女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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見抜きいいですか

「なに? エッチケット? エロ同人誌即売会か?」

「違う! ネチケット!」

「ネチケット? ねちねちしたエロの同人誌即売会か?」

「違う! ネットのエチケット!」

「オンライン上で開催するエロ同人誌即売会か?」

「だから違うって! そもそもエチケットって言葉を知らないとは」

 

 やれやれというポーズの小江野さん。いきなり学校でエロいことを質問してきて、やれやれだと思っていたが、やれやれだと思ってるのは彼女の方だった。やれやれ。俺はやれやれと思われるのには慣れてるんだぜ。やれやれだぜ。

 

「エチケット……えちちってことは間違いないよな」

「間違いあるよ」

「えっ? じゃあ一体なんのマーケットなんだ……」

「マーケットでもないよ。エチケットって言葉本当に聞いたこと無いの?」

「吾輩の辞書に、エチケットという言葉はない」

「最低の男だよっ」

 

 蔑む小江野さん。いきなりえちちな言葉を聞いたことないか質問してきたと思ったが、どうやら知らないと最低な言葉だったらしい。やれやれ。おれは最低と言われることにも慣れているんだぜ。やれやれだぜ。

 

「あーあ、情報処理科だから、ネチケットくらい知ってると思ったのに」

「ふむ……ひょっとしてネチケットってあれか。ネットで人とコミュニケーションするときに守るべき配慮とか礼儀みたいなやつか」

「知ってるじゃん!?」

「いや、正直に言うが……それ死語だよ」

「死語!?」

 

 ネチケットって、今どき言わないだろ。そう言われてみれば、エチケットは知ってたな。ネチケットも知ってるから。

 小江野さんがショックを受けているぞ。やれやれだぜ。

 

「なんでネチケットなんて言い出したの」

「SNSをやろうと思って。やっていいか事務所に聞いたら、ネチケットわかってるならいいよって」

「ほーん。おっさんの社長に聞いたのか」

「マネージャーだよー!」

「なにっ!? お、男か!?」

「女の人だけど……」

「ほっ……」

「え? なんでホッとしてるの? ん? なんで?」

「そりゃああれよ、あのー、やれやれだぜ」

 

 まったくやれやれなんですよ。こちとらアイドルがマネージャーやらプロデューサーやらとくっつく話を見すぎてるもんでね。俺たちはなりたい職業は先生かプロデューサーになりがち。現実は見ていない。

 

「それよりネチケットについてだな、教えてあげよう」

「うんうん」

「ちょっとここではアレだから、静かなところでね」

「えっ? なんで?」

 

 なんでと言われても。他の人に聞かれたらマズイでしょ……。

 エロ同人誌即売会とかくらいなら、いいけどさ……。

 

「今日はあんまり寒くないし、外でもいいかも」

「そうだね~」

 

 たっぷりの日差しを浴びながら、キャンパスを歩く。

 改めて見ると広くてキレイなところだ。

 そして……。

 

「改めて、ここのオブジェって全部全裸の女体だよね」

「そこは改めて見なくていいから」

 

 いい尻してるのに……。

 いわゆる銅像っていうの? そこらじゅうにあるんだけど。

 なぜか全部エロいんだよな……。

 尻や胸を確認しながらウロウロしていると、いい場所を見つけた。

 

「このベンチなら、話は聞かれないだろ」

「えっ。ここだと登下校する学生たちから見えるんだけど」

「ん? 見られる分にはいいでしょ。聞かれたら困るだけで」

「あ、そう? まあ、いいか」

 

 二人で腰掛けると、自然に近づきつつ、少しだけ間ができた。ネチケットの話をするにはちょうどいい距離感だろう。

 通路と通路の間にある、花壇の前のベンチ。前方も後方も花壇とオブジェがずらっと見える。のどかな光景だ。

 

「さて。ネチケットね。とりあえず初歩からね。『見抜きいいですか?』って聞かれたら『しょうがないにゃあ』って答えるんだ」

「ん? え? なに? 一つもわからないんだけど」

「ええ? 一からか? 一から説明しなきゃ駄目か?」

「いいえ、ゼロから!」

「そう言われちゃゼロから始まるネチケット講座するしかないな」

 

 さすが声優の卵、セリフが上手すぎる。録音したいレベル。

 

「さて、見抜きがわからないのかな」

「わ、わからない。なに? ミヌキーマウス?」

「ボケが危険すぎる」

「そう言われても」

 

 見抜きもわからないとなると、確かに勉強不足と言わざるをえない。SNSなんてまだ早い。そう思われても仕方なし。

 それにしても間違えがひどすぎたね、ハハッ!

 

「見抜きってのは、見てヌくこと」

「えっ? はっ? ど、どういう……?」

 

 やれやれだぜ。ヌくがわかんないんだもん。

 

「ヌくっていうのは、シコるとかオナるとかと同じ意味ね」

「そっ、それはわかるけど……」

 

 それはわかるらしい。小江野さんはヌくという意味はわかる。ちぃ覚えた。

 

「見て、ぬ、ぬ、抜いていいですか、ってどういう」

「つまり見抜きいいですかっていうのはオナペットにしていいですか、という質問だね。今からあなたを見てシコるけどいいですか、ってこと」

「……」

 

 目をまるーくして、ぱくぱくと金魚のように口を開けている。やれやれだぜ。

 

「な、なんでそんなこと聞くの?」

「許可をもらわずに勝手に見抜きするのはエチケット違反じゃん?」

「勝手にする分にはわからないのでは? ネット上なんだから」

「だからこそのネチケットなんですよ。わからないからって勝手にやらない。紳士的でしょ」

「いや、そんな質問することがセクハラだと思うんだけど……?」

「セクハラ……?」

「いや、セクハラは知っててください」

 

 もちろん知っているが、考えたことがなかっただけですよ。

 なに、見抜きいいですかって聞くことがセクハラだと?

 うーん。

 つまりセクハラをするのがエチケットだったのか。今後、どんどんエチケットしていきたいと思います。

 

「とにかくこれはネチケットの基本だから」

「えー? た、例えば? 自分の写真を投稿したりして、そこにリプライで来るってこと?」

「ん? んー。まあ、そういうこともあるか」

 

 俺が知ってるのは、オンラインRPGとかで女性キャラを使っていた場合の話だけど。自分のリアルの写真をネットに投稿って、想像もつかないが。

 

「ちょっとシミュレーションしてみるか」

「自分が水着の写真を投稿したら……」

「むほほ、えちえちな水着写真ですね~。見抜きいいっすか~?」

「うわっ、きもちわる」

「な、なんてこと言うんだ。これはネチケット違反。事務所には絶対にSNSをやらない方がいいって伝えないと」

「ごめん、ちょっと待って! やりたいの! SNSやりたいの!」

 

 腕を取って懇願してくる小江野さん。ちょっと胸が当たっています。しょうがないにゃあ……。

 

「次はちゃんとやるんですよ」

「むむ……わかりました」

 

 気合を入れて、姿勢を正した。胸は当てたままでもよかったんですけどね。

 

「はい、じゃあ小江野さんがすっぽんぽんの写真を投稿します」

「しません!」

「ええ!?」

「なんですると思ったんです?」

「見抜きしやすいし」

「そのためにSNSやりたいんじゃないんですよ!」

 

 言われてみればそうだな。俺はえっちな画像を投稿するアカウントしかフォローしてないから、そういう目的だと思ってしまっていたが、そんな声優はいないな。

 

「じゃあ、自分がヒロインを演じることになったアニメキャラのコスプレを投稿します」

「うわー! いいですね、それ」

「なんとニチアサ」

「えー! やばー! 夢見たい!」

 

 想像しただけでテンションが上ったらしい。両手をぶんぶんしながら、目をキラキラさせている。

 

「そこでリプが来ます、見抜きいいですか?」

「うーん。複雑な気分……小さな女の子とかの感想がよかった……」

 

 複雑な表情をされてますね……。いきなりコレだと嬉しくないか。

 やれやれだぜ。しょうがないにゃあ……。

 

「わー、すっごくカワイイですね! 衣装が似合ってます!」

「あ~。嬉しい~。そういうリプがいい~」

「ほんとにカワイイ! まるでアニメから飛び出てきたみたいです!」

「ん~! いい! 最高! SNSやりたーい!」

「見てたら勃起してきたので、見抜きしてもいいですか?」

「しょ、しょ、しょうがないにゃあ……」

「いいですね~。その調子ですよ」

「うう……ネチケットって恥ずかしいね」

 

 ネチケットより今の方が恥ずかしいのだが。

 小江野さんが大声でわちゃわちゃやってるせいで、行き交う学生たちがこちらを見て指をさしたり、ひそひそ話をしているんですよ。

 こうして俺たちはネチネチとネチケットの話をした。

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