こういうときに頼りになるのは、やはり網走沙織ちゃんだろう。
三回コールしたら出てくれた。
もちろんビデオ通話です。顔が見たいからね。
沙織ちゃんは家でもしっかりとした服を着ていた。うちの妹なんて部屋着はゆるいのに。やっぱり厳しいご家庭らしい。
髪も今さっきブラシをしたみたいにツヤッツヤ。
「漫画? わかりませんね」
「そう言わずにさ~」
「漫画はほとんど読んだこと無いって言いましたよね」
「そうは言っても知ってはいるでしょ? ほら、俺の作品のさ、どこを漫画にするといいとか」
「さあ」
「好きなところでいいからさ」
「別に好きじゃないですし」
「そんなー」
相談相手を間違えたのでしょうか。
「三巻の原稿を読んでもらって、どこを漫画にするか決めてほしいんだよ~。自分じゃ決められないから誰かにお願いするしか無いんだよ~」
「誰か……それは他の女性にも聞いてるということですか?」
「いや、沙織ちゃんだけだけど。沙織ちゃんがダメって言うなら、真奈子ちゃんに頼もうかな」
普通に考えたら詩歌が適任だと思うけど、まっとうな感覚を持ってないから怖いんだよな。
「仕方ないのでやります」
「あ、そう? 助かるよ~」
原稿はトップシークレットでもあるので、渡すわけにはいかないから、プリントアウトしたものを家で読んでもらうことに。
土曜日は用事があるということで、日曜に我が家に招いた。
「いらっしゃい、沙織ちゃん。今日はありがとうね~」
「別に。お菓子食べに来ただけ」
「お菓子いっぱい用意してます! アイスもあるよ!」
「うん」
「じゃあ早速食べる?」
「バカ。読むよ」
「読んでくれるの!」
「喜びすぎ。バカじゃん」
俺は沙織ちゃんを前にすると基本的に飼い犬だ。全力でしっぽを振っている。恥ずかしい? いや、むしろ誇らしいね。
「じゃ、リビング? 俺の部屋?」
「変態のベッドで読む」
「はいはい、じゃ二階にどうぞ~」
「おじゃまします」
きっちりと靴を揃える沙織ちゃん。まぁ、品のよろしいこと。ご両親が厳しいらしいからね。
夏の間、ずっとボーイッシュな格好をしてた印象の沙織ちゃんだが、今日は女の子っぽい、ちょっと大人っぽいファッションだ。
白いフリルのついた黒くドレスっぽいワンピースで、太もものところだけ透けている。ボタンがハートだったり、細部まで可愛らしい。
「沙織ちゃん、すっごくかわいい格好だね」
「は!? 別に今日のために買ったわけじゃないけど」
「え? そりゃそうだろうけど」
「……」
ぷいっと顔をそらす沙織ちゃん。かわいいとか言っちゃいけなかったのだろうか。大人っぽいとか言ったほうがよかったのかな。
玄関から二階への階段を登り、自分の部屋へ。妹は不在。というか家族は不在。
「これが三巻だよ」
「ん」
俺のベッドに指差す沙織ちゃん。
「ん、とは?」
聞き返した俺にローキックが入る。痛いです。
「椅子になれ」
「え、ベッドなのに?」
「早く。いつもやってるでしょ」
「はい……」
どうやら書生管理のとき同様に、俺を座椅子にして読むようです。お菓子を食べさせるわけでもないし、俺は読む必要がないのに。
「よし」
俺の膝をぺしっと叩いてから、ページをめくり始める。
「……」
「……」
やることがない。
沙織ちゃんの後頭部を見ることくらいしか。
ちょっと伸びてきたかな。男の子みたいに短かったけど。
「ふふっ」
「あっ、笑った! やった」
自分の書いた小説を読んで笑ってくれてる瞬間が見れるなんて。嬉しすぎる。
「どこで? どこで?」
「ここ」
沙織ちゃんが指をさしたのは、マイが嫉妬のあまりメイに嫌がらせをするシーンだった。
「え? ココ?」
「ここ」
笑うような場所ではないのだが。
マイがメイの座る椅子にこっそり仕掛けをして、メイが半泣きになるんだよ?
「本当は姉のことも好きなのに素直になれなくて可愛いなって」
「あ~」
なるほどね。そういう笑いもあるのか。
「これってどういう状況なの? 痛いのはわかるけど、すぐに飛び上がったんじゃなくて、座ってるよね」
「そうだね」
「ちょっと再現してみないとわからない」
「ええーっ!?」
仕掛けっていうのは、つまり小さなこけしを置いてるんだよね。ちょっとボカして書いてあるからな。っていうかこの小説は基本的にいろいろボカして書いてあるよ。だって詳細に書いたら発禁になっちゃうからね。
「変態、準備して」
「まじか……」
しかし、こけしなんて……あったわ。
目に見えるところにあったわ。妹の部屋のベッドの近くに、いろんな大きさのこけしがあるんだわ。なぜかあいつこけし好きなのよな。
沙織ちゃんだから……この二番目に小さなこけしでいいか。うん。メイが使われたのはもっと大きいけど。
「なにそれ」
「こけし」
「ふーん……それを?」
「椅子に立てて置いてある」
「座る直前にこれが置かれたってことなんだ」
「そう」
小学生の男子みたいないたずらだな。
しかし男子だから笑い事で済むが、挿入されちゃったら笑い事じゃないですよ!
まぁ書いたのは俺なんですけどね。
「座ればいいの?」
「あ、先にぱんつ脱いで」
「メイはぱんつ履いてないの?」
「さっき下着まで濡れてしまったっていう描写あったでしょ。だから脱いでるんだ」
「そうか。ちゃんと読めてなかった。ごめん」
「いやいや、いいんだよ!」
国語の長文読解みたいなつもりはなくてね?
単にぱんつを脱ぐ描写を入れるとちょっとアレだからね?
ごめんね?
「んしょっと」
「ごくり」
平然とベッドの上で少女がぱんつを脱いでいる。
ワンピースがめくれあがって、細い太ももがあらわになっている。
いかん、いかん。平常心、平常心……。
ぱんつはぽいっと俺のベッドの上に。
沙織ちゃんはこけしがセットされた椅子の横に立った。
「で、この状態で座る?」
「そうだね」
「よいしょ。んっ……痛くない。ちょっと気持ちいい」
「そりゃ股の間に当たってるからね。しかし気持ちいいのか……」
「どこが当たるの?」
「ちょっと誘導しますね」
沙織ちゃんの腰を掴む。目標をセンターに入れて……ここです。
「これで座るの?」
「一気に座ると痛いと思うからゆっくりね」
「メイと同じじゃないと意味ない」
「あっ」
どすんと座ってしまう。
こけしは一気に全部彼女の中に。
「ん~な~ッ!?」
「うわー」
痛いのだろうけど、どう痛いかはさっぱりわからない。
なんとなく野球中にボールが股間に当たったことを想像してしまう。かなり痛いのでは?
「うう~っ」
沙織ちゃんは半泣きだ。メイと同じ状況!
俺の書いた小説がリアリティを持った瞬間ですね。
「う……ん」
おや?
沙織ちゃんの様子が……?
「……変態、なんかこれ気持ちいい」
「そ、そうなんだ」
なんか、こう、恥ずかしい。
自分が赤面していくのがわかる。
「こ、これ、メイも実は気持ちよかったの?」
「そう、だね。実は気持ちいいね」
「そうなんだ……」
沙織ちゃんの表情は、痛みやら快楽やら羞恥やら興奮やらが混ざっているのか、なんとも言えない複雑さで、少なくとも小学生らしい表情ではなく、色っぽく見えた。
「ん……はい」
「はい」
こけしを返していただきました。
ティッシュで拭いて、詩歌に返しておきましょう。
「……」
「……」
沈黙のまま、俺はベッドの上に。
沙織ちゃんは、沈黙のまま、その俺を椅子にして座る。
ぱんつは履いていない。
「……ここじゃぁ、ないかな?」
「そうだね。漫画にするのはココではないかもですね?」
そうだよね、漫画にしちゃうとマズイよね。
ただ、問題は大体のシーンがマズイんだよね。
「とりあえず、続きを読む」
「そうだね」
再度、ページをめくる音を聞きながら、後頭部をぼんやり見る時間が始まった。
沙織ちゃんの体温は、さっきより少し上がったように感じた。
実はこの作品、ノクターンの方で18禁作品として更新していました。
基本的に同じ話ですが、結構加筆してます。
https://novel18.syosetu.com/n3441gx/
こちらでも更新は続けていきますのでよろしくおねがいします。