「エッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ」
エロい。エロすぎる。
あまりにもエロい。
それを見た俺のあそこは、それはもう大きなものに。
「わあ、立派」
と彼女は言った。
俺はもうガマンできない。
すっぽんぽんになると、怒張したあそこが天を衝く。
「ごくり」
彼女はどうやら嚥下したようだ。
ベッドに押し倒す。回転するやつです。
「はあっ、はあっ、はあっ、はあっ」
「あん、あん、あん、あん」
「ギシギシギシギシ」
「ぱんぱんぱんぱん」
「イクぜ」
「あーん」
そして俺たちは何度も何度も愛し合った。
ぽろり、と一輪挿しの牡丹の花が落ちた。
終わり
……これで終わりか……。
ふー。
俺は、なんと言っていいのかわからず、天を見上げた。読書の秋と言うにはまだ暑いが、少し涼しい風が吹いている。
「どうですか? 勃起しちゃいました?」
くふふ、と笑うのは
あげはちゃんは夏休みの間、なんと俺に憧れて官能小説を書いたと。そして、最初に俺に読んで欲しいと言って連絡してきたのだ。
あげはちゃんが書いた小説と知れば、詩歌は読みたがるに違いないが、それが子供には読ませられないくらいエロいものであるとわかるとマズいので、俺たちは公園にやってきていた。
大きな池の周りには老人たちが釣り糸を垂らしていて、画用紙にスケッチをしている若者もいる。彼らはベンチに座った俺達が、エロい小説を書いたり読んだりしているのだとは夢にも思わないだろうな。
俺は冷たい缶コーヒーをひと口飲んで、時間を稼ぐ。まだなんと言っていいのかわからないからだ。
「むふふ。あげはの
処女という言葉を強調して言うあげはちゃんだが、生まれてはじめて書いた小説を俺に読んで欲しいという彼女の気持ちは、それはもう嬉しかった。そして、嬉しかったからこそ、困っている。
なにせ、先程のものが書いてきたもののクライマックスだ。それまでの文章など推して知るべし。
娘が初めて作った料理がマズくて食えたものじゃないときの父親の気分だ。いや、それよりもツライ。苦笑いしながら美味しいよと言って、我慢して全部食べるだけでいいのだから。小説の感想をさすがに「面白かったです」で終わらせるわけにもいかんだろう。
しかし、この読書感想は厳しい。とりあえず、これで勃起などするわけがないが、それすら面と向かっては言いづらい。
「先生の大ファンだから、先生の書いた小説に似すぎかもしれないですけど」
こんなに非道い悪口を言われたのは初めてです。いや、あげはちゃんじゃなかったらぶっ飛ばすよマジで。どこがどう似てるんだよ。反省するから言ってくれ。
大ファンを公言してくれている美少女に対して、こんな気持ちになるとは思いませんでしたね。
こうなってくると、適当にごまかすのは違う気がしてくる。
料理の上達に必要なのは、まず自分が食べてみるということだ。味見しないやつは上達しない。
「うーん、逆に聞くけど、あげはちゃんはこれで勃起するの?」
「一生勃起できませんけど」
そうだった……女の子に勃起するのかと聞くのはセクハラの可能性がありますね……これは気をつけないと。
「じゃあ、この登場人物の気持ちになってみて。この女の人の気持ちに」
「もう、びしょびしょですよ、びしょびしょ」
んなわけない。
結局セクハラになってしまったが、そんなことはどうでもいい。
ここまで舌がおかしい料理人は上達しない。俺のファンが馬鹿舌なんて絶対認めないぞ。
「うーん、それはどうだろうな」
とはいえ、あまり厳しく言えないので優しく疑問形で会話を進行させる。
「先生はあるんですか? びしょびしょになったこと」
「無いです……男なので……」
「ですよね」
小学五年生に論破されてしまいました。どうすりゃいいんだこれは。どうみても褒められることを期待している顔だ。俺だってそりゃ褒めてあげたいが、褒められる点が本当にひとつもない。いや、あるか。ひとつだけ。
「それにしてもすごいよ。初めて小説を書いたのに、最後まで書けたなんて」
書き始めて、ちゃんと終わらせること。それが一番大事だ。
そうだよ、小学五年生が小説を書こうと思うだけでもスゴイことなんだ。ましてやちゃんと書いて終わらせて人に読ませるなんて。もう手放しで褒めてもいいだろう。
下手すればギネスに載る。18禁のエロ小説を書いた最年少記録間違いなし。
ぱちぱちと手を叩いて、頭を撫でてやる。
猫にそうしたときのように、くすぐったそうに目を細めた。うんうん、子供らしくてカワイイね。それじゃ一件落着ということで。
頭から手を離すと、見開かれた瞳は黒猫のように妖艶で、メスの顔をしていた。
「でも、読んでもらっただけじゃ意味がない。でしょう?」
下から覗き込むように、黒い長髪を揺らす。
「官能小説は、読むものじゃない。使うもの。使ってもらってようやく意味がある」
「むっ……」
わかってる。あげはちゃんは、よーくわかってる。そのとおりだ。同年代の男であれば握手してハグしてハイタッチして、お宝を交換するところだ。
だが、この局面では裏目に出る。
読者として優れていればいるほど、ごまかしがきかない。
君は大変よくわかっているが、実力がまったく伴っていないのだ。
「あげはの、コレで、おなにー、してくれますか?」
そう言って小首をかしげる彼女は、本当に超小学生級の色気だが、どう頑張っても無理だ。コレが小説じゃなければよかったんだが……。
「こんなもんでオナニーできるわけねえだろ、この下手くそ! お前はこれでオナニーできるのか!? できんのかよ!? このションベン臭いガキが! おおん!?」
と俺が大声で言ったとしよう。事案どころではない。もうね、逮捕して裁判も無しに即執行猶予無しの実刑判決だね。そうしないと俺が俺を許さない。
「ん?」
無言の俺に、あげはちゃんは、右に傾いていた顔を左に倒した。あどけなさとセクシーさが入り混じった、あげはちゃんらしい表情。くっ、言えねえ。何も言えねえ。
「あげは、使ってるところ、見たいなあ。あっ、応援しますよ。がんばれがんばれ、って」
……それを書けよッ!!
エロいことばっかり考えてる男にこっそり連絡してきて、女の子が用意したおかずでオナニー中にがんばれがんばれ、って応援してくれる女子小学生の小説を書けよ!!
くそ、本人はエロいのになぜ創作物はなぜこれほどエロくないのか……!
「ぐぐぐ、ぎぎぎ」
あまりの歯がゆさに声にもならない声が。
感情が伝わったのか、足元に近寄ってきていた鳩が飛び立った。
「おや~? 勃起を我慢しているのかな~?」
んなわけねえだろ。
どうやら鳩より空気が読めないようですね。
つか、なんでそんなに自信満々なの? 根拠はどこから湧いてくるの?
……いや、わかる。
考えてみれば、俺もそうだった。
はっきり言って初めて書いた小説なんて、今なら怖くてみることができない。
稚拙で独りよがりで、言いたいことがまるで伝わらない代物だった。それでもなぜか書けている気がしたものだ。
当時は妹くらいにしか読んでもらうことはできなかったから、えっちなシーンのまったくない女児向けの小説を書いて感想を貰っていたっけ。
今思えば、詩歌が「ぜんぜんわかんない」とか「おもしろくない」とか言ってくれていたからこそ上達したのだ。結果的に女児向けの小説家になってしまったのも、それが原因……いや、そのおかげだと思う。
ということは、ここは俺が心を鬼にして、本当のことを言うしか無いのだろう。
それが彼女のためだ。
「あげはちゃん、心の準備はいい?」
「はい、先生になら……なにをされてもいいです……」
それを書けばいいのに。ほんと。
お待たせいたしました。お待たせしすぎたかもしれません。
あげはちゃんの出番だよ!!!