女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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いたいけな少女を連れ込んで酒池肉林の宴が始まる

 

 初めて会った翌日、同じ時刻、同じ電車の車両に彼女は乗ってきた。

 黒髪短髪でややツリ目、手足が細くて長い。夏服は白いワイシャツと灰色のスカート。ランドセルは黒と真面目そうな学校に通っている様子。

 昨日は胸と顔しか見てなかったが今回は全身くまなく観察したぞ、えらい!

 他の客はまばらで、空席も目立つがわざわざ隣に座ってくれた。密かに期待していた俺は、とっておきのプレゼントを鞄から取り出す。

 

「おはよう、沙織ちゃん。これ、俺の書いた本」

「おはようございます。もう買ったので大丈夫です」

「ええ! まじで! お買い上げありがとうございます!」

「うるさいです。静かにしてください」

「ごめん……」

 

 いや、だって昨日始めて会って通報されかかった相手の小説に金を払ってもらえるなんて思わないじゃない。名刺渡してるのにメール来なかったしさ。ツイッターのフォロワーも増えなかったしさ。

 

「でもこれサイン入りだよ」

「結構です」

「あ、そう……」

 

 まぁ、そうだよね。別にいらないよね、サイン。ファンじゃないもんね。ファンじゃないにしろ、少しは面白いと思ってくれたのだろうか。

 

「で、どうだった?」

「んー、ふつう」

「普通!?」

「だからうるさいです」

「ごめん……」

 

 面白いとか面白くないならまだしも普通とは。正直なところ児童向けレーベルとして書かれた中身が官能小説なんてものが普通なわけないじゃないか。アブノーマルであることだけは自信があるよ。むしろよくわからないとか変とか言われる方が納得できる。

 

 しかし、昨日も思ったがこの子こそマジョリティなのだ。真奈子ちゃんやファンレターをくれるのは少数の俺の大ファンだし、あげはちゃんのように本質を見抜いている子も激レアなわけ。この子、網走沙織ちゃんのような普段他の児童向けレーベルを読んでいるような子にこそウケなければならない。そう考えるとなおさらこの子をモデルにしたくなってきた。誰だって自分に似ている主人公の方が、自己投影しやすいからだ。メイとその妹の姉妹が主人公ということにしてしまおう。

 

「今日さ、うちに遊びに来ない?」

「……それは通報して欲しいということですか?」

「違うよ~? 友達としてだよ~。ね? 友達」

「友達……」

「白い鳥文庫の作家と友達になれるチャンスだよぉ~? 他の作家仲間とも会えるかもだよ~?」

 

 他の作家仲間なんていませんけどね! 白い鳥文庫なんて読んだことすら無いしね?

 俺の甘い誘いにも関わらず、顎をさすりながら訝しむ沙織ちゃん。なぜだ……。

 

「身体を触ったりしませんか?」

「しないよ~」

「舐めない?」

「舐めないよ~」

「嗅いだりも?」

「すごい質問しますね。しませんよ?」

「んむ~」

 

 そこまで睨む必要ある?

 知り合って間もないのに、ここまで怪しまれる必要ありますかね? なに、一度誰かにいたずらされてるの? 強引にハイエースに乗せられたことあるの? 俺はイチャイチャ和姦派だからそういうことしないよ?

 

「質問したり、お話するだけだよ~」

「……わかりました。では、住所とかを後で連絡してください」

 

 今どきの小学生はスマホもやってるし無料通話アプリも使いこなしているようだった。とりあえずこのアプリでともだちになる。

 

 自分の家をマップで調べるというレアな行為をして、シェア。返事は「了解」のスタンプ。どうやら白い鳥文庫の人気作スタンプらしい。ほんとに好きなんですね。

 

 さすがに小学生の方が早く放課になると思ったが、準備するものがあるということで我が家に来るときには俺は帰宅出来た。

 

 しかしこの三ヶ月くらいで俺の家にやってくる女子小学生が三人も……人生とはわからないものだ。

 

 チャイムではなく「着いた」というメッセージを受けて出迎える。

 

「いらっしゃい、沙織ちゃん」

「お邪魔します」

 

 彼女をリビングに通すと妹の詩歌がだらしない格好でゲームをしていた。

 

「詩歌、お客様が来たから、悪いな」

「えっ!? ええっ!? また増えたのファン! スゴイね、お兄ちゃん!」

 

 意外にも喜んでくれる詩歌。

 

「……ファンじゃないです」

「えっ」

 

 沙織ちゃんの正直な言葉に驚きを隠せない詩歌。まぁそりゃそうだな。ファンでもない女子小学生を家に連れ込む作家はそうそういないだろう。そしてたまたま電車で会った女子小学生を実家に誘う男子専門学校生もおそらくそうそういない。

 

「ファンじゃない女子小学生を家に呼ぶってどういう……??」

 

 頭にはてなマークを大きく出している。さすがに俺が攫ってきたと疑ったりはしないようだ。

 

「彼女は網走沙織(あばしりさおり)ちゃん。今度俺の小説の新しいヒロインのモデルになってもらう予定」

「ええっ!? ファンじゃないのに!? モデルって私じゃ駄目なの?」

 

 そうか、ファン壱号としては自分がモデルになりたかったのか。しかし官能小説に登場するヒロインを実の妹にするなんて鬼畜な所業を俺ができるわけ無いだろう。考えたこともないね。

 

「ありえないな」

「はううっ!?」

 

 よほどショックなのか、ぎゅっと目を閉じて顔を赤くする詩歌。まるでご主人さまにえっちないたずらをされているときのメイちゃんのような……いや、それは俺の勘違いだ。

 

「……はぁはぁ、ま、まなちゃんでも?」

 

 ふむ。ファン弐号を自称する妹の後輩かつお友達である真奈子ちゃんを推薦するのは詩歌としては当然かもしれない。しかし彼女は現在の一六歳のヒロインであるメイちゃんの参考にしているくらい似ているので、真奈子ちゃんをモデルにしたらキャラが被ってしまう。

 

「駄目だね」

「そ、そうなんだ……でもなんでその子なの?」

 

 何故か。それは通報されないための苦し紛れの作戦だから。なんて実の妹に言うわけない。まぁそれだけではないけど。ボクっ娘もいいなと思ったんだけど、それも言わなくていいな。

 

「ビビッと来たんだよ。この子じゃなきゃ駄目だって」

「り、理屈じゃない……ですと……」

 

 驚愕に目を見開き、ぶるぶると身体を震わせる詩歌。リアクション強すぎだろ。そこまでショック受けるかね。脚をがくがくと生まれたての子鹿みたいに震わせながら階段を登っていった。ま、放っておこう。

 

「さて邪魔者もいなくなったことだし、お話しようか。隣に座る?」

「二メートル以内に近づかないでください」

「あ、はい、了解」

 

 なんというか非常に慎重なんだね。ハイエースされなさそうで、安心だ。沙織ちゃんに比べると真奈子ちゃんはお嬢様でぽややんで天然で性的知識がないから非常に心配です。今度特訓でもしてあげようかな。

 沙織ちゃんを向かいのソファーに座らせ、氷を入れたサイダーを用意した。まだ室内はそこまででもないのでエアコンを付けてないが外は暑かったはずだ。けれど彼女はサマードレスというのか水色のワンピース。肌の露出が低い服装をしていた。薄手なのに防御力が高い。

 

「今日は来てくれてありがとう」

「どうも」

「あと、新キャラのモデルになってくれてありがとう」

「……いいんですか、なりたかった子がいるみたいですけど」

「君じゃなきゃ駄目なんだ」

「……そうですか」

 

 うーん、この暖簾に腕押しな感じ、心が痛い。しかしまあ、来てくれる時点で嫌われているわけではないと信じたい。

 

「さて、それでは質問させてもらうね」

「どうぞ」

「どんなぱんつ履いてるか見せて?」

「……なるほど、これがセクハラですか」

「待って! なにそれ、何を出してるの? パチパチしてるけど! まさかスタンガン!?」

 

 沙織ちゃんはポケットからなんとスタンガンを取り出したようだ。しかもすぐに使用可能状態。隣りに座っていたらヤバかった。学校から帰った後で準備があるって言ってたの、これのことかよ!?

 

「落ち着いて、沙織ちゃん。俺は触ってもいないし、舐めてもないし、嗅いでもないし、ましてや揉んでもいないよ」

「女児に下着を見せろなんて言っておいてよく平気ですね……」

「だって! それがわからないと! 新キャラがどんなぱんつ履いてるかわからないじゃない!」

「泣かなくてもいいでしょう……」

 

 え、私、泣いているの? これが、涙……?

 泣いたことに同情したのか、思案顔になった。どうやら妥協案を模索しているようだ。

 

「じゃあ見せないで言葉で教えるだけならいいです」

「ん~、細かい描写が出来ないなあ」

「細かく描写する必要ないですよね」

 

 うーん、確かにそれを書いても読者は興奮しないしな。読者が女子小学生だから。あまり創作に妥協はしたくないが、仕方がない。

 

「じゃあ、それでいいよ。教えて」

「くっ、なぜ譲歩したような……黒と白のストライプです」

「ほう、縦縞? 横縞?」

「縦縞」

「コットン? シルク?」

「絹です」

「ふ~ん、えっちじゃん」

「……」

「やめて、無言でスタンガン出すのやめて」

 

 うーん、素直な感想を述べてしかも褒めているのに怒るとは……難しい年頃だなあ。照れているのかな。とりあえずメモをとる。

 

「じゃ、次の質問させてもらうね」

「何も見せませんからね」

 

 さらに制限が付いてしまった。残念だな。

 

「ブラジャーは着けてますか?」

「その質問に答えると思いますか?」

 

 表情を伺うと、にっこりしていた。うん、機嫌がいいみたい。

 

「うん!」

「死ね、ロリコン」

「なんで!? 見せてとは言ってないよ!?」

 

 どうやら機嫌がいいと思ったのは間違いだったようです。本気で怒ると笑うタイプか、メモっておこう。

 

「くっ……汚い、大人はこれだから……」

「頼むよ~、そのくらいのおっぱいだと着けてるかどうか俺にはわかんないんだよ~」

「この変態め……」

 

 変態か。それは官能小説家にとっては褒め言葉といえよう。新キャラのためなら何でもするぜ。

 

「で?」

「着けてますよ」

「いつから?」

「……半年くらい前、十一歳の誕生日のときから」

「おおぉ~」

「なんで拍手してんですか変態」

 

 だって、なんかいい設定だなと思って。初めてのブラはメイがあげたことにしようっと。メモメモ。

 

「さって、次の質問だけど……あ、もう飲み物無いね。おかわり飲む? 麦茶の方がいい?」

「や、優しい……変態のくせに……麦茶ください」

 

 我が家のリビングはいわゆるLDKというやつなのでリビングとダイニング、キッチンがくっついている。

 グラスを下げて、キッチンに移動。水で濯ぎ、布巾で拭いてから新しい氷を入れて、麦茶を注いだ。ついでに棚から小さな袋に入った甘めのおかきを出す。

 

「はい、どうぞ。いくらでも飲んでね。これお茶請けにどうぞ」

「……変態紳士め……」

 

 好物だったのか、すぐに袋を開けた。喜んでくれて何よりだ。

 

「さて次は……」

 

 ほくほくした顔でおかきをカリカリさせている沙織ちゃんをみやりつつ、シャーペンをくるくるさせているとまたしても廊下に不穏な人影が。

 

四十八(よそや)ファン壱号!」

「弐号!」

「ぶ、ぶいすり~」

 

 デジャヴュかと思ったら、なんと一人追加されていた。顔は真っ赤だし、ポーズも中途半端で見ていられない。見ているこちらが恥ずかしくなるくらい恥ずかしがっている。

 

「あげはちゃん? 無理してない? 大丈夫?」

「うう……恥ずかしいです」

「詩歌、あげはちゃんに変なことさせるなよ」

「へ、変なこと!?」

「しーちゃん先輩、これって変なことだったんですか~?」

 

 我が妹は妙ちきりんな変身ポーズのままで固まり、その忠実なるしもべ、ファン弐号こと清井真奈子ちゃんは涙目で詩歌を見つめた。この子は純真すぎるのよね。

 

 俺は嘆息しつつ、人数分の麦茶とおかきを用意した。

 

 




長くなりそうだったので一旦投稿しておきます!

なぜか妹が人気なのでつい家に連れてきちゃうよね。


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この小説が好きな人なら面白いはず!
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