「ここは?」
「ここか……」
沙織ちゃんが選んだシーンは俺のお気に入りだ。
我ながらとってもいいと思っているが……。
「これ、具体的にはどういうことなの?」
「やっぱり」
具体的にはよくわかっていないのに、なぜチョイスするのか。
「なんでココがいいと?」
「マイがまだメイより下手だってわかるけど、ご主人さまが優しく感謝してるところかな……」
「ふーん。沙織ちゃんはご主人さまのこと好きなの?」
「別に」
「じゃあ、マイが好きなの?」
「特には」
じゃあなんでよ……っていうかウソでも好きだって言ってくれよ……自分の作品のキャラが読者に好かれてないの辛いんですけど。
「これ、何が固いの」
「えっ」
そうね。ご主人さまの固くなってるものに対してご奉仕するって書いてあるものね。
「なんだと思う?」
「固くなるものだよね」
「そう」
「大人だから固くなる?」
「そうだね」
作者としては答えは一つしかないのだが。他になにかあるの?
編集とかはこれでオッケー出してるわけだけど、なんだと思ってるのかな?
「肩だよね」
「肩だよね~。大人は肩が凝るからね~」
肩だった。なるほど、そういうのもあるのか……。
「変態も?」
「どうかな、執筆も授業もパソコンだから、ちょっと固いかもね」
「じゃあ再現してみる」
俺という椅子から立ち上がり、俺の背後に回る。
ベッドの上に膝立ちになって、揉み始めた。
「あー、気持ちいいな」
「そ」
「うん」
小さな手で肩を触られることがすでに気持ちがいい。
「沙織ちゃん、気持ちいいよ~」
「なんか違う」
「へ?」
沙織ちゃんは、原稿をバシバシと叩いて、見ろと促す。
「ここ」
俺が書いた原稿をちゃんと見ろと言われる俺。
読みますよ。
「あっ……いいぞ……もうちょっと強く、あぁ、いいっ……んっ、早くできるか?」
我ながら、エロいね!
こう、まるで固くなったどこかを舐められてるかのようですね!
「全然違う」
「あー」
そりゃ違うよね。だって肩じゃないんだもの。
揉まれてるわけでもないし。
「どういうこと」
「ひいっ」
冷たすぎる声。この声で何か言われると問答無用で俺は奴隷になってしまう。命だけはお助けを!
「あの、ほら、ご主人さまは肩がガッチガチなのよ。俺はご主人さまより若いから、そこまで固くないというか」
「ふーん。変態はご主人さまより固くないんだ」
なんか傷つく言い方だな……。
ぐりぐりっと肘で肩を押される。なんか怒ってます?
「他の場所にする」
「はい」
不機嫌です。
「あ、お菓子食べる?」
「原稿汚れちゃうでしょ、バカ」
「はい、ごめんなさい」
手書きならわかるが、所詮パソコンで執筆した小説をプリントアウトしただけ。別に汚れても良いのだが……。
お菓子を出さないと不機嫌になるが、あまり薦めても不機嫌になるのが沙織ちゃん。難しいお年頃なんだよなあ。
沙織ちゃんの頭の上から、ぼんやりと読み進めるのを眺める。
自分の書いた文章を、小さな指がなぞっていく。
「マイは可愛いな……」
「ありがとう」
「なんで変態がお礼を言うの」
ぺしっと膝を叩かれる。
だって俺のキャラだから。褒められたら嬉しいのですが?
「マイってなんでこんなに素直なの」
「え?」
これってどういう質問なんだろ。
メイとご主人さまがお互い素直になれないから、マイはそういう立ち位置のキャラクターとして設計したんだよ、っていう答えでいいのか?
「ぼくはこんなに素直になれないな……」
どうやら違うようです。
沙織ちゃんは素直になれない悩みがあったんだね。
「素直なのもいいけど、素直になれないのも可愛いと思うけどな」
「……ほんと?」
「うん。メイはそういうところがいいんだよ。俺はメイもマイも大好きだから」
「そっか」
「それに、素直になれなくても、気持ちって伝わるもんだよ」
「ほんと?」
「ほんとほんと」
「好きな気持ちとか?」
「わかるわかる」
「ぼくの好きも?」
「わかってるわかってる」
原稿から俺の顔に視線を移す沙織ちゃん。自信なさげだ。ここは俺がどれだけ理解しているかを伝えておくべきだろう。
「沙織ちゃんが好きなのは、甘い系よりしょっぱい系のお菓子。でも一番は甘じょっぱいやつが好き。そうでしょ!?」
どうだ。
結構自信ある。
今日はちょっと高級なチョコがけのポテチを買ってあります!
「はぁ……」
返事はため息だった。
露骨にガッカリされている。おかしいな……。
沙織ちゃんは無言でぺらりとページをめくる。
何この残念な感じ。ハズレなわけないのになぁ。
「あ、ここがいいかも」
「ここですか」
毎度おなじみ、ご主人さまがメイをお仕置きするところですよ。
「今回のお仕置きって……なんか子供っぽくて可愛いですよね」
「そう?」
確かにいつも大人っぽいことしかしてないけど。
アダルトな表現はわからないようになっているので、おそらく「パンパンパンパンパン!」とかお尻を叩いてると思ってるんでしょうね。
今回はそういう誤解は無いかもな。
「くすぐってるってことだよね」
「んー」
確かにメイはくすぐったがっているので、間違っていないが。
「こちょこちょしてるわけじゃない、ってこと?」
「んー」
こちょこちょしてるといえば、しているんだが。どっちかっていうと、ぴちょぴちょかな。
「やって」
「え?」
「やってみて」
いいのか……?
まぁ、いいか。別に。
「んじゃ、失礼して」
「ひあっ!?」
俺はベッドの上で、沙織ちゃんの首筋を舐めた。
鎖骨から、耳のあたりまで、やや固くした舌で。
「くすぐったい?」
「ちょっと、びっくりした」
「うん。メイもそんな感じ」
「じゃ、じゃあ続けて」
「うん」
後ろから、羽交い締めにするように、脚で彼女を動きを封じる。左手を回して、シートベルトのようにがっちりホールド。
「はむ」
「ひゃわわわ」
沙織ちゃんからは聞いたことがない甘い声。ちょっと耳を唇で、はむはむしただけなのに。
普段攻撃するときには躊躇しない、強い沙織ちゃん。攻められると弱いんだな。
「ちゅっちゅっ」
「あ、あ、あん」
首にキスを浴びせる。
そのたびに、せつなそうに声を漏らす。
うーん、かわいい。愛おしい。
「れろ、れる」
「ひあああああ」
耳を舐める。丁寧に。
溝を舐める。突起を舐める。穴を舐める。耳たぶを舐める。内側から舐める。外側から舐める。
左耳も舐める。右耳も舐める。
温かい息を吐きかけながら、舐めてない方の耳を指でなぞりながら。
「はふ、れろっ、はぁ、れるっ」
「はん、ひん、ひう」
体をよじる。
しかし逃げることは出来ない。動けないように、更に強く抱きしめる。
「あっ」
「ごめん、強かった? 痛い?」
「ううん、だいじょうぶ」
「うん」
耳元で、そう言ってから。
「ちゅ、ちゅ、ちゅ、ちゅー」
「ん、ん、ん、ん~」
耳から、鎖骨へ。
細かくキスをしながら移動。
若い肌は水を弾くというが、それどころではない。光までも弾いてしまうのではないか、そう思わせるほど。
柔らかくて、ハリがあって。
すべすべで、むちむちで。
特に、鎖骨の下の肌は、素晴らしい。
もっと、もっと下に行きたい。
「よいしょ」
「あっ」
抱きしめていた力を緩めると、明らかに落胆した声。
まだ終わって欲しくない。そう思ってくれているのだろうか。気持ちがいいと、感じてくれているのだろうか。俺の舌技もまんざらじゃないのかな。
「今度は下から、くすぐるんだけどいいかな」
「……ご主人さまのしたとおりにして」
真剣に漫画のシーンを選んでくれているようだ。これはお仕置きなのにな。何もドジをしていないのに、お仕置きされてくれるなんて。感動だね。これはこっちも本気でやらないと。
「やっ」
「ごめんね」
「な、なんで靴下脱がすの」
「ごめんね」
靴下はつけたまま派の俺だけど、ここは脱がさないといけないんだ。
妙に恥ずかしがる沙織ちゃんだが、ご主人さまのしたとおりにしないと!
「ねぷ」
「ええーっ」
足の指をねぶるという行為は想定外だったようです。俺は変態じゃないから、別にこういうことはしないのですが、ご主人さまはこういうの大好きなんでしょうがない。
「ぺろぺろ、はむはむ、れろれろ」
「はへ、はへ」
小さな足。小さな指。小さな爪。
小学六年生の女の子の足は、想像以上に小さい。
くるぶしも、かかとも小さい。小さいと、興奮する……。
足は十分に堪能したので、徐々に上に移動。ここで焦ってはいけない。ふくらはぎを軽んずべからず。子どもと思わせる細く筋肉が中心のふくらはぎ。三年もすれば太くなってしまうことだろう。
ふくらはぎを舐めて、キスして、愛撫して。そう、今はふくらはぎを愛するのだ。
「ん、ん」
脚をよじらせるが、俺は彼女の足首をがっちり掴んでいる。ワンピースがはだけていく。
さて、ここで自然にめくれてきた太ももだ。
ふくらはぎがまだ子どもなのに、太ももは女性であることを主張している。柔らかくて、むっちりしていて。ごつごつした男のものとはぜんぜん違う。
俺は太ももで顔を挟む。
左を舐めて、右を舐めて。
「は、は、はず、かしい……」
恥ずかしがって脚を閉じようとするが、ますます顔に太ももが当たり、より股に近づいてしまう。
「ぺろ」
「あああん」
太ももを舐めるつもりだったが、舌に当たったのは違う場所だった。ちょっと濡れてるような……? とりあえずぺろぺろしておくか!
「あ、はあっ……はあっ……」
どうやら沙織ちゃんはお疲れのようです。俺も疲れました。舌が。
ぐったりしている彼女の、ワンピースを裾を直してあげて、頭を撫でると弱々しく口を開いた。
「これ……」
「うん……どうだった?」
「ここ、漫画にしたらいいよ……」
「え、ほんと?」
「ご主人さまが、お仕置きって言って、首にキスするの、いいと思う……」
「そっか」
沙織ちゃんが言うならそうなんだろう。
足を舐めるのは、いらないそうです。首がいいってさ。
こうして、初めての漫画化されるシーンが決まった。