女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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通学電車で行われる男女の危うい攻防

 

 朝に通勤する乗客でごった返す駅から電車に乗ったのは、いつも見かける女子高生に痴漢をした後に駅のトイレで事に及ぶため……ではもちろん無い。そもそも電車は混んでいない。なぜなら下りの電車だからだ。余裕で座っているけど、少しばかり立っている人もいる状況であり、痴漢なんか出来るわけがない。いや、混んでてもしませんけども。

 

 俺のことなど誰も興味がないと思うが、専門学校に通学するためだ。我が家は東京の世田谷区で、学校は都心ではなく郊外にある。

 作家志望だから大学に行ってると思った? 残念、小説を読んで小説を書いてばかりしているのに大学受験なんてしているわけないのだ。この手のラノベなどでは、一流大学に通いつつ作家としても若くして超一流なんてチートな設定がよくあるが、そんなわけないだろ。受験勉強する暇があったら小説を書くに決まっている。

 

 そしてそんな俺を両親が快く思うわけもない。この手の漫画などでは両親は海外で暮らしてたりすでに他界していたりするが、そういう特殊な事情は無い。親は大学を出ていて会社に勤めているので、普通に心配されているわけです。

 で、父親が言うには小説が書けても飯は食えないだろうが、プログラムが書ければ食うのには困らない。

 だから、小説は書いてもいいから、プログラムが書けるようにしておけということで専門学校で情報処理を勉強しているわけです。下手な大学で遊んでいたやつよりよっぽど給料が良いらしい。

 

 ちなみに今はCを勉強している。Cというのは「ねぇねぇ彼氏とどこまで行った? A? B? うっそー、もうCまで行っちゃったの?」のCとは関係がなくてプログラミング言語です。C言語とも言う。

 C++というのもあって、これはコスプレとかストッキング破りとか眼鏡にぶっかけなどのCにオプションを追加したもの……ではなくてCよりも進化した言語らしい。まだ習ってないから詳しくは知らん。

 

 途中の駅で数人の乗客が乗ってきて、隣に女子小学生が座った。座るなり本を読み出す。俺がデビューしたレーベルではないが、子供向けの文庫のものだ。つまり作家としての俺のターゲット層なわけか。

 

 本当は官能小説家になりたかったわけだが、卒業する頃にバンバン本が売れていれば就職する必要は無いので、児童向けだろうと小説を書くモチベーションは高い。プログラマーになって残業する羽目になったら小説が書けなくなってしまう。

 

 よってこの隣に座った女子小学生には当然興味がある。彼女が俺の本を手に取ってくれるにはどうすればいいのか、その観察をするためだ。

 

 ふむ。まずおっぱいはそこそこありますね。真奈子ちゃんほど立派ではないが、あげはちゃんほど未発達ではない。詩歌よりちょっと小さいかなという程度だな。うむ。

 顔は……俺を睨んでいますね。なぜ?

 

「あの、どこ見てるんですか」

「おっぱ……」

 

 いかん、おっぱいを見ていたなんて女子小学生に言ったら社会的におしまいじゃないか!

 そもそも俺はなぜ一番最初におっぱいを見たんだ!? ターゲットとして観察するのに必要な情報じゃないじゃないか! 俺のバカ!

 いや、しかしギリギリで間に合った。言い直そう。

 

「胸です」

「死ね、このロリコン」

「あっ、待って待って、間違えたの、お願い、そのスマホをしまって」

 

 くそっ、なんで俺はこんなに正直者なのか!

 ときには嘘を吐くことも大事なんだよ!

 言っちゃったものはしょうがない、こういうときは怪しいものではないということを証明するんだ。幸いこの子は小説が好きなのだろうから、作家と知れば許してくれるに違いない。

 

「あのね、君がその、本を読んでいたじゃない?」

「それがなにか」

「実はね、お兄さんは作家なんだよ。我慢できないメイドのメイちゃんっていうタイトルなんだけど」

「は? 知りませんけど?」

 

 ぐふっ。キツイ。もともと不審者を見る目だったので、言い方もどぎつい。

 こういうとき「えーっ、そうだったんですかー、大ファンです!」っていう流れじゃないの?

 いや、今はショックを受けている場合ではない、今はとにかく通報されないようにしなければ。

 

「ま、まあ、一冊しか出してないんだけどね。白い鳥文庫なんだよ?」

「白い鳥文庫? 本当に?」

 

 どうやらレーベルはご存知の様子。やっぱり児童向けノベルが好きなんだな。

 しかし目つきは相変わらず言い逃れしようとしている変態ロリコン野郎を見るようだ。違うよ、俺はえっちな文章を読んだり書いたりするのが好きなだけなんだよ! 悪い大人じゃないよ!

 

「本当だよ、この前の白い鳥文庫大賞になって書籍化して二巻も決定しているんだよ」

「ふぅ~ん?」

 

 まだ疑っているご様子。なぜだ、なぜ面と向かっておっぱいを見ていたって言っただけでこんなことに。みんなだって言わないだけで見ているというのに! 正直者は馬鹿を見るとはまさにこのこと!

 

「ほらほら、高願社(こうがんしゃ)さんの名刺だって持ってるし」

「白い鳥文庫担当編集……へぇ、本物っぽいですね」

「ふう、ようやく信じてもらえたようだな」

「じゃあ、警察呼んでいいですか」

「なんで!?」

「いや、関係ないでしょ。ぼくの胸を凝視していたことは事実でしょ」

「へー、ぼくっ娘なんだー。萌えますね」

「通報しますね」

「だから待って!」

 

 くそっ、なんで変質者疑惑をされてる真っ最中に萌えてしまったのか! しかも女子小学生(JS)相手に! しかしこういう感情を大事にしなければクリエイターとしては駄目だ。

 

「あのね、たまたま今度出す新キャラの一人称をね、ぼくにしようかなーと思ってたんだよ」

「え~?」

「主人公が十六歳の女の子なんだけど、次巻では読者層に近い年齢の新キャラを出せって編集さんに言われてるんだよ、それで一人称が私だと被っちゃうからさ」

「ふうん、なんかそれっぽい」

 

 よし、いいぞ。この子はやっぱり小説が好きなんだ。だから小説の制作プロセスのような話に食いつくはずと踏んだ俺の作戦勝ちだ。

 

「それで新キャラのイラストを注文するときに胸の大きさもイラストレーターさんに伝えなきゃいけないんだよ。それでなんだよ。小説を書くためだったんだよ」

「言い訳乙」

「待って! スマホを出さないで! なんで!? 許せるでしょ? 小説のためなんだよ?」

「いや言い訳ですよね」

 

 おかしい! この子はおかしい! 小説を書くための行為であれば女子小学生のおっぱいを凝視するくらいイイじゃないか! みんなだってそう思うよね!?

 

「大変なんだよイラストの依頼だって。確かに桜上水みつご先生だったら細かく言わなくても描けると思うけどさ」

「桜上水みつご先生? イラストを描いてもらってるんですか? あなたが?」

 

 この食いつき! さすが桜上水みつご先生、彼女もファンと見た! これはチャンス!

 

「そう、そうだよ? ひょっとしたら次のキャラクターは君をモデルにしちゃうかもだよ? 桜上水みつご先生が、君を、モデルにして描いちゃうかもだよ?」

「ほお……」

 

 やぶさかでないね? やぶさかではないんだね?

 この子はちょっとツリ目で、メイはタレ目だからキャラが被らないし、マジでいいかも知れない。髪型もショートカットにするのは有りだ。

 

「桜上水みつご先生のサイン入りの新刊をプレゼントできるかもしれないなー」

「……本当に?」

「頼んでみるよ」

 

 会ったこと無いけどね。通報を避けるためなら、なんでもするさ。

 あ、もう降りる駅に着いてしまう。

 

「あ、一応作家としての名刺があるんだった。ここにメールアドレス書いてあるからさ」

「最初からこれを出せば良かったのに。四十八手足(よそやてあし)センセ」

 

 そうか、自分の名刺で身分を証明できたのか。

 この前富美ケ丘(ふみがおか)さんに貰ったのだが、誰にも渡したことが無いので忘れていた。

 

「ぼくは沙織。網走沙織(あばしりさおり)です。いつもこの電車ですから」

「そっか。さおりちゃん、じゃあね」

 

 手を振って電車を降りると、彼女も手を振ってくれた。

 

 よかった。通報されなくて。マジで。本が発禁になっちゃうよ。

 エロすぎて発禁ならいいが、児童向け小説家が女子小学生へのセクハラで発禁とか無駄にバズりそうなニュースになって発禁とか最悪すぎる。

 

 しかしモデルをゲット出来たとしたら楽だなあ。

 俺は冷ややかに蔑むツリ目の女の子の顔を思い出しながら、ほくそ笑んでしまった。

 

 





この作品はハーメルンだと本当にいっぱい感想貰えるので嬉しくて仕方がないためつい書いてしまうのでございます。今後とも宜しくお願いいたします。

最近は四十八先生と同じで、私もJSをよく観察しています。だってそうしないとコレが書けないからね。仕方ないね。本当に仕方なく見ているだけです。最近のJSは肩のところが切れ込みみたいなのがあって肌の露出が多いね。とっても可愛いと思います。

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