮かべながら彼女を抱きしめた。

 (戦力が増えるんだから)ありがとうございますやでほんま。大赦からしたら。

 田所も横で、姉妹の美しい家族愛を見て満足気に頷いていた。

 

「あ、さ。それじゃあさ、意見もまとまったところで気合の雄叫びやっちゃいますか!? やっちゃいましょうよ!」

 

 ああ^~いいっすね~。ということで、3人は円陣を組む。

 

「じゃあ(バーテックスの野郎)オラオラこいよ! オラァ!」

「行くぞオラァ!」

「イッキーマウス……!」

 

 田所、風、樹の、来たるべき日への気合を込めた叫びが、夜のマンションに轟いた。(やる気が)凝縮されてるんだ。

 次の日、隣人にめっちゃ怒られたのは別のお話し。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 樹も勇者として戦う決意をしたことにより、田所と風の特訓に彼女も加わることとなった。

 このことで放課後は3人の時間が合わないため、特訓は学校が休みの休日に変更になる。

 今日はその訓練日。

 大赦によれば、樹の勇者としての武器は特殊な装備になるらしく、訓練用の物も用意できないとのことだ。

 そのため樹は田所の指導のもとで、彼女と共に走り込みや筋トレなどの基礎的なトレーニングを行っている。

 

「タド先輩は、迫真空手っていうのを習ってたんですよね。私にもそれを教えてもらえませんか?」

「いやーきついっす。(素) 長年修行積んだ熟練者でもへばって退部したくなるくらいハードだから、素人のITKはやめといた方がいいと思うゾ」

 

 一朝一夕で身につくものでもないし、と修行内容が過酷すぎることを理由に止める田所。

 一方の風は、大剣で素振りをしながらどこか上の空の様子だ。

 

FU()、ボーッとしてるけど、どうかしたのか?」

 

 田所の声に、風は素振りを止めて答えた。

 

「もうじき新年度になるじゃない? 大赦からあと2人、勇者の候補性が讃州中に入学してくるって言われてて、どうやって声をかけようかなと思ってね」

「普通にお願いするんじゃダメなの?」

 

 と樹。だが、素直な性格の彼女ですら最初は動揺したのだ。まずは人柄や性格などが分からないと、ン拒否するゥされる可能性も十分にある。

 

「困ったわね~」

「立たねえなぁ、俺が立たしてやるか。しょうがねえなぁ(悟空)」

「タドには何かアイディアがあるの?」

「そうだよ。(便乗) ……ITK、なんとかしろ」

「へえっ!? わ、私ですかぁ!?」

 

 おめえは思わせぶりなことを言っといて他人に丸投げするんだな、マジおもしれー!

 と思いきや、何も考え無しに樹に話しを振った訳ではなかったらしい。

 

「ITKは占いが得意なんだろ? どうやってその2人を仲間に引き込むか、占ってもらえばいいじゃんアゼルバイジャン」

 

 占いなどという一見不確定な案を出す田所だが、実のところ樹のそれは結構な割合で当たると知り合いの中では有名なのだ。

 今はタロットカードしか持っていないが、専用の小道具などを用意すればその的中率は6割5部から8割5部にアップするなど、ほぼ間違いなしの結果をたたき出すほどである。

 田所に頼まれて、さっそくいつも持ち歩いているカードをカバンから取り出した。

 

「樹、頼んだわよ」

「(いい結果を)出そうと思えば(王者の風格)」

 

 姉の期待を受けて、手際よくカードをシャッフルし、並べていく。めくったタロットの絵柄を見て、回答を述べる樹。

 

「『共同作業で親睦を深めるといい』、って」

 

 答えを聞いて、田所と風は顔を見合わせた。

 

「共同作業って、一緒に何をすればいいのよ。運動会とか?」

「期間が狭すぎるだろ。ん~……」

 

 田所は頬に手をやり思案顔を浮かべる。

 

「学生の共同作業っつったら、やっぱ……部活ですかね」

「部活かぁ。でもアタシもタドも帰宅部じゃないの。それに部活だったら他の生徒もいて、ややこしくなるわよ?」

「度胸足りねえんだよ。新しく部を作るくらいでIKEA」

 

 勇者同士の交流を図るための専用の部活、その創設を田所は提案した。

 

「部を作るのはいいとして、何をするかが問題ね」

「それも占いで出てるよ。『人のためになることをしろ』、だって」

「何か芸術的……。あ、さ、名前は『勇者部』ってことで。ウン。ハイ、ヨロシクゥ!」

「「ああ^~いいっすね~」」

 

 田所の発言によってなんだか適当な感じで決まってしまったが、兎にも角にもここに『人のためになることを勇んでやるクラブ』、その名も勇者部が発足されたのであった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 時は流れ、今は神世紀299年の4月。新年度を迎え田所と風は中学2年に、樹も小学6年生へと進級した。

 今日は春休みが開けての初の登校日。讃州中の校門前で田所は1人、入学してくる新入生たちを眺めていた。

 

「こいつらの中に新しい勇者候補がいるのかぁ……ん?」

 

 続々と登校してくる新入生たちの中で、ある2人組の少女が彼女の目にとまった。

 1人は赤い頭髪を短くまとめた髪型をしており、もう1人は黒髪で車椅子に乗っている。

 車椅子という所が目を引いたが、それ以上にその2人が昇降口の目前で立ち止まったまま、動く気配が無いことが気になった。

 

「お、大丈夫か大丈夫か?」

 

 何かあったのか、と田所が駆け寄り声をかける。

 その言葉に振り向く2人の少女。

 

「……神之御子(かんのみこ)……」

 

 赤い髪の少女の顔を見て、田所は無意識に不思議な言葉を発した。それは彼女自身にも、なぜそう言ったのか理解できないものだった。

 

「? カンノミホ? いえ、私は違いますよ」

 

 赤い髪の少女が聞き返すように言った。人の名前と聞き間違えた様だ。

 

「いや、なんでもナイス。それよりお前ら、ずっと立ち止まってるけどどうかしたのか?」

 

 田所が尋ねる。

 少女が説明するに、どうやら車イス用のスロープが用意されていないため、昇降口へ上がるための階段をのぼることができないで困っていたらしい。

 

「申し訳ありませんが、どなたか教師の方を呼んできてはいただけないでしょうか」

 

 車椅子の少女が田所に頼んできたが、それよりもこっちのほうが早い、と田所は車椅子の後ろに回った。

 

「ヌッ!」

 

 車椅子を後ろから押すためのハンドル部分を持つと、力をこめて少女ごと車椅子を持ち上げてしまったのだ。大の大人でも不可能な力技である。

 そのまま数段ほどの階段を上り、昇降口の入口で少女の乗っている車椅子をそっと下ろす。

 

「パパパッとやって、終わりっ!」

 

 手を叩きながら、一仕事終えたといった風に田所が言う。

 

「はえ^~すっごい力持ち……。私も体力はある方だけど、それ以上ですね」

 

 赤い髪の少女が、おっぱげたといった様子でつぶやいた。そのまま言葉を続ける。

 

「助けてくれてありがとうございました。私、1年生の結城 友奈です。こっちは親友の……」

「東郷 美森です」

 

 車椅子の少女、東郷も田所に頭を下げて感謝の意を示す。

 

「俺は田所 浩二、2年だ」

「タワーリングインフェルノ先輩ですね」

「違うわよ、友奈ちゃん。タイタニックハーキュリーズ先輩でしょ」

「あっそっかぁ。ごめんなさい、タイタンズを忘れない先輩」

「(タドとかタドちゃんで)イーヨー……」

 

 (名前を間違えられる運命からは)ああ逃れられない。

 

「あっ、大変だ。入学式が始まっちゃう!」

 

 友奈が腕時計を見て叫ぶように言った。

 

「おう行ってこい行ってこい。スロープは俺が先生に言って準備しといてもらうから」

「ありがとう、タドちゃん!」

「ありがとうございました」

 

 田所はそう言って、入学式に向かう友奈と東郷を見送った。

 

「(人を助けるって)Foo↑気持ちぃ~」

 

 これこそまさに、勇者部の部員にふさわしい行いだろう。これって、勲章ですよ……?

 田所は2人に言った通り、先生に頼んでスロープを設置してもらうと、その後は風と共に勇者部として活動するための部室の準備に取り掛かるのだった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「よし、行くわよタド」

「かしこまり!」

 

 入学式から数日後の放課後、風と田所は勇者候補の少女2人に声をかけるため、教室を後にした。

 部活への勧誘という建前上のそれを装うため、勇者部の活動内容を書き込んだ手製のチラシを持っている。

 

「で、どんな奴なんだよ? その勇者候補って女子は」

 

 廊下を歩きながら話しかける田所。風は彼女の横を並んで歩きながら答える。

 

「大赦から資料送られたでしょ。……見てないの?」

「モシャモシャセン(申し訳ございません)。まま、FUが確認してるなら大丈夫でしょ」

 

 田所の適当さに、はぁ~……とクソデカ溜息をつく風。

 そんな彼女の目にタイミングよく、件の勇者候補の2人組の姿が映る。

 

「あら、噂をすればだわ。タド、あの2人よ」

「ん? あれって……」

 

 2人組に駆け寄る風。田所も遅れて彼女のあとに着いて行く。だんだん2人組の少女の話し声が聞こえてきた。

 

「ねー、今日色んな部活に誘われちゃったねー。押し花部から誘われたかったなぁ」

「もう、そんな部活存在しないでしょ」

「あなたたちにお勧めの部活はこ↑こ↓にあるわ」

 

 風は少女たちの行く手を遮るように2人の前に立つと、彼女らの会話に自然に加わった。

 

「あなたたちにお勧めの部活はこ↑こ↓にあるわ!!」

「2回も言った!」

「大事なことだったのね」

 

 キョトンとしている2人に、風は声を大にして言う。

 

「アタシは2年の犬吠埼 風。こっちは友達の」

 

 風が田所を紹介しようと顔を向ける。田所は2人の少女──友奈と東郷に、軽く手を挙げて挨拶した。

 

「よぅ、YUN(友奈)TG(東郷)だったな」

「あ、タドちゃんだ」

「タドちゃん先輩、この間はありがとうございました」

「え、アンタたち知り合いだったの?」

 

 親しげに話す田所たち。以前の経緯を知らない風だけ置いてきぼりを食らっている。そんな彼女に東郷がかいつまんで事情を説明をした。

 

「それで、先輩方は私たちに何の御用でしょうか?」

「おっ、そうだな。あなたたちにお勧めの部活は……」

「それはもう聞き飽きたわ」

「私たちにお勧めの部活って何ですか?」

 

 話を戻す東郷と、天丼を繰り返す風に、ツッコミを入れる田所、そして我関せずのマイペースな友奈。

 風は持っていたチラシを友奈と東郷に見せる。

 

「『勇者部』? わぁ~、とってもワクワクする響きですね!」

 

 東郷はそれほどでもなかったが、友奈はすっごい食いついてきた。

 

「世のため人のためになることを恥ずかしがらず勇んでやるクラブ、だから勇者部って訳ね」

「まあ簡単に言えばボランティアだな」

「はえ~」

 

 風と田所の説明に頷く友奈。

 

「なるほど。あえて勇者というケレン味のある言葉を使うことで、皆の興味を引き存在感を確立するという訳ですか」

「え、そうだったの、タド」

「そんな深い意味ある訳がな~い♪」

 

 東郷が独自の分析をしてみせるが、生憎見当はずれだったようだ。

 

「私憧れてたんですよね、勇者っていう言葉の響きに。かっこいいな~、って」

「やっちゃいますか? やっちゃいましょうよ!」

「そのための勇者部、勇者部……あと、そのための俺たち……? 部活はやるためにあるでしょ」

 

 チラシに目を落とし揺れる友奈、その後押しをする風と田所。

 友奈は東郷にも意見を求めると、友奈がやるなら自分も一緒に入ると答えたことで、2人は正式に勇者部に入部するということになった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 無事勧誘も終え新メンバーを加えた勇者部は、正式に活動を始めることになった。

 本来の使命は怪物の排除だが、それはまだ先のことだと神樹のお告げで伝えられている。

 当面は表向きのボランティア活動を行うことに。

 教師に頼まれ学内の敷地にある小屋の雨漏りの修理や、生徒の依頼で校庭の草むしり、部活の助っ人、果ては河原のごみ拾いまでと、頼まれれば大抵のことは引き受けてしまうため勇者部の名前は瞬く間に広がっていった。

 そんな諸々の活動や、勇者部の行動指針である五箇条を決めたりしていたらまた1つ年を経て、讃州中学に樹も入学し勇者部にも入ったことでついに部は5人体制を迎えた。

 初対面の時には2人の先輩──友奈と東郷に緊張していた樹だが、2人の人柄のおかげですぐにそれは解かれることとなる。

 

 人が増えれば活動の幅も広がる。

 これまでは学内の依頼を中心に動いていた勇者部だったが、東郷の立ち上げたホームページの依頼受け付けのおかげもあり、行事の手伝いや福祉活動の参加など学外からの依頼も受けるようになっていた。

 新聞にも取り上げられたりして、少女たちは忙しい日々を有意義に過ごしている。

 

「こうして勇者部で人のためになることをしていたら、私たちも天国に行けてお父さんとお母さんに会えますかね……」

 

 部の活動で通学路のゴミ拾いをしていた樹が、共に作業中の田所に独り言のようにたずねた。

 

「昔誰かが言ってたんだけどさぁ、無償の愛ってのは天国へ行くための見返りなんだと。だったら、見返りを期待せずに他人に尽くしてるお前たちが、天国に行けないはずはないってそれ一番言われてるから」

 

 どこかすがるような思いでいた樹の言葉を、田所はしっかりと正面から肯定してみせる。

 

「絶対にまた会えるって、はっきりわかんだね」

 

 ハァ……(感心) 絵に描いたような回答(笑) 凄い自信だね。(確信が)凝縮されてるんだ。

 

「タド先輩って根拠もないのに自信満々ですよね。でも、なんか芸術的」

 

 そう言って笑う樹の顔は、降り注ぐ陽の光に照らされて、まるで天使のように輝いて見えるのだった。

 

 神世紀300年、今日も少女たちは世のため人のための活動を続けている。

 そして、本来の意味での勇者の使命を果たす時も、目前まで迫ってきていた。




今回のサブタイトルはガオガイガーのOPのパロです。
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