「あなた、今日はムチにする? スタンガンにする? それとも……|STF《ステップオーバーザトーホールドウィズフェイスロック》?」
「うーん、じゃあSTF」
そう言うやいなや、沙織ちゃんは俺を背おいなげ。
倒れた俺の左足を折り曲げ、足でホールド。躊躇なく俺の背中に倒れ込み、流れるように腕で顎を締めてきた。ガアッデム! 上手すぎる!
「どう?」
「……!」
どうと言われても、声なんて出るわけがない。
頬骨は軋んでるし、首は折れそうだし、背中は悲鳴をあげている。パワーはないが、テクニックがエグい。
この痛みと、触れ合った肌から伝わる体温……。
最高だな!
でもこのままだと死ぬから、タップしましょう!
「ふー、ふー、はぁはぁ」
「どうだった?」
俺は生死をさまよっていたのだが、沙織ちゃんはお味噌を変えてみたときのお味噌汁の感想を聞くかのように質問してきた。
「これを毎日食らえたら幸せだね」
「ふーん。幸せものだね」
幸せに違いない。結婚相手に求めることはね、食事が美味いとか、風呂が沸いてるとか、そんなことじゃあないんだよ。
家に帰ってきたときの出迎えのムチがちょうどいい痛さとか、ゾクゾクするような視線とか。そういうのがいいんじゃないかな。沙織ちゃんと結婚できる男が羨ましいよ。
「もっと
「も、もっと
もう十分だろ!
そう思うのは俺だけなのか?
沙織ちゃんは最近、制裁という言葉を気に入っているようで、何度も言ってくる。日曜日は制裁しにいきますと宣言されちゃったしな。そんなに制裁されるようなことはしてないと思うのですが。
しかしながら、これは考え方次第というか。
さっきみたいにプロレス技をかけてもらえるわけで。
「やっぱりプロレス技なんじゃないか?」
「やっぱり。パパとママの部屋に夜行くとプロレスしてたって言うもんね」
パパとママ……プロレスしてるんですね。なるほど。沙織ちゃんの妹が生まれてくるのを楽しみにしていよう。
「なにがいい?
「沙織ちゃんプロレス技に詳しいね!?」
「べ、別に、結婚したらプロレスすることになるから勉強してるとかじゃないから」
「……」
なんだろう、親のごまかし方で子供って人生変わっちゃうんだね。気をつけたほうがいいね。
しかし技を知ってるとして、沙織ちゃんが俺にロメロスペシャルをするとか無理では? 足が折れちゃうよ。
ここは沙織ちゃんでも簡単にできる技がいいだろうね。
「お、漢固めかな」
「男色の?」
「た、確かそう」
「わかった」
男色という言葉の意味は知らなそうだが、レスラーの名前にも詳しいらしい。
こちらが構える暇もなく、タックルされてあっさりダウン。どこで練習してるんですか?
すぐに頭を押し付けられた。
「はい、漢固め」
「むぐむぐむぐ!」
説明しよう!
漢固めとは、ゲイのレスラーが相手の顔に自らの股間をぐりぐり押し当てるという恐ろしい技である!
だが、これを女子小学生にやられた場合は最高の技である!
沙織ちゃんはフリフリのピンクのかわいらしいミニスカートであり、その中はやわらかいコットンの生地であることが顔の感触でわかる。
頬に当たる太もも、温かい体温。むせ返るほど匂う、沙織ちゃんの香り。これはもう漢固めとは呼べない。
よし、これを
「ほらほらほら」
ぐりぐりぐりぐりと、股間で顔を蹂躙してくる。くっ……動けない……! 動けないのではなく、動きたくないから動けない。3カウントどころじゃない、3イヤーくらい動けなさそうだ。石の上にも三年というが、JSの下にも三年といったところか。
顔はぼーっとしてくるし、頭はクラクラする。ぽわぽわと多幸感が溢れていくのがわかる。
しかしアレだな。
ちょっとこれは……。
俺はポンポンとお尻を叩いてタップした。ずっとタップしていたい。
沙織ちゃんは俺の顔から体を離して、そのままストンとお腹に座った。ナチュラルに見下される。
「どうだった?」
「うーん、ちょっと幸せすぎてダメだな」
「は?」
なんか違うんだよね。
チョロい小学生を騙してラッキースケベみたいな感じがする。
そうじゃないんだよな。
思案する俺を、ゴミを見るような目で見てくれている。その魅力的な顔を見ていたら気づいた。
「わかった。俺がリクエストしたのが間違いだったんだ」
STFを選んだことは間違いじゃなかったと思うが、俺からSTFをしてくれと頼むことはないわけ。その三択ならそれしかないだろと思っただけ。
制裁なのに俺からなにか言うとかオカシイんだよ。
「制裁ってやっぱり一方的にされるものじゃない?」
「ん? こうしてあげたい、っていう気持ちが大事ってこと?」
「あ、うん。そうだね」
「なるほど」
わかってくれたようです。
沙織ちゃんは腕を組んで、目をつむっています。考えてるぞ、考えてるぞ~。
さあ、なにをされるんでしょう。
踏むのかな。蹴るのかな。叩くのかな。ま、まさか潰す? それはちょっと……いや、アリか?
「足を洗ってあげたい」
「え?」
俺は別に犯罪者では……い、一度逮捕されたけど……。
「足が臭いから」
「ごめんね!?」
シンプルに足が臭かったから足を洗いたいという話だった。そうかな?
「背中も流したいから、お風呂を沸かす」
「ふーむ?」
それのどこが制裁なのか。
沙織ちゃんはもう我が家の風呂なんて慣れたもの。テキパキと洗って、お湯はりを始めた。
「さて」
沙織ちゃんはもう我が家の風呂なんて慣れたもの。テキパキと服を脱いで、風呂に入る準備を完了した。
「って、まだ沸いてないよ、沙織ちゃん!?」
「しまった」
あちゃーという顔だが、すっぽんぽんなことは気にしてないんですよね。すでにお風呂から出たかのようにキレイな体ですね。剃毛もしたのかな?
全然服を着る素振りのない沙織ちゃん。全然目をそらす素振りのない俺。
くりくりとした丸くて大きな瞳が、俺の顔をじっと見る。
「もう入ろ」
「え。そう?」
そう言われちゃ入るしか無い。
なぜかズボンとパンツが脱ぎにくいなあ。なんか引っかかるんだよな。
先に風呂に入った沙織ちゃんを追いかけて浴室へ。
「どうぞ」
「はい」
自分の家の風呂の椅子に座るよう促されるというのも、なかなか斬新ですね。電話で女の子を呼ぶタイプのお店みたいですね。
シャワーヘッドを持った沙織ちゃんは、いきなり蛇口をガッと回した。
「アーッ!」
何だ何だ何だ!?
なにこれなにこれ!?
「み、水が冷たすぎる!」
あるあるっちゃあるあるだが、シャワーの温度を確かめてからかけてくださいっ!
「ごめんごめん」
全然悪くなさそうに謝る沙織ちゃん。わざとなのか……?
「……?」
シャワーの温度が上昇してきた。しかし……。
「あ、熱い!! アツーイ!」
「あ、間違えた」
何をどう間違えたらシャワーから熱湯が出るのか。ここまで熱いお湯を出す方法を俺は知らないのですが?
「ぎゃあーっ!?」
また冷たい水なんですが!? 途中は無いんですか!?
「火傷しちゃうから冷やさないと」
これはわざとだったんですね!
冷水をかけるんだったら、事前に言ってもらっていいですか!?
「じゃ、背中洗うね」
「ぎゃーっ!? それはスポンジじゃなくて浴槽を洗うブラシだよ!」
熱されて冷やされた背中がーっ!?
「そうなんだ」
「継続!?」
ブラシは止まるどころか、スピードアップです!
「ボディソープいっぱい使っちゃったから」
「エコだねえ!」
ガシュガシュと音を立てて背中をこすられる。激痛。
うん……。
これだよこれ!
この容赦のないプレイ!
沙織ちゃんはこうでなくちゃ!
「顔も洗う」
「痛ェーッ!」
「股間も洗う」
「ぎゃあああああああ」
痛い、だがそれがいい。
沙織ちゃんは、 怒って攻撃してきてもいいし、そのつもりがなくうっかり攻撃になっちゃってもいい。
ダメージはすべてご褒美。それが沙織ちゃんなんだよね。
「あっ、シャンプーが飛んじゃった」
「ああーっ! 目が、目がーっ!」
ご、ご褒美、ご褒美ィー!
「そろそろパワーボムかパイルドライバーしよっか。バスタブに当たる感じで」
「死んじゃう! 死んじゃうから!」