小学五年生の女児にして、俺の官能小説の一番の理解者だ。むしろ唯一の理解者と言っても過言ではない。
彼女以外は額面通りに女児向けレーベルの小説を信じて疑っていない。彼女は夏休みにエロい小説を書き、俺に見せてきた。その後、小説をレイプ……いや、添削のようなことをしたので弟子にすることになった。正確には弟子にせざるを得ないよう脅迫された。
そして、今、彼女のお家にお邪魔しています。
「先生がお師匠様になってくださって、ほんと~に感謝しているんですよ~」
「は、はあ」
「おしぼりをどうぞ」
「あ、はい」
「先生、おタバコは?」
「いえ、まだ18歳なので……」
「あら。じゃあ、お酒も駄目かしら。でもエッチなのはオッケーってことね。ンフフ」
ごくり。
これは、あげはちゃんが小説のためにキャバ嬢のマネごとをしているわけではない。
あげはちゃんのママです。略してあげママ。
茶髪のロングでウェーブかかってて、まつげは盛ってあって、二重の目がぱっちぱち、小さい口には真っ赤な口紅。黒いドレスは胸元がばっくり開いてて、谷間が見えております。ええ、完全にキャバ嬢です。女子小学生のお家にお邪魔したと思ったのに、キャバクラ感が凄い。20代後半くらいに見えますし、すごくキレイです。
あげママが娘の師匠にご挨拶させて欲しいということで、そりゃ小学生の娘が大人の男と懇意にしていれば心配するのは当然だから顔を見せに来たのである。
あげはちゃんからはその後、簡単な小説の取材を手伝って欲しいと言われている。
「ママ、ちょっと先生に近すぎ」
「あら、ごめんなさい」
近すぎなんてものではない。ちょっと乗ってる。
今、どういう状況かというと、革張りのデカイ二人がけのソファーの真ん中に俺が座っている。左にあげママが座っていて、右足は俺の足の上に乗っている。俺の首には彼女の手が回されていて、ずっと左の耳元で甘ったるく吐息がかかるように話をされている。
右側にはあげはちゃんが座っているが、ぴったりと俺にくっついていて、あげはちゃんが何かしゃべると脇腹がこそばゆい。
ごめんなさいと言ったものの、少しも離れることはなく、左手が俺のお腹に置かれた。うう、細くて少し冷たい手……。ピンク色のネイル……。
確かに顔を見せに来たつもりなのだが、ここまで近くで見る必要はないだろう。
「せ、ん、せ」
「は、はひ……」
「あげはと仲良くしてくださってありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ、あげはちゃんには仲良くしていただいて」
「そうなの、あげは?」
「一緒にラブホテルに行きました」
「ちょちょちょちょ!?」
あげはちゃんの口を手で抑えるが、時既に遅し。
何ということを言ってしまうんだ。秘密って言ったよね!?
ギギギギと首を左にひねる。
あげママは小首をかしげて微笑む。汗が吹き出る。
「小説の取材でしょ」
「そう、そうです~」
あっぶねー! 焦ったー! 理解されてた―! そうなんですよ、小説の取材なんです。ふひゅ~。
「あげはからちゃんと聞いてますから」
「あ、そうなんですね~」
「そうだよ、四十八先生」
そうだよね~。あげはちゃんはちゃんと報告してるよね~。俺は絶対に誰にも言わないけどね~。
「ゴムは使わなかったことも聞いてます」
「ちょちょちょちょ!?」
これはヒドイ。報告の仕方に悪意がありすぎる。あげはちゃんが勝手にコンドームを口に咥えた写真を送りつけてきただけだよ。
「え? 使ったの?」
「いやいやいや、使ってないですけど」
「やっぱり、未使用だったのよね」
「そうなんです……ゴムを使ってくれなくて……」
「あげはちゃん!?」
超絶鬼畜野郎みたいに聞こえるからやめて欲しいな!? 使わずにしたんだじゃなくて、してないんだよ。そもそも女子小学生相手だったら使ったところで駄目なんだよ。完全にアウトなんだよ。生とか生じゃないとかそういう次元じゃないんだよ。
「まぁ、あげははまだだからいいんじゃない」
「ちょちょちょちょ!?」
ちょっと? お母さん? 理解がありすぎて理解できません。生理がまだ来てない娘に対して性的なことを許容しすぎ。来てないからいいとか無いんですよ。来てないってことは当然駄目ってことなんですよ。
「四十八先生、いまのうちですよ。ウフフ」
あげはちゃん、実際は全然怖くて無理なんだから、そういうこと言うのやめておくんだよ。俺だからいいけど、これがロリコンの変態だったらどうするの?
「せんせ、あたしにはちゃんと使ってくださいね」
「なななななな!? とんでもない!」
左腕におぱーいを押し付けながら、とんでもないことを言うあげママ。やめてください。押し付けるのはやめなくていいです。言うのはやめてください。
「えっ? ナマがいいんですか? ……そうですよね、あげはも妹が欲しいかしら」
「なんで!? なんでそうなるんです!?」
「そうだよ、ママ」
あげはちゃん! そうだよ、言ってあげて。あなたのお母さんは変です。
「あげはは弟が欲しい」
「そうだったのね、頑張るわ」
あげはちゃん、違うの。そうじゃないのよ。妹か弟はどうでもいいの。あなたのお母さんと俺が子作りしてはマズイっていうのわかるよね?
俺は言葉ではなく、目で訴える。あげはちゃん、ママに言って。弟が欲しいならパパに言えって。こんな当たり前のことは口に出す必要ないはずなんだ。
「あげはと作りたいんですね。もうちょっとだけ待ってください」
違うの。違うのよ、あげはちゃん。俺と子作りしようっていう目をしてた? そんな情熱的な目をしてなかったよね? そもそもあなたは、ちゅーも出来ないですよね。実際はそんな勇気ないんだから思わせぶりなことを言わないで。
「せんせ、あたしとも」
あたしともっておかしいでしょ。止めてくださいよ。なんで俺とあげはちゃんが子作りするのを認めた上で、自分とえっちして欲しいんだよ。もうなんか俺が官能小説家っていうの自信なくなってきた。この親子に比べたら常識的すぎる。
「あっ」
そうか。そういうことか。
あげはちゃんが、口ばっかりで行動はさっぱりなのは母親ゆずり。そういうことか。
つまり、これは単に俺をからかいたいだけだと。そういうおままごと的なことなんだ。
そりゃそうだよな。こんなの真面目に考える方がどうかしていた。これは漫才。俺はノリツッコミをするべき。
「奥さん……本当にいいんですか」
こんな陳腐なセリフを現実に口にするとは思わなかった。小説の中ではありきたりで手垢の付きまくった表現だが、言ってみたら興奮しますね。
「あら、んふふ」
彼女の左脚が俺の脚の上に乗る。左手の人差し指が、俺の右の乳首をくりくりとくすぐる。翻弄されるんじゃない、これはノリツッコミの途中段階。
これから「本当にいいワケないやないかーい」というツッコミがあって「もうええわ、ありがとうございました~」の流れだな。ヨシ!
「本当に……ッ!?」
俺の右手は彼女の胸元に吸い込まれ、強引に揉みしだく形に。下着すら付いていない、ダイレクトな手触り。あたたか~い。やわらか~い。
いかん、もうBが発生してしまった。早くツッコミしないと。もちろん身体的にツッコむわけじゃないぞ、ヨシ!
「本当に……むぐ」
突っ込まれた。口に。舌を。こ、これがミサトさんの言ってた大人のキス!? 唇は完全に奪われ、俺の口内はあげママに蹂躙されるがママ。右手も気持ちいいママ、俺は何もできないママ~。イエ~。
何も言えないから脳内だけでも反逆しようとして、クソみてえなリリックをしちまったぜ、マザファッカー。でもこのままだと女子小学生のマザーとファックしちまうぜ、どうするマイ・ブラザー?
「ぷはっ」
なんとか息をさせてもらえた。
なぜだろう、ようやく開放されたのに、すでに拘束を望んでいる自分がいる。ヤバい。BもAもしてしまっから次はCの流れ。このままでは……俺はとりあえず、右にいるだろうあげはちゃんに助けを……あれ? いない。
カシャカシャカシャカシャカシャカシャ
この音は一体?
音の方向を見ると、それはスマホを構えたあげはちゃんがカメラを連写していた。まさか……今のを……?
「ばっちり撮れました」
「なんてことを……!?」
もう完全に不倫の証拠じゃないですか! あげパパに殺されたらどうする!?
「よかったわね、あげは」
なにが……?
なんなの、あげはちゃんは自分の母親と俺がディープキスをしていると嬉しいの? どんだけマジカルでミラクルな性癖なの?
「うん。これで書けると思う。浮気男を主人公にした小説」
「ありがとうございます、あげはの書きたい小説の取材に付き合ってくださって」
あー。
あー、なるほどね。
そういうことなんですね。
わかる。
超わかる。
小説の取材なら何をしてもいい。それが世界の常識だったよね。
人妻とディープキスをしながら胸を揉みしだくくらいなら、全然オッケーの範疇だよね。ましてや実の娘さんの目の前でやっているわけで、こっそりやってるわけじゃないし。問題なし!
「いえいえ、師匠としてできることは何でもします。当然ですとも」
「よかったわね~、あげは。なんでもしてくれるって」
「うん。最後はパパに見つかって、間男として殴られるけど、最終的にはお尻を開発されるところもお願い」
俺は、ダッシュで逃げた。もっと早くそうするべきだったと思った。
何書いてるんだろう。俺は。
たまにそう思いますね。
カクヨムでBANされないような真面目な小説ばかり書いていたので、余計におかしくなったのかもしれません。