女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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黄金水をかけられた夜

 動画の編集は大変だった。

 なぜなら送っちゃいけないシーンが多すぎると言うか、見ちゃいけないシーンが多いというか、見ちゃいけないのに見ないと編集できないからというか。

 撮影より編集のほうが時間がかかるんだよなあ……別に凝視しているからではなくて……決してそういうわけではなくて……。

 

「お兄ちゃん?」

「うわあ!」

 

 妹がいつの間にか近寄っていた。服を着ている。当然だが。

 

「何かね」

「何かねって……ご飯だよ」

「おおう!? もう夜ご飯か。いつの間に料理を」

「料理なんてしてないよ」

「へ?」

 

 スマホと格闘していたリビングのソファーから、すぐ後ろのダイニングテーブルの方を見やるとそこには目を輝かせた沙織ちゃんが湯気の出ているヤカンを持っていた。

 

「どうしたの」

「んふー。なんと、ぼくが作るんだよ」

 

 鼻息を荒くしているが、目の前にあるのはカップ麺だった。どういうことかしら。そもそも沙織ちゃんがこんなに機嫌良さそうなのがレアすぎる。駄菓子食うときですら文句言いつつなのに。

 詩歌は無駄にエプロンをつけており、料理の師匠気取りで、沙織ちゃんの肩を触る。

 

「沙織ちゃん、これはカップ焼きそばだから湯切りするんだよ?」

「なにそれ……難しい」

「大丈夫だよ~、お姉さんに任せてね~」

「うん……」

 

 なんと。あの沙織ちゃんが詩歌を慕っている。どういうことだ。実は我が妹は真奈子ちゃんのように催眠術が使えたとでもいうのか。俺の知っている沙織ちゃんじゃないぞ。

 驚愕していると詩歌は、種明かしとばかりに説明口調で解説を始めた。

 

「ふっふっふ。実はね、沙織ちゃんはインスタントの麺類を食べたことがないの」

「なっ……なんだってー!?」

 

 確かに、漫画やテレビ番組も規制される網走家ならありえない話ではない。駄菓子も知らなければカップ麺も知らない。箱入り娘なのだ。

 

「カップラーメンに、カップ焼きそばに、カップのかき揚げそば……」

 

 なんと嬉しそうなのか。その様子を見て詩歌もニヤニヤしているが俺は恐ろしい。

 

「あのさあ、一切そういうもの食べさせてない家の娘さんが成り行きでうちに来てるのに、食べさせちゃっていいのか?」

 

 なんというか、未成年に酒をすすめたり、タバコ吸ってみろよという誘惑をしているかのような罪悪感がある。さおママにバレたらどうする!

 

「なんか文句でもあるの変態」

「無いからその熱湯がたっぷり入ったヤカンを俺に近づけるのはやめて!」

 

 怖すぎる。大事なお肌がやけどしたらどうするのかしら。でも逆にいつもの沙織ちゃんになったことで安堵している自分もいます。ヤバい、俺の感覚がおかしくなっている。

 

「お兄ちゃん、駄菓子を散々食べさせておいて何言ってるの」

「くっ」

 

 なんと。とっくにお前は罪を重ねている。そういうのか。むうう。

 

「ねえねえ、詩歌。このかやくっていうのは? 爆発させるの?」

「そのかやくじゃないんだよ~。これはねお湯を入れる前にいれるの」

「へえ~! この焼きそばはいつ焼くの?」

「焼かないの。一切焼かないけど焼きそばなの」

「へえ~!」

 

 なんだこのほんわかしたやり取りは。ええい、毒を食らわば皿までか。

 

「わかった、わかった。で、沙織ちゃんはどれを食べるの」

「えっ、どれかひとつだけ?」

 

 沙織ちゃんは見捨てられた子犬のような顔で俺を見上げる。そういう顔も出来るのかとびっくりする反面、シチュエーションとのギャップに困惑です。

 まぁ、生まれてはじめてだとすると、全部食べてみたいか。

 

「お兄ちゃん、シェアに決まってるでしょー。シェアハッピーだよ」

 

 カップ麺はあんまりシェアしないんだよなあ……。チョコ菓子じゃないんだよなあ……。

 

「沙織ちゃん! これ、なーんだ!」

「あっ! これってひょっとして、割り箸!?」

「そう、あの伝説の割り箸だよ!」

「わあー!」

 

 うーん、目の前の娘が純粋無垢で天使すぎるところを目の当たりにすればするほど、沙織ママが真実を知ったときの恐怖が……。

 

「あちゅい!」

「ちゃんとふーふーして食べてねー」

「はーい」

 

 うう……。いつの間にそんなに仲良く……。きびだんごを貰った犬かと思うくらいに素直で小学生みたい……いや、小学生なんだけど……。沙織ちゃんはムチを振るってる方が普通っていうか……あれ、俺がおかしいのか?

 

「おいしい!」

「そう? うふふ」

 

 うう……妹が先輩風を吹かせすぎて、もはや母性すら発揮しはじめている……詩歌ママ……いや、落ち着け、あれは妹だ。しかも、変な妹だ。ママみを感じてどうする。

 しかしながら、下手をすれば園児のような表情とセリフの沙織ちゃんが、割り箸を使う箸の持ち方や食べ方のマナーを見ていると、やっぱり食べさせていいのだろうかという疑念が……カップ焼きそばをあんなに上品に咀嚼する人は初めて見たよ……なんか実は懐石料理なんじゃないかと思っちゃうよ。

 こんなに嬉しそうな沙織ちゃんを見ていたら、二人の食べ残したちょっと伸びているカップラーメンを食べていても、嬉しい気分になった。

 

「ありがと、詩歌。変態も」

 

 そんな俺の心中に気づいたのか、そうでないのかはわからないが、口の周りをソースでテカテカにした沙織ちゃんからのお礼の言葉。こんな表情で言われたら、罪悪感など消し飛んでしまう。

 カップ焼きそば程度でここまで感動されてしまうと、もっとおもてなししないと気がすまない。

 わかった、今日はもう彼女のために出来ることはなんでもしよう。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末さまでした」

 

 本当にお粗末だったな。

 もちろんこのインスタント食品は素晴らしい商品だとは思うが馳走という言葉とは真逆の存在だ。

 やはり、おもてなししないと……。

 

「歯を磨きたい」

「はいはい」

 

 洗面台に連れて行く。食べたら磨く。そう躾けられているのだろう。

 

シャカシャカ

 

 二人で歯を磨く。つい腰を横に振ってしまいますね。隣りにいるのはヘスティア様じゃないですけども。

 

ぺーっ

 

 うがい完了。

 

「変態」

「ん?」

 

 あーんと俺に口内を見せてきた。ちゃんと磨けているか確認ということか。

 小さな口を精一杯に開けている姿はいじりたい……じゃない、いじらしい。んー。

 

「青のり付いてるな」

「嘘だっ!」

「いてえ!」

 

 スリッパで足を踏まれる。嘘じゃねえっつーのー。カップ焼きそばのせいだよ~。

 

「本当についてるから」

「じゃ取って」

 

 歯ブラシを渡される。

 俺が磨くんですか。まぁ、今日はなんでもするって決めたしな……。おもてなししないといけないもんな……。

 しかし他人の歯を磨くなんて初めてだ。

 俺は腰をかがめて、沙織ちゃんの顎を触って少し上向きにする。

 彼女は目を瞑り、俺に身を任せる。

 任せろ、初めてだけど痛くしないように、優しくするから……ちょっとだけ我慢してくれ……。

 

しゃかしゃかしゃか……

 

「あ、あ……」

 

 声を出すのはやめて欲しい……唇から少しよだれが垂れて、左手を濡らした。目はとろんとして、潤んでいる。指に当たる吐息が温かい。

 よし、軽くブラッシングするだけで青のりの除去に成功したぞ。

 

「とれたよ」

「ん」

 

 タオルで口の周りを拭いて、手を洗う。

 

「寝る」

「あ、もう眠いんだね」

「子供扱いするな!」

「痛いーッ!?」

 

 足を踏まれるならまだいいが、ローキックはしなりが効きすぎてヤバい。

 しかし、沙織ちゃんが突如攻撃的になるのはもう慣れました。痛いことは決して悪いことじゃない。むしろさっきみたいに普通のこどもっぽい方が不安。

 痛くしてもらえてありがとう。そういう風に考えればこの世は天国。

 俺は蹴られたばかりとは思えないだろう穏やかな表情で、沙織ちゃんに話しかける。

 

「じゃあ、一人で眠れるね。こっちの部屋使っていいから」

「無理に決まってる! 一緒に寝ろ!」

「痛いーッ!?」

 

 やっぱり痛いものは痛いーッ!? 金的は駄目、ゼッタイ。

 それにしても子供扱いするなと言っておきながら一人では眠れないとかJSの取り扱い難しいーッ!?

 

「じゃあ詩歌と一緒に……」

「一緒に寝ろって言っただろ変態!」

「ぎゃあーッ!?」

 

 もうダメ。全然天国じゃない。沙織ちゃんにはむしろムチを渡しておいたほうがいいことがわかった。素手の方が危険!

 一緒に寝ろって言われちゃ寝るしか無い。普通に考えたら駄目だと思うが、今日はもう彼女のために出来ることはなんでもすると誓ってしまったからね。おもてなしおもてなし。

 二人で階段をのぼり、俺と詩歌の部屋へ。

 

「わかったわかった。一緒に寝よう。じゃあ、とりあえずパジャマに着替えようね。詩歌が着てたやつでいいよねー」

 

 こんな事もあろうかと、詩歌のパジャマは捨てずに保管してあります。俺が秘蔵の引き出しを開けようとしたら、沙織ちゃんに腕を引っ張られた。

 

「変態のワイシャツを着る」

「俺の!? なんで!?」

「お泊りのときは男のもののワイシャツを着るって読んだ」

 

 今どきの児童向け小説は進んでますね!? 俺が言うのもなんですけど!?

 クローゼットから白いワイシャツを取り出し、沙織ちゃんに渡す。高校のときに学生服として着ていたものだ。

 

「じゃあ俺は一旦出てるから……ってええーッ!?」

 

 手渡した相手はすでにすっぽんぽんだった。ぱんつすら履いてねえーッ!?

 

「これは裸で着るって読んだ」

「あ、そう! そうなんだね!?」

 

 まぁ気にすることないか! さっき一緒に風呂入ったしね! 問題なし! ヨシ!

 

「じゃあ寝て」

「はい」

「乗るよ」

「乗るの!?」

 

 決して騎乗位ではありません。かけ布団のように乗っているのです。

 

「う、動けないな……」

 

 肌は直接触れてなくても、ワイシャツ一枚だとほとんど裸で抱き合っているのと変わらないな……なんというか柔らかくて温かくていい匂いがして……絶対眠れないぞコレは!

 

「スヤァ~」

「寝るの早えーッ!?」

 

 大変よく眠れました~!? 俺の上でおやすみです。

 さて、沙織ちゃんはすでに熟睡されてしまったので動きたいが、がっちりホールドされている。動けない。

 

「は、裸ワイシャツだと……」

 

 詩歌!?

 そこにいるというのか。やべーっ、この状況を見たらどうなるか!?

 

「す、すや~」

 

 忍法、寝たフリの術でござる!

 

「二人とも寝てる……?」

 

 寝てるでござるよ!

 決してクンカクンカなんてしてないし、モゾモゾもしてないし、ましてやビンビンになんかなってないでござる。本当でござる。

 

「ハァハァ……」

 

 どうなったんだ……。荒い息遣いだけが聞こえる……。早く自分のベッドに戻って!

 

「ベッドで……お兄ちゃんが沙織ちゃんと……ハァハァ……んっ……」

 

 うう……よくわからんが眠れない……眠れないし、モゾモゾできない……。うう……。

 そうして地獄のような時間がすぎるのを待っていると、沙織ちゃんの寝息が止まる。

 

「ん……トイレ」

「あ、うん」

 

 沙織ちゃんが起きた。助かったのだろうか。

 

「お兄ちゃんが沙織ちゃんとトイレ……ハァハァ」

「詩歌? 邪魔だからどいて?」

「わたしが邪魔……ハァハァ」

「はやくどけ」

 

 さっきまで仲良し親子のようだったのに、今や沙織ちゃんに蹴り飛ばされている妹。残念ながら当然の結果です。ふう、これでようやく眠れるかな。

 

「ついてきて」

「一人で……痛え!」

 

 うう、エスコートするのは当然ですよね……言うまでもないですよね……。一人で眠れないくらいだ、夜に一人でトイレは難易度が高いのだろう。

 

「ここがトイレだよ」

「知ってる。ついてきて」

「ええ!?」

「夜は一人じゃ危険」

「ええ!?」

じょろじょろじょろ

「ええーっ!?」

「あ、ちょっと変態にかかっちゃった」

「えええーっ!?」

 

 こうしておもてなしの夜は更けていった……。





沙織ちゃんお泊り篇がようやく終了~1万文字以上使ってる~
次の話全然考えてな~い~
感想お待ちしております~
ここすきしていただくだけでも嬉しいです~
それでは~

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