田所浩二は女の子である   作:ほろろぎ

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ありふれと交互に書いているので間が開いてしまいました。


第8話 燃える思い

 2戦目にして3体ものバーテックスを相手にした勇者部だったが、東郷を新たな戦力として無事これを切り抜けることができた。

 大赦のお告げにより、次の戦いまで一月ほどの猶予があると分かった一同は、田所の発案で友奈のために勉強会を開くことになった。

 

「おはよ~」

「おはようございます」

 

 せっかくだから休日にみっちりやろうと、早朝から待ち合わせしていた勇者部。田所を除いた4人がすでに集まっていた。

 

「おまんこぉ^~(気さくな挨拶)」

 

 4人からわずかに遅れて田所も到着する。全員そろったことで、勉強会の会場である田所の家へ向かうことに。

 

「風先輩と樹ちゃんも、タドちゃんの家には行ったこと無いんですよね?」

「そうだよ。アタシたちのマンションからはちょっと離れてるからね」

「どんなお家なんですか?」

「まま、そう焦んないでよ」

 

 一行は他愛無い会話をしながら、しばらく歩き続け住宅街へ入っていった。

 

「こ↑こ↓」

 

さらに歩くこと数分、目的地に到着した田所は自宅を指さし言った。

 

「「「「はぇ~、すっごい大きい……」」」」

 

 風たち4人は声をそろえ、田所の家を見た感想を漏らす。彼女たちの言うように、4人の目の前には結構な大邸宅がそびえ立っていた。

 

「入って、どうぞ」

「あっ、おじゃましまーす」

 

 リビングに通される一行。荷物を置くと、思い思いに部屋の中に目をやる。

 

「本当に大きいっすね~……」

「いやこれ大きすぎでしょ……。タド1人だけでしょ、住んでるの。アタシと樹は2人でマンションなのに、なんでタドは一軒家でこんな豪邸与えられてるのよ。おかしいダルルォ!?」

 

 樹が感心したような声をこぼし、風は嫉妬の言葉を漏らした。

 

「でも、友奈ちゃんのお家もこれくらいあるわよね」

「家はお父さんとお母さんの3人暮らしだからね。東郷さんの所だって、家の前におっきな門があるから豪邸だよね~」

 

 どうやら東郷と友奈の家も結構裕福なようだ。

 風はうがーっと声を荒げる。

 

「グヌヌ……、おのれブルジョワ共め~! 天涯孤独のこの身が憎い!」

「私たちも、元々は一軒家だったんだけどねぇ」

 

 あはは、と樹は乾いた笑いを浮かべた。

 大赦~がお金出してると思うんですけど、なぜ犬吠埼姉妹はマンション暮らしなんでしょうかね~? 不思議ですね~。

 考えても答えが出るはずもなく、とりあえず目的であった勉強会を始めようということになり、全員ソファーに座ってテーブルの上に勉強道具を並べる。

 

「じゃ、一緒に(勉強)やろっか。(YUNの苦手な科目は)車で言えばどのくらいだ?」

「え、車……? う~ん……あらゆる車両です」

「それって全部の教科ってことじゃねえかよ!? (そんなんでテストの結果とか)大丈夫?」

 

 ルイヴィトンのバッグからこれまで受けたテストの答案用紙を取り出すゴッドハンド結城。

 

「あぁ落ちたねぇ、落ちましたね……」

 

 回を重ねるごとに点数を落としていく答案用紙を見て、東郷が我がことのように溜息をついた。

 

「あかん、このままじゃ友奈ちゃんの進級結果が死ぬぅ!」

「そのために集ったんだからなぁ? わざわざ田舎から」

 

 嘆く東郷を励ますように風が肩を叩く。

 

「みんなごめんナス、私のせいで……」

「お互い持ちつ持たれつこれ常識(至言)」

「そうだよ。(便乗) 私もこれから先の予習になりますし、気にしないでください」

 

 自身の不甲斐なさに落ち込む友奈を田所はフォローし、樹もそれに便乗した。

 

「それじゃあYUNの頭をよくするための勉強会、はい、よーいスタート(棒読み)」

 

 田所の号令を皮切りに、風と東郷がそれぞれ得意な教科を中心に友奈に教えていくこととなった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 時間は過ぎ現在はちょうどお昼時。午前中いっぱいを使って詰め込めるだけ知識をつめっ……詰め込まれた友奈は、疲れからぐったりとテーブルにふせっていた。

 

「おまたせ! アイスティーしかなかったんだけどいいかな?」

 

 そこに田所が人数分のおもみももを持ってきてサービスする。

 

「休憩にしましょうか。友奈ちゃんもお疲れさま」

 

 と言って東郷は筆記用具を片付け、代わりにカバンから1つの重箱を取り出した。蓋を開ければ、中には彼女お手製のぼた餅がギッシリと入っている。

 

「ヒャァ! 我慢できねえ、東郷さんのぼた餅だ!」

 

 箱の中身を確認するや否や、友奈は先ほどまでの疲れが嘘のようにガバッと飛び起き、口の端によだれをたらし始めた。

 田所が小皿を持ってきたので、東郷はそれぞれにぼた餅を取り分け配る。

 

「「「「いただきま~す」」」」

「はい、召し上がれ」

 

 友奈は勢いよくぼた餅を口に含む。口内に程よい甘味とほんの少しの塩気が広がり、勉強で疲れた頭を癒してくれるようだった。

 

「うん、美味しい!」

 

 田所と犬吠埼姉妹も、ぼた餅の味に舌鼓を打つ。

 

「このぼた餅、最高だわ。この感じ、いい感じだで」

 

 賞賛の声を上げる友奈。その手元に置かれた彼女のスマートフォンから、精霊である牛鬼が飛び出てきた。

 牛鬼は友奈が持つぼた餅を、物欲しそうな目で見つめる。

 

「ひょっとして、牛鬼もこれ食べたいの?」

 

 コクコクとうなづく。その口からは、主人の友奈同様によだれが垂れている。

 

「しょうがねぇなぁ(悟空)」

 

 口ではそう言いつつも、子供に対する母親のような笑顔を浮かべながら、友奈は牛鬼に自分のおはぎを食べさせてやった。牛鬼も「たまんねぇっす!」と言いたげな、喜んでいる雰囲気が感じられる。

 

「TGって基本的に料理上手いけど、ぼた餅は飛びぬけてるよな。なんかコツでもあるのかゾ?」

「んにゃぴ……やっぱり、友奈ちゃん……が美味しいって言ってくれたのが一番ですよね」

「YUNが?」

「私もタドちゃん先輩ほどではないけど昔の記憶が無くて、前は独りきりで辛い日々を送っていたの。そんな時友奈ちゃんと出会って、親身になって優しくしてくれて……。

まだ慣れない頃に作ったぼた餅を、毎日食べたいくらい美味しいって言ってくれて、とっても嬉しかったの。それからね、私がぼた餅づくりに力を入れるようになったのは」

「はえ~、そんなことがあったんすね~」

 

 東郷の過去を聞いた田所は、彼女がぼた餅に入れ込む理由が分かって納得した。

 

「でもお前、いつも何かあるとぼた餅だよな。たまには他の食べ物も作ろうとは思わない訳?」

「ぼた餅は私と友奈ちゃんを結びつける絆の証みたいなものですからね」

「毎度ぼた餅だと飽きる……飽きない?」

「いや全然全然全然(じぇじぇじぇ)こんな東郷さんのぼた餅は必須エネルギーみたいなもんやし」

 

 田所に聞かれた友奈は平然とこれを否定した。

 実際、田所と犬吠埼姉妹もこれまでたびたび東郷のぼた餅を食べてきたが、何度口にしても不思議とまた次も食べたくなるのだった。

 

「私の友奈ちゃんへの燃える思いは誰にも止められないわ」

 

 東郷のぼた餅への情熱は、友奈が食べ続ける限り消えることはないだろう。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 勇者部で行った勉強会のおかげで友奈のテスト結果も無事赤点を回避することに成功したその日、ついに5体目の敵対者がやって来た。

 樹海に集う勇者部の前に現れたのは、4本の角を持つ山羊座──カプリコーン・バーテックスだ。

 

「一ヵ月ぶりだけど、みんなヘーキ?」

「ずっと勉強ばっかりで、勇者アプリのテキスト読んでる暇がありませんでした」

「えっとですね、ここをこんな感じで……」

 

 風の問いかけに友奈は自信無さげに答え、樹がアプリの説明をしている。

 

「まま、なんとかなるやろ。TGも援護はい、よろしくぅ!」

「まかせてください」

 

 呑気な田所。東郷も2戦目だが、緊張はしていない様子だ。

 

 バァン!

 

 出し抜けにバーテックスが爆発した。少女たちはお互い顔を見合わせる。

 

「誰か、なにかした?」

 

 だが、勇者たちはまだ行動を起こしていない。

 

「! みんな、あれ見ろよ見ろよ」

 

 何かに気付いた田所が声を上げた。彼女の視線の先には、どこからか飛んできた1人の少女の姿があった。

 

「鳥だ!」

「飛行機だ!」

「いえ、あれは勇者よ!」

 

 風、樹、東郷が口々に叫ぶ。東郷の言うように、少女は赤い勇者服を身に着けている。

 

「ちょろい!」

 

 少女は手にした剣をカプリコーン・バーテックスに投げつける。刺さった剣は爆発を起こし、怪物にダメージを与えた。

 カプリコーンの体が細かに振動し始める。田所たちは良くない予兆を覚えた。これまでの経験からすると、おそらくカプリコーンは最終進化を行おうとしているのだろう。

 

「進化なんてさせるもんですか!」

 

 赤い勇者服の少女は、両手に剣を何本も生成しカプリコーンに全て投げつける。大爆発。ダメージによってカプリコーンは進化を果たせず、頭頂部から御霊を吐きだした。

 御霊は毒々しい色のガスを辺り一面に散布し始める。田所はガスに飲み込まれてしまうが、風たちの精霊バリアに守られ事なきを得る。

 

「そんな目くらまし、気配で見える見える、太いぜ」

 

 言葉通り、少女はガスで視界が効かないのをものともせず、一刀のもとにカプリコーンの御霊を両断した。戦 闘 終 了。

 少女の元に田所たちが集まる。

 

「えっと、誰?」

「揃いも揃ってボーッとした顔してんのね。こんな連中が神樹様に選ばれた勇者だなんて、冗談はよしてくれ」

 

 友奈の問いかけを無視して、少女は馬鹿にしたような口ぶりでそう言った。友奈はめげずに再び少女に声をかけようとする。

 

「あのー……」

「なによ、チンチクリン」

「チン……」

 

 面と向かって悪口を言われ、なにごとにも動じない友奈も珍しくショックを受けていた。すかさず東郷が励ましている。

 

「チンチクリンさん(・・)ダルルォ!? さんをつけろよデコ助野郎!」

「誰がつるピカハゲ丸ですってぇ!? 私のおでこはチャームポイントなのよ!? 結構キュートだって男子にも人気なんだから!!」

「自画自賛恥ずかしくないの? なんとか言えよ変態」

「変態はあんたでしょうが! じゃあ今、(自分のことを)棚に上げ(て)るから」

「口論終わり! 閉廷! ……以上! 皆解散!」

 

 後輩のことを馬鹿にされ頭にきた田所が東郷に代わって怒りの声を上げ、少女も怒り返してあーもう滅茶苦茶だよ。そこに風が割って入って2人の言い争いを無理やり終了させた。

 同時に樹海化が解除される。少女はぶつくさ言いながら舞う花びらに紛れ、来た時と同じように唐突にその場から姿を消すのだった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

 昨日は放課後からバーテックスとの戦闘。今回(俺らを無視して)戦った赤い勇者は、正真正銘の怪物を進化する前に瞬殺するS役。

 わめこうが叫ぼうが嫌がり逃げるのを押さえつけて剣ぶっ刺して最後に爆発! マジ(なにもしなくてよくて)楽だったぜ?♪

 (赤い勇者は)ツンギレ系でガタイもよくてエロさ抜群! 再会が楽しみだね!

 

 なんてことを田所たちが話し合っていた翌日、放課後の勇者部部室に件の赤い勇者服の少女が、なんの前触れもなく表れたのだった。

 

「この子、三好 夏凜ちゃんって言って、今日私たちのクラスに編入してきたんです」

 

 少女──夏凜に変わって友奈が、田所たち別クラスの人間に経緯を説明した。

 

「私はあんたたち試験運用型と違って、大赦が派遣した正式採用型の勇者なのよ」

 

 凄くねえ? と自慢気な表情で夏凜が言う。東郷が挙手して疑問を口にした。

 

「どうしてこのタイミングなんです? もっと早く来てくれればよかったのに」

「私もそうしたかったんだけどね、大赦があんたたちの戦闘データを解析するのに時間がかかったのよ」

「なんでそんなことを?」

「それは、私という最強の完成型勇者を生み出すためよ!」

 

 夏凜は胸を張りそう言い、言葉を続ける。

 

「あんたたちトーシロと違って、戦闘訓練もばっちり受けてるしね」

 

 どこにあったのか、夏凜はモップを振り回しポーズを決めた。

 

「戦闘訓練だったら俺らもやってるよなぁ?」

「そうだよ(便乗)」

「ですです」

 

 田所の言葉に風と樹が同意する。夏凜は彼女らの言葉を聞いて鼻で笑った。

 

「どうせ軽い筋トレとかなんかでしょ? そんなんじゃ甘いよ(棒読み)」

「あぁん!? なんだその態度ォン? せんっ↑ぱいに対する態度かそれがぁ!?」

「全然ゆるケツじゃんお前!」

「あぁん? スポーツ的にはハードワーク!?(レ)」

「だからやめロッテ!」

 

 前日のように言い争いになる夏凜と田所を、同じように風が制止する。

 夏凜は言葉を続けようとするが、そこであるものが目に映った。

 それは侍の姿をした彼女の精霊である義輝と、友奈の精霊の牛鬼がじゃれあっている所だ。

 ヨツンヴァインにされた義輝。その背に覆いかぶさるようにまたがっている牛鬼が、突き出された義輝の尻に自身の腰を勢いよく打ちつけている。

 

「ちょうぇああああああ!?」

 

 部室の片隅で繰り広げられている真昼間からの獣姦行為に、夏凜は顔を真っ赤にして叫び声をあげ、義輝を牛鬼から引きはがした。

 

「なんてことしてくれてんのよ、このド腐れ畜生強姦魔!!」

「牛鬼はレイパーじゃないよ。ちょっと食いしん坊くん(意味深)なんだよね」

「ゲドーメ」

 

 夏凜に抱きかかえられた義輝は、頬を染めながら言葉を発した。牛鬼に襲われたのも満更でもないといった感じだ。たまげたなぁ。

 

「牛鬼は精霊なら見境なく襲い掛かるから、みんな外に出しておけないのよね」

 

 と東郷。

 

「だったらそいつしまっときなさいよ!」

「呼んでないのに勝手に出てきちゃうんだ」

「えぇ……。自分の精霊くらいちゃんと躾けときなさいよ」

 

 夏凜は困惑し、続けて呆れながら言った。その後、気持ちを切り替え言葉を続ける。

 

「とにかく、私が来たからには以降は私の指示に従ってもらうからね」

「あ、おい待てい! 勇者部のリーダーは一応風なんだよなぁ。ちなみに副部長は俺だから、そこんとこハイ、ヨロシクゥ!」

 

 異を唱える田所だが、彼女が副部長だということは他のメンバーにも初耳のことだった。流れを察して誰もな口を挟まなかったが。

 

「……まあ、上級生に従えってのも一理あるから、そこのところは納得してあげるわ」

 

 しぶしぶながら夏凜は引き下がった。そして、田所を指さしながら他のメンバーに声をかける。

 

「ところでさあ……こいつ誰だよ?(食い気味) なんでおっさんが混じってんの?」

「は?」

「は?」

「は?」

「は?」

「は?」

「え?」

 

 夏凜の言葉に田所、風、樹、友奈、東郷が、こいつなに言ってだ? といった顔をする。

 

「いや、だから、なんで勇者部なのにおっさんがいるのよ? 勇者って女の子しかなれないでしょ」

「あんたなに言ってんの? タドは女の子じゃない」

 

 夏凜の言っていることがまるで分からないといった感じの風。彼女の言うことに、友奈たちもそうだよ、と便乗する。

 

「いやいやいや、どっからどう見てもおっさんじゃない! しかも女子の制服着てるし! 多分変態だと思うんですけど(名推理)」

「夏凜ちゃん、タドちゃん先輩に失礼よ。先輩はどこからどう見ても立派な大和撫子じゃない」

「えぇ……。(困惑) 絶対男なのに……この子たち頭おかしい……」

 

 ただ1人、田所を男だと主張する夏凜に対し、頑として女の子だと言って譲らない他のメンバー。

 

「当たり前だよなあ」

「クッ……!」

 

 勝ち誇ったようなドヤ顔を披露する田所。夏凜は自分の認識が認められなかったこととと田所の表情に、悔しさで顔をゆがませる。

 続けて、これ以上言いあっても無駄だと諦めたように脱力すると、はぁ~とクソデカ溜息を吐いて、置いていた自分の学生カバンを手に取った。

 

「まま、ええわ。おっさんでもなんでも貴重な戦力なんだし、私の足だけは引っ張らないでよね」

 

 そう言うと、夏凜はみんなに背を向けて歩き出した。

 

「待てコラァ!!(迫真)」

「ファッ!? 何よいきなり大声出して!」

 

 部室から出ようとしていた夏凜を、友奈が迫真の叫びで呼び止める。

 

「夏凜ちゃんもう帰っちゃうの?」

「だってもうやることないじゃない」

「これから夏凜ちゃんの勇者部入部を記念して、かめやでうどんパーティーを開くんだよ。一緒に行こうよ!」

「あーめんどくせー、マジで」

「私もやったんだからさ」

「(行く気は)ないです」

 

 友奈の誘いも取り合わず、夏凜は素っ気ない態度でピシャリと扉を閉める。

 残された友奈の寂しそうな姿を見て、田所はしょうがねえなぁと、一計を案じるのだった。




今回のサブタイは、夏凜ちゃんのモチーフのヤマツツジの花言葉です。
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