女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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その声と身体を武器に男に近寄る熟れた果実

 夏休みが終わり、専門学校が始まった。

 沙織ちゃんの書生管理(しょせいかんり)が終了するかと思われたが、毎日から毎週に変わっただけだった。

 感想を言う前提で本を読むことは大変に意義のあることだった。ただぼーっと読むのとはワケが違うのだ。なにせ彼女が気に入っている箇所で何の感想も言わなかっただけで物理的に不条理なダメージを受ける。よって、常にどこが面白いのか、心を揺さぶるのか、表現方法はなぜこうなっているのかと考えなければ生き残れない。死にものぐるいで読み込むことは非常に勉強になる。

 それに一週間ならごまかしも効くので、エロゲーくらいはプレイできるようになった。先が気になるのでなるべく夜はそちらに時間を使いたい。夜に読書の時間を減らすためには、登下校時に読む必要がある。

 

 専門学校に向かうバスは、学生だけで満員だ。こんなところで女児向け小説を読むのは非常に恥ずかしい。はっきりいってえっちな漫画を読むほうが全然マシだ。それでもエロゲーをプレイしたいのでなんとかして読む。

 もちろんブックカバーはしているので、基本的には問題ないが挿絵の箇所など後ろから見られるのだけは気をつけねば。

 俺は周りの人に見られないよう顔をなるべく本に近づけて読んでいた。二人席の通路側に座っているのだが、通路側には人がたくさん立っている。ページをめくるとちょうど主人公の女の子が幼馴染の男の子にからかわれて怒るイラストが挿絵になっていた。絶対見られたくない。

 

「おっと」

 

 通路側に立っている男が揺れでこちらにぶつかってきた。右肩を押され、背骨を支点にくるりと左に。

 

「おおっと」

 

 さらに背中を押される。背筋は強制的に伸ばされ、手は前に伸びた。

 

「ん? ああっ、これは……」

「げえっ!?」

 

 左に居た女性に本を差し出すような形になり、がっちり本の中身を見られた。最悪だ!!

 急いで胸元に本を隠し、相手の顔を伺う。

 

「そういうの、読むんですね?」

 

 今一番言われたくないセリフだ。言ってる相手はもちろん女学生。同じくらいの年齢の女性に見られるなんて。しかもよく見たらとんでもない美人だ。青いリボンのポニーテールがよく似合っている。見るからに明るくて元気で友達が多くいそうなタイプ。恥ずかしいにも程がある。

 

「こ、これは勉強で」

 

 とりあえず言い訳をしたい。何が何でも言い訳したい。

 

「へぇ~。学科はどこなんですか?」

「……情報処理です」

「へぇ~」

 

 にんまりと笑われてしまう。そりゃそうだ、情報処理科が勉強するならプログラミングの本とかだろう。女児向け小説を勉強のために読むやつなどいるわけがない。

 

「いや、あの、ホントに。ホントなんです」

「ふぅ~ん」

 

 にやにやと見られながら、非常に可愛らしい声の相槌。くっ、殺せ。もはや気持ちはオークにレイプされる寸前の女騎士だ。しかしここで実は俺は女児向け小説を書いている小説家なんだと暴露するのも恥ずかしい。官能小説を書いているんだと宣言する分には平気なんだが、官能小説を書くために女児向け小説を読んでいるという説明には無理がある。ほぼ実話なのにな。

 

「ううー。本当なんだけどなあ」

「そこまで言うなら嘘じゃないみたいだね」

 

 うんうん唸っていたら意外にも信じてもらえたご様子。

 

「実は自分もなんだ。勉強のためにそういうの読んでて……」

「なるほど……って、ええ?」

 

 そんなやついないだろ!? ここにいるけど!

 

 ぷしゅーっと音を立ててバスが停まる。最寄りの駅から学校までを結ぶバスなので、それほど乗車時間は無い。俺は流されるようにバスを降りて教室に向かう。疑問は残ったままだが、まぁいいか……

 

 今日はデータベースを作る授業だった。好きな題材でデータを取り扱って構わない、ということでみんなサッカー選手やらゲームのモンスターやらのデータを打ち込んでいる。やれやれ、そんなエロくないものの何がいいのかね。

 俺は自分で考えたセクシー女優のデータベースを作ることにした。実際の女優のデータを学校のネットワークで検索すると閲覧不可になるからだ。なんでだよ。俺みたいに真面目に授業でアダルトビデオの情報を手に入れたいやつだっているというのに。まったくこれだから世の中ってやつはと文句を言いつつ、僕の考えた最強のセクシー女優のスリーサイズを入力していく。単純作業だがこれは実に楽しい。あとで胸の大きい順に表示しようっと。

 

「んー、どうしようかな」

 

 思わず独り言が漏れる。バストとウエストはすぐに決まるんだが、ヒップがいつも悩む。お尻ってのはどのくらいがベストなんでしょうね。小さくてもエロいし大きくてもエロい。とはいえどっちでもいいなんてとても言えない。お尻は大事だよ。

 

「何、悩んでんの?」

 

 その声が聞こえた方を見ると、いいかんじのお尻があった。ぱっつんぱっつんの薄いジーンズが優雅なラインを描いている。うーん、これは完璧だ。やっぱり尻ってのはこうプリッとしているのがいいね。

 

「ちょうどよかった、ヒップサイズを教えてもらえますか。授業で必要なので」

「……へぇ。お尻の大きさもあんたの勉強に必要なんだ」

 

 も、とは? というかこの聞き覚えのある声は……

 

「あ、ああ! 朝の」

 

 登校バスで隣りにいた美少女じゃないか。なんで情報処理科に。ここにはほとんど女子などいない。掃き溜めに鶴状態なので、周囲からさぞ目立つだろうと見回すがほとんど人がいなかった。

 

小江野忍琴(こえのおしごと)だよ」

「……お尻が?」

「名前が、に決まってんでしょ……」

「あれ? 怒ってます?」

 

 だとしたら理不尽な話だ。聞いたことに答えない方が悪いのではないか。お尻の大きさを問われているのに氏名を答えるなんてどうかしている。しかも、まるで俺がセクハラでもしてるみたいな態度を取りやがって。ちょっとカワイイからって調子に乗っているのでは?

 

「……はぁ。ここじゃなんだから、ほら、着いてきて」

 

 なんだ、ここじゃ言えないくらいケツがデカイのかな。そうは見えないけど。誘われるままに着いて行っていいのかと時計を見たらすでに昼休みになっていることがわかった。どうやら講義が終わっているのに気づかずにデータベース制作に打ち込んでいたようだ。本当に俺は真面目だなあ。

 

 のこのこと着いていくと、普通に学食であった。校内に三箇所ある学食のひとつであり、安くてボリュームがあるのでもっとも混雑している。こんなに人が多いところでケツの大きさを教えてくれるとな? 実はそういう趣味が……?

 

 小江野と名乗った彼女はからあげ定食を注文していた。ここでうどんとかにすると俺だけさっさと食べ終わっちゃうだろうと思い、同じメニューにすることにした。

 

 出遅れたせいもあって、すでに椅子はほとんど埋まっていたが、長い机のど真ん中あたりだけは空いている。彼女は向かいが空いている席に座ったので、その対面に腰を下ろす。ここまで混んでいれば逆にうるさくて俺たちの会話は周囲には聞かれないかもしれない。木を隠すには森の中というやつか。

 

「いただきます」

 

 彼女は割り箸を割って、手を合わせた。なんだ、普通に食い始めるつもりか。こっちはそれどころじゃないんだぞ。生真面目な学生なんだ。

 

「で? そんなにケツでかいの?」

「ぶっ」

 

 俺が心底生真面目な顔で質問すると、目の前にいる美少女は口に入れた味噌汁をお椀にリバースした。

 

「げほっ、げほ」

 

 わかめが喉にでも詰まったのか苦しそうだ。俺は紳士なのでコップの水を差し出すと、彼女は一気に飲み干した。

 

「はぁ、はぁ」

「大丈夫? どしたの?」

「こっちが言いたいよ……よく平気でそんなこと言えんね」

 

 疲れ切ったような表情で俺を見た。なんでだよ。俺はさっきからずっと同じことしか言ってないだろ。俺はからあげを口に放り込んだ。冷めてしまっては元も子もないからね。

 

「そ、そんなに自分の、その、お尻が気になるの?」

 

 自分のっていうのは俺のということではなく小江野さんのということだろう。一人称が自分とは軍人みたいだなと思いつつ返答する。

 

「もちろん。だって勉強のためだし」

「どんな勉強だし……わかった。じゃあ、教えてあげる」

 

 彼女はメモ帳を取り出すと、すらすらとペンを走らせる。ごはんを咀嚼しながら待っていると、メモを渡された。

 

 なになに、身長159cm、B85、W60、H86か。なるほど。そのくらいなのか。これで入力できるな。安心して味噌汁を口に含む。

 

「感想は?」

「乾燥わかめは好きじゃないな。生わかめがないなら、なめことかの方が」

「味噌汁の感想は聞いてないっつーの」

 

 ええ、こいつ自分のスリーサイズの感想を初めて会った男に聞いてるの? なんてやつだ。官能小説を書いている俺でもびっくりだよ。しかし、感想か。面と向かってスタイルのことを言うなんて機会は今までなかったな……

 

「そうだな……豊満かつ大胆な部分が主張しがちでありながら、バランスの取れたその健康的なボディからは匂い立つほどの色気が感じられ、見るものの男の本能が沸き立つように……」

「ちょ、ちょ、そういうのじゃなくて。っていうかなんか凄くない?」

 

 即席ながらできるだけの感想を贈ろうとしたのだが、彼女は割り箸でバッテンを作って止めた。行儀悪いな。

 

「勉強のためになったかって聞いてんの」

「あ、ああ。うん、助かったよ」

「ふー、やれやれ」

 

 何がやれやれなんだかわからんが、彼女はようやくからあげを囓った。俺も箸を動かした。飯を食いながら、話を待つ。一つ目のからあげとごはんを三口ほど食べると、油でテカってる唇は話を続けた。

 

「自分があんたの勉強の役に立った。そうだよね」

「うん。そうだね」

 

 相槌を打つが、嫌な予感がする。

 

「だから次はあんたが自分の勉強のために協力してくれる。そうだよね」

「あー、そういうことなのね」

 

 ようやく合点がいく。つまりは取引だったということだ。むしろそうじゃなければいきなり知り合ったばかりの男にスリーサイズなど教えないだろう。よかったよかった、どうやら彼女は変態じゃないようだ。つまりスリーサイズを人に教えるような勉強をしている……なんてエロい人なんだ。俺も官能小説家を目指した男、ひと肌脱ごうじゃないか。

 

「今度、オーディションがあるの」

「なるほど、悩殺ポーズの練習か。自信はないけどそれなりには詳しいと思う。俺に出来ることなら……」

「ち、違うし!」

「え、まさかもっと過激な?」

 

 なんてこった、俺の初めてが……いや、官能小説を書いている俺だ。恋愛の結果じゃなく取引でなんて相応しいじゃないか。

 

「わかったよ。どんなえっちなプレイでも……大丈夫」

「だーからー、違うから。その、えっと、ちょっとえっちな仕事もあるけど……」

「任せろ! 俺はえっちだ!」

「ちょちょ、学食のど真ん中でからあげ食べながら何言ってるの!?」

 

 自分から言いだしたくせに慌て始めたぞ、このドスケベボディめ。

 

「だからえっちな勉強がしたいんでしょ?」

「だから違うから! 自分がしたいのは小さな女の子の役の練習なの! 声優科の勉強なんだってば!」

 

 な~に~? そういえばこの学校には声優科もあったな。声優ってのは昔と違って容姿にも恵まれていないと難しいと聞くぞ。グラビアとかの仕事だってあるとか……そう思って彼女をもう一度見直してみる。

 

 うん、確かに声優っぽいな……

 

「バスで読んでたでしょっ! そういう本を! そういうのに詳しいんでしょっ?」

 

 あー。そういうことね。正直、俺は女児向け小説について詳しいとはとても言えないが、まあなんだ。二冊ほど本を出してはいるかな……

 





やばい、JSが出てこない! 読者が望んでいるシーンがない! ヤバい!
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