女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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オトナの階段を登るのは少女の方が先だった

「生理が来たの……」

「……?」

 

 生理が来なかったの、と言われて焦るシーンはドラマなどの物語ではありがちだ。来たことを言われて焦るのはあまりないと思う。レア体験なう。

 

「どうしよう、生理がきちゃった……」

「なんでお腹さすってるの?」

「お腹が空いてるからです」

「あ、そう……」

 

 彼女は小和隈(こわくま)あげは。

 小学五年生のおませな女の子だ。早熟すぎてすでにエロい小説を書いており、俺を師匠と仰いでいる。

 現在は、話があるということで我が家にやってきて、生理が来たことをご報告されたところだ。

 顔を赤らめ、ちらちらと俺の表情を伺う様子は、どう見ても生理が来なくなったときの上司を見るOLのようです。なぜだ。

 

「つまり、オトナになった、ってことですよね」

「まぁ、そうなるかな……」

 

 生物学上はそうなんでしょうかね。しかし妹の詩歌に生理が来て、お赤飯を食べたからと言って、妹がオトナになったとはまったく思わなかったわけで。

 

「そんなわけで、責任、取ってくれますよね?」

「あげはちゃん、わざとだね?」

「バレましたか」

 

 ぺろり、と舌を出すあげはちゃん。マジ小悪魔すぎる。

 俺のせいで生理が来ないなら責任取るのもわかるが、俺のせいで生理が来たら責任は取りませんよ。いや、あげはちゃんに生理が来たのは俺のせいじゃないよ。

 

「やってみたかったんですよね」

「やめてよ、心臓に悪い」

「本当に責任を取らないといけないのは、ママに対してですよね」

「やめて! 心臓に悪い!」

 

 あげはちゃんのママ、あげママと何があったかは別の話。

 

「冗談はさておき」

「冗談キツすぎるんだよな」

 

 そもそも女子小学生から初潮が来たことを報告されていること自体、冗談キツイのよ。

 

「さて、わざわざ報告に来たのはですね、ジョークのためではなく」

「うん」

 

 よかったよ、本題がちゃんとあって。

 なぜか今回もソファーの横で俺にぴったりくっついて座ってるあげはちゃんは、微炭酸のドリンクを細いストローでちうーと吸った。

 エアコンをつけなくてもよくなった分、部屋の中はかえって暑いかもしれない。まだ体感としては夏だが、もうあげはちゃんは秋らしいファッションに身を包んでいる。肩を見せていた夏の服に比べ、腕は見えているものの肩は見えないブラウス。スカート丈も少し膝に近くなった。

 あげはちゃんは露出が少ないほうがセクシーに見えるな。

 それとも生理が来るようになったから、色気を感じるようになったのだろうか……。

 

「あげはと下着を買いに行って欲しいんです」

「……なんで?」

「今、師匠が舐め回すようにあげはの体を見ていたように、大分女っぽくなってきました」

「……」

 

 否定したいのだが、できないですね。

 俺は嘘がつけないタイプなんだね。

 

「そこで師匠に質問です。全裸と下着姿、えっちなのはどっち」

「下着姿に決まってる!!」

 

 もちろん、いろいろなシチュエーションとかにもよる。

 えっちというのは、簡単に二択にしてはならない複雑なものです。

 だが、あえて断言すべきこともある。

 あげはちゃんの書く文章的にいえば、すっぽんぽんだよね。すっぽんぽんなんて、全然ダメよ。女児が川で遊んでるかのごとくエロくないよ。

 

「下着……いいよね」

「さすが師匠、思った通りの反応です」

 

 がっちりと握手する俺とあげはちゃん。

 師匠と弟子の、魂の絆を感じるぜ。

 

「それはもちろん、あげはの場合でも同じですよね」

「もちろん! まだ体が未成熟なのに、色気ムンムンの下着っていうのがいいんじゃないか!」

 

 マイにもそういう下着を着せようとしたが、編集からNGが出ました。何もわかっちゃいないんだ!

 そもそも下着の描写など不要だってさ。わかりあえない!

 

「うんうん。ですから師匠にあげはに似合うランジェリーを選んでもらおうかと」

「えっ」

 

 小学五年生の初潮を迎えたばかりの少女に、色気ムンムンの下着を選ぶんですか?

 それって大丈夫なんですか?

 もう二度と警察のご厄介になりたくないのですが?

 でもよく考えたら、すでに小学六年生の女の子の下着を選ぶのは経験済みだった。対して変わらないか! セーフセーフ!

 

「まあいっか。真奈子ちゃんにも選んであげたもんな」

「……今なんと?」

「前にさあ、真奈子ちゃんに、デパートで黒いレースのえっちえちなブラジャーを選んであげたんだよね」

「……そ、そーですかー……。じゃ、じゃああげはにも……」

「あげはちゃんはDカップじゃないから無理でしょ~。デパートよりしま○らがいいんじゃない?」

「ぶちっ!」

「え、なにそれ。堪忍袋の緒が切れた音みたいなセリフ」

「大正解です」

「やった~、正解だ~、わーいわーい」

 

 正解のご褒美は何かな?

 

「今から、黙ってついてきてください」

「あいよ~」

 

 うちの近所にはし○むらはないので、電車で行くことになる。

 あげはちゃんの使う鉄道用ICカードは、改札を通る際にぴよぴよという音を立てる。初潮を迎えても社会的にはこどもということだね。

 

「おや、そっちに行くの」

「えーそうです」

 

 ずんずんと歩いていくので、なにか決めた店があるようですね。

 子供服ブランドのアウトレットとかかな?

 駅を降りても、迷うこと無く進む。

 行き慣れているのかな。だとすると、やはり子供向けのお店だね。

 

「ここです」

「ここか~。エーッ!?」

 

 とんでもねー!

 看板にオトナのお店って書いてあるじゃねーかヨーッ!

 これはなんというか、見るからにヤバい店です。

 

「行きますよ」

「ま、ちょ、ちょま」

 

 引き止めることに失敗。

 中に入ってしまう。

 ビルの一階は黒と紫とピンクの装飾で、店の前だけはカムフラージュのつもりか普通の雑誌が置いてあるが、中に貼ってあるポスターは完全にアダルトだ。

 建物からも、中にいる店員、客からもいかがわしさしか感じない。オーラが違う。

 なぜこのような店に!?

 

「うう……」

 

 官能小説を書いている俺ですら、この店には入りづらい。正直30歳未満は入らない方がいいんじゃないかと思うくらいだ。勇気を出して、中へ。

 

「あ、あげはちゃ~ん」

 

 恐る恐るへっぴり腰であげはちゃんを追う。遊園地のホラーハウスでもここまでビビりませんよ。

 なんというか、玄人のおじさんとかに見られて鼻で嗤われたり、激アツカップルから指さされたりしないかとか、イヤな想像しちゃうんだよなぁ。

 

「こっちです」

「まじかよ」

 

 まさか階段で二階に上がるとか。

 のしのし行ってしまうので、ついていくしか無い。

 

「早く」

「はい……」

 

 三階へ。怖い。さっさと来いと睨むあげはちゃんも怖い。

 

「さて」

「ええ……」

 

 ついたフロアはますますヤバい雰囲気だった。

 な、なんなのこれは。

 

「さ、師匠選んでください」

「何をですかね……」

「もちろん、あげはに似合う服です」

「……え?」

 

 あげはちゃんがこの辺から選んでくれと指をさしたのは、ボンデージやらキャットスーツやら、黒や赤の革でできたピチピチの服。簡単に言うと、SM女王の服だった。

 

「いや、え? これ下着じゃないですけど」

「師匠はド変態なので、普通の下着よりこちらの方が興奮するかと」

「それほどでもないけどさ~」

「褒めたつもりじゃなかったのに。さすがです」

 

 うっかり褒められて照れてしまったが、それどころじゃない。

 俺がド変態なのはいいよ。別に問題ないし。

 問題なのは、あげはちゃんが着るということですよ。マズイでしょ~。

 でも、あげはちゃんのサイズがあるってことは、小学生用ということだ。売ってるからには問題ないか。

 俺が心配しすぎなだけだな。世の中は広い。

 

「これとかどうですか」

「似合うでしょ」

 

 下がハイレグ、上は胸までで肩は出ているという黒のドレス。それにブーツを履くらしいです。かっけー。あげはちゃんには似合いまくりだ。

 

「これは」

「似合うでしょ~」

 

 フェイクレザーのビスチェとスカートというパターン。悪の組織の幹部って感じがします。あげはちゃんに似合わないわけがないのよ。

 

「じゃあこれは」

「似合っちゃうよね~」

 

 ビキニタイプのやつだ。ブーツと手袋と帽子がついてて、一言でいうとエロポリスウーマンって感じ。あげはちゃんにはバッチリ似合うよ。

 

「一番プレイしたいのはどれなんですか」

「プレイ!?」

「プレイ以外に何に使うんですかこれを。コンビニにでも行きます?」

「いや、そのとおりだね……」

 

 コンビニなんてとんでもない。

 ましてや小学校に行くなんて想像だに恐ろしい。

 それに比べてプレイなら安心だ。

 

「たださあ」

「なんです」

「そういうプレイは沙織ちゃんがする役割では?」

 

 ドSプレイは沙織ちゃんだけで間に合っている。

 ムチと言えば沙織ちゃん。沙織ちゃんと言えばムチ。

 他にムチが似合う女性は不要だ。

 

「沙織ちゃんがこれを着て、あれやこれやするのはよくあることかなと思うけど。あげはちゃんは結局何もできないでしょ~」

「ぶっちーん」

「何その切れた堪忍袋の緒をようやく締めようとしてたのに盛大にブチギレたみたいな音」

「わかってて言ってるところがもう勘弁できません」

 

 この後、買い物かごにぶち込まれていくアイテムを見て、俺は戦慄していくことになった。

 

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