女子小学生に大人気の官能小説家!?   作:暮影司

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漏らしたのはため息と吐息と

 カラオケルームを出た俺たちは、何もなかったかのように小江野さんに会いに行った。沙織ちゃんも「え? 今日来た理由? そ、そんなの忍琴さんの応援に決まってる」って言ってたし。そりゃそうだ。俺の水ヨーヨー釣りなどが目的で、こんな遠くまで来るわけもない。

 沙織ちゃんは、小江野さんがお稲荷様が見てるというアニメのオーディションに参加するときから仲良しになっている。結果はまだわからないらしいが、沙織ちゃんが応援してるわけだし、いい結果になるに違いない。

 小江野さんは俺と同じ専門学校の声優科。学祭では舞台で朗読劇をするそうだ。

 ミュージカル科やミュージシャン科など、エンタメ系の学科も多いうちの学校にはそれなりの劇場がある。

 俺と沙織ちゃん、ももきゅーちゃんの三人は最前列をゲットした。

 目の前の舞台では数人の男女が、椅子に座って台本を持っている。

 

「へー、セイユウって何かと思ってたけど、声のお芝居なんだー。スーパーじゃないんだー」

 

 俺のカノジョは、声優をご存じなかったようです。小学生のギャルじゃ、そんなもんですかね。あのスーパーだと思ってたとは。ということは、みなさまのお墨付きブランドはご存知みたいですね。ちなみに小江野さんのカラダは俺のお墨付きですよ。

 それはともかく、ももきゅーちゃんは脚をぶらぶらさせてご機嫌に見えるが、もうひとりが気にかかる。なんかつまんなそうというか。水ヨーヨーを釣っていたときのほうがよっぽど楽しそうだった。

 そう心配しつつも。

 

「ねえねえ、さかぴー」

「なんだい」

「呼んでみただけー」

「おいおい……」

 

 ギャルのカノジョは、息を吸う如くイチャついてくる。

 ニコニコしているももきゅーちゃんの、反対側を見ると……。

 

「は~」

 

 ため息だよ……。

 しかも睨んでる……。完全に俺を睨んでいる……。沙織ちゃんはももきゅーちゃんのことを好きだから、目の敵に……。

 でも、俺は沙織ちゃんのことが好きだし、ちょっと親切にしてご機嫌を伺わないと。

 俺は学祭のプログラムを取り出した。

 

「ほら、沙織ちゃん。演目はこれらしいよ」

「ふーん」

「あれ? 興味ないの? 小江野さんの応援のためにはるばるこんな山奥の学校まで来たんじゃ……」

「あ、ある! あるけど、別に内容はどうでもいいし。忍琴さんの芝居を応援するだけだから! そんだけ!」

 

 そう言う沙織ちゃんは、焦っているというか、顔を真っ赤にしている……。芝居を応援するためだけに、ここまで来るのはやりすぎというか、恥ずかしいということかな……確かに、ちょっと仲がいいだけならそこまでしないよな……ん!?

 

「そうか、そういうことか……!」

 

 そもそもわざわざ一時間以上も電車に乗って学祭に来るなんて、なんでだろうと思っていたのだが。

 つまり沙織ちゃんは、小江野さんにラブ!

 なるほど、好きな人がいるからという理由なら納得ですよ。

 ようするに好きなのはももきゅーちゃんだけじゃなくて、小江野さんのことも好きだったというわけですか。なーんだ、沙織ちゃんと俺は似たもの同士だったんですね?

 それにしても、そうですか、沙織ちゃんが小江野さんを。

 沙織ちゃんはまだ見ぬ小江野さんが出る予定の舞台をぼんやりと見ている。

 

「ふ~」

 

 沙織ちゃんの吐息は、まさに恋する乙女といった感じだ!

 あら^~

 いいですワゾ~

 レズものはあまり好きじゃなかった俺だが、百合の魅力はわかってきたのよほ~。小江野さんにベタベタする沙織ちゃんを妄想していたら、アナウンスが流れた。

 

「声優科による、朗読劇。学校の怪談です」

 

 始まった。正直、怪談は興味ない。学校の猥談がよかったな。

 スポットライトを浴びた男が語りだす。

 

「誰もいない音楽室から、ピアノの音が……」

 

 はあ。そうですか。

 昔はそれでも怖かったのかもしれないが、今どきどうとでもなるだろう。自動再生するピアノもあるし。怖くないです。

 誰もいない音楽室の話が終わると、次の男に交代した。

 

「階段の数が一つ多い……」

 

 だからなんだよ。別にどうでもいいだろ。

 興味ない。次。

 

「なんと、人体模型が動いたんです」

 

 ダッチワイフも動いたらいいのになー。

 次。

 

「女子トイレの一番奥、そこには花子さんがいるという……」

 

 ほう。ちょっと興味あります。

 学校の女子トイレ。それは俺も入っていいということなんでしょうか?

 怪談が本当かを確かめるため、女子トイレに潜入するか……仕方がないな……。

 

「これは花子さんに会いに行った一人の女生徒の話」

 

 次にスポットライトが当たったのは、丸い眼鏡の女の子。丸顔でほにゃっとした敵を作らなそうな顔だ。イギリスのファッションと思われるデザインのワンピースは、ちょっと頑張っておしゃれしている感じがあってとても良い。

 

「花子さん」

 

 いいですねー。さすが声優になりたいだけのことはあって、声がカワイイ~。純真無垢というか、汚れを知らない少女の声だ。いつか俺の原作がアニメ化したら参加して欲しいね。レイプされる女の子役にぴったりの声です。

 

「なぁ~に」

 

 おお! スポットライトを浴びたのは、白いブラウスと青いジーンズでも溢れる色気。後ろで縛っただけの髪型でもセクシー。むっちむちぱっつんぱっつんボディで、一所懸命に幼い声を出そうとしている小江野さんだった。

 水ヨーヨー釣りのときはスカートだったので、わざわざ地味な格好に着替えたっぽいですね。

 演技はさっきの女の子に比べると下手くそだなあ。でも、レイプされる女の子にはぴったりの声です。二人とも原作者の力でなんとか起用したいですね。

 それにしてもトイレの花子さん役なんて、大抜擢じゃないですか小江野さん。枕営業でもしたのかな? 俺にもして欲しいですね?

 

「花子さん、いるの?」

 

 おどおどとした少女の声。いいですね~。

 小江野さんもがんばってー!

 

「ピンクの地獄と、バイオレットの地獄、どっちがいい?」

 

 随分エロティックな色のチョイスですね、トイレの花子さん。

 きっとピンクの地獄は、可愛い系のサキュバスに囲まれる地獄。

 バイオレットは、セクシー系のサキュバスに囲まれる地獄であろう。なんて悩ましい二択なんだ!

 左に座っている俺のカノジョはどう思いますか?

 

「すっごー。おっしー、すごいねー」

 

 音が出ないように拍手しているももきゅーちゃん。優しいなあ。沙織ちゃんは厳しい意見が出そうだと思いながら右を見る。

 

「……」

 

 座ったままで固まっており、目は開いているが動いていない。

 あれ?

 沙織ちゃん?

 おーい。

 沙織ちゃんの目の前で手を振ってみるが、反応がない。

 ま、まさか小江野さんの演技が下手すぎて気絶してしまったのか!? そこまではひどくないと思うけど?

 

「ん……?」

 

 なんか、椅子の下が濡れている……?

 というか、沙織ちゃんのジーンズも濡れてないか?

 なんとかしなければと思うが、反応のない女の子をいきなり触るのは紳士的でない。

 

「ももきゅーちゃん、ちょっとこれ」

「ん? うわっ、やばっ」

 

 ももきゅーちゃんは、沙織ちゃんの様子を見るなり肩を抱いて出ていった。うーん、一体どういうことなんだ。

 沙織ちゃんの座っていた椅子を触る。びしょびしょだ……。

 

「ぺろり」

 

 うーん、これは……おしっこだな……。女子小学生らしい味だ……。

 

「ぺろり」

 

 間違いない。おしっこ。一応もう一回舐めるか。

 

「ぺろり」

 

 やはり確実に、沙織ちゃんのおしっこです。この味、間違いない。

 それにしてもどうして。

 怪談が怖くておしっこを漏らした……ってことはないだろう。むしろ怪談の方が沙織ちゃんを怖がるならわかるが……。

 あれかな? 大好きな小江野さんの芝居に影響されすぎて、ここがトイレだと思っちゃったのかな? これはピンクでもバイオレットでもなく、イエローな地獄なのかな?

 トイレの沙織ちゃんがいなくなっちゃったが、小江野さんの演じるトイレの花子さんは目に焼き付けておかねば。トイレの沙織ちゃんのためにも。

 

「二宮金次郎像が……」

 

 終わってたー!

 もうトイレの花子さんの話は終わっていたー!

 それにしてもこの演目つまんねえ―! 

 

「声優科による、朗読劇。学校の怪談でした」

 

 終わったよ。おしっこの味くらいしか覚えてないが……。

 ぱちぱちぱち……と、それなりの拍手だった。

 

「この後、声優科による物販コーナーがありますので、よろしければぜひお立ち寄りください」

 

 物販コーナーとな?

 これは行くしか無い。

 

「小江野さん」

 

 舞台横の廊下で、立っている小江野さんに声をかける。

 緊張していたのか、俺を見ると少しほっとしたようだ。

 

「あ、来てくれたんだ。ありがと」

「当たり前だよー」

 

 小江野さんだって俺の水ヨーヨー釣りに来てくれたわけだしね。そしてストライプのぱんつを見せてくれたわけですからね。50円払ってまで。こっちが払いたいくらいですよ。

 

「それにしてもトイレの花子さんなんて大抜擢だね。すごいね」

「聞いてくれたんだー。ありがと」

 

 照れくさそうにする小江野さん。枕営業で手に入れたとは思えない喜びようだ。

 

「じゃ、小江野さんのコスROMを貰おうかな」

「えっ? コスROM?」

「あるよね、コスROM。コスプレ写真集めたやつ。写真集でもいいけど、あれでしょ? ポロリしたやつはROM限定でしょ?」

「何言ってんの!?」

 

 照れくさそうにする小江野さん。いや、恥ずかしいのかしら。ポロリしたやつのことは秘密だったのかしら。あっ、わかった!

 

「ひょっとしてポロリはDL限定だった?」

「だから何言ってんの!? ないから。コスROMないから」

「ええ~? ま、まさか動画があるとか?」

「ないから」

「どうして……」

「どうしてって、声優科だって言ってんでしょ」

 

 ふうむ……。

 小江野さんは、声優にしては演技はイマイチだが、そんじょそこらのグラビアアイドルよりはるかに顔もスタイルもいいからね。

 ちょっと残念だが、健全でも買おう。

 

「じゃあ……普通の写真集でもいいよ。できれば下着か水着なら嬉しいけど」

「だから、声優科はそういうのないって!?」

 

 ええ……?

 だって、声優って写真集とか出すじゃん……グアムとかオーストラリアとかイタリアとかおとぎ話の世界で撮影するんでしょ、知ってますよ?

 

「じゃあ、小江野さんが出てるやつは何があるの」

「え、自分が出てるやつ……買ってくれるんだ」

「そりゃそうだよ」

 

 他の何を買うっていうんだよ。

 コスROMがあるなら、眼鏡の女の子のやつも買おうと思ってましたけどね。意外と大胆なんだよね、ああいう女の子って。

 

「ドラマCDがあるんだよ」

 

 なるほどなるほど。

 小説には文章だけの魅力があるように、音声だけの魅力もあるからね。俺は好きだよ?

 

「じゃあ、18禁のやつ全部ください」

「18禁のは無いよ!?」

 

 ええ……?

 18禁が無い……?

 待って、18禁じゃないドラマCDって何……?

 

「ちょっと? ちょっとー? おーい?」

「ああ、ちょっと絶望のあまり三途の川超えそうになってた」

「そんなに!?」

 

 軽く頭を振る。気を失いかけたが、口の中に酸っぱい液体が残っていたから、正気に戻れたよ。ありがとう、沙織ちゃん。

 

「まあいいや、出てるやつ全部買うよ」

「そ、そなんだ……ありがと……」

「他は?」

「歌のCDがあるね」

「それも買うよ」

「あ、ありがと……」

「今度コスROMも作ってね」

「うん……」

 

 よし、うんって言ったね。絶対だからね。言質取りましたよ?

 

「じゃ、トイレの沙織ちゃんが心配だから行くよ」

「うん、じゃね……トイレの沙織ちゃん……?」

 

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