女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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痴漢の流儀

 ガタンゴトン、ガタンゴトン……。

 次は、明大前に止まります。

 ガタンゴトン、ガタンゴトン……。

 

 ラジカセから流れてきたのは、電車の中の音だった。どういうことですかね。

 

「なるほどね」

 

 知っているのか、あげはちゃん。一人だけその手があったかという顔をしている。すごいな、俺なんて電車と言えば痴漢くらいしか思いつかないよ。

 柑樹は電車の吊り革部分だけを取り出すと、それを空中に掲げた。

 

「どうぞ。合法痴漢です」

「合法痴漢!?」

 

 まったく想像していなかった単語が登場。いや、痴漢は思いついてたけど、実際に提案されるとは思っていなかったのです。

 あげはちゃんはやはりそうかという顔をしている。弟子はすでに俺の想像を超えているようだ。

 あげはちゃんはまだわかるが、柑樹がこれを思いつくというのが不思議だ。

 

「何かをするのは苦手なので、されるのが得意なことを考えました」

「されるのが得意!?」

「電車で痴漢されるのは得意です」

「ええ!?」

 

 痴漢は特技欄に書くものじゃないのでは?

 

「好きですよね、痴漢」

「好きです!」

 

 即答してしまったが、好きなもの欄に書くものでもないぞ!

 

「先生は痴漢が好き……と」

「真奈子ちゃん、メモしないで」

「あげはは知っていました」

「あげはちゃん、知ってないで」

「死ね」

「沙織ちゃん、ごもっともだけど今は許して」

 

 痴漢は犯罪なので、みなさんも誕生日プレゼントなど相手からどうぞ痴漢をしてくださいという許可をもらってからしましょうね。

 

「小説に活かせるからね、こういう経験は」

「さすがですね、先生」

「さすが師匠。さすししょ」

「死ね」

 

 沙織ちゃんは容赦ないな。まぁ本気で尊敬してくる真奈子ちゃんの方が若干怖いのだが。

 ラジカセからは「次は調布に止まります」というアナウンス。どうやら俺が専門学校に向かう路線のものを使っているご様子。なんてきめ細やかなサービスなんだ……ただしこの路線は下りだから現実には混まない。痴漢は無理です。いや、混んでたらするってことじゃないのよ? わかるよね?

 つり革を持って立っている柑樹をあまり待たせるのも別のプレイになってしまうので、早速ですが痴漢していきたいと思いま~す。

 でもまずは気持ちを作っていきましょう。

 電車の音と、つり革を持った夏服姿の女子高生。

 周りの景色や視線を気にせず、電車痴漢に集中する。俺はチカン、電車でJKにチカンだ……よし、チカンスイッチオン!

 そっと彼女の後ろに立つ。

 どきどき……。

 本来は絶対触ってはいけない。だけど今は触っていい。こんなに嬉しいことがあるだろうか……。やっちゃいけないことをやっていいことほど、ありがたいことはない。

 噂によると最新の痴漢は、触るんじゃなくて、匂いを嗅ぐらしいね。勉強してますよ、そういうことは。作家だから。

 少しかがんで、上からうなじにむかって鼻を近づける。

 

「くんくん」

「うわ、リアルなんだけど」

「ごめん、ももきゅーちゃんそういうこと言うのやめてくれる?」

「あ、ごめ。ちょっとキモかったから」

「追い打ちやめてもらえる!? 俺は誕生日プレゼントを貰ってるだけです」

「そうですよ、ももきゅーさん。先生は小説を書くのも痴漢をするのも上手なだけです」

「さすが真奈子ちゃん、わかってるね」

「えへへ」

 

 こちとらどれだけ痴漢モノを読んだり見たりしてきたと思ってんだって話ですよ。

 女子高生の匂いをぞんぶんに嗅ぎつつ、そっと尻を撫でる。もちろん手のひらではない。まずは手の甲でほんのり当てるだけ。

 柑樹もさすが痴漢されるのが上手なだけあって、手で払うようなことはせずに、ちょっとお尻を逃がすだけ。

 いきなりすぐに追いかけることはせず、ちょっと時間を空けてから、また手の甲を当てていく。

 こうして、たまたま手が当たっただけかもしれないという状況から、段々とエスカレートさせていく。これが痴漢の流儀です!

 お尻に当てる部分を、手の甲から手のひらに変える。

 次はスカート越しにお尻ではなく、太ももを直に触る。

 そして満を持して、右手をスカートの中に入れるのだ。もちろん、目を閉じて我慢している顔をそっと後ろから覗き見つつね!

 

「詩歌ちゃん、通報した方がいいんじゃない?」

「あー、小江野さんもそう思います?」

「おい! 合法だから! これは合法な痴漢だから!」

「いや、普段からやってるでしょ絶対。手口がプロだもん」

「真奈子ちゃんが言ってただろ、上手なだけなの!」

「上手なことが犯罪なんじゃ」

「そんな法律はない」

「法改正が必要な気がしてきたよ……」

「黙って見てなさいよ、俺の痴漢を」

「うーん……妹に女子高生を痴漢しているところを黙って見てろと言う人がなんで無実なんだろう」

「じゃあ見なくていいですよ?」

「見るけど……」

「見るけどね」

 

 小江野さんと妹が通報しようとするのをなんとか阻止しました。大人しく見ておけばいいんだよ。まったく、俺は誕生日プレゼントを貰ってるだけだっていうのに。

 こっちは痴漢に没頭するために気持ちを作ったり、いろいろ気を使っているのだから邪魔をしないで欲しい。

 俺がしぶしぶ茶々を入れる周囲の相手をしている間も、集中をとぎらせることなく、ずっと痴漢されていることに没頭している柑樹。あっぱれだね。少しだけ体を震わせているあたりがすごくいいです。興奮します。

 太ももはむちむちしていて、ハリがある。たっぷりと太ももを堪能してから、お尻にいきます。むんずと掴むようなことはせず、ぱんつの布地を愉しむように指で触っていきますよ。コットンだね……いいですね、女子高生らしくて……。

 ん?

 

「気持ちいいの? 痴漢」

 

 小さな声で、耳元でささやく。

 心得たもので、返事をする代わりにふるふると顔を横に振った。本当に上手だな、痴漢されることが。

 

「下着、濡れてるよ」

 

 股間のところだけ濡れていた。

 それを指摘すると、恥ずかしそうにうつむく。唇を軽く噛み、頬を赤く染めて。完璧だ……完璧な痴漢のされ方だ……。世界大会があったら俺たちが優勝できるだろう。社交ダンスのように、痴漢をリードする側と痴漢される側のペアで出場する大会だ。残念ながら現実には存在しない。メイとご主人さまに挑ませるか……。

 さて、そろそろ遊ばせていた左手の出番だ。

 お尻を触るのは左手に任せ、右手は胸に。制服の上から胸を揉む。なんという至福。制服なのに至福。

 

「んっ……」

 

 ちょっとだけ声を漏らすところも上手だ。完全に感じてしまっては痴漢ではなくなってしまうが、本当に嫌がられても困るので、実はちょっと気持ちいいんじゃないのかと思わせるくらいがベスト。

 しかしここで調子に乗ってしまうのはよろしくない。ここで他に人が居たら絶対にやらないようなことをするのは違うんだよ。あくまでもこっそり。ワビとかサビと同じように、趣が大事なんだよ。

 脇腹のあたりから制服の中に手を差し込む。くすぐったがらせてしまうと、台無しになるから細心の注意を図ってお腹には触らない。

 ブラジャーに……あ、完璧だ。簡単にずらすことができた。つけてないのはリアリティがないからダメなんだが、ガチのやつだと外さないといけなくなる。ずらすだけで直に触れるというのが本当に最高なんだよなあ……。

 おっぱいを揉みながら、お尻を触りつつ、電車の音を聞く。うーん、いい痴漢タイムを過ごしているなあ……。

 左手で触るのもいいが、股間を押し付けるのもいい。固く膨らんだズボンを、スカートに。ぐいぐいと当てていく。

 気持ちいいなあ……。

 さて、ここいらで止めるのが正しい痴漢道です。痴漢道は紳士の嗜み。

 服を脱がしたり、股間を露出させるなんてことは許されない。他の乗客がなぜか気づかないなんてファンタジーなんだよ! 時間が止まるのと同じようなもんなんだよ!

 本当に痴漢を愛するなら、ここでストップなんです。男の美学ってやつだね。

 

「ありがとう、柑樹。最高の誕生日プレゼントだったよ」

「いえ」

 

 淡々とつり革をしまい、ラジカセを止める柑樹。オンとオフの切り替えすごいな。

 

「あとこれもプレゼントです」

「あ、そうなの?」

 

 普通のプレゼントもあるようだ。これは色紙?

 

「え? まさかこれ俺?」

「そうです」

「えー! マジか、かっけー」

「最大限美化したので」

「……それは言わないほうがよかったなー」

 

 俺の似顔絵だった。リアルなやつではなく、マンガ風の。これは嬉しい。

 

「さて、それでは次のプレゼントにしましょう。みなさん席に戻ってください」

 

 再び真奈子清井のすべらない誕生会が開催される。

 なぜか誕生日プレゼントをもらうだけの俺が緊張するんだよなあ……。

 残りはあげはちゃん、沙織ちゃん、真奈子ちゃんの三人です。

 




はい、ラジカセから流れてくるのは「電車の車内音」でした。
なんと正解者ゼロ。簡単な問題だったのに。

それにしても痴漢道が学びたいですね。
痴漢の部活で学校を救う話とかどうだろう。
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