女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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兄から与えられた性の喜びを隠匿する妹

 

「ボツですね」

「な、なんでですか!?」

「うーん、メイちゃんのときと違って、マイちゃんとご主人さまのやり取りはドキドキしないんですよね」

 

 な、なんだって……。

 ドキドキしてたのか……。

 いや、しないほうがおかしいんだけど、何やってるのかよくわかってない割にはドキドキしてたんですね。ご主人さまが舌を出しているのを見て牛タン食べたくなったりしてるならドキドキしないと思ってたんですけどね。

 

「読んでるとドキドキするところが四十八先生の持ち味なんですから、そこは頑張ってもらわないと」

 

 そうだったんですね!?

 全然意味わかってないのになんで大賞とれたのか不思議だったのですが、なんとなーくドキドキしてたんですね!? 幼稚園児がドラマのラブシーンを見てる感覚なのかな?

 

「ですからマイちゃんの部分、メイちゃんくらいドキドキするように書き直し、よろしくお願いしますね」

「は、はい」

 

 電話が切れる。俺はスマホを充電器に置いて、ため息をついた。

 執筆開始三日目、書いた一章をまるまるボツにされてしまった。

 要するにだ、編集はえっちなことをしてるとは思っていないが、えっちなことをしている文章である必要はあるということだな。厄介!

 しかしだよ、メイちゃんは十六歳で俺の創作上の世界では大人なわけで。まぁ現代日本でも結婚可能な年齢だからいいとしてもですよ、マイちゃんはマズイでしょ。十二歳だよ?

 

「う~~~~~~ん」

 

 手を伸ばして、背中を反らす。どうしたものか。なんとかしないと次巻が出るのは来年になってしまう。そんなこんなだとプログラマーとして就職することになっちゃう。そしてメイドロボの人工知能を開発して、魅惑的に見える仕草のコーディングの第一人者に……違う違う、そうじゃない。俺は小説家になりたいの。専業で食っていける小説家に。

 

「どしたの、お兄ちゃん」

 

 肩をモミモミしながら声をかけてきたのは、妹の詩歌だ。ファン壱号を豪語するだけあって、俺が執筆しているときは献身的だ。そういえばこいつは十二歳だったな。

 

「なぁ、えっちなことについてどのくらい知ってる?」

「え!? は!? え!?」

 

 肩を揉んだ状態で固まった。いや、まあ当然か。こいつに()()()()()()()()()()()()()んだけど。

 

「いや、説明不足ですまん。もちろん小説の話なんだが」

「う、うん」

 

 肩揉みが再開される。たどたどしいので、顔を見ずとも動揺が解けていないことが伝わる。

 

「新キャラは十二歳なんだ」

「うんうん」

 

 網走沙織ちゃんをモデルにした新キャラのことだということは黙っておこう。

 

「で、ご主人さまに憧れてるわけだ」

「わ~、面白そう」

「そこで重要なのが、読者と同じくらいの女の子のマイちゃんだ。彼女はおませさんという設定なんで、ファッションや化粧なんかにも興味がある」

「ふんふん。私みたいな」

「えっ?」

 

 あまりにもびっくりするようなことを言うので、椅子をくるりと回転させる。詩歌はなぜ俺が驚いているのかわからずにきょとんとしている。肩を揉んでいた手が宙に浮いてマヌケだ。

 

「お前が、おませ?」

 

 俺の小説を読んで、腹ペコ主人公だと思ったお前が? いや、大人の編集ですらそう思っていたのだから、こいつが特殊なわけではないにしろ。

 

「ほらほら、髪型とかすっごくオシャレでしょ。くるりんぱだよ」

 

 くるりんぱ? ダチョウのギャグ? 帽子無いじゃん。

 妹が髪型を頻繁に変えているのは知っているが、大人っぽい行為だとは思っていない。むしろ子供っぽいと考えていた。まさかオシャレだったとはな。気まぐれじゃなかったのか。

 

「まぁ髪型は確かに。でも化粧なんてしないだろ?」

「んー、そりゃ普段はしてないけど。少しはしてるよ」

「ええ~!?」

「そこまで驚くことかな」

 

 いや、だってついこの前まで小学生だったのに化粧って。

 

「ファッションなんて興味ないよな?」

「え、待って。今、この姿を見て何か思わないの?」

 

 ん?

 確かに詩歌は部屋なのに、部屋着ではないようだった。なにこれ。

 

「どうやら……制服じゃないようだな」

「なにそれ!? 他に感想ないの!?」

 

 そう言われてもな。

 

「コスプレでもないようだな」

「そりゃそうだよ! お兄ちゃんはコスプレして欲しかったの?」

「いや別に」

「ほら、これ、可愛いでしょ?」

 

 そう言われてしまうと仕方がないので、よく観察する。白い袖のないTシャツ? 田舎のおっさんみてえ。軽トラで運転してそう。下はデニムの……パンタロン? 古くね?

 

「ダサい」

「くううう!?」

 

 俺の容赦のない言葉に衝撃を受けたのか、くるくると回転しながら倒れ込む詩歌。そこまで? 時代劇で御代官様が帯を引っ張って「あ~れ~」って言う町娘みたいですよ。まぁファッションは江戸じゃなくて昭和だと思いますけどね。

 

「こ、これは今流行ってる、原宿のファッションで……」

「んなわけないだろ、ダサいもん。可愛くねえもん」

「ぐはっ!? ぐふっ。ぐふふふふふ」

 

 なんだこいつ。ショックで笑い始めたぞ。

 生まれたての子鹿のような動きで自分の机に移動して、何やら取って戻ってきた。

 スマホだ。なんかいじっている。

 

「えっと、この可愛い~い格好を見て、お兄ちゃんの感想は?」

「だから、クソダサいって。可愛くねえよ」

「~~~~~っ!! はあ、はあ。録れた~~っ」

 

 何がしたいんだコイツは。本当にわからん。俺のセリフの録音していたのか? なんで? 褒めてるならまだしも、ボロクソ言ってるのを録ってどうするの? 言っとくけど、親に告げ口するためだとしたら無駄だよ? そんな証拠なんかなくったって問答無用で詩歌の味方なんだから。

 

「はぁはぁ……そ、それで? おませだから、え、え、えっちなことにも興味があるの?」

 

 うーん。マイが興味があるというよりはご主人さまにそういうことをされちゃうけど、どの程度理解できるのかとかどう思うのかって話なんだが。えっち、という言葉を口にするだけでここまで顔を真っ赤にして動揺している詩歌は何も知らなそうだ。

 

「興味があるんだが……もちろん、めちゃくちゃえっちなことなんか出来ないだろ。白い鳥文庫だし」

「う、うん。そうだね」

 

 詩歌は頷くが、本当はめちゃくちゃえっちなことしてるけどね。

 

「で、丁度いいくらいのえっちさを模索しているんだが、そもそも何をえっちだと思うのかがわからん。年齢もそうだが、男と女じゃ違う気もするし」

「なるほどぉ」

 

 顎の下を人差し指でくりくりしながら、思案顔。

 

「じゃあ、私に実際にやってみてよ。えっちだと思うか、思わないか言うよ」

「それはありがたいが、いいのか?」

「小説のためだし……ほら、兄妹だから、え、えっちなことをしても問題にならないと思うし」

 

 果たしてそうなのだろうか。むしろ問題なのではないか、とも思わないではないが。しかしこれはチャンスだ。もちろん妹にセクハラするチャンスじゃない。マイのキャラクターの参考となる情報を得るチャンスだ。

 

「よし、じゃあ始めようか」

「よ、よろしくお願いしますっ」

 

 お願いするのは俺なんだが。緊張してるのかな……。

 じゃあ、まあ最初はライトにライトに。まずは俺の椅子に詩歌を座らせて、背後から顔を近づける。

 

「ふぅ~」

「はうん!?」

 

 耳に生暖かい息を吹きかけた。正直なところ、俺もえっちなのかどうなのかわからない。えっちなお姉さんにされたらえっちだと思うけど、それはえっちなお姉さんだからだと思う。しかし、意外にも詩歌の反応は強い気がした。

 

「どうした?」

「ん~、一回じゃよくわかんなかった」

「そうか? ふぅ~」

「はふん!?」

 

 ……すでに性的に興奮しているのではないかという懸念が……いやそんなわけないか。

 

「お前、いまのえっちだった?」

「そ~~んなわけないよぉ~~。くすぐったいっていうか。膝カックンとかと同じだよ~」

「あぁ、やっぱね」

 

 そりゃそうだよな。耳に息を吹きかけられたことなんて、えっちじゃないだろ。じゃあ、次だな。今度は触っていこう。俺は椅子に座っている詩歌の足元に座り込む。

 

「いいか?」

「う、うん。痛くしないでね」

「ちょっと痛いかもしれないけど」

「あっ、あっ、痛い、でも、気持ちいい」

「このへんなんかどうだ」

「あ、あっ、はぁん」

 

 声だけならえっちな感じがしないでもないが、これはあくまで足裏マッサージだ。ここから段々とエスカレートしてリンパがどうたらでえっちな展開になることはあるが、この時点ではえっちじゃないだろ。

 

「痛っ……ん、あ、気持ちいい……」

 

 小さな足は、俺の片手よりも小さいくらいだ。両手で揉んでいると蹂躙している感じがする。痛いような気持ちよさそうな顔にするのはなんともやりがいがあるというか、楽しい行為だ。

 

「あん、そこは、だめっ、はぁん、はうっ!?」

 

 えっちじゃない。えっちじゃないぞ。決してえっちな意味の喘ぎ声ではないんだ。

 

「で、どうだった?」

「痛気持ちいいけど、えっちじゃない。絶対、えっちなことじゃない」

「だよな」

 

 まぁ、これがエロだとなっちゃうと足つぼマッサージのお店は風俗になっちゃうもんな。ただ、なーんとなく裸足の足を触るという行為とか、痛いことをするというのがなーんとなくえっちな気もしたんだが、やっぱり気のせいだったな。

 

「じゃ、次は二の腕を揉むな」

「に、二の腕?」

 

 何で二の腕かというと、二の腕とおっぱいは同じ柔らかさだとまことしやかに言われているからだ。それを信じているかどうかで、この行為の意味は変わるような気がするね。実際には腕の筋肉次第だから、当然柔らかさは違うだろう。

 

 向かい合って床のカーペットに直に座る。

 親指、人差し指と中指の三本で妹の二の腕を摘む。

 

 ふにふに

 

「ふむ。柔らかいね」

「んー、なんでここを揉むのかな……」

「さーなあ。男と全然違うからかなあ」

「お兄ちゃんの二の腕も揉んでいい?」

「あ? ああ、もちろん」

 

 俺が妹の左腕の二の腕をふにふにして、妹が俺の左腕の二の腕をぐにぐにする。

 

 ふにふに

 ぐにぐに

 

 ふーむ。なんだろうな、お互いの二の腕を揉むってのは。兄妹だからとか、これは小説のためだからとか前提があるからそうでもないが、もし学校の教室で男女がやってたら爆発しろって思うくらいのいちゃいちゃではある気がします。

 

「ちょっと硬くなってない?」

「ああ、詩歌に触られてたらちょっと硬くなっちゃったな」

「へ、へ~。私に触られて硬くなっちゃったんだ」

「まぁな」

 

 筋肉があるって思われたいのかな。見栄? 中学高校で運動部に所属してなかったくせに、妹に男らしく思われたいとでも思ってるの俺?

 

 ふにふに

 ぐにぐに

 くちゅくちゅ

 

 なんか俺が揉んでいる詩歌の左腕が上下に動き始めたような気もするが……まぁじっとしてるのもツライのだろう。

 

「ん、ん……ち、ちなみにお兄ちゃんは、今の所、私にいろいろなことやって、えっちな気持ちになったの?」

「いや? 全然?」

「ぐふうっ!? じゃ、じゃあ……このままだと全然えっちな感じがしないかもしれないし、いつもの三人の可愛い女の子たちも呼んで話を聞こっか?」

 

 ふにふに

 ぐにぐに

 ぐちゅぐちゅ

 

「あ、ああ。そうだな、その方がいいか。詩歌はえっちなことに疎すぎるかもしれないしな」

「そ、そお、だよねっ。うん、ん、んぅ」

 

 ふにふに

 ぐにぐに

 ぐちゅっぐちゅっ

 

「はぁ、はぁ、ふうん……あ、あと、ちょっとおトイレも行きたいしね」

「そっか、すまん」

「じゃ、じゃあ、ちょっとごめんね」

 

 詩歌は、スマホを持って退室していった。どんだけトイレ我慢してたんだ、足腰がフラフラじゃないか。

 しかし最近よくゲストを召喚するなあ。友達が出来たということなら喜ぶべきことだが。

 詩歌が居なくなった後も、しばらく右手をふにょふにょ動かしていた。うん。なんか気持ちよかったな。

 





大丈夫なの? 詩歌さんは妙に人気あるけど、これで下がっちゃったりしない?
前回は真面目すぎるというご意見でしたが(そんなことないと思うけど)今回はいかがだったでしょうか。

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