女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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学校では教えてくれない授業

 

「どうした? ついに脱ぐのか!?」

「ち、違うっ! なんで脱ぐのよ」

「いや、最近は声優も結構水着になるだろ」

 

 突如、通話アプリのコールをしてきたのは小江野忍琴(こえのおしごと)。同じ専門学校の、声優科で学んでいる声優のたまごだ。

 一応すでにデビューしていて、エロゲーのえっちシーンのないキャラの役などで声優をしている。早くエロい役をやれ。

 声優さんも最近は若くて可愛くてナイスバディな人が増えており、小江野さんもまさにそういう女の子である。

 声優雑誌にも水着写真のグラビアは結構載っていて、小江野さんがそこにいても不思議ではない。

 まぁ俺は別に声優ファンではないので、普通にもっと肌の露出が多い雑誌を買うが。

 

「私なんかが脱いだって、売れません」

「俺は買うけど」

「……ッ! 買うんだ」

「乳首が出てたらな」

「出さないからっ!? ……で、でもそれなら買うんだ」

「三冊買ってもいいね」

 

 使う用と、使う用と、使う用だ。

 汚しちゃったときのスペアと、それも汚しちゃったときのためのスペアだ。

 そのくらいの慎重さが必要。

 

「そ、そっか。三冊も買っちゃうんだ。へへ」

「嬉しそうだね。やっぱり乳首出す? 出しちゃう?」

「絶対出さない!」

 

 ノリが悪いな。ポロリといけよ、ポロリと。

 まぁ水着でも買うけど。

 

「で? なんの用?」

 

 明日も普通に学校があるのに、わざわざこうして連絡してきたということは何かあるのだろう。学科は全然違うので普通には会わないが、訪ねてくればいいわけで。

 つまり学校では言えないことなのかもしれない。

 

「今、妹は風呂に入ってていないから、大丈夫だぞ」

「な、何が?」

「学校で言えないようなエッチな話なんだろ?」

「ち、ち、違わない……けど……」

 

 なんだと!?

 マジでエッチな話なの!?

 来たか。ついに俺にもそういうときが来たかっ!?

 

「実はその」

「実は、その!?」

「エッチな」

「エッチな!?」

「ゲームの」

「ゲームの!?」

 

 ここまで来て、またしてもエロくない役をやるとか言うわけがない。

 おめでとう! エロゲー声優デビュー! シナリオに参加したい! 紹介して!

 

「ラジオをすることになった」

「……えっ?」

 

 ラジオ?

 ラジオですか?

 

「うん……エッチなゲームを紹介するインターネットラジオのパーソナリティをやらないかって」

「ええ……それって普通エロゲー声優がやるんじゃないんですか」

「ほら、競馬を知らない女の子が競馬番組をやったりするじゃない」

「あぁ……確かに。そういうノリなんだ」

 

 何も知らない声優のたまごの一八歳の女の子が、段々とエロゲーに詳しくなっていくラジオか……素晴らしい。企画とプロデュースと俺が出来ないことが不思議なくらいだ。

 

「しかし意外だな。そういうのやりたいんだ」

「そりゃエッチじゃないゲームのほうがいいけど。ラジオはありがたいの。アニメは嬉しいけど1クールだけで終っちゃうじゃない。ラジオは結構長く続くかもしれないし」

「リアルな話だなあ」

「リアルな話なの」

 

 声優になりたくてなれる人間は本当に少ないと聞く。このチャンスを逃すような真似は出来ないのだろう……。

 つまり広義の意味では枕営業みたいなものだ。興奮してきましたね。

 

「それでエロゲーをやる前にエロいことをしたいから俺に連絡してきたわけか」

「ち、ち、違います! エロいことじゃなくて、エロゲーがしたいの!」

 

 エロいことではないのは残念だが、今なんて?

 

「エロゲーがしたいだと」

「う、そりゃそうだよ。エロゲーを紹介する番組だもん。やらないと話にならない」

「そういうのって構成作家さんとかディレクターとかが考えるんじゃないの」

 

 Youtuberじゃないんだから、本人が好きなゲームをやるってことはないだろう。

 

「言っちゃったんだもん」

「へ? 何を?」

 

 なんか突然子供っぽい言い方をするから、驚いちゃったじゃないか。

 

「エロゲー大好きでいっぱいやってるって、言っちゃったんだもん」

「はあー!? なんでそんなことを」

「だ、だって、面接でそう聞かれたから……好きですかとか、普段からやってるんですかーとか」

 

 要するに口からでまかせでテキトーなことを言ってたら合格しちゃったと。そして嘘だったなんて言って、このチャンスを棒に振るわけないはいかないと。

 

「なるほど、それで俺を頼ってきたわけか……」

「うん……パソコンはあるけど、エロゲーなんて持ってないし、そもそも知識がないことがバレちゃったら……」

 

 うら若き乙女が、エロゲーの知識がないことを嘆いている。ここで一肌脱がないやつは男じゃないぜ!

 

「エロゲーのことなら俺が知っている。俺に任せろ」

「やったー! じゃ、今から私んち来て」

「えっ、今から!?」

「明後日収録だから、時間がないの!」

 

 しょうがねえなあ……と思いつつも、ワクワクしてきた。

 何も知らない声優のたまごの一八歳の女の子が、段々とエロゲーに詳しくなっていくのが、なんと俺のプロデュースによるものだとは。

 四十八(よそや)Pはやる気満々だよ!

 

 ゲームディスクをケースに詰め込んで、バッグを背負う。

 私鉄に乗って、数駅。降りた後は送られてきたMAPのところへ、軽く駆け足で向かう。

 夕飯を食べる前に家を出たが、すっかり日は落ちて、秋ならではの涼やかな風が吹き付ける。

 それにしても平日の夕飯時に女の子の家に押しかけるなんて、家族の方がどう思うかしら……と考えていたが、目的地に到着するとそれが杞憂であることがわかった。

 っていうか、むしろ心配だ。

 

「これ、どう見ても一人暮らし用のアパートじゃん……」

 

 それは2階建てのアパートであった。

 階段は錆びまくっており、築年数はかなりのものと思われる。

 廊下に設置されている洗濯機もみんなボロボロだ。小江野さんは本当にこんなところに住んでいるのか……?

 表札などかかっていないので『201号室だょ』というチャットのメッセージと部屋番号を何度も交互に見ながらブザーを押す。インターホンじゃなくてブザー。

 がちょっと音をたててドアが少し開く。

 

「いらっしゃい」

 

 小声だ。大きな声では隣に聞こえるからだろう。

 なんか、夜にこっそり一人暮らしの女の子の家にやってきていることを意識してしまうな……。

 いや、落ち着け。俺はエッチなことをしに来たんじゃない。エッチなゲームをしに来ただけなんだ。

 薄手のタンクトップとホットパンツ姿の肌色の多さを気にしてはいけない。もっと肌色率の高いイラストを見るのだから。

 

「おじゃましまーす」

 

 中に入るとすぐにキッチン。といっても一口コンロと流しがあるだけ。

 その奥は六畳一間の和室だった。ドレッサーが置いてあったり、家具の色とかは女の子っぽいけど……。基本的にボロい。エアコンも古い。

 

「ここ、座って」

「う、うん」

 

 ちゃぶ台って感じの小さなテーブルの前に、座布団が二つ。

 

「ノートパソコンなんだね……」

「うん。え? 駄目なの?」

「いや、大丈夫だよ」

 

 エロゲーはスペックの高いパソコンである必要はない。問題は、二人でノートパソコンを使うとなるとよっぽどくっつかないといけないということである。

 

「どれからやる?」

 

 一応、ディスクをいくつか見せる。

 

「わっ、わわーっ」

「なぜ目を覆う?」

「だって、だってエッチなんでしょ?」

「おいおい」

 

 ディスクに印刷されている程度のイラストで何を言っているのか。正直、このイラストよりも目の前にいる女の子の方がよっぽどえちえちです。

 

「えっと~、そもそもどういうやつがあるのかわかんない」

「なるほど。最初はそんなにエロくないやつの方がいいのかな」

「え? あんまりエッチじゃないものもあるの?」

「そりゃいっぱいあるよ。全部が全部抜きゲーじゃないし」

「ぬ、ぬきげー? 毛を抜くゲーム?」

 

 俺は今、美少女から抜きゲーとは何かと説明を求められている。そういうことなのか。ふーむ、なにかトンデモナイことに足を踏み入れてしまった気がしてきたね。

 

「毛は抜かない。単に、抜くっていうんだが意味はわかるか?」

「え。わかんない」

「説明した方がいいか? もちろん、エッチな言葉だぞ?」

「う……お願いします」

 

 ったくしょうがねえな……教えてやるか……本当にしょうがない……手を当てて、耳打ちする。ご近所に聞こえたらマズイもんね!

 

「うっ……そうなんだ」

「そうです」

「え、でも待って。そもそもそれって当たり前なんじゃないの」

「ふむ。エロゲーは全部抜くためにあるんじゃないか。そういう質問だな」

「うん」

 

 俺は腕組みをした。なんというか、そう、今から俺はとても重要なことを説明しなければならない。

 俺が真剣な目をしたから、小江野さんも背筋を伸ばす。

 

「例えば、泣きゲーというジャンルがある。これは泣く」

「え、泣くの?」

「うん。泣く」

 

 マジで泣く。

 

「これはつまりエロがなくても成立するが、あったほうがより物語に入り込めるパターンだ。純文学とかでも、エッチなシーンがあったりするだろ」

「あー、そういうやつか……確かに少女漫画でも結構エッチなやつあるよね」

「そうそう。そういうノリ」

「なるほど。泣きゲー……と」

 

 丁寧にメモをしていく小江野さん。あまりの勉強熱心さに泣きそうである。

 

「あと、バカゲー」

「バカ?」

「要は下ネタってことだな。エロいんだけど、基本的には笑える感じのやつ」

「なるほど、バカゲーと」

 

 バカ丁寧にメモる小江野さん。あまりの勉強熱心さに頭がおかしくなりそうだ。

 

「他には、格闘とか麻雀とかで勝ったらエッチなシーンになるやつ」

「ふんふん。それは抜けないんだ」

「出来ないことはないが、これはゲームセンターにあったものの派生だよな。要するにご褒美としてエッチなイラストが見れるという感じ」

「なるほど、ご褒美ね」

 

 俺がそれを教えてあげたご褒美はもらえるのかな?

 

「そんなわけで色々だ。シミュレーションゲームやロールプレイングゲームとして普通に面白いけど、エッセンスとしてエッチなシーンがあるものもあるし」

「奥が深いんだね」

 

 関心したように、頷く。

 もはやエロゲーに対しての恥ずかしさなど微塵もなく、純粋に仕事のために知識を得ようとしている。プロだ。

 

「で? 最初はどういうやつからプレイする?」

「ロリコンがやるやつ」

 

 は?

 謎の即答に俺は唖然とするばかりだった。





個別パート、小江野さん編をお届けします。

エロゲーに詳しいことで女性声優にモテる。そういう当たり前のことが起こらない現実の方がどうかしているんだ。そうは思いませんか。
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