「じゃ、手始めにお兄ちゃんは
手始めに跪くとか、マジカヨ。そしてそのまま足を舐めろとか言い始めるのではあるまいね。そんなわけないか、詩歌だもんな。
先程まで女子小学生の性的か性的じゃないかの瀬戸際を見極めるという、あくまで小説を書くためだけとはいえ非常にリスクの高い取材を行っていた。
しかし、今は妹の命令に従うだけなので安心、安全。
妹は俺の官能小説を読んでも、それがエロいものだと全く気づかないくらいだからな。
「そのまま膝をついた状態でいてねー」
俺の部屋の真ん中で、妹と女子小学生三人が取り巻いている状態で絨毯の上に膝をついているという不可思議な状況。しかし心配ない問題ない、詩歌の言うことに間違いない。信じる、それだけで跪けないわけはない。
俺が膝で立つ状態になると、一番背の低いあげはちゃんでも俺より少し背が高い状態になる。こんな状況で一体何をしようというのか。亀甲縛りではないよね?
「じゃあ、まずお手本を見せますね」
お手本?
どうやら最初に詩歌がやるらしい。なるほど、自分ができないようなことはしないということで説明しているのかもしれない。実妹が兄にするようなことであれば、倫理的や性的にアウトなものは無いということか。なんというセーフティっぷり。これはもう身を委ねればおけまる水産だね。女子小学生相手の作家だからこういう若者言葉がつい出ちゃうね、ほんと仕事熱心な俺エライ。
「はい、ぎゅぅ~っと」
詩歌はそのまま抱きついてきた。後頭部を手で抑えて、顔を喉元に押し付けるように。腰にも手を当てて、上半身のほとんどが密接になるように。
「よーしよし、ぎゅぅ~」
こ、これは必殺技
こういう健全な少女漫画に出てくるタイプのことについては俺はあまり詳しくないのだが、頭をよしよしとナデナデして、ぎゅうっと抱きしめるという伝説の技だ。
通常は親子などが使用する技だったが、美少女が使用することでどんな悲しみのどん底からでも復帰できる精神回復力があるというよ。
なるほど、これをするための膝立ちだったか。背の低い女の子でも包み込まれるような形になる。
とある筋からの情報では「会社行きたくないでしゅ、みんな嫌いでしゅ」とか旦那さんが言っても「よーしよし、大丈夫だよ~、みんな怖くないよ~、渡る世間に鬼はなしだよ~、ぎゅっ」ってされたら「ぼく、頑張って会社行くよ!」ってなるという。新婚っていいですね! 官能小説界では朝勃ちしているところをいきなりフェラしはじめてそのままエンドレスになって結局会社をサボる方が普通だけどね!?
「はい、こんな感じ」
妹が身体を離した。お手本に相応しくしれっとした態度だ。まるで普段からやっていることでこんなことは何でも無いというような。俺は初めてなんだが……誰かにやっているの?
詩歌の態度はいつも変だから理解不能なことには慣れているのに、普通にさっぱりしてる方がなんか気がかりだな……。
「何? もっとして欲しかった?」
ぷぷっとからかうように俺を見る詩歌。
「ち、ちがわいっ」
心配していると言ってしまうのは恥ずかしいので、思わず拙い否定が口をついて出てしてしまったが、否定するにしてももうちょっとなんとかならなかったね、俺。
「か、かわいい……」
ぽわわ、と頬を緩ませているのは清井真奈子ちゃんだ。誰が誰に何を言ってるの?
「じゃあ、次はわたしがしてあげますね、よしよし、ぎゅ~」
「ぷふっ!?」
真奈子ちゃんは、不意をつくようにいきなり俺を抱きしめてきた。ぐいっと引き寄せられて俺の顔は彼女の胸元に。胸元っていうか胸の谷間に。
これはもはや
なんとなく息を止めていたが、死んでしまうわけにはいかないので仕方なく、本当に仕方なく鼻から息を吸い込む。
あぁ……ローズのようなミルクのような、華やかでうっとりするほど甘い香り。そしてぐりぐりされるたびに感じる超小学生級のバスト。天国過ぎてあの世に逝きそうだし、この出来事がきっかけで地獄に連れて行かれそう。
「十秒~」
突如、将棋の残り時間を示すカウントダウンがスタート。俺は視界を奪われているのだが、どうやらこの鼻にかかったような声からするとあげはちゃんのものっぽい。意外とルールがしっかりされているのですね? しかし十秒って結構ありますよ?
「残り五秒~」
と思っていたものの、残り時間が少なくなると惜しいような気もしてしまう俺。しかしどうしようとしたって俺には何も抵抗できない。これほどどうしようもない状況もないだろう。俺に許された行為など、鼻から息を吸い込む以外には、うっとりと目を閉じることくらいだ。
「終了~」
「おまけにぎゅぎゅ~っと」
「早くどかんかい!」
アディショナルタイムに突入した往生際の悪い真奈子ちゃんを強引に引っ剥がすあげはちゃんだった。エラくきっぷがいいね。
「次は待望のあげはですよ、うふふのうっふーん」
うっふーんと口に出して言ってまで、セクシーなポーズをしているような雰囲気を出している。特に無い胸をアピールしたり、くびれていない腰を曲げてみたりしているが、そこに色気は見受けられない。まぁ小学五年生なんだから当然なんだが。
「そ、それでは、ぎゅ、ぎゅうっと」
セクシーなポーズは照れずにするのに、抱きしめることについてはめちゃくちゃアガっていた。というか、これは抱きしめるとは言わない。俺の後頭部を恐る恐る指で触りつつ、身体を近づけただけ。とはいえ、膝立ちした俺と彼女の顔は近い。抱きしめることに躊躇している状態のためあげはちゃんの唇は俺の目と鼻の先だ。
これはキスしようとして出来ない、みたいな感じがして逆に恥ずかしいのですが……?
「ぎゅ、ぎゅ、ぎゅぅ~」
そう言ってはいるが全くぎゅっとされていない。無理するなって今すぐ抱きしめてやりたいが、それは本末転倒だな。
「はい、おつかれ~」
沙織ちゃんは、伸ばした左手だけでぽーんとあげはちゃんをどかした。抵抗するかと思いきや、あげはちゃんは本当に疲れたとばかりにふ~ふ~と息を整えていた。おぼこいなあ。
「じゃ、次はぼくね」
あげはちゃんとは打って変わって淡々と抱きしめる沙織ちゃん。
「よーしよしよし」
女子小学生から頭を撫でくり回されつつ、身体はぴったりとフィット。うーん、行われていること自体は詩歌と同じであるのだが、妹ではないというだけでこうも違うかね。
いや、妹じゃないというだけじゃない。今、この年下の女の子に感じているのは……おそらく
「はい、ぎゅー」
さっぱりとした態度と行動にも関わらず安心感と安定感のあるこの包容力。自分のことをぼくと呼ぶ黒髪ショートヘアで、辛辣な物の言い方をするこの少女にまさか俺が
「終了」
すっと離れるママン……じゃなかった沙織ちゃん。うぅ……
それにしてもアレだな。俺がこれほどまでに興奮している時点でこれはマズいのでは? 俺はおっかなびっくりしつつ、セーフティな方法を選んでいたが、妹は一気にやりすぎたのではないか?
「みんなどうだった?」
「んー、普通にハグですよね。パパやママとするみたいに。先生と出来て嬉しいです」
「ふ、ふ、ふつー」
「別に。早くお菓子」
杞憂! 圧倒的杞憂!
確かに小学生であれば親とハグをすることは欧米でなくとも普通のことだ。
あげはちゃんは目が泳いでいるからそう思っていないものの、むしろほとんど触れ合ってないくらいなので何も問題なし。
沙織ちゃんに至っては向こうはなんとも思っていないし、こっちも異性を感じていない。むしろ母性を感じている。
つまり、超健全ということだ。
「じゃあ、次行きますね」
詩歌は沙織ちゃんに細い棒状のプレッツェルを一本だけ渡してそう言った。おいおい、それだけでいいのか。それだけで
真奈子ちゃんはのほほんと微笑み。
あげはちゃんは、なにやら握りこぶしを作りながら気合を入れ。
沙織ちゃんは嬉しそうに前歯でサクサクサクサクかじり。
そして、詩歌は、俺のところへやって来て、キスをした。
うーん、まったくえっちじゃないから不安ですね~。
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