女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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みんなスカートをめくるべき

「缶じゅーすさん?」

「缶じゅーすです」

 

 俺はコミカライズを担当してくれるという漫画家のもとに来ていた。

 小江野さんのアパートよりも更にボロい、家の二階の一室。乱暴に登ったら崩れ落ちるんじゃないかと思うような、細くて急でサビだらけの階段を登り、ノックをしたら出てきたのが彼女。

 

「ほんとに缶じゅーすさんですか」

「ほんとに缶じゅーすです」

 

 担当編集から漫画家さんが直接お話したいという依頼があったのだ。なんせ描写するには随分曖昧でよくわからないという、もっとも理由だったからだ。絶対アニメ化できない作品ですね!?

 漫画家は「缶じゅーす」という名前らしく、男か女かもわからないということだった。

 住居を見た瞬間、おじさんだと確信していた。こんなところに女の子が住んじゃいけませんよ!?

 

「中にどうぞ」

「はい」

 

 外廊下すらなく、階段から直接玄関に入るタイプなので、長居は不可能だ。階段といってもサビだらけの手すりをしっかり持っていないと落っこちてしまいそうで、もはやハシゴに近い。

 この辺りは基本的に家賃が安い地域ではないので、安いところを探すとこうなるのだろうという感じ。

 中は薄暗くて埃っぽく、天井が狭い。掃除は行き届いているのに、居心地の悪さを感じる。

 しかし、そんなことは些細なことだった。

 

「柑樹だよね?」

 

 彼女の名前は瀬久原柑樹(せくはらかんじゅ)

 真奈子ちゃんの家のバイトのメイドとして出会い、喫茶店でも会った女の子だ。

 ルックスは俺の小説の主人公であるメイにそっくりで、17歳のむちむちJKながらも落ち着いた大人の雰囲気を持っている。

 158cmの44kgでBカップだ。見間違えるわけがない。

 

「そうです」

「漫画家だったの?」

「漫画家志望です」

「缶じゅーすっていうのは?」

「ペンネームです」

 

 あー、柑樹だから缶じゅーすなのか。なるほど……。

 

「そちらは、四十八先生(よそやせんせい)でしたよね」

「ああ」

 

 そうだよな。俺がビックリしているように、そっちもビックリだよな。全然そうは見えないが。超ポーカーフェイス。

 

「確か最高の小説家、と紹介されましたが」

「そう、だね……」

「……」

「そこで黙らないでもらえる!?」

 

 いきなり手厳しくない!?

 真奈子ちゃんにとっては最高の小説家なの! そういう数少ない貴重な意見を心の支えにして書いてるの!

 

「警察にも連れて行かれてましたが……」

「その話はもうしないでもらえる!?」

 

 催眠術を受けないとマズイくらいにトラウマになったんだぞ。

 

「水に流しましょう」

「そうしてくれ」

 

 水をこぼした結果だからそう言ったのかな?

 いや、わざわざ蒸し返すのはよそう。

 

「本題に入りますが、今回漫画制作の依頼を受けて該当箇所を読んだのですが、まったく意味がわからないのでお呼びしました」

「容赦ないっすね!?」

 

 メイそっくりの女の子に、メイが主人公の小説の意味がわからないと言われるとは。

 

「桜上水みつご先生のイラストは最高なので、この仕事は光栄なのですが」

 

 どうも、イラストが褒められて文章はボロクソに言われる小説家です!

 つらすぎる。

 警察のご厄介になったときも助けてくれなかったわけで……。

 この人は……この人は……!

 

「一応、メイの気持ちに近づけるようメイド服を着ているのですが」

「相変わらず、超似合ってるよね」

 

 超カワイイのだった。

 いいや、もう見た目が完璧だから多少のことはどうでもいい。

 なんなら漫画なんて描けなくてもいいです。そうだ、このメイのコスプレをした柑樹の写真で良くないっすか?

 

「全然場面が浮かばないです。ちゃんと漫画を描きたいので、詳しく教えて下さい」

「そうですか……」

「なんで残念そうなんです」

 

 露骨にがっかりしたのでバレたようです。

 編集部の予定を勝手に変更して漫画をコスプレ写真にする権利など、有りはしないのですが。

 

「あなたの小説の販促用の漫画なんですが?」

「そうですよね、よろしくおねがいします」

「棒読みですね」

 

 柑樹はずっと棒読みなんですけどね。

 

「で、そもそもご主人さまのお仕置きということなんですが」

「うん」

「なんでお仕置きを? 主人公が頑張ってるシーンを漫画にするべきでは?」

「えっ、そっから?」

「そっからです」

 

 そこはこちらで決めたことなんだが。

 っていうか沙織ちゃんが決めたんだから、絶対なんだが。

 

「この作品は、頑張ってる場所より、お仕置きが魅力だからね」

「なんですかその作品」

「作品批判やめてくれよ!?」

 

 いいだろ、お仕置きが魅力の女児向け小説だって!

 小学生の女の子だって、みんなお仕置きされたいと思ってるよ!

 俺だって小学生の女の子にお仕置きされたいんだから、相手だってそう思ってるだろ!

 

「わたしにはわからないですが、高願社で三巻も出てるなら仕方がないです」

「仕方がないですか!」

 

 仕方がないってよ!

 JSからファンレターだって来るのに。ご主人さま格好いいとか、ご主人さま素敵とか、ご主人さまの活躍増やせとか。

 

「じゃあこのお仕置きを詳しく教えて下さい」

「はいはい」

 

 沙織ちゃんにしたことをもう一度やるだけだな。

 簡単です。

 

「じゃ、やりますよ」

「実演ですか」

「問題ある?」

「いえ、甘んじて受けます」

 

 当然だな。

 小学六年生の女の子だって平気でやったことだ。

 俺は彼女の肩に手を置くと、首筋を舐め始めた。

 

「れろれろれろ」

「……これはどこのことなんですか」

「え? メイが『くすぐったいですご主人さま』って言うところだけど」

「首を舐めてたんですか?」

「そうだよ」

「……そうですか」

「続けるよ?」

 

 鎖骨や顎の下、耳など、舐めまくる。

 

「……」

 

 柑樹はいつものようにリアクションが薄いが、呼吸が吐息に変わっている気がする。気持ちいいのでしょうか?

 この辺はなんとも思わない人と、ばっちり感じる人と分かれるらしいですよ。

 

「はむはむ」

「……」

 

 耳をはむはむしたが、やはりリアクション無し。

 沙織ちゃんは「はわわわ」などと非常に愛らしい反応だったというのに。

 これでは漫画になったときに、全然お仕置き感が出ないだろう。

 まずはキツめに抱きしめよう。

 

「ぎゅっ」

「……抱きしめてます?」

「抱きしめてるよ。ちゃんと『動くなよメイ』ってご主人さまが言ってるでしょ」

「そうですか」

 

 どんだけ伝わってないんだよ。

 でも、あげはちゃんには伝わってるからね。俺の表現が悪いんじゃないんだよ。みんなの感受性と読解力が不足しているのです。

 

「お尻を触っています?」

「触ってるよ」

「そうですか」

 

 当たり前だよ!

 沙織ちゃんみたいに小さければともかく、ご主人さまの体型でメイを抱きしめようものなら、自然と手は尻に行くだろ。

 首や耳や頬にちゅっちゅちゅっちゅしながら、ぎゅぎゅっと体を抱きしめつつ、お尻をナデナデしてるなんて、書かなくてもわかるだろ!

 一から十まで書いたら、読者の想像の余地というものが無くなるでしょう?

 まったくこれだから、やれやれ。

 

「太ももも触るんですね?」

「当然」

「そうですか」

「お尻と太ももの間の部分とか、触ってて気持ちいいんだよな」

「そうですか」

 

 ちゅっちゅちゅっちゅ、もみもみもみもみ。

 

「……長くないですか」

「すぐ終わっちゃったら、お仕置きにならないじゃん」

「そうですか」

 

 れろれろ、はむはむ、さわさわ、もみもみ。

 

「……」

 

 ふーむ。余裕だな。

 まぁ、お尻は減るものじゃないから触っていいって以前言われているし、この程度ではお仕置きにもならないのだろう。

 

「口には、キスしないのでしょうか」

「ん?」

「いえ、口以外は散々舐め回されていて、口はキスしないのかなと」

「……して欲しいの?」

「純粋な疑問です」

「ふーん」

 

 俺は顎や頬など、唇の回りだけに口づけを連打していく。

 

「……これがお仕置きってことですか」

「そう。言うまでもないが、メイはご主人さまが好きだよな」

「さすがにそれはわかります」

 

 わからなければ困る。好きとは書いてないが、いくらなんでもそれはわかってるらしい。

 

「メイは好きな人とは、唇を合わせたいと思ってる」

「……それもわかります」

 

 俺は別に好きじゃなくてもきれいな女性とは唇を合わせたいが、メイはかっこいい男子となら誰とでも唇を合わせたいとは思わない。

 だから俺は柑樹にちゅーしたいが我慢している。

 

「そういうお仕置き。一番望んでることだけは与えない」

「そうですか」

 

 まだよくわかっていないご様子。

 というか、この柑樹に普通の感覚があるのだろうか。

 俺はこんなに我慢しているというのに。

 少しは理解してもらわねば。

 抱きしめていた力をほどき、彼女の前でしゃがむ。

 

「ぱんつ見せて」

「はい」

 

 メイド服のスカートをめくりあげる柑樹。メイが履いていそうな、清楚な薄いイエローのシルクのぱんつだった。相変わらず完璧だな。

 

「メイは、ご主人さまにぱんつを見られるのは恥ずかしいんだ」

「……お仕置きってことですか」

「そう。柑樹は平気すぎてお仕置きになってないみたいだけど」

「……ちょっと恥ずかしいです」

「ほう?」

 

 そういう感情があったのか?

 あまりにも顔に出ないのでわからなかった。

 しかしちょっとか。

 ここはメイと同じ気持ちになってもらうためにも、俺が頑張らねば。

 

「じ~っ」

「……」

 

 まずはガン見。顔を近づけて、ジロジロ見る。

 

「ふむ、いいぱんつだね。センスがいい」

「そうですか」

「相変わらず太もももキレイだし、肌白いし、毛薄いね」

「そうですか」

 

 感想をたっぷり述べる。

 これも普通は恥ずかしがる。

 

「くんかくんか」

「……」

「ふんふん」

「……」

 

 匂いを嗅ぐ。

 特に匂いは無いのだが、スカートをめくった女子のぱんつの匂いを嗅ぐというシチュエーションが良いのです。

 ましてやこの薄暗い畳の部屋は、メイドなんて絶対いないような場面。

 この違和感というか、非日常感がたまらない。

 今度、ご主人さまとメイも和風の家に行かせようかな。

 

「ここも漫画に?」

「いや、これはないけど。一巻のシーンだから」

「ではなぜ」

「メイはこのお仕置きをされたときものすごく恥ずかしかったので、その気持ちをわかって欲しいと思って」

「……そうですか」

 

 わかったのだろうか。

 俺が立ち上がると、彼女はスカートをめくる手を離した。

 じっと俺の顔を見て、確認するように質問した。

 

「ご主人さまは本当にして欲しいことはせず、彼女を恥ずかしがらせている。それがお仕置き?」

「そう」

「でもそこには、ただのお仕置きではない感情が見て取れる……」

「そうそう」

「その雰囲気が読んでいる方にも伝わって、こそばゆいような、あたたかいような、それでいて応援したくなるような気持ちになる」

「いまのでそこまでわかった!?」

 

 想像以上に一気に理解が進んだよ!

 俺にぱんつを見せることで、そんなに小説の解釈変わるんだ?

 これは全読者、編集者も含めて俺にスカートをめくってぱんつを見せるべきでは……?

 

「そして実はメイだけじゃなくご主人さまも、本当にしたいことを我慢している……」

「うん……そう……」

 

 彼女も俺も、セリフは尻すぼみになった。

 なんとなく、目線を合わせづらい。

 

「で、では、意地悪そうな顔でメイの首にキスするご主人さまと、赤面しまくりのメイを描きます! それで最後はメイもご主人さまも本当は唇にもキスしたかった感じにしますっ!」

「か、完璧ですっ!」

 

 俺は結局お茶も出されずに、そそくさと退散した。

 うっかりまた警察が呼ばれるかもしれないし。

 しかし、最後は柑樹もかなり赤面してたな……。

 やっぱりノーリアクションだとこちらも平気だが、あんなに恥ずかしがられるとこっちもドキドキするな……。

 帰る途中、自販機でレモンの炭酸の缶ジュースを飲み干した。甘酸っぱい味だった。




瀬久原さんは赤面とかしないはずだったのに……
しかしこれヒロインレース結構いい線行くのでは(他人事)
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