女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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容赦なく攻め立てた強姦の代償

「プレイ前はまぁそんなところだけど、このクライマックスのところも問題だらけだ。まず冒頭の『エッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ』ってところだが、これは読者に思わせるべき感想であって書いてどうするんだと」

 

 ラブコメならむしろアリだけど。主人公がエッッッって言ってたら読者も共感するという点で。

 

「で、次が一番問題ね。『エロい。エロすぎる。あまりにもエロい。』これは最悪だよ。エロいって言葉を使わずにそう思わせるのが一番大事なわけだけど、具体的なことは何一つ書かれてないわけ」

 

 これって読者にエロを勝手に想像させているわけで、それじゃ書いている意味がない。俺のエロい妄想を読んでエロい気持ちになってね、っていうのが官能小説だと俺は思うわけ。エロ漫画もきっとそう。

 ここで書くべきなのは、読者に映像を思い浮かべさせるための描写であって、作者の感想ではない。

 

「次が、『それを見た俺のあそこは、それはもう大きなものに。』か。これは表現が陳腐だね。どんぐりころころとかの絵本でおにぎりを表現するような感じがしますね」

 

 対象年齢が五歳の官能小説、というのは斬新だが一冊も売れない。矛盾してるからね。十八禁なのに絵本売り場に置いてるとかね。「こづくり」というタイトルだったりして。それはそれで売れそうな気がしてきたな。

 まてまて脱線している。

 

「んで、『わあ、立派と彼女は言った。』ですね。逆にスゴイよね。素人モノのアダルトビデオより大根役者って感じだよ」

 

 実際に小江野さんが俺のあそこを見て「わあ、立派」って言ったらそれは興奮するかもしれないが。

 

「その後は結構面白いよね。『俺はもうガマンできない。』という短調な表現のあと、『すっぽんぽんになると、』がいきなり子供っぽい表現になって、『怒張したあそこが天を衝く。』で突然難しい言葉を使い始めるというアンバランスっぷり。中二病をこじらせてる子供って感じでウケる」

 

 いや、マジで面白い。天を衝くじゃねえよ。ロボットもののアニメかよ。愚息も苦笑するレベル。

 

「あー、面白い。『ごくり』というセリフがあってから、『彼女はどうやら嚥下したようだ。』だって。わかってるっての。嚥下って言葉を使いたくてしょうがないのかよ」

 

 こういう言葉を使うと官能小説ぽくなるでしょう、と思ってんのかな。大間違いだっつーの。

 

「で? 『ベッドに押し倒す。回転するやつです。』どんな倒置法やねん。よくわかんないけどラブホテルのベッドって回転するんでしょ? って思いながら書いてるのがバレバレだよ」

 

 これじゃ興奮できないね。まあ、女子小学生が書いていることをバラせば、興奮する人もいそうだが。

 

「そこからプレイ中のセリフになると。『はあっ、はあっ、はあっ、はあっ。あん、あん、あん、あん。ギシギシギシギシ。ぱんぱんぱんぱん……』という部分ね。エロ漫画から漫画を抜いたような感じ。面白くない」

 

 小説は小説だからこその表現があるわけだよな。まぁ、ここについてはまだいいけど。他がひどすぎる。

 

「この後のセリフがまたヒドイ。『イクぜ。あーん。』なんで棒読みなんだよ。イクだけカタカナなのもまたダサい」

 

 イクという表記自体はアリだけど。イクぜ。って。

 

「最後は『そして俺たちは何度も何度も愛し合った。ぽろり、と一輪挿しの牡丹の花が落ちた。』という昭和の昼ドラの浮気シーンみたいな終わり方ね。突然ジジくさい表現になったよね。若い人はピンとこないんじゃないの」

 

 まあ、あげはちゃんより若い読者は存在しないけど。あげはちゃんの知識が特殊すぎるのだろう。

 

「こんなところかな。ちょっとあっさりしてたかもしれないけど……」

 

 首をあげはちゃんの方に向けると、下を向いて肩を震わせていた。どうしたのかな……?

 

「うっぐ、うぐ、えぐ、ぐす……ひぐ」

 

 号泣している!?

 太ももはびしょびしょに濡れ、ベンチの下の砂が黒くなるほど。

 

「誰だ、あげはちゃんを泣かしたやつはぁぁああ!? 許さんぞぉっ!?」

 

 俺はあまりの怒りに、髪が金髪を超えて青くなる勢いで髪を逆立てた。

 しかし、周りはのどかな公園であり、近くに人はおらず、静かな湖畔には行水をするカラスすらいない。ときおり鳩のぐるっぽーという鳴き声がする程度だ。この行き場のない殺意はどうすればいい、教えてくれウーフェイ。

 

「えぐ、ふぇ、ふぇええ……」

 

 声を押し殺して泣くのを我慢しているようにも見える。くっ、いつものまったく無い色気を出そうとして背伸びをしている態度に比べてあまりにも等身大な感じがギャップ萌え……してる場合ではない。

 俺は赤くなったぷにぷにのほっぺをツンツンすることを必死で我慢して、そっと涙を拭う。

 

「あげはちゃん……どうしたの、なんで泣いているの?」

 

 優しく優しく、女子小学生を慰めるように。いや、女子小学生だったわ。あげはちゃんだって女子小学生だったわ。普段のエロジジイみたいな言動はともかく、泣き顔は紛れもなく女子小学生だ。

 

「……わかんないの?」

「ん? ごめんね、わかんないよ」

「あげは、レイプされちゃった」

 

 な、なんだと……!? いつのまに!?

 

「先生に、レイプされちゃったよ」

「俺に!?」

 

 馬鹿な……ついに官能小説を書きすぎて現実と妄想の区別がなくなってしまったのか……いやまて、あげはちゃんとは妄想でもそんなことをしたことないぞ、あげはちゃんとは。

 

「責任、とってくれますか?」

「も、もちろん」

 

 とっさに言ってしまったが、責任をとるってつまり婚約だよな……あげはちゃんと婚約……確か一八歳未満であっても婚約者となら条例に違反しないはずだ。つまりあげはちゃんは合法ロリということになる……よし、婚約しよう。それが紳士たる俺の真摯な態度であろう。

 海が見える丘に立てた白い家に、大きな犬と一緒に庭で遊ぶ俺とあげはちゃんとの間に生まれた子供を妄想し始めたあたりで、俺の左手を握る小さな手。

 

「あげはの書いた小説をレイプした責任、とってもらいます」

 

 え? 小説をレイプ?

 

「一生懸命書いたものを……こんな、嫌がるお姫様を寄ってたかって汚い男どもが、ビリビリにドレスを引き裂いて泣き叫ぶ声にますますその卑猥な棒を怒張させ、ろくに前戯もしないまま強引に挿入するような言い方をして……」

「待って? 今のセリフが言えるならもうちょっとマシな文章書けたんじゃない? すっぽんぽんとかあーんとか全然出てこなかったよね?」

「クッ……あげはの身体ならどれだけ酷い目にあわされても屈しないけど、魂を込めた創作に対しての陵辱は耐えられない……」

「いや、ごめんね? でも、今くらいの表現してくれてたらここまで言わなかったよ?」

 

 あげはちゃんは涙を拭いながら、すっくと立ち上がる。

 ベンチに座る俺の前に立った。太陽を背にして、がばっとお辞儀をする。どういうこと?

 

「あげはを弟子にしてください」

 

 で、弟子ですと? とんでもない。

 

「俺は児童小説のレーベルの作家だよ? 官能小説家じゃないし、弟子なんて」

「弟子にしてくれたらお礼は、身体で払います」

「誘惑!?」

「弟子にしてくれなかったらレイプされたってみんなに言います」

「脅迫!?」

 

 困ったな、と後頭部を掻く。しかし、拒否する選択肢はなさそうだ。





予想通りの展開……ですかね~



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