「他に嬉しいのあったー?」
「え? ああ……」
妹の詩歌が小六のときが、ギャルゲー。小五がラノベ。そんで、小四でマッサージだったな。小三か……。
「お風呂で体を洗ってくれる券だったな」
当時、俺は妹と一緒にお風呂に入っていた。それまで体や頭を洗ってあげていたのだが、その頃自分で出来るようになったはず。
それでお返しの意味もあって、詩歌が洗う券をくれたんじゃないだろうか。
「お風呂か~。じゃ、一緒に入ろっか」
そう言って、自然に俺の手を握り、ベッドから立たせるももきゅーちゃん。
あまりに自然すぎて、抵抗せずに立ち上がる。
まあ、我が家のお風呂に
真奈子ちゃんとも温泉に入ったし。慣れたもんですよ。
俺の部屋を出て、階段を降りて、廊下を歩いて、パウダールームへ。
トイレと、洗面台、洗濯機と、そしてバスルームがある小部屋だ。
「ん?」
二人で風呂に入るの?
すっぽんぽんを見られてもなんとも思わない沙織ちゃんと違って、ぱんつを見られることも恥じらっていたももきゅーちゃんでは、わけが違いますよ。
「え? 脱ぐの?」
「そりゃそーっしょ」
「え? 水着とかじゃなくて?」
「しーちゃんは水着だったん?」
「んなわきゃない」
「だよね」
え? でも、小三の実妹と、小六のギャルでは全然話がちがくね?
いや、俺はいいよ? 俺はもう慣れてるから。ももきゅーちゃんが恥ずかしいんじゃないのかなって。ほら、俺は紳士なんで?
「ほら、脱ぐんだからあっち向いてよ、スケベ」
「え? お、うん」
脱いでるところを見たらスケベなのに、一緒に入るの? 裸で?
あれ? 理解できてないの俺だけ?
とりあえず俺も脱ぐが……下着はこのまま洗濯機に入れられないから、後で自分で洗うしかないな……。
「あ、ねえねえ、見てこれ」
「え?」
見んなって言われたのに、今度は見ろと?
「ほら、ブラとぱんつ。どう? カワいくない?」
「う、うん。カワいい」
「だよねー。気に入ってんだー」
嬉しそうに下着を見るももきゅーちゃん。ブラはさっき見たけど。ワインレッドだったよね。そんでぱんつは見るなって言われたはずだが。今は見てくれという。わからん……。
ワインレッドのティーバックだって知ってたけど、きっちり確認することになってしまった。カワいいっていうよりエロいよ。
「ぱんつ見られるの恥ずかしくないの?」
ずばり聞いてしまう。こういう気持ちを聞いておくのは、小説のためになるだろう。
「え? 履いてるときに見えるのはハズいけど」
「あー。なるほど」
スカートの中や、着替えは見られるのは嫌だが、下着そのものは別にいいということか。
考えてみれば、俺もスカートの中や着替えなら興奮するが、下着そのものを見てもなんともないもんな。そういう意味では当然か。
「じゃ、はいろ」
「うん」
なんでお風呂に入るのに手をつなぐんですか?
わからないことだらけだ……まぁ、小学六年のギャルの思考回路を一九歳男子がわかるはずもないが……。
バスタオルを巻いて入るのかと思ったけど、普通に裸だし……もちろん俺はジェントルマンだから見てないが。キレイな肌してるなあ。
「はい、座ってね~。こっち見ちゃだめだヨ?」
「うん」
っていうか後ろ向かなくても、鏡に映ってますけどね。俺はジェントルマンだから見ないけど。しかし、スタイルいいなあ。
足に少しだけお湯がかかる。
「熱くない~?」
「あ、大丈夫です」
つい敬語になってしまったが……ここはお店じゃないんですよ。
あ、お店ってあれだから、美容室のことだから! 勘違いしないでよねっ!?
ももきゅーちゃんがシャワーで俺の体を濡らしていく……なんかこれだけでも結構気持ちがいい。不思議なもんですね。
同じことをするにしても、自分でするのと違って、してもらうと気持ちがいい。うーん、奥が深い。もちろんシャワーの話ですよ?
「洗っていくねー」
首の後に手が当たる。スポンジじゃなくて手で洗うタイプらしい。
肩、そして背中に。
背中を手で洗うというのは自分では出来ないから、新鮮な感じ。
しかも手がすごく小さい。
「背中おっきーなー」
娘みたいなことを言う。詩歌が親父にそう言っていたかどうかは知らんけど。
「お兄様はもっと大きいから大変だな」
「確かにー」
渋谷兄は痩せてるタイプのオタクじゃなくて、大きいタイプのオタクだった。ちらっと見ただけだが、印象には残っている。
ちなみに詩歌が俺の体を洗ったのはスポンジだ。手じゃちっこくて全然無理だし。
「立ってー」
「はーい」
お尻も洗われる。男は女性のお尻を触れるのは嬉しいが、逆はどうなのだろうか。
「わー。お尻かっこいー」
カッコいい!?
尻にカッコいいとか悪いとか、あまり考えたことなかった。悪い気はしない。
「わ、固ーい。太ーい。すごーい」
脚のことです。ええ。勘違いしないでよねっ!?
ふくらはぎ、くるぶし、足の裏まできっちり洗われます。気持ちいいです。
「座ってー。目はつぶってよー?」
「はい」
前の方を洗ってくれるようだ。詩歌は背中だけだったんだけど……まぁいいか。
泡の付いた手が、首、肩、胸とだんだん下に。目を閉じている分、余計に感覚が研ぎ澄まされる。優しく、肌がなぞられていく感じ……これは誕生日プレゼントとして申し分ないんじゃないですかね?
「お腹も……あ、も、も~……スケベ」
何がですかね!?
全然わからないですね。まぁ、小学六年のギャルの思考回路ですからね、わからなくて当然なんですね。ええ。
「あ、ここは自分で洗うから……もう、大丈夫。先に出てて」
「ん。ハーイ」
俺はボディタオルで体を洗う派だけど、ここは手で洗うよ。みんなそうだと思うけど。
洗って、シャワーを浴びて出ると、服を着て待っていてくれた。
何も言わずに、バスタオルで拭いてくれる……なんでこういうところは上手なのか?
「全部洗えなくてメンゴ」
「いえいえ、こちらこそ」
渋谷兄は妹にこうされても、こうはならないだろうからな。
ならないよね? 大丈夫だよね?
「でも気持ちよかったし、これがプレゼントならお兄様も喜ぶと思うよ」
うん。間違いない。
「え? あー、アニキとお風呂入るのムリー」
「ええー!?」
「アニキに裸見られるのも、見るのもムリだー。これナシ~」
ムリムリと手を振るももきゅーちゃん。今までのなんだったんだよ!?
「はい、パンツ」
まるで幼児に履かせるように、広げてスタンバイしてくれている。なんでこんなに手慣れているんですか?
服を着ると、またしても手をつないでくる。
階段を登って、俺の部屋に戻る。
彼女は、俺のベッドにぽすんと座った。手を離さないので、隣に座る。
「ていうかー。センセ、サインちょーだい」
「へ? そりゃいいけど、いらないって言ってなかった?」
大ファンだっていうから、あげようかと言ったら、そういうのいいんで、って言われた。結構ショックでした。
「アタシはそういうのいらない人なんだけど、アニキは欲しいと思う」
「あー。そういうこと?」
なるほど、俺のサインを誕生日に贈るのね。
まぁ、俺のサインだけじゃ正直どうかと思うが、桜上水みつご先生の絵が入ってるサイン色紙をいくつか持ってる。それなら十分喜んでもらえるだろう。
「そそ。だから、アニキ宛にサイン書いてもらうとして……そんなことよりさー」
「そんなことより!?」
今日ここに来た本題だったのでは!?
そしてマッサージとお風呂はなんだったんです!?
「センセって、アタシのこと好きじゃん?」
「へっ!?」
なんかほっぺた赤らめつつ、くねくねしながら言い始めた。どういうことなんですか!?
「カワイイって言ってくれたしさー」
誰でも言うだろ!?
「すっごく褒めてくれるしー、やさしいしー」
それだけで!?
このギャル、チョロすぎるのでは?
「あと、ホラ。アレがほら。アレってアタシのこと、好きだからっしょ?」
「……そうだね!」
そりゃそうですよ。
好きじゃなきゃねえ?
アレはああならないもん。
まあ、ももきゅーちゃんのことはもちろん好きだよ。うん。
「んでさ、アタシもセンセのこと、好きじゃん?」
「ええっ!?」
「っていうかー、好きかもって思ってたけど~。今日確信っていうか~」
「えええ!?」
「アタシのこと、大事にやさしくしてくれるし。紳士だし、大人だし、でも子供扱いしないでマジで向き合ってくれるし、それでいて女の子として意識してくれてるしー。嬉しいっていうか……ぶっちゃけ好き」
「……」
なんというストレートな告白……何も言えない……。
これで「チョロすぎでは?」と返すような男にはなりたくない。
彼女の思いはありがたいが、さすがにこれを受け止めるのは……。
「だから、付き合って」
握られてままの手は、ぎゅっと力を増した。
だが、俺は……。
「付き合ったら、恋人同士っぽいこと、いっぱいしよ?」
魅惑的な笑顔!
え、えっちすぎる……。
「あ、アタシは浮気は気にしないから。全然ダイジョーブ。だからデメリットないよ?」
つ、都合がいい女~!
チョロくてえっちで都合がいい~!
いやいや、ここで流されちゃうのは……。
何か言おうとして言えない俺の口を、彼女が塞ぐ。
「ちゅっ……ちゅっ……」
キスから伝わってくる。何度も唇と唇が合わさって、そのたびに「好き」という思いが伝わってくるような。気持ちよさ、嬉しさ、それを上回る「好き」という気持ちの連打……脳がノックダウンしそう。
ゆっくりと顔が離れる。
「付き合って。カノジョにして?」
「はい」
断れねー!
チョロいのは俺の方だー!
いや、この状況で断れるやつ、そうそういないと思う! 思いたい!
「やったー! 初カレピだー!」
バンザイして喜ぶももきゅーちゃん。いや、カノジョか……俺も初カノジョということになる……妹より年下のギャル……。
「センセ……いや、んー。さかひさだから~、さかぴね」
「さかぴ!?」
「よろしく、さかぴ」
こうして、さかぴとももきゅーちゃんは、彼氏彼女となった。
意外な展開になりました。
私は自分で書いていても作品内でキャラクターが思い通りにはならないタイプでございます。