「え~
「全然言いにくそうに言ってないんですけど!?」
俺に電話をかけてきたのは編集の
「なんでですか」
「んー。いや、新キャラのメイちゃんの妹のマイちゃんですか」
「ええ」
メイちゃん十六歳の妹はマイちゃん十二歳。最近知り合った
「正直、可愛くないです」
「な、なんですって!?」
官能小説において女の子が可愛くないと言われることほどツライことはない。いや、彼女は官能小説だと思ってないだろうけど。どっちにしてもキツイ感想だ。
「メイちゃんは共感できるし、応援したくなるし、素直で良い子じゃないですか」
「そうですね」
素直に愛液をだだ漏れにしちゃう、えっちな女の子だ。ご主人さまの言いなりではあるが、勇気を出して自分から腰を動かすところとか応援できる。それに共感しているとしたらなんてエロい女編集者なんだ……と思うけど、そうは思ってないんだろうね。
「マイちゃんは可愛げがないんですよ」
「くっ」
俺のことはなんと言っても構わないけど、沙織ちゃんを悪く言うのはやめてください! いや言ってないんだろうけど同じことだよ! くそっ、彼女の魅力を伝えられてないとしたら俺の罪だ。
彼女は、沙織ちゃんは。
うーん。
あれ?
特筆するほど魅力的じゃないな……いや、俺がモデルと見込んだんだ、そんなわけがない。だって俺が通報を免れるために選んだ、ターゲットに近い属性だからという理由なんだから……。しまった! そんな理由じゃそんなに魅力的なワケ無いじゃん! 俺は馬鹿なのか!?
「マイちゃんのキャラクターを見直してくださいね」
そっけなく言われて通話は終了。これがプロの洗礼か!
「あぁ~~」
頭を抱えて懊悩する。どうしたらいいのだ。しかし、真奈子ちゃんもあげはちゃんもとっても可愛いけど、沙織ちゃんもやっぱり可愛いことは間違いない。その自信はある。ただ小説というのは見た目や仕草、表情に声などの情報が減っているわけで、それを考慮したらこれでもかというくらい可愛く描写しないと伝わらない。
「どしたの、お兄ちゃん」
冷房が効いているというのにやたら薄着の妹がやってきた。小説のタイトルやサインなど、いままで幾度となく有効なアドバイスをしてくれた詩歌だ、相談してみるか。
「新キャラが可愛くないからボツだって」
「なるほどぉ、じゃあ可愛い妹をモデルにしたらどうかな?」
「それはないな」
「即答!?」
面白くもない冗談を言う詩歌だったが、意外にもショックを受けたようだ。親指を噛んでいる。悔しがっているんだと思うが、その顔はちょっとエロい。なんで?
「戯言はいいから、アドバイスしてくれよ」
「くっ、戯言とは……沙織ちゃんをモデルにして可愛くないって言われてんの?」
「そうなんだよ」
「沙織ちゃんが可愛くないからじゃないの」
「そんなわけないだろ」
「そ、そんなわけないんだ。う~ん、でも正直詩歌ちゃんの方が可愛いんじゃないかな~?」
「あげはちゃんに相談しよう」
「ああっ!? あっさり無視された!?」
すごすごと撤退する詩歌。カーテンを閉めて、ベッドにダイブしたようだ。また枕を濡らすのかな。意外とメンタル弱いよね。
充電していたスマホを取り出し、無料通話アプリを起動。数回のコールで繋がった。
「あ、あげはちゃん? 今、お話してもいい?」
「はい。今、ちょうどお風呂から出たところです。だ~か~ら~、音声通話じゃない方がいいんじゃないでしょうか?」
うーん、相変わらずえっちな事を言う小学五年生だなあ。本当なら彼女のようなキャラクターを主人公にした小説を書きたいところだが、白い鳥文庫では不可能だ。
「そうだね、じゃあビデオ通話にするね」
「…………ううう」
「ごめんごめん! 嘘! 音声通話でいいよ!」
「うう……ごめんなさい」
どうせこうなるとわかっていたのに言ってしまった。反省。
「ええっと、話したいと思ってたのは小説のことなんだけどね」
「二巻ではどんなプレイをさせるかってことですね」
「そうそう。メイちゃんがドMだったから、新キャラはドSにしようと思ってるんだ」
「そうなんですね……えっちですね」
「そうだよねー。そう思うよねー。でも編集から可愛くないって言われちゃって」
「エロくてドSなロリとか、サキュバスみたいで最高じゃないですか」
「そう! そのとおり! あげはちゃんは本当によくわかってる!!」
さすが俺の唯一の理解者だよ。ただ今わかっちゃったね。俺と同じ意見すぎてアドバイスにならないねコレ。人選を間違えました。
「なんか自信が出てきたよ、新作楽しみにしててね~」
「はい。応援してますね」
ファン弐号はやはりファンだな。出来たときに見せる相手であって書くときの参考にしては駄目だ。真奈子ちゃんも同様だろう。
こういうときに頼りになるのはやはりファンではない冷静で客観的な読者だ。そちらをコールする。
「もしもし、沙織ちゃん?」
「なんですか、今お風呂入ってるんですけど」
「じゃあビデオ通話にしようか」
「死ね」
うんうん。安心するね、この反応。これでこそ網走沙織ちゃんだよ。あげはちゃんと違って罪悪感がない。
「それは冗談なんだけどさ」
「つまんないですよ、小説と同じで」
なんと辛辣な……いや、しかしその耳の痛い意見こそ拝聴すべきなのだ。
「実はね、二巻の序盤を編集に見せたら、ボツになったんだ」
「そうですか。甘くないですね」
「うん。新キャラが可愛くないって」
「……新キャラってぼくがモデルじゃなかったでしたっけ」
「そう」
「喧嘩売ってるんですか?」
ちゃぷんと言う音が聞こえる。湯船を叩いたようだ。やっべえ怒らせちゃったよ。でも普段から怒ってるから別に怖くないな。
「いや、沙織ちゃんが可愛いのは間違いないんだよ」
「むっ。むむ」
「俺が悪いんだ、沙織ちゃんが言う通り小説を書くのが下手くそだから沙織ちゃんの魅力を伝えられないみたいなんだよ」
「な、なんですか、そこまで言ってないです……。で、ぼくに何をして欲しいんです?」
「キャラクターの深堀りが必要なんだ。だから沙織ちゃんのことをもっと知りたいんだよね」
「スリーサイズとか体重とか絶対教えませんからね」
「身体的な情報はもう十分なんだ。大体わかるから」
「変態め……じゃあ?」
「普段の何気ない魅力を知りたいから、一緒にどこかに遊びに行きたいんだよ。遊園地とか。奢るからさ」
「ゆ、遊園地……本当に?」
「うん。どう?」
「し、仕方ないですね」
「ほんと? よかった~」
「集合場所と日時を送っておいてください。じゃ、髪を洗いますから」
「うん。ありがとねー」
よしよし、うまくいったぞ。これで彼女の魅力を深く深く知ることが出来るだろう。
今回会話ばっかりですけど、次回はお出かけしますから!
しかし四十八先生の悩みは私の悩みでもある……沙織ちゃんの可愛さを伝えるのは難しい……。
私個人としてはショートカットの女の子に冷たくされつつもなんだかんだかまってくれるとか凄く好きですけど。
職場で一番冷たい目で見てくる割にはLINEすると返事してくれる新入社員の女の子とか好きですけど。
新入社員の女の子に冷たい目で見られてるのかよこの作者、やっぱりなとか思わないように!