女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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いたいけな少女は羞恥で顔を赤らめる

「こちらが清井真奈子(きよいまなこ)ちゃん」

「清井真奈子です、よろしくおねがいします」

 

 ぺこりとお辞儀をした後に上げた顔は、はにかみながらの笑顔。

 驚いた。本当に美少女だ。

 日曜日、妹の紹介で我が家にやってきた俺のファンという女の子。

 小学六年生ということだが、完全に垢抜けていてとてもガキなんて印象は皆無。

 青い差し色がところどころに入っているフリルの付いた白のワンピースの着こなしは完璧で、そのファッションブランドの専属モデルなんじゃないのかと思うくらい似合っていた。

 つやつやのロングヘアはところどころ編み込まれていて、まあオシャレで清楚で品が良くて。あまりにも完璧すぎて近寄りがたいくらいに綺麗だから、子供の頃はいじめられたんじゃないのかと思うくらい。

 だって男子ってこういう女の子を好きになるとどうしていいかわかんないからいじめちゃうよねっていう感じの美少女なのだ。

 

「こっちがアニキのもうすぐデビューする作家の四十八手足(よそやてあし)せんせ」

「どうも」

 

 こいつ、友だちには俺のことアニキって呼んでるのかよと思いつつ、へこっと挨拶。なんだ、相手は小学生なんだがものすごく緊張する。ファンに会うのも初めてだが、ここまでの美少女に会うのも初めてだからだ。国民的美少女コンテストとかで見るようなレベルの女の子がウチにいるということが異常すぎて平常心を保つことができん。

 いやいや、相手は妹よりも年下の女子小学生(JS)だぞ。何を考えているんだ。

 

「やっぱり素敵……文章もだけど。わたし、先生の小説を読むと優しい気持ちになるんです」

 

 完全に尊敬の目で見られている俺。もちろんこんなことを言われたのは人生で初めてだ。そして文章を読んで優しい気持ちになるなんてことも意外すぎる。こちとら、やましい気持ちになるように書いているからね。よってこの感想はどちらかというと遺憾であるが、この子の前でそんな些細なことはどうでもいい。可愛いは正義。

 

「いやあ、恐縮です」

「わあ、わたしなんかにそんなに腰を低く……紳士ですね。かっこいいです」

 

 一点の曇りもない黒い瞳がキラキラと輝き、俺を見る目が満天の星空のようだ。青姦レイプされてる女の子が感情を無くした目で見上げながら涙をひとしずく零すのが似合いそうな夜空ですね。え、なんでそんな鬼畜で変態なことを想像するのかって? 職業柄仕方がないんだよ、わかってくれよ。そんなことばっかり考えるのが仕事なんだよ。デビュー前だとしてもそうなんだよ。

 

「まあ、中に入ってよ」

「おじゃまします」

 

 彼女は俺の脳内のことなどつゆ知らず、コルクのサンダルを脱いでいた。今は五月の下旬。夏並みの気温だ。妹が用意した来客用のスリッパに履き替えるときにそのあまりに小さな素足を見て、やはり子供だと感じる。子供用ではないスリッパはぶかぶかで歩きにくそうだった。

 

 我が家は一軒家だが、客間なんて立派なものがある家ではないので三人でリビングへ。

 玄関のすぐ左手にある十二畳のLDKだ。テレビの前にコの字に配置された黒いソファーに腰掛ける。

 俺とゲストが向かい合う形で、横にいるのが妹の詩歌(しいか)だ。

 座るやいなやお茶の用意をするべく立ち上がった。我が妹はこういったおもてなしをそつなくこなす。まぁメイドになれば完璧だろうな。俺の小説のメイドとしては不合格だが。なにせ粗相をしてお仕置きされるために存在しているのであり、決してメイドとして有能であってはならないからだ。

 そんなことを考えているとはつゆ知らず、引き出物で頂戴したヘレンドのティーセットにテキパキとアールグレイを注いだり、缶に入ったクッキーを飾り付けたりしている。あっちは任せておけば問題なさそうだ。

 さて目の前の見目麗しき女子小学生は、緊張がピークなのかスカートの膝の部分をぎゅうっと握り込み、うつむいてぷるぷると震えていた。何も悪いことをしていないのに、罪悪感を感じる。まるで今すぐにスカートをたくし上げて、下着を見せろと強要されているように見えるからだ。決してそんなことはしないのだが、そういうことをすぐに考えてしまうのは官能小説に対しての情熱とモチベーションによるものであって決して俺が変態だからではない。

 

「緊張してる? 自宅だと思って楽にしてよ」

「は、はひっ!? わわわわ、わかりましたっ」

 

 見ているだけでこちらの心臓も早くなってしまうほど、落ち着いていなかった。玄関先では平気で会話していたが、あまり他人の家に行ったことがないのかもしれない。これは大人として何気ない会話で平常心に導いてあげるべきだろう。今ならぱんつ見せてと言っても応じてくれそうだな、なんて考えている場合ではない。さっき変態ではないと言ったばかりだぞ、俺。強要してなければいいという問題じゃないぞ、俺。

 

「いつも妹と仲良くしてくれてるみたいで、ありがとね」

「と、とんでもないです! 詩歌さんは素敵でかっこよくて優しくて美人で、憧れなんです!」

 

 思わず破顔してしまう。なんていい子なのだろう。

 

「ええ、詩歌が? そうかな?」

「はい! わたしなんかにもいっつも気を使ってくれていて」

「へえ~、俺には気を使ってくれないけどな」

「お兄ちゃ~ん? 後で覚えてなよ~?」

「やべ、あいつ地獄耳だったわ」

 

 俺がしまった、という顔をすると、真奈子ちゃんはころころと笑った。愛らしいにもほどがあるね。

 

「仲が良いんですね、羨ましいです。わたしもお兄ちゃんがいるけど全然仲良くできなくて」

「そう? 真奈子ちゃんみたいな妹だったら最高だけどな」

「ええっ!? そ、そんな」

 

 両手で顔を覆ってぶんぶんと首を振り、長い髪が揺れる。恥ずかしがり屋さんなのだね。詩歌がこういう態度を取ったところは見たことがない。妹っていうのはかくあるべきだよなあ。

 

「まーったく、お兄ちゃんはまなちゃんが可愛いからってデレデレしちゃって」

「ん? ああ、ありがと」

 

 ちょうど、詩歌がトレーに乗せたティーセットを持ってやってきたので礼を言う。真奈子ちゃんはますます下を向いて髪を左右に揺らしていた。確かに可愛いが、デレデレなぞしとらん。

 

「ん? 二人分しかないぞ」

「ああ、私はいいから」

「そうなのか?」

「地獄耳の妹がいるとお邪魔でしょうからね。そのくらいの気はつかえるから」

 

 ちゃちゃっとテーブルの上にティーセットを配置させると、トレーを抱きかかえて退室していった。丁寧にお辞儀していったところがわざとらしい。

 やれやれ、機嫌を損ねたかな。あいつもまだ中学一年生だもんな、真奈子ちゃんの緊張をほぐすためとはいえ、やりすぎたかな。

 

「じゃ、頑張ってね」

 

 ぱちんとウインクなぞをかまして去っていった。別にサインくらい頑張らなくてももうマスターしたっての。

 詩歌が去ると真奈子ちゃんが、両手をぐっと握ってふぁいとっみたいな感じのポーズをとったが……真奈子ちゃんが頑張ることはないと思いますが。まだ緊張してるのかな。

 

「えっ、えっとっ」

「うん」

「好きですっ!」

「え? ああ、小説がね。ああ、びっくりした」

「あ、んー、その、はい。大好きです」

「ありがとう」

 

 まぁ、なんだ。書いたものを褒められるのは作家としては当然嬉しい限りだ。こんなに嬉しいことはないといっても過言じゃない。ただ、絶対俺が伝えたかったことが伝わってるわけではないことはわかっている。もしこの小説がまかり間違って学校の教科書に載り、テストでこのときの作者の気持ちを答えよ、なんて出たならば絶対に俺の気持ちを当てることはできないと断言できるね。ちなみに答えは『勃起してくれたら良いな』だ。国語の先生、もしものときは頼むぜ。違ってたらバツにしてくれよ。

 

「どんなところが好きなの?」

「あっ、えっとっ、好きなところはいっぱいあるんですけど、特に文章の表現が素敵だなって」

 

 ほう。

 ストーリーでもキャラクターでもなく、文章表現の部分か。

 正直なところ、これは意外だ。女子小学生だったら、主人公と共感できるとか、このキャラが可愛いとかかっこいいとかそういう感想だと思っていた。

 作家としては表現力を褒められたに等しく、嬉しいことだ。もちろん、ストーリーやキャラクターも褒めて欲しいのだけれど。

 それにしてもまさかこんな年下の、すなわち読書歴の少ない女の子に言われるとは。ぶっちゃけ、背伸びをしてわかったつもりで言ってるだけなのではないかという気もしてくる。別に彼女のことをいじめたいわけではないが、詳しく聞いてみてもいいだろうか。

 

「例えば?」

「そうですね、初めて知った言葉なんですけど、しとどに濡らしているとか、そんなの見たことなくて」

 

 うーん。確かにそうかもな。小学校の教科書にはあまり出てこないかもな。ただし、官能小説ではありふれた言葉です。しょっちゅう出てきます。陳腐と言っても良いね。

 

「あとは怒張とか、かっこいいなって」

「へえ」

 

 彼女がカッコいいと思っているのは当然、チンコが立派に怒張しているさまを想像してのことではないだろうが、俺はむしろチンコ以外に怒張するものを知らない。なんだと思ってるんだろ。

 

「あとはやっぱりメイちゃんが可愛いです」

「うんうん」

 

 そりゃそうだよね、それを言ってもらわないと困っちゃうよ。よかった~。

 

「例えばどんなところが?」

「そうですね、スカートの下まで垂れるくらいびっしょりとなるところとか」

「おおう!」

 

 そこか! そこなのか! 嬉しいが、なんだと思っているのか。おもらし? おもらしすると可愛いの?

 

「いくらなんでも、よだれがそこまで垂れるって、食いしん坊にもほどがありますよ、ふふ」

 

 そんなわけないだろ!?

 みんなどんだけメイちゃんが食いしん坊に見えてるんだよ。メイちゃんは食欲じゃなくて性欲が強いんだよ。よだれも垂らすけど、それは快楽に溺れた結果だらしなく口が開いたままになるからだよ。

 

「あと恥ずかしがり屋さんなのも可愛いです」

「おお!」

「すぐ顔を赤らめますよね」

「うんうん!」

 

 わかってくれたか! そうなんだよ!

 メイドに必要なものは恥じらいなんだよ!

 真奈子ちゃんはうっとりとした表情で目を閉じると、

 

「膨らんだ双丘が弾むさまを、ご主人様にジロジロと見られてメイは羞恥で顔を赤らめた」

 

 と朗読するように少し声を張って言った。

 

「おお! 暗記してるの!?」

「はいっ、ここの描写が大好きなんです」

 

 ええ~。こんなエロいところが?

 自分で書いてて勃起したよ?

 

「ほっぺたが膨らむくらい食べ物を口に入れちゃうメイちゃんと、それを見ていじめるところと、それを恥ずかしがるところがなんかもう、イチャイチャしてる感じで」

「な、なるほどね」

 

 双丘はほっぺただと思ったんだ。そっかー。おっぱいなんだけどなー。

 イチャイチャしてる感じってレベルじゃないんだけどなー。がっつりヤッちゃってるんだけどな。

 その真実を決して彼女に伝えるわけにはいかない。ああ、もどかしい。

 でもイチャイチャしてるってことは伝わってるんだな。ちょっと安心。

 

「真奈子ちゃんは、誰か男の人とイチャイチャしてみたいとか思ってるの?」

「えっ、ええっ!?」

「はは、メイみたいに顔が真っ赤だ。可愛い」

「あ、あう……」

 

 一瞬でゆでダコのように顔が真っ赤になるというのはこういうことだと教えてくれるような、お手本のような恥ずかしがり方だ。小説表現を映像化すると普通になりそうだが、事実は小説より奇なりというところか。人気のイラストレーターでもここまで可愛く描けないだろ。

 

「真奈子ちゃんとイチャイチャできる男の子がいたら羨ましいな」

「ほ、本当ですかっ」

「うん、やけちゃうね」

「はうう」

 

 うん、この恥ずかしがり方は勉強になる。メイの描写の際に参考にしたいから、もっと恥ずかしがらせて観察したいかも。

 

「ちょっとちょっと、お二人さん」

「あ? なんだいつの間にいたんだ詩歌」

 

 まったく気づかなかったが、妹の詩歌がジトッとした目をして俺たちの座っているソファーの横に仁王立ちしていた。

 

「二人が独自の世界作ってイチャイチャイチャイチャしてる間ずっといたんだけど」

「いや、イチャイチャしてたんじゃなくて、イチャイチャしたとしたらどうかという話をしてただけだ」

「あっそ……ところでまなちゃん、今日お昼ごはんウチで食べていきなよ」

「ええっ、そんなの悪いですよ」

「うーん、今食べるもの無くてさ、兄貴と二人で買い物行ってくれると助かるんだよね」

「えっ、二人で、お買い物ですか!?」

「うん、駄目?」

「い、行きたいです!」

「俺は……」

「お兄ちゃんに発言権はないから」

 

 くっ、俺がサインをしてあげるという設定だったはずなのに。

 若い女の子の前では無力だな。詩歌からがま口を受け取る。

 

「わーったよ、行ってくるよ。ごめんね真奈子ちゃん、つき合わせちゃって」

「いえっ」

 

 慌てて立ち上がった真奈子ちゃんは、膝をローテーブルにぶつけて、悶絶してソファーに倒れた。

 

「だ、大丈夫!?」

「だ、大丈夫、です」

 

 この子、ドジっ子なのかもしれないな。メイっぽいかも。ますますこの子を観察すると、小説のネタになるかもしれない。買い物に少しモチベーションが上がった。

 

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