「ほい」
「あんがと」
箱を開ける。
「お~」
「いいでしょ」
「うん」
プレゼントは俺の好きなキャラクターのフィギュアだった。ちょっとえっちな少年漫画の妹キャラだ。
「ありがとう」
「ごめんね、物で」
「いやいや、嬉しいよ」
やや丁寧にお礼を言う。好きなキャラだし嬉しい。
妹がこんなことを言うのはさっき俺が「物をもらうより、こういうふうになにかしてくれる方が好きだな」と言ったからだろう。単純にももきゅーちゃんに喜びを伝えたくて言っただけなんだが……。
「はい、詩歌さんからのバースデープレゼントでした」
ぱちぱちぱち……という音のなんと小さいことよ。
その場にいるみんなの、静かなこと……心ここにあらずという感じだ。詩歌とすでにプレゼントをくれたももきゅーちゃん以外。
ももきゅーちゃんだけはニコニコしている。目が合うと投げキッスをしてくれた。さっきキスした感触が蘇る……。
「さて、次にプレゼントを贈りたい人はいますか」
パーティー会場に緊張が走る。
……なんで?
一触即発の雰囲気で渡すものではないのでは?
ももきゅーちゃんが最初にプレゼントを用意しようとしたときとは、まるで違っていた。
詩歌がプレゼントを贈る前に、休憩時間があったのだが、それが意外にも長かった。そして詩歌とももきゅーちゃん以外は、なにやら様子がおかしいのです。
「じゃ、じゃあ、自分が」
「はい、小江野さん! 小江野さんです!」
ぱちぱちぱち!
詩歌のときとはエラい違いで大きな拍手。
小江野さんも片手をあげて、声援に答えている。どういうことなんですかね。
「それでは準備してきます」
小江野さんは当然のように会場を出ていった。みんなもそれが当たり前、という感じで受け止めている。不思議に思っているのは俺だけらしい。
待っている間も、談笑する様子はなく、深く考えていたり、祈っていたり。お笑いの賞レースでも始まるのかな?
ももきゅーちゃんと詩歌の二人だけは、余裕の表情でおしゃべりしていた。すっかり仲良しっぽい。というか多分、ももきゅーちゃんは誰とでもすぐに仲良くなる気がする。俺と仲良くなるのも早かったし。早すぎるくらいだし。もうちゅーしちゃってるし。
ももきゅーちゃんともっと仲良くなる方法を考えていたら、さっきと同じようにバースデーソングが流れ始め、扉が開いて大きな箱を運んでくる女性スタッフ二名が登場した。
「……」
いや、これ中に入ってるよね。
小江野さんが中にいるってことだよね。
さっきはサプライズだったけど、もうバレバレでは?
「おっしーも、わたプレなのかなー」
しかし漢の兄貴の助言でそうなるのはわかるが、小江野さんがその発想に至るのは不自然では。
ともかく、ももきゅーちゃんには大きな箱でも、小江野さんには窮屈だと思われるので、早く開けてあげよう。
箱を開けると、当たり前だが、小江野さんが居た。
ただし、普通の服でも、リボンでもなく、ほとんど裸に近い格好で。
「こ、これは……」
「ちょーヤバいんだけど」
「そうきたか」
「メスブタ……」
みんなの反応を聞いて、恥ずかしそうにする小江野さんだが、体育座りからすっくと立ち上がり、きりっとした顔で俺の目を見る。
「自分の誕生日プレゼントは、マイクロ水着撮影会です!」
マイクロ水着撮影会……やたら布地面積の少ない水着で行われる撮影会か。好きなポーズを取らせることができるやつ。現役グラビアアイドルがやったら、参加費はとても高そうだ。
「これでどうぞ」
スマホを取り出すと、真奈子ちゃんがデジカメを貸してくれた。大きくはないが、高級品であることはわかる。
「よっしゃあ、尻を突き出せ!」
「いきなりローアングルとはさすが師匠」
「股を開け!」
「いきなり股間のどアップとは、さすが師匠、さすししょ」
「ちょっと、あげはちゃん、そんなの褒めてないで、顔も撮るように言ってよ」
正直なところ、照れ隠しだった。
はっきりいって、かわいすぎるし、えっちすぎるので、まともに見ていられない。
尻だけ撮影するほうが、恥ずかしくないんだよ。
とはいえ、おっしゃるとおり、顔が写っていなければ意味がないな。
顔と股が同時に見えるように撮影するには……。そうだ。
「まんぐりがえしの格好で」
「……なにそれ?」
「ごめん。聞かなかったことにしてくれ」
あげはちゃん以外はわかっていなかった。
誰にでもわかるような……そうだ。
「だっちゅーの、をやってくれ」
「……なにそれ?」
「ごめん。聞かなかったことにしてくれ」
あげはちゃんもわかっていなかった。
どうやら古すぎたらしい。そういう意味でアダルトだった。
ジェネレーションギャップ! 一九歳の誕生日にジェネレーションギャップ!
「じゃ、適当にあっはーんとかうっふーんとかしてくれ」
「うわー、てきとーだ」
俺なんかがとやかく言う必要もないだろう、プロなんだし。
小江野さんは想像以上に、その豊満なボディを、ぷりんぷりんぶりんぶりんさせながら、ポーズをとった。
「いいねー。さすがだねー」
「へへ」
笑顔がはじけてますね。
健康的な印象だが、なんせ布地面積が少ない。
胸は乳首が隠れているだけだし、尻なんてほとんど見えている。
なんならもうちょっと隠れていた方がエロいんじゃないかと思うくらい。
「おっぱい最高だな」
「そうかな」
「最高すぎるな」
これ以上大きかったら、ちょっとイヤかなっていうギリギリのラインの巨乳。
ポーズをとると形の良さも弾力もわかるように、弾んでいる。
「太ももも素晴らしいな」
「そうかな」
「素晴らしすぎるな」
男が好きなむっちり太ももだ。もともと小江野さんの太ももは素晴らしいと思ってはいたが、こうして間近でじっくりと見ると、非の打ち所がない。
「お尻……」
「なに?」
「言葉にできないな」
「なにそれ」
官能小説家失格かもしれない。この尻をどうやって言葉にできるのか。いや、できない。あれだよ、松尾芭蕉が松島を詠んだ時と同じだよ。いい尻だ、ああいい尻だ、いい尻だ。いい尻なんだよなぁ……。
「かわいいなー」
「へへ」
「えっちだなー」
「そっかな」
「たまらんなー」
カメラを止めるなって感じですよ。ずっとやってられるなコレ。
「かわいくて、えっちだねー。最高だー。こんないい女はそうそういな、ギャアーッ!?」
無心でシャッターを切っていたら、突如俺の尻に激痛が!
「ごめん、変態。手が滑った」
「沙織ちゃん!? ムチを持った状態で手を滑らせないで!? っていうかなんで俺の誕生日パーティーにムチを持ってきちゃったの!?」
「こんなこともあろうかと思って」
「じゃあワザとじゃないか!? 手が滑ったんじゃなくて、カンペキにギャアーッ!?」
「また滑っちゃったごめん」
俺の人生でここまで気持ちのこもっていない謝罪は初めてです!
「……時間もありますから、そろそろ次にいきましょうか」
「え、ええ~。もうちょっといいんじゃない?」
「なんでしーちゃん先輩が延長を希望するんですか」
なぜか応援してくれる詩歌。
よし、俺も真奈子ちゃんに延長をお願いだ!
「うん、もうちょっと撮りたいポーズがあるんだよね」
「へえ、また手が滑っちゃうかもしれないけど」
「いや、やっぱり大丈夫だった」
どうやら沙織ちゃんが許さないようなので、あっさり諦めます。
「では、おっぱいさんは着替えてきてください」
「おっぱいさん!?」
「真奈子ちゃん、小江野さんはおっぱい以外にも太ももとかお尻も魅力的だからそのあだ名はギャアーッ!?」
「変態は黙れ。メスブタはさっさと引っ込め」
「うう……メスブタよりはおっぱいさんの方が良かったよ」
メスブタ……じゃない、小江野さんは服を着てしまうようだ。
Tシャツとジーンズを履くだけなので、早かった。
戻ってきた小江野さんは、リボンラッピングされた箱も持っていた。
「あ、あとこれもプレゼントね」
「ああ、ありがとう」
箱の中身はフォトスタンドだった……今の写真を飾れってことなのか……えっちすぎませんかね……。
真奈子ちゃんは俺が貰ったプレゼントをバッグにしまうのを見て、司会進行を再開する。
「さて、次は誰がプレゼントを贈りますか……まだ贈ってないのはわたしと、あげはさん、沙織さん、瀬久原さんの四人ですね」
再び緊張が走る。なんか真奈子ちゃんのすべらない話が始まりそうな勢いですよ。いっそサイコロで決めますか?
「ここは瀬久原さんから行ってみましょうか」
なるほど、JS三人を残してJKからですか……むしろハマちゃんみたいなMCだなと思いました。
「はい」
さすがに柑樹は箱に入って出てくることはしないようだ。
着替えることもなく、学生服のまま。そして彼女は、ラジカセのボタンを押した。歌のプレゼントとかかな?
しかしまったく想定外のものが再生される。
何が再生されたんでしょう、か!?
とか書いて、当たっちゃったらどうしようw